夜明け -片割れ三ツ巴-   作:NIGHTMARE⭐︎

2 / 19
2 指名された者たち

宇宙平和協会会長・カーフに呼び止められた巴。

「指名、ですか?」

「適正隊員が君ともう1人くらいだった…ようやく動向を掴めた」

カーフが表情ひとつ変えずに言う。眉を顰める巴。

「…秘密結社ヴェールですか」

「ああ」

秘密結社ヴェール。詳細活動も目的も不明の組織。近年ヴェールに関する依頼が少しずつ増えてきている…内容は決まって「拉致」。

そんな危険組織の居場所がついにわかったのだろうか。

「了解しました。場所はどこでしょうか」

「CE(多目的連絡機器)に位置情報を送信しておく。人命に関わるかもしれない、できるだけ至急で頼む」

カーフは自身の銃に埋め込まれたCEの画面を操作している。巴は無言のまま、まるで自身の先祖に協力を呼びかけるように、腰に下げられた妖刀の鞘を握りしめていた。それもすぐに、CEに位置情報が送信されたピコンッという音に遮られた。

「ありがとうございます。行ってきます」

巴はカーフに軽く頭を下げて踵を返した。階段を駆け下りて、再び協会の出入り口へ向かう。

 

同時刻、同じ位置情報をCEに受信した者がいた。それは黒い刀を背負った銀髪の青年だ。あてもなく少し眠そうに街を歩いているところだったが、カーフからの連絡があったのでCEを取り出して画面を見つめる。

宇宙平和協会四級隊員、白霧韋駄丸(しろきり いだまる)。

彼は友人に誘われてて先月入隊したばかりの新人だった。

(…なんで俺?)

韋駄丸は緑の目でじとーっとCEを睨む。なんで新人に指名任務を与えるのか…。

(まあ拒否したら余計面倒になりそうだし行くか)

マイナス思考な男は街を出て、例の地点へ向かって歩き始めた。

 

その頃、目的地へ到着した巴。彼女は飛行ができるため、あっという間に辿り着くことができた。

そこは小さな街だった。周囲には木々が繁り、あたりの街から孤立しているようだ。周りにあるのは、見渡す限りの大樹海だけ。

「依頼者の元へ…」

自分に言い聞かせるように呟く巴。ふわりと降り立ち、街の中を進んでいく。その過程で、だんだんと街の異常さが浮き彫りになってきた。

出歩いている人影がほとんど見当たらない。街が死んでいるかのように物音ひとつしない。街中に巴の足音が反響するようだった。

(ヴェールの拉致事件の噂が広がってるんですね…)

巴はCEを取り出し、カーフから送られてきた依頼者の住所を確認しながら歩いていく。

「あの…協会の人…?ですか」

不意に後ろから声をかけられた。巴は振り返り、声の主を見る。黒い服に銀髪、緑の目の青年。たった今到着した韋駄丸だった。

「ですけど…」

相手の正体がわからず、腰の妖刀に手をかける巴。韋駄丸はすぐにその手の動きを目で追う。

「あ、いや…怪しいものじゃなくて、俺も協会のアレっていうか」

「ああ。失礼しました…!」

刀からすぐに手を離す巴。

「共同任務ですね!頑張りましょう…!」

「あ…はい」

韋駄丸は少し後ずさる。わぁ…めっちゃ明るい系の人じゃん…。

そうとも知らず巴は愛想良く話し続ける。

「依頼者のご自宅に向かいましょうか」

「あ、はい」

微妙に噛み合わない2人は、CEに表示された住所を目指して歩き始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。