視獲盲獲を結界の外に持ち出されることを考慮して、大勢の兵を待ち伏せさせていたヴェール。
「終わりだな!!」
黒い影たちは各々が持った黒い銃の引き金を同時に引いた。鋭い音と共に導力弾が音速で撃ち出される…。
ガガガガガガッ!
凄まじい音が響いた。
「何…?」
ヴェールの1人が思わずつぶやいた。螺旋煌はパチリと目を開く。彼女の体には傷ひとつついていない。
「何が起きた」
また別の男が銃を構えて螺旋煌を狙う。その瞬間、男は首に圧迫を感じて倒れ込んだ。見えない手に首を締め上げられたらしい。
「がっ…!?」
チラリと見た螺旋煌は依然無表情で浮いている。
「我々がその程度のことすら先読みしていないとでも思ったか」
螺旋煌の周囲に青く光る半透明の盾のようなものが複数召喚された…いや、透明化していたものが姿を現したようふぁった。銃撃が一切効いていなかったのはそれが理由らしい。
「導力が感知できていなかったのはお前たちも同じだ」
その瞬間、周囲に急激に導力が立ち上るような感覚が走った。同時に何もなかった場所から次々に兵士が現れる。全員が白地に青の線が入った装備を着ている。それは紛れもなく治安維持組織、BLUELINEの兵士の姿だった。
「どこから…!」
ベランダに立っていたヴェールの男が、突如後ろに現れた兵士に取り乱す。兵士は青い半透明の盾のような導力で男を何なく殴り倒した。
「時間ギリギリでしたよ…」
兵士が導力盾を解除しながら言った。螺旋煌はいつも通りの無表情でベランダに降り立った。
「BLUELINE協会部、任務完了です」
兵士がCEに言った。
BLUELINE。治安維持組織にして、最高企業団直属の防衛組織。都市の平和を守る公式組織だ。宇宙平和協会との関係は良好。協会部は名前が示す通り、宇宙平和協会の本部へ派遣されている部署のこと。今回は近隣住民の避難を任されていたため、偶然近くに居合わせていたのだ。
「改めて私はコレを協会へ運ぶ」
螺旋煌は短く言い、ネオン大剣に乗って再び飛んでいった。
「この規模のテロにしては被害は少なく済んだ方でしょ〜」
カメレオンのようにぬるりと空気から現れた兵士が導力盾の兵士に言った。黒、赤、青の混ざった髪はまるでペンキをぶちまけたようだ。BLUELINE兵士たちが導力すら感知されないレベルで隠密行動ができていたのは、彼の能力らしい。
「もうすぐ結界も協会騎士の皆さんに解体されるでしょうね…秘密組織がここまで派手にテロを起こすとは…」
「見事に待ち伏せ作戦も成功だったもんね〜」
盾の青年の呟きに隠密の隊員が軽く返答した。
「なーに企んでるんだか…」
キィンッ。
結界内では未だ戦闘が続いている。巴が偶然見つけた死霊をなんなく切り裂く。
「だんだん死霊も減ってきたね…」
先ほどまでは探さずとも大量にいた死霊も、すっかり数を減らしていた。
「…枯渇死する人がいなくなったからでしょ」
韋駄丸が小声で答える。すっかり銀の剣をいつものケースに収めて背負っている。すっかり空気中の導力には異常がなくなって快適になっていた。
「そろそろ出てもいいかもね」
巴がつぶやいた瞬間…。
ガシャン!
何かがどこかから飛んできて、2人のすぐ近くに叩きつけられた。
「!?」
「まだ生きていたか…流石にしぶとい」
聞き覚えのある不気味な声。黒いマントの男がすぐ近くの学校の屋上に立っていた。
「っ…ギース…!」
巴は思わず声を上げた。