28.怪しい単独依頼
テネブルタウンアウト発生から2週間後。テロの舞台となった第二市街地はすでに修復が始まっていた。すでに地面に散らばっていた瓦礫などは撤去され、建造物の外壁の修理などが始まっていた。街の入り口は工事中につき立ち入り禁止の柵が設置されていたが、すでにいくつもの花が供えられていた。
韋駄丸はとうにいつもの調子に戻っていたが、なかなか依頼を受ける気になっていない。協会の自室で、定期的に訪ねてくる巴と絶妙な距離感をキープしつつ話しながら過ごしていた。
しかし現在、巴は単独で依頼へ出かけていた。韋駄丸は1人本部へ残されて暇していた。
(…流石にそろそろ行くか…誰かに文句言われそうだし)
韋駄丸は2週間ぶりに銀の剣の入ったケースを背負い、扉を開けて出ていった。
(ここか…)
1時間ほど経ち、韋駄丸は依頼にあった場所へ辿り着いた。それは暗い森に周囲を囲まれた黒い館だった。依頼によれば、この館の2階の窓から白い死霊のような姿が見えたらしい。人里から少し離れたこの館は薄気味悪い雰囲気を放っている。
韋駄丸は恐る恐る黒いドアの横のチャイムを押した。押した瞬間コーンと鐘のような音が鳴り響く。こんな場所に人が住んでいるとは到底思えなかったが、音を聞いた死霊が活性化するかもしれないと思った。韋駄丸は扉から少し離れた場所に立った。何が起こるかの予測がつかない。
ギイと音がして扉が開いた。
「お客様でしょうか」
そこにいたのは黒い帽子を被り、紳士的にスーツを着こなした男性だった。銀髪と赤いネクタイが目を引く。
「…あー。宇宙平和協会のものです…」
韋駄丸は曖昧な返答をした。まさか本当に現在進行形で住んでいる人間がいるとは。
「依頼でこの場所があったので…」
「なるほど。申し訳ありませんが私はこの館の主人に一時的に使えている状況ですので…この場で詳細をお願いいたします」
銀髪の男性が落ち着いた口調で返答した。宇宙平和協会に自らの主人の館が通報されていると知っても表情ひとつ変わっていない。韋駄丸は深呼吸して続ける。
「…この館で死霊の目撃が…2階なんですけど。白い死霊に心当たりありませんか」
「申し訳ありません。やはり主人に聞くことが最短ですが、あの方は現在は出勤中でございます」
男性が即答した。韋駄丸は思わずため息をつく。予想以上にめんどうな依頼を受けてしまったらしい。
「主人の場所へ案内してもらえますか」
「私も現在は館の掃除で手が離せません。ですが共同作業中の仲間がおりますので、彼女に任せることは可能でございます」
男性が軽く頭を下げて、再び館の奥へ消えていった。この館で何が起こっているのか見当もつかない。それでも韋駄丸は流石にこの前のテロよりはマシだろうと思い、すぐそばの塀に腰掛けて彼の帰りを待った。