依頼者の家の前に到着した巴と韋駄丸の2人。
「ここっぽいですね」
巴が躊躇いもなく家のチャイムを押す。韋駄丸は無言で立っている。その表情からは何の感情も読み取れない。
扉がゆっくりと少しだけ開く。警戒しているらしい。
「宇宙平和協会の巴です」
「同じく協会の韋駄丸…」
それを聞いて依頼者は安心したのか、扉を開いて姿を見せた。白いドレスを着た少女。
「ど、どうぞ…!詳しくは中で…!」
少女は2人に手招きする。巴はお辞儀して玄関に上がった。韋駄丸は少し躊躇っていながらも、巴の目線に気づくとすぐに家に入る。
「さて…依頼内容の確認ですが…」
巴が言うと、少女は目線を落とす。
「…私の妹が攫われましたっ…」
「そのなんかやばい組織にですか?」
韋駄丸が聞き返す。先月入隊したばかりなので、知識が明らかに足りていない。少女はほとんど目を閉じて頷いた。
「夜でした。11時すぎくらい…私の妹は夜遅くまで出かけていて…うちに帰ってくる途中に…黒いマントのやつに」
「わかりました。必ず妹さんを連れて帰ってきます!」
巴が、依頼者が辛そうなのに気づいて遮るように言った。韋駄丸もわずかに頷く。
「ありがとうございます…!」
「黒いマントのやつ、の居場所はわかるんですか?」
「それは分かりませんが…妹の場所はわかります。CEで現在地情報を送ってもらえるので…」
少女はCEで開いたマップを見せる。位置情報は、山の中腹あたりを示しているらしい。
「ここに奴らの拠点があるかもしれませんね。協力ありがとうございます」
頭を下げる巴と、何かを考えているような韋駄丸。少女は期待するような、寂しそうな表情で2人を見送った。
「こっちですね」
街を出て樹海を突き進む2人。韋駄丸は全然喋らない。返事してよ、私がずっと独り言を言ってるみたいじゃん。
木々はどんどん深くなり、人の手が行き届いていないような大自然が広がっている。隠れるにはちょうど良さそうだ。
「近い…この辺のどこかにヴェールの拠点があるはず」
「そうなんですかね」
韋駄丸がキョロキョロしながら言う。巴はあたりの地面や木々をくまなく調べている。やがて山の急斜面、壁のように聳え立った崖の前で、巴は足を止めた。
「…見つけた」
巴が小さく呟く。韋駄丸はそこに駆け寄る。
2人の頭上、地上4mほどの場所に穴が掘られているようだ。巴は無言でそこまで飛んで行こうとしたが、ふと足を止めた。
「…来れる?」
「これない」
韋駄丸は即答した。当たり前のように飛行しないでよ…。
巴はふわりと地上に降りて、手を差し出す。絶対掴まれってことだろうと韋駄丸は思った。
韋駄丸がその手を握ると、案の定巴は彼を掴んだまま飛行を開始する。
(…この人大丈夫か?)
韋駄丸が感じた時には、その体はすでに穴の付近にまで浮上していた。無言で穴に入る韋駄丸。巴が息を切らしているのが聞こえる。穴の中はかなり狭く、なんとか這っていける程度の広さしかない。奥へ続いてるようだ。
巴の声が後ろから響いた。
「奥へ進もっか」
2人は穴を這って奥へと進行していった。