「グレファルってやつに会えたりしませんかぁ?」
美甘がオフィスビルの受付の女性に尋ねた。敬語を使っていてもだるさが全く隠せていない。グレファルというのが例の主人の名前らしい。
「18階にいらっしゃいますが…少々お待ちください」
受付がCEを取り出して操作し始めた。美甘はため息をついて韋駄丸の横にスーッと移動してきた。
「地面の中って涼しい?」
「めっちゃ快適。陽の光も届かないし」
美甘はポケットから取り出したチョコレートを口に放り込みながら答えた。開いた口からギザギザとしたサメのように尖った歯が見えた。変わらずつまらなそうな表情だが、会話すること自体は嫌ではないらしい。
「ご氏名をお伺いできますか」
受付が2人に尋ねた。
「美甘」
「韋駄丸です」
受付は再びCEになれた手つきで文章を打ち込み始めた。
「…なんか案外順調じゃない?」
美甘が呟いた。韋駄丸は頷く。依頼を受け始めた時と比べて、かなり成功の兆しが見える。
「交渉が完了しました。そちらのエレベーターへどうぞ。17階でお話しするそうです」
受付が2人に愛想よく言った。
「ありがとございまーす」
美甘が薙刀を重そうに担いでエレベーターへ向かっていった。韋駄丸も受付に軽く会釈して美甘を追う。エレベーターの中は高級感のある黒で、協会にあるものほどではないが広かった。オレンジ色のボタンが壁一面に並んでおり、鏡もついている。美甘がすぐに「17」を押した。
キーン
柔らかな音と共にエレベーターが17階で止まった。黒い扉が音もなく左右に開くと、壁一面が窓になっている部屋が姿を現した。まるで展望台のようだ。床には赤と黒のカーペットが敷かれ、いくつかのソファがテーブルを挟んで対面した状態で置かれていた。そしてそのソファに、1人の50代くらいの男が座っていた。
「よく来たね…私に何か重要な用事かな?」
グレファルが尋ねた。黒いスーツと青いネクタイを締めたいかにも階級の高そうな装いだった。髪は白髪混じりの黒で、目を細めて微笑んだ。
「なんかー…協会?があんたに用があるらしくて来ましたー」
「協会?あの宇宙平和協会のことか?私に何の用かな」
グレファルが2人にソファに座るよう促しながら聞いた。韋駄丸は無言でソファに腰掛ける。すぐ真横に美甘が座った。
「…あなたの屋敷の中に死霊を見た人が依頼を出したんですが…何か知りませんか」
「…ほう。死霊ねぇ…」
グレファルは表情をほとんど変えずに韋駄丸を見つめた。自分の高級そうな腕時計をトントンと指で叩いて何かを考えているようだ。横の美甘が横目で見てくるのを感じる。
「仕方ないな」
やがてグレファルが口を開く。
キーン。
エレベーターが到着した音がした。全員の視線がそちらに引き寄せられる。
エレベーターのドアが開くと、乗っていたのは10人ほどの銃を持って武装した兵士だった。