エレベーターから、10人ほどの銃を持った武装兵が降りて来た。
「銃…!?」
美甘が珍しく驚いた声を出す。
「気づかれてしまっては仕方ない。2人とも死んでもらう」
グレファルがニヤリと笑う。韋駄丸はすでにバッグを開いて剣を取り出していた。とはいえ、銃を持った敵を複数人相手した経験などない。美甘も立ち上がって薙刀を構える。
「どういう意味ですか」
韋駄丸がグレファルに尋ねると、グレファルはまたしても腕時計をトントンと指で叩く。どうやらそれが緊急時の合図だったらしい。
「いいさ、どうせ死ぬ2人だ教えてやろう。私の趣味は『改造死霊』を作ることでねぇ。ある人物にその力を買われて、それを高額で買ってもらっているんだ」
グレファルは邪悪な笑顔で2人を交互に見つめる。
「市場管理の一部がこの会社の仕事なわけで。違法取引をもみ消すのも容易くてね…とはいえこれを君らにバラされたら私は終わりだ。死ね」
グレファルの声と共に兵士たちが同時に発砲した。
「…チッ」
美甘は素早く床に潜って攻撃を回避する。韋駄丸はそうもいかず素早く走って避けるしかなかった。
兵士のうちの1人の足元から素早く美甘が現れ、兵士を薙刀で斬り飛ばした。
「ぐあぁ!」
兵士は吹き飛び、他の兵士たちはそれを避けて散り散りになった。その隙を韋駄丸が見逃さない。韋駄丸の蹴りがまた別の兵士に直撃し、ドミノ倒しのように兵士が倒れていく。韋駄丸はそれに違和感を覚えた。
(弱すぎないか?)
「どけっ!」
美甘が薙刀から赤い斬撃を打ち出してまた3人の兵士が吹き飛ばされた。兵士たちはあっという間に殲滅されていた。
「ちっ…まあいい。どうせ戦闘経験も碌にない社員だ、捨て駒に過ぎない」
グレファルの声がする。声の方向を見ると彼はすでにエレベーターに乗り込んでいた。
「っ…逃げられるぞ…!」
韋駄丸が声を上げた頃には、その男は閉じていくドアの隙間からこちらに笑いかけていた。
「ふんっ…!」
突然美甘が素早く駆け出す。半透明の赤い薙刀をドアに挟んで強硬手段で止めるつもりらしい。
「さあそこで改造死霊と過ごせ」
グレファルが意味深な言葉を呟く。
がきゃん!
凄まじい金属音が走った。薙刀が届くより一瞬早く扉は閉まり切り、その刃がドアにめり込んでいた。美甘はギザギザな歯を食いしばって乱暴に薙刀を引き抜いた。
「ボタンの反応がない。あのおっさんがエレベーターに細工して停止させたらしい」
「はぁ?じゃあこっから出られないじゃんか」
韋駄丸はエレベーターに何発も斬撃を叩き込むが、金属製の扉はそう簡単には壊れない。破壊される頃には、あの男はすでにここにはいないだろう。
「でもな…確実に俺らを始末しにくるはず」
「ん。あの館に改造死霊ってのを取りに行ってるんじゃない?」
美甘が首まで床に浸かりながら呟く。韋駄丸はそれを見てふと思う。
「それで壁とか通り抜けて下まで伝っていけないか?」
「…あ、そうじゃん…でもあんたは?」
韋駄丸は悩んだ末言う。
「非常階段とか外にないか探して来てほしい」
「りょ。行ってくる」
美甘がするりと床に潜っていった。