「おかえり、韋駄丸くん」
韋駄丸が協会へつくなり巴が言った。美甘の後だとより一層明るく感じる。
「うん…ただいま」
巴は微笑みかけた。協会のエントランスの端に置かれた黒いソファに座っている。韋駄丸の帰りを待っていたらしい。巴は韋駄丸に小さく手招きする。韋駄丸は巴の座っているものとテーブルを挟んで向かい側に置かれたソファに腰を下ろした。
「なんか用?」
「明日とか一緒にどっか出かけたりしたいなぁ、って思って」
巴が何気なく言う。
「依頼?」
韋駄丸の感情のこもっていない声に巴は首を振る。
「第一市街地にでも遊びに行かない?」
「…え?」
韋駄丸は一瞬思考停止しかけた。誰かと任務以外で同行したことなど一度もない。協会に入るまではそもそも友人が1人くらいしかいなかった。そしてその友人とは協会に入ってから一度も共同任務をしていない。
「忙しかったら断ってもいいよ?」
巴が沈黙する韋駄丸に聞く。
「いや…全然暇。いいよ」
韋駄丸が答えた。巴はニコッと笑う。韋駄丸はそこでふとCEに目線を落とした。
「…もう一人呼んでいい?来るかわかんないけど」
韋駄丸が小声で巴に尋ねる。巴は一瞬驚いたような表情になるが、すぐに頷いた。
「もちろんいいよ。人数多い方が楽しいかも。明日の昼くらいに第一市街地の商店街前で集合って伝えといてくれる?」
「了解」
韋駄丸はソファから立ち上がって自室へ向かう。依頼解決という任務を放り出して遊んでいいのだろうか。2週間依頼を受けていなかった自分が考えるのもおかしいかもしれないが…まぁ少しくらい息抜きも大事か。
次の日、昼過ぎ。
「…はや」
待ち合わせ時間の30分前に到着していた韋駄丸を見つけた美甘がつぶやいた。
「…そう?」
「ん。わたしだって結構早めに来たつもりだったんだよ?」
相変わらず美甘は脱力している。なんなら昨日より眠そうに見える。昨日と同じ軍服のような服と青緑色のスカート(外出用なのだろうか)で、小さな丸いチョコレートを口に放り込んだ。もちろん下半身は地面に埋まっている。
「あと一人来るから待とう」
「…え?あんた友達とかいたんだ」
美甘がなんの気なく言った。昨日巴も思ったであろうことを、言った。
「…美甘は三人目の友達」
「…ふっ。ほぼいないようなもんじゃん」
美甘がわずかに煽るような表情を見せた。韋駄丸はどう返事すればいいのか分からずに顔を背けた。
「気持ちはわかるよ…?わたしだってうるさいの嫌だし。」
美甘が同調するようにつぶやいた。やはりこの人とは相性が悪くない。韋駄丸はふと思った。
「はやぁ…!」
聞き馴染みのある声が聞こえた。
「…巴」
巴が微笑みかけた。こちらも髪留めが無いだけでいつもとほとんど同じ服装。巴が美甘を見ている。
「韋駄丸くんの友達?私巴。よろしく」
「…美甘」
巴と対照的に、というか案の定冷めている美甘。巴は興味深そうに美甘を見ている。
「半竜のお友達初めてかも…」
「はぁ…どっか行くんじゃ無いの?」
美甘の声で巴は我に返ったらしい。
「うん!二人ともついてきて、絶対楽しいよ」
巴は目の前の商店街へ向かって歩き始めた。