巴に連れられて、韋駄丸と美甘は第一市街地の商店街に足を踏み入れた。韋駄丸にとっては全く見たことのない光景だった。
眩しい白い照明がいくつも設置された黒い天井に覆われた街には、いくつものアミューズメント施設が立ち並んでいる。高いビルも塔も全て遥か高くに見える屋根の下に覆われている。それを支えるためのものだろうか、銀色の鉄骨がいくつか地上から遥か上に向かって伸びているようだ。少し薄暗い地上には薄いスクリーンのようなものが立ち並び、映像を映し出している。ビルの外壁は全体的に黒で塗られ、ビカビカと光る派手な看板がある。ローラーコースターの白いレールもビル群の上を通っているらしい。頭上には白く小さな照明のようなものがいくつも浮遊して、歩道と車道の区別すらない。
韋駄丸は思わず硬直した。最先端の都会はこんなことになっているのか。どこを見ても情報量が多く、歩いている人たちも見たことがないほど多い。
「…人多すぎ」
美甘の呟きが微かに耳に入った。美甘は顔だけを地上に出していて、道ゆく人に踏まれてしまいそうだ。巴はそんな二人を見て微笑む。
「ここが第一市街地のアミューズメント都市『ジャクショップ』!街の中央エリアをそのまま施設にしちゃったらしいよ」
巴が道の真ん中に設置されている街の案内マップを見ながら言った。韋駄丸と美甘はぽかーんと聞いている。
「なんかやりたいなーってこととか…ある?」
巴が二人に尋ねる。美甘は上半身だけを出して、踏まれないように韋駄丸の足元にいる。黒いビルの上のコースターが通過し、悲鳴が全員の耳を貫いた。
「静かなとこ、かな」
美甘が言った。いつもの声量では賑やかなこの場所だととても聞き取れないので、少しだけ普段より声を張っている。巴は曖昧に笑ってCEを操作し始めた。
「ちょっと探してみる…」
韋駄丸には、この町で静かな場所などある気がしなかった。どこを見ても活気に溢れている。明るい人にとっては楽しいのだろう。そう思っている割には韋駄丸は興味あり気にキョロキョロと辺りを見ている。
「あの観覧車とかは…」
「高いの無理」
美甘が一瞬で遮った。巴の指の方向にはビルから突き出したような銀色の観覧車が見える。
「せっかくきたんだから楽しんだ方がいいと思うよ?」
巴が言った。韋駄丸もそれは同意見だった。ただ楽しみ方がわからない…。
「一通り回ってみようよ!」
巴が歩き出した。韋駄丸はとりあえず並んでついていく。プロに任せた方が良さそうだ。
「むー…」
美甘もだるそうに後を追う。
「はや〜!!」
手始めにビルの上を駆け回るローラーコースターに乗ることにした三人。外から見た見かけとは裏腹にかなりの速度があり、鉄骨の間をすり抜けるように走るので迫力があった。加えて屋根の影響で薄暗いこともスリルにつながっている。
「…やば」
韋駄丸は安全バーにガッチガチに掴まり、横にいる美甘は一言も発さず、その韋駄丸の腕にしがみつくように掴まっている。巴だけ一番後ろの座席で気持ちよさそうに声を上げている。自力で飛行できる人は慣れているのかな…。
やがてコースターが徐々に速度を落として元の乗り場に停車した。白いライトで照らされた乗り場は、そこだけ昼間のように明るい。10分ほど前に通過した金属探知機が少し遠くに見える。
「はぁ…」
コースターから降りると、足元が浮いているかのような感覚に陥る。美甘は韋駄丸の腕に掴まったままだ。
「…フラつく」
美甘が死にそうな声でつぶやいた。巴は誰よりも早くロッカーから荷物を回収して軽快な足取りで寄ってきた。
「…ちょっと休もっか」
足取りの軽い巴に手すりを掴んで階段を降りる韋駄丸と、韋駄丸にしがみつく美甘が続いた。