「確好屋を商人団が狙っている?」
「はい。商人団が作り出した人造死霊の出現と、その後の傀儡による発言から確定だと思います」
宇宙平和協会本部、会長室にて。巴はカーフにこのことを報告に来たのだ。韋駄丸は現在も確好屋で周囲を警戒している。
「確好屋のメンバーの美甘ちゃんがターゲットにされているんです…彼らは海竜は特に高く売れるから逃さない、と言っていました。商人団の構成員を確保する機会にもなると思うんです」
巴が必死にカーフに言う。友達だから護衛に協力して欲しい、という理由ではカーフが動かないことはわかっている。カーフは青い窓ガラスの前に腕を組んで立って考えている。
「護衛任務兼相手を取り押さえるチャンスというわけか…」
カーフの言葉に巴は頷く。
「わかった。こちらからも護衛を複数名つけさせてもらう」
「え?…いいんですか」
思わず聞き返す巴。カーフは黄色い目で巴を見つめる。
「市民の身に危険が晒されている以上、黙っていることはできないからね」
カーフが頼もしい微笑みを浮かべて言った。さすがは上位等級騎士…話もわかってくれるのか。
「ありがとうございます!」
同刻、確好屋。
「へぇ〜。君が韋駄丸くんか」
「…はい」
韋駄丸は確好屋の拠点となっている一軒家の中で話していた。ちょっとした受付のようなものがあり、二階へ続く階段も見える。
韋駄丸は目の前に座る青年をチラリと見た。彼こそが、確好屋のもう1人のメンバーのイオラである。赤いジャケットを羽織り、椅子の背もたれに全身を預けている。赤いカチューシャをして、グレーの髪が目にかかりそうだ。その目は眠いのか眩しいのか細められていた。
「僕はイオラ。確好屋のリーダー的な?」
「…メンバー2人しかいないでしょ」
美甘がツッコむ。イオラは一瞬黙り込む。
「ト、とにかく!ここに商人が襲撃に来るってことかな?」
韋駄丸が頷く。美甘は地面に半身を埋めたままするーっと韋駄丸の足元まで移動してきた。
「あいつらは必ず来る…巴が協会に戦力を割いてもらいに行ったから…戦闘中はここで」
「僕は戦闘したらダメなの?」
「…美甘のそばにいてあげて欲しい」
イオラの言葉を半ば遮るように韋駄丸が言った。美甘はソファに座っている韋駄丸の足元をあてもなく動き回っている。その目線は韋駄丸の方を見ている。
「…守られる側って初めて」
美甘が小声でつぶやいた。それが不満なのか満足なのかは声だけではわからなかった。
「韋駄丸くん…!協会騎士を何人か護衛として追加派遣してもらえることになったよ!」
ふわりとベランダに降り立った巴がにこやかに言った。まるでこれで全て安心、とでもいうふうに。韋駄丸はまだ不安が強かった。あんな奴らに美甘を渡すわけにはいかない。
「追加派遣の人はいつ来る?」
韋駄丸が巴に問う。
「今かな〜」
突然背後から声が聞こえ、韋駄丸は素早く振り向く。
「まさか共同作戦とはね〜」
韋駄丸の座るソファの背もたれに両手を預けてもたれかかっていたのは天李だった。相変わらず銀髪が片目を覆い隠し、黒い独特なジャケットを纏っている。
「…最悪」
韋駄丸が呟く。白霧天李、韋駄丸の実の兄。しかし過去の出来事で関係性は良くない。
「まあまあ…今はその子を守るのが最優先ね」
天李が軽く笑顔を見せながら言った。韋駄丸は不服そうな、あるいは正論を言われてイラついているような表情で押し黙った。
「BLUELINEの隊員も明日7人合流するってさ」
天李が韋駄丸の足元に向かって言った。恐らく美甘に言ったのだろう。
「…誰?」
「協会の準一級隊員のてんり。ヨロシク」
美甘の言葉に即答する天李。巴は苦笑いしながら天李と韋駄丸を交互に見る。韋駄丸は俯いて、小さく呟く。
「…まあ、戦力としては申し分ない」
天李はそれを聞いて珍しく、素の微笑みを見せた。韋駄丸はぷいっと顔を逸らす。
「…商人が来るまで待とう」
韋駄丸が感情のない声で言った。全員が頷き、ソファに腰掛けた。