22:59。真夜中の空気が張り詰める。風は吹き荒れ、冷気が肌に突き刺さる。
「あれ」
韋駄丸が声の方を向くと、いつの間にか確好屋の屋根の上に座っている天李がわずかに見える街の外の平原を指差していた。韋駄丸は目を凝らしてそちらを見る。
フードを被った人間の大群が、こちらへ向かってきていた。全員がナタや短剣などの武器を持っている。
「…本当にあれだけの人数が…」
巴が呟く。御狩は空中に浮かび、相手の様子を無言で見ている。商人団の兵士たちはすでに街へ足を踏み入れていた。
「さてと…お手並み拝見っと」
天李がいつもと変わらない微笑のまま、ジャケットの裾をひるがえす。韋駄丸は一瞬、彼のジャケットの中に緑色の光を発するブースターを見た。
キュウン!
次の瞬間、天李はまばゆい閃光と共に素早く屋根から飛び立ち、黄緑の残像がその場に残った。
「見りゃわかるけどね〜!」
天李の声が遠くから聞こえた。その姿はすでにかなり遠く、兵士たちの最後尾のあたりに飛んでいる…恐ろしく速い。その瞬間、天李は素早く剣のような武器を撃ち込んだ。剣は高速で宙を切り裂き、数人の兵士を吹き飛ばす。彼は反対の手に同じものをもう一つ持っているらしい。
「…はやっ」
巴が呟く。天李は地面に刺さった刃の周りを円を描くように旋回し、兵士たちが次々と切り裂かれて倒れていく。
「どうなってるの…?」
巴が再び呟く。天李は直接攻撃はしていないにも関わらず、天李が横を通った兵士は切り裂かれていく。韋駄丸は真顔のまま答える。
「…あいつの剣と剣の間は糸みたいな導力で繋がってる。その糸に斬られてる」
巴はその様子をじっと見つめていたが、不意に我に返ったように妖刀に手をかける。
「…私たちも行かなきゃ」
飛び立った御狩を見て巴が呟く。韋駄丸が頷くや否や、茶色いマントを被った集団の方へ駆け出す巴。兵士の1人が巴にナタを振り上げるが、即座に彼女の導力がこもった刀で斬られて眠りに落ちた。また別の兵士が3人同時に短剣を振り上げて近づいてくる。
「邪魔だ協会ィ!俺の商品に手を出…」
ザシュッ!
韋駄丸が剣で兵士を切り裂き、兵士は地面に崩れ落ちた。残り2人はそれに躓いてバランスを崩した瞬間を巴が撃破した。韋駄丸は感じた。連携が上達している。だんだん巴もこちらの意図を汲み取って行動してくれるようになっていた。
再び2人が斬りかかるが韋駄丸が片方を蹴り飛ばし、ぶつかり合って体勢を崩した2人をまとめて巴が眠らせた。こんな連携のできていない相手などもはや敵ではなかった。
「死霊が近づいてるよ〜、家の方。早く向かって」
突然韋駄丸の横に高速で着地した天李が言った。いつも通りの余裕の笑顔。韋駄丸は癪に触りつつも確好屋の方へ走り出す。巴も浮遊したまま後をついてきた。天李はそれを見届けると、背後から襲ってきた兵士を見向きもせずに切り倒した。