夜明け -片割れ三ツ巴-   作:NIGHTMARE⭐︎

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46 群体と影

ドォン!

商人団の兵士たちはたちまち吹き飛ばされた。一級隊員、公認スレイヤーの鶴喰御狩が火球を放って兵士を一掃したのだ。

(はぁ…兵士は全滅、ですかね)

御狩は手から煙を上げながら地面に降り立った。商人団の構成員か、雇われた兵士か、茶色いマントを纏った人間たちは折り重なるように大量に倒れている。地面からも彼女の攻撃が炸裂した後の黒い煙が、まるで山火事のように高く上がっている。御狩はただその場に立っている。

 

ヒュン!

刹那、背後から黒い刃のようなものが高速で飛んでくる。御狩はひゅるりと身を翻して宙を舞い攻撃をかわした。

「へぇ〜?やるじゃん」

ゴボゴボとノイズのようなものが混じった声が聞こえた。御狩は少し距離をとった場所に着地し、相手を視認する…それは大量の黒い魚に見えた。大量の魚型の影が集まり、ぐるぐると宙を泳いで魚群のようになっている。

「死霊の一体ですか…」

御狩が小声で囁くように言った。上位死霊、スカリムテイカー。いくつもの魚型の導力で構成された死霊。明確な肉体の概念が極端に弱いため、自在に分裂や再生を繰り返す。

「ゴボッ…見ての通り」

スカリムテイカーがいうや否や、その体の魚のうちの三体が高速で御狩に迫る。御狩はそれを血のように赤い導力の棘で同時に串刺しにして止める。顔の紙がひらりとなびく。続けて何体もの魚影が、鋭く尖った先端を御狩に向けて飛んでくる。御狩は背後に下がりつつ不規則に動いて相手を翻弄する。魚影たちは御狩の動きに対応しきれずに次々と地面へ突き刺さっていく。

(群体の死霊なんて…どこを攻撃していいのか…)

御狩は火球を生成し、地面に刺さった数体にそれを叩きつける。火球は即座に破裂し、黒い煙と共に激しい爆発を起こした。爆風で御狩は後ろに距離を取る。地面の魚たちは即座に焼き払われ、ジュワッと蒸発した。

「僕の仲間は他にも3人いるってことをお忘れなくねぇ」

御狩は紙の下から相手を睨む。残り三体が今頃どこで何をしているかわからない。

突然、御狩の目の前の何もなかった空間から魚影が現れ、御狩に突撃する。

「!」

御狩は咄嗟に背後へ下がるが、魚影の尖った鼻先が右腕に突き刺さった。

「くっ…どこから…」

「え?導力から、だけど?」

魚影が言った。先ほどの爆発で蒸発した魚影の導力から、さらに新しい個体が生まれたらしい。まるで無限増殖だ。御狩は腕に食いつく魚影を引き抜いて自らの導力で穴だらけにする。

「そんなものなのか協会」

御狩の手にいた個体がどろりと溶け落ち、魚群に戻っていく。魚影たちはまた一塊りの球体のようにぐるぐると泳ぎ始める。

「まだまだですよ…!」

御狩が導力を鋭く尖らせながら言った。

 

同時刻。

韋駄丸と巴は死霊が向かっていると李から聞き、確好屋の一軒家へ戻ってきていた。

「…慎重にね」

巴の呟きに頷く韋駄丸。背中のケースはすでに全開で、銀色に輝く剣はその手にある。

「え、早え〜」

不気味に反響する声が聞こえ、巴が即座に相手に切り掛かった。導力が弧を描くように斬撃を描き、相手の体に届いた。

「おぉ〜、すっげー!」

死霊は確好屋の向かい側の道、あの人造死霊がいたあたりに立っていた。顔の左半分には三つ、右半分には一つ、白く光る目がある。それ以外は人型に見えたが、両腕は影のように真っ黒になっている。暗い路地のためそれくらいしかわからないが、身長は韋駄丸や巴よりも低い。たった今巴に切られた箇所が裂け、完全に空洞な中身がわずかに見える。

 

「やるね。反応できないところだったよ」

耳元で突然囁きかけられた。と認識した頃には、ズバッと鈍い音が響き鋭い痛みが走った。

「韋駄丸くん!」

巴の声が聞こえる。自分の腕に目を落とすと、認識する隙もなく大きく切り裂かれていた。今になって血が溢れ出す。

そして、相手が月明かりの下、自分の目の前にいた。顔立ちは幼く少年のように見える。目が二つならの話だが。手には影を個体にしたかのような真っ黒の剣を持っている。

こいつは絶対に上位死霊だ、と本能で分かった。

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