死の気配だった。目の前の少年のような死霊は、圧倒的に死と絶望を感じる。ギースから感じたものと似ているが、その上をいく強烈さだ。
四つ眼の人型死霊、名は誘夜(イザナヨ)。四大死霊2番の実力者。
誘夜は目を細めて笑い、巴に斬りかかる。巴は咄嗟に妖刀噛去でそれを防ぐが、誘夜の蹴りがその体を大きく弾き飛ばした。
「…ッ!!」
巴は地面に刀を突き刺してその場にとどまり、素早く斬りかかる。
「お、いいね!」
誘夜がすぐに黒い剣で刀を受け止める。巴は妖刀を相手の刀から離して再度振り下ろそうとするが、刀同士が離れた瞬間に相手の武器が素早く動いて巴の目前に迫る。巴は全身の力を抜くように頭を下げて回避した。
「やるぅ〜」
誘夜は刀をくるりと回して巴に再び振り下ろす。巴は身を捻って避けるが、誘夜が笑いながらそれを蹴り飛ばした。
「っは…」
誘夜が影のように真っ黒な刀を振り上げる。その瞬間、韋駄丸が高速で間に割って入る。銀の剣が勢いが乗り切る前の相手の刀をガキンと受け止めた。
「韋駄丸くん…無理はだめ…」
「人のこと言えないでしょ」
韋駄丸が呟き、剣を振り抜いた。誘夜はふわりと距離をとって着地する。白い四つ目がおもちゃを与えられた子供がごとき輝きを見せる。
「お前も強いんじゃん!」
誘夜が相変わらずの恐ろしい速度で切りかかってくる。韋駄丸は後ろの巴へ攻撃させまいと剣を横倒しにして構える。相手の刀はどう見ても一撃でこちらの命を奪ってくる代物だろう…。腕に傷を負った程度で済んだのは奇跡か手加減に違いない。
ガキャン!
誘夜の刀が韋駄丸の剣に衝突し、重々しい音を立てる。相手の華奢な体に見合わない強い力に思わず押される韋駄丸。誘夜は韋駄丸の剣を上からグイグイと押し付けている。上半身を無防備にさせるつもりだろう。韋駄丸はそれに気づき負けじと剣を上に向かって力を込める。
「ははっ!」
その瞬間、誘夜は急に刀から力を抜き、突然圧力から解放された韋駄丸の剣は大きく上に振れる。
「下半分がお留守だよぉ!」
誘夜が刀をくるりと回して韋駄丸の足元へ振り下ろす。
ガキン!
刀が韋駄丸の両足を掻き切る寸前、巴が妖刀でそれを受け止めた。
「巴…」
「お互いカバーすればきっといける!」
巴が妖刀を素早く相手の体へ振る。案の定誘夜は高速で背後へ跳ねて攻撃を避けた。その時、巴はふと気づいた。一番初めに入れた攻撃が一切回復していない。誘夜の胸元には、巴に切り裂かれたあとがそのまま残っていた。中身は完全に空のようで何も見えない。
「韋駄丸くん…あいつ再生力はないみたい。あと多分小細工とかもない」
巴が韋駄丸に囁く。韋駄丸は黙って頷き、剣を振り上げて誘夜に接近する。誘夜は満面の笑顔で影の刀で迎え撃つ。二つの刃がガチンとぶつかり、押し合いになった。その一瞬の隙を巴が狙い、妖刀を相手の足めがけて振る。しかし誘夜は驚異的な跳躍力で巴の攻撃を回避する。
「残念!何回目だろうね」
誘夜が空中で回転しながら言う。遠心力でさらに殺傷力を上げるつもりらしい。
巴は即座に刀を上から下に斬り上げ、貫通斬撃を放った。
「うぇっ!?」
巴が突然放った遠距離攻撃に驚く誘夜。その胴体を貫く貫通斬撃。誘夜は地面に落ちるように着地し、刀を構え直す。さらにその隙に韋駄丸が剣を構えて斬りかかる。誘夜は追い詰められてきているにも関わらずより楽しそうな表情を浮かべた。
ガキャン!
韋駄丸の剣が刀で防がれ、誘夜は蹴りを繰り出そうとする。
キュン!
巴の導力斬撃が蹴りを繰り出した誘夜の右足を両断した。誘夜の膝から下がそのまま勢いに任せて吹き飛ぶ。
「いっ…」
韋駄丸がすかさず相手の左足にも銀の剣を振る。誘夜は全ての目を大きく見開き、巴に向けて影の塊のような刀を投擲した。
ガァアン!!と凄まじい音が響く。巴は妖刀で相手の影の刀を打ち返していた。誘夜の刀は地面に突き刺さり、持ち主は左足を切り落とされた。
「…えぇ〜。マジぃ?」
誘夜はその場に倒れ込んだ。