ドカァァン!
火球が炸裂した。御狩はすでに一体の死霊を倒し、再びスカリムテイカーと応戦していた。
「ははは…全然無駄って感じだな」
スカリムテイカーが挑発する。御狩はショックを受けたように硬直する。自身の導力を刺々しく変形させたり、発火させて火球にしたり。戦闘力は間違いなく高いが、精神力は全然強くない。
(本当に全然数が減らないぃ…なんでですかぁ…)
御狩は自分に飛びかかってくる魚影を導力で貫きながら考えた。魚影はやはり一度導力として空気に溶け出し、再び魚の形を作り出す。
「ゴボッ…終わりにしてもいいよ?飽きてきたし」
スカリムテイカーの水中から聞こえるような声が言った。御狩はその場で突然立ち止まる。
「…ならそうします」
ギャギャギャギャギャッ!
黄緑の閃光と共に、驚異的な速度でスカリムテイカーの群れが切り刻まれた。
「あ“ッ…!?」
スカリムテイカーが動揺する。御狩の横にはすでに天李が浮いていた。
「じゃ、交代ってことで。御狩さんはあと一体の死霊、お願いしますね〜」
天李が相変わらず余裕そうに言った。御狩はぺこっとお辞儀して飛んでいった。スカリムテイカーが、まるで一つの巨大な魚であるかのように群れで空中を漂う。
「お前か…」
「さてと。覚悟しろよ?」
天李がニヤリと笑い、その双剣を持って突撃した。スカリムテイカーの群れははぐるぐると竜巻のように動き身を守ろうとしている。
「甘いって!」
ギャリッっと音を立てて双剣が竜巻に突き刺さった。大量の魚影が双剣で切り裂かれて消滅していく。
「あと274匹かな〜?」
天李が呟き、左手に持った方の剣を勢いよくスカリムテイカーの竜巻に投げ込む。
「くっ…!マジありえない」
スカリムテイカーが焦りを見せる。次の瞬間には竜巻の回転が止まり、全ての魚影がバラバラな方向に泳ぎ始めた。天李は今投擲した剣と手元にある剣の間の導力糸をピンと張り、高速で魚影たちの周りを飛行する。
キィンッ!と音を立てて次々と魚が切り落とされていく。
「くっっっっっっそ!!!」
相手の焦りに天李は笑い、左手をギュッと動かして剣を回収する。そしてスカリムテイカーに指で撃つような真似をした。
「ど〜ん!」
瞬間、たった今飛んだ軌道の内側が大規模な爆発を起こした。魚影は全て跡形もなく焼き払われ、導力が徐々に消えていく。天李は地上に降り立ち、空気中に溶けていく魚の群れを眺めていた。
「まずいぞ…!このままでは返り討ちにされる…!」
街の端、ビルの屋上で商人団の男が声を漏らした。望遠鏡でスカリムテイカーと天李の戦闘を見ていたらしい。横にいるもう1人は怒りをあらわにしている。
「あんな店ごときを守るためだけにこんな兵力を投入することがあるかぁ!?」
「バカが!なってるもんは仕方ねえだろ!とにかく『奇襲者』に集中している間に俺らは…」
ドカアアアン!!!
商人たちが立つ場所のすぐ下から凄まじい音が響いた。商人が身を乗り出してそこを見ると、全身が真っ黒な熊のような死霊が、赤い導力で串刺しにされてビルの外壁に縫い止められていた。死霊はけたたましい咆哮を上げている。
「『奇襲者』が…ッ!」
商人は苦虫を噛み潰したような表情で声を捻り出した。彼らが最後の希望にしていた死霊は、目の前で圧倒されている。
「失礼します」
「!?」
商人2人の後ろから声がした。商人が振り向くと、白い和服に黒髪、顔は紙で隠した人影…御狩が立っていた。その手の動きに合わせて外壁に磔にされた死霊に赤い導力がめり込み、バリバリと音を立てた。
「ひぇ…」
商人団の1人が情けない声を漏らす。
バチュン!
導力針の圧迫に耐えかねた死霊が爆散し、空気に消えた。