「神狩くん、なんかあったぁー?」
「なーんにも…」
2人は、死霊に滅ぼされた村を訪れていた。斜面を切り開いて作られたような小さな村で、小型の家が八つ並んでいる。すでに殺された住民たちは運び出され、商人たちに家も荒らされ、完全にもぬけの殻となっていた。
「導力残留物でもあればね…」
荒らされた家の中を覗きながら神狩が呟く。巴も頷いた。
「行き詰まってるネ〜」
聞き覚えのある声が背後から聞こえ、飛び上がる巴。振り返るとそこには見間違えようのない、ピンクと緑のツインテールの少女がいた。手には巨大なペロペロキャンディを持ち、柵に寄りかかって傍観している。
「いやぁぁぁ」
巴の声を聞きつけて駆け寄る神狩。右手がすでに刀の持ち手を握っている。
「あ…?なんでまたコイツ…」
「退屈だったから来ちゃった。困ってるなら助けてあげるヨ〜?」
神狩がジリジリと後ずさるのを見て、アコニは口元を手で押さえてあふふっと微笑む。
「何か知ってるの…?」
巴が妖刀を抜いたままアコニに問う。アコニは待ってましたとばかりにニヤッと笑った。
「実は見つけちゃったんだヨネ〜、繭」
「繭…?」
神狩が聞き返し、巴と顔を見合わせた。この少女の言うことが本当なら、敵はすでに羽化の準備を始めているようだ。神狩がチラリと横目でアコニを見る。とても信用には値しないように見える。
(…ま、そんなこと言ってる場合じゃないか…)
「案内してくれるか?」
神狩がアコニに尋ねると、巴が神狩を一瞬見つめた。アコニはペロペロキャンディをクルンと回し、反対の手でぴーんと指を立てる仕草をした。
「おまかせあれ〜」
「…ほんとに信用しちゃってよかったのかな…」
「……。」
アコニの後を追いながら小声で話し合う巴と神狩。アコニは村を出て、開拓の行き届いていない山へ向かっているようだ。
「…嘘とも断言できないし…可能性のある場所徹底的に潰してくしかないんじゃないか?」
静寂の後に神狩が口を開いた。巴は妖刀に手を触れたまま小さく息を吐いた。
「…まあそれはそうかもね」
巴の返答に頷く神狩。その瞬間、アコニはその場で3回転くらいしてこちらに向き直った。
「この山の中腹くらいかナ〜…」
アコニがキョロキョロと辺りを見渡しながら言った。
「…今更だけど君何者?」
神狩が痺れを切らしたようにアコニに聞く。
「ン?見ての通りダヨ」
アコニが笑う。巴は額を抑えて「やれやれ」というふうに首を振った。
「…で。繭はどこ?」
体勢を立て直した神狩がアコニに聞く。
「ソコ」
アコニが緑のグローブをはめた手で少し先の開けた場所を指差した。その指先には、真っ白の巨大な鞠のような繭があった。断崖にへばりついているらしく、大きさは2メートルはありそうだ。
「あれかぁ…結構でかいんだね」
巴が呟く。神狩は刀を抜いて、繭に向かって歩き始めた。
「…行こう」