「…今の所人はいないね…」
ハシゴで一番下まで降り切った巴が言った。後に続いてアコニ、ノーカル、神狩も降りてきた。地下とは思えないほど丁寧に積み上げられた石レンガの壁で、そこにかかった松明がぼうっと辺りを照らしていた。秘密犯罪組織ヴェールの拠点へ侵入完了。あとは、巴の能力で敵組織のメンバー4人を眠らせ、そのヘルメットを奪う。
「…慎重に行こうか」
神狩が囁く。アコニ以外の2人が頷いた。その瞬間、全員が聞き耳を立てて黙り込んだ。通路の奥の方から足音が聞こえてきたのだ。
大昔の潜水服のようなヘルメットを被った男が、通路を歩いていた。侵入者がいないかの見回りだ。それは組織内で日替わりでやらなければならない仕事の一つだった。すでに深夜のため、男はかなり眠そうな様子に見える。
ザシュッ!
「ぃっ…」
柱の陰に隠れていた巴に斬られ、その場に倒れ込む男。アコニが近づいた時には、男はすでに巴の能力で深すぎる眠りへ誘われていた。巴が手際良く男のヘルメットを外し、ガボっと被った。
「前見えにくい…」
巴がこもった声でつぶやいた。
「みんなここで待ってて…私が全員分持ってくる」
全員が頷き、神狩とアコニが通路の右側、ノーカルが左側の柱の陰に隠れた。巴はそれを確認すると、通路のさらに奥へと進んでいった。アコニがニヤッと笑った。
「見回りお疲れ…ん?その刀は…」
ザシュシュシュッ!
巴が瞬く間に4人のメンバーを斬り伏せて眠らせた。ヘルメットのおかげで、警備していたメンバーと思われたらしい。
(よし…!)
巴はそのうちの3つを持って、先ほどのハシゴの場所まで歩いていく。
「お、さすが巴だ…!」
巴が戻ると、すぐにノーカルが柱から出てヘルメットを着用した。
「よく怪しまれずに三つも持ってこれたねぇ…」
神狩がヘルメットをくるくると回して色々な方向から見ながら言った。巴はヘルメットの下で少し照れていた。数分後には、全員が銅のようなヘルメットを被り終えた。
「わ〜い!あとはこの拠点のボスをぶっ倒せばオッケ〜!」
アコニが言った。そううまくいくものなのだろうか。
「この拠点の奴らだけ壊滅すれば私は満足だカラ!」
ペロペロキャンディを持ち、ヘルメットからツインテールがはみ出したアコニが自信満々で軽い足取りで奥へ歩いていく。
「怪しすぎるって…」
神狩が呟き、後を追いかけた。巴が神狩の真横を歩いているが、表情はヘルメットに隠されて見えない。後ろのノーカルは、何やら怪しい装置を手に持っている…。
「…ボスを潰しに行こう」
全員が暗闇に向かって歩き出した。