誅暦800年当時のヴェールの指導者、セルザヴォークは手招きした。ヘルメットを被り、正体を隠した4人は彼の前へゆっくりと歩いていく。
「緊張しているのかァ?大丈夫今は機嫌がいい…」
セルザヴォークが口角を歪めるようにして微笑みながら言った。巴は思わず身震いする。目の前の男は一見、戦闘力も持たない無害な老人にしか見えない。しかし、その深いシワの下の目の奥には一筋の光もないかのような、底知れない闇を感じる。何を考えているのかが全く読めない。
「それでェ…ン第二拠点の現状はどうなんだ…収集の調子はどうだ?」
セルザヴォークが4人の姿を順に眺めながら言った。ゆったりとした口調に反して、目線は突き刺すような鋭く残忍な雰囲気を感じる。
「えっと…捜索中です…」
巴が咄嗟に口を開いた。セルザヴォークの言葉の意味をまだ考えている途中だろう。その声を聞いたセルザヴォークは目を細める。
今思えば…ヴェールはこの当時から何かの目的のために導力を集めていたのかも知れない…。
「結構結構…」
不意にセルザヴォークは言い、椅子から立ち上がった。手にした杖に体重をかけながら、ゆっくりと近づいてくる。アコニが退屈そうにため息を吐いた。目の前の男に3人が攻撃を開始するのを待っているかのようだ。巴と神狩はチラリとヘルメットの隙間から目を合わせ、頷いた。
「催夢一閃!!」
巴が素早く能力を発動し、目の前の老人に斬りかかった。
ガキンッ!!
「…っ!」
セルザヴォークは、手に持っていた杖で妖刀を受け止めていた。
「何のつもりかな…?」
セルザヴォークが囁くように問う。すぐに神狩が赤い炎を灯した刀で斬りかかるが、セルザヴォークは老体に似合わぬ軽いフットワークで素早く後ろへ跳んで回避した。
「お前をぶっ潰しに来たヨ〜!」
アコニがヘルメットでこもった声で叫び、巨大なポイズンロリポップを構えた。セルザヴォークはアコニの方を向き、じっと見つめた。
「貴様はァ…脱走した愚かな人質の小娘じゃァないか…」
セルザヴォークが自らの顎に触れながら言った。アコニはロリポップをぐいっと上げるように構え、自らを12年間監禁していた男へ駆け出した。
「どりゃあああああああ!!!」
アコニが猛毒の染み出したロリポップを遠心力を利用してセルザヴォークに叩きつけるが、セルザヴォークはひらりと鮮やかにかわしていく。巴はチラリと奥で何かしているノーカルを見た後、相手に素早く接近した。アコニは回転を利用してロリポップで連続攻撃を繰り出している。
「っははは…実に面白い戦術だな生贄君…」
セルザヴォークが手にした杖でアコニのロリポップを打ち返しながら挑発する。
「アコニちゃん下がって!」
巴が叫び、すぐに刀から黒い斬撃を発射した。アコニはそれを間一髪で回避し、セルザヴォークは杖で受け止めた。攻撃の圧が杖を伝ってビリビリと持ち主へ走る。
「…いい導力捌きだな小娘」
セルザヴォークが背後から斬りかかった神狩の攻撃を避けながら言った。
「っく…速いけど、それだけか?」
神狩がヘルメットを外し、セルザヴォークめがけて投げつけた。
ドスッ…
瞬間、硬い銅のヘルメットは、老人の手から突如現れた植物のツタのような触手で貫かれていた。
「はは…私はすでにあの術を心得ているのだよ…」
セルザヴォークが手のひらに触手を引っ込めながら言った。
「あの術…?」
巴の問いかけに笑うセルザヴォーク。
「『反響』という技能だ…」