「『反響』…だって…?」
神狩が聞き返す。セルザヴォークは意味深な笑顔を見せる。
「そうだとも…書物に記された古の厄災の技能だ…」
セルザヴォークが黒い触手を伸ばし、素早くアコニへ振る。
「うぎゃッ」
アコニはロリポップで防ぐもそのパワーで後ろへ軽く吹っ飛ばされた。
神狩は刀を構えたまま考える。古の厄災、書物…。全くわからない。ただ一つわかるのは、目の前の老人が操る力は普通の「能力」ではない、ということだった。
ドシュッ!
神狩の燃え盛る刀がツタのような触手を斬りつけ鋭い音がなった。巴が妖刀に導力を収束して遠距離から斬撃を撃ち込むと、セルザヴォークは触手を背中から伸ばして大ジャンプした。
「!」
バキンッ!
セルザヴォークが巴の目の前に着地し、触手で突きを繰り出した。巴は衝撃で地面へ倒れ込み、妖刀がその手を離れて硬い石の床に放り出された。
「巴!」
神狩が炎を残像のように残しながらセルザヴォークの方へ駆け寄る。アコニが同時にロリポップを振り上げて走り出した。セルザヴォークの左右から2人が迫る。
「良い良い…遊びがいのあるガキどもだ」
セルザヴォークは、神狩の攻撃を受ける方が不利と判断したらしい。神狩の刀の振りを素早く避け、アコニのロリポップは触手の一つを殴打した。触手はジュワッと音を立てて猛毒で溶け落ち、セルザヴォークは煩わしそうにそれを見た。巴が立ち上がり、妖刀を相手に突き刺すような構えをする。
「もう手加減はなし…!」
巴がヘルメットを外してその場に放り捨てた。ヘルメットが床に当たり、ガランっと硬い音が響く。その顔を見たセルザヴォークは、わずかに目を見開いた。
「その純紺の髪と怪しき刀ァ…神嵜家の末裔か…」
「え?まあ…」
巴は困惑した顔で呟く。セルザヴォークの顔がみるみるうちに怒りで紅潮していく。
「貴様の家系だけは絶対に許さん…!」
セルザヴォークが怒鳴り散らし、両手からおびただしい量の触手を伸ばした。更にそれらの触手に一斉にジャキンと鋭い棘が現れる。まるで薔薇のツタのようだ。
神狩が即座に後ろから燃え盛る刀で斬りかかる。セルザヴォークは刀が空を切るひゅんという音をすぐに感知して振り返り、触手の3本を神狩に向けて放つ。
「っ…!」
神狩はそれらを刀で弾き返していく。触手の一つ一つがまるで意志を持った蛇のようにのたうち、神狩の隙をついて攻撃を刺してくる。神狩はそれを受けるだけでやっとだった。自らの火炎ですでに両手に火傷を負い、握力も弱まっていく。
「消えろカスどもがァ!」
セルザヴォークが触手を全方位に大きく広げた。
「!」
巴は何かを感じ取って跳躍しようとするが、それよりも早くセルザヴォークが全ての触手を回転ノコギリのように高速で振り回した。
「がっ…!」
「ッ!」
「ぎゃ…」
先頭に出ていた3人はたちまち殴り飛ばされ、部屋の壁に叩きつけられた。巴は自らの右足が激しく出血しているのが見えた。
「やはり『反響』の力の前にはァ…“最強”の末裔も無力なようだな…」
セルザヴォークが切れた息を整えるように深く息を吐きながら言った。落ち着きを取り戻してはいるが、その目には変わらぬ憎しみが宿っている。“最強”の末裔…昔見た記憶が微かにある…。セルザヴォークの触手が自身の喉元に近づいてくるのを、巴はただ見ていることしかできなかった。
「待てぃ!」
鋭く、この場に合わないほど元気そうな声が響いた。巴が目だけを動かしてその方向を見ると、ノーカルが手に銀色の怪しい器具を持って立っていた。