見覚えのない青年は、巴の名を口走った。
「え…誰、ですか…?」
困惑する巴を前に焦る青年。
「あ、いやすみません!関わりはないですよね…韋駄丸から話を聞いていたので…」
予想外の名前が出たことに巴は目を見開く。
「韋駄丸くんの知り合い…?」
「ま、まあ、友達というか…奇数セリスっていいます」
奇数(キカズ)セリスと名乗った青年は軽く頭を下げた。
(…美甘は三人目の友達、ってマジだったんだね)
美甘はじとーっとセリスを見つめながら言った。巴は対照的に笑顔になった。
「韋駄丸くんの友達かぁ…急に名前言われた時はちょっと警戒しちゃった…」
「あ、はは…そうですよね、ごめんなさい…!」
セリスは軽く笑った。巴は共鳴するように笑ったが、すぐに真剣な表情になった。
「同意書、いただけるでしょうか?」
巴が言った。極力圧が少ないように言ったつもりだったが、アコニのことを考えるとどうしても気持ちが先走ってしまう。
「エー…巴さんって等級は何級でしたっけ」
セリスがあからさまに目線を逸らしながら言った。巴は首を傾げる。
「二級ですけど…」
「…デスヨネ」
美甘が2人の顔を交互に見ている。冷や汗だっらだらで引き攣った笑顔を浮かべるセリスと、何もわからず呆然としている巴。
「…準一級以上の隊員にしか倉庫使用の同意書は発行できないんです…」
セリスが申し上げにくそうに言った。巴の手がぎゅっとキツく握られたのを、後ろの地面に埋まっている美甘は見た。
「…巴ちゃんって準一級相当の強さしてない?だめなん?」
美甘が鋭い目つきでセリスを見つめながら言った。セリスは美甘の存在に今気づいたらしく、飛び上がった。
「タブンダメナンジャナイデスカ!?」
美甘が「こいつ何やってんだ」とでも言うような目でセリスを睨む。一見こんな性格のやつが韋駄丸の友達とはとても思えなかった。
「会長にお願いしたら同意書なしでも入れちゃったりしそうなもんですけどね…」
セリスが言っちゃダメであろうことを小声で言った。セリスは正気に戻ったかのように手をバタバタ振った。
「いやコレ絶対BLUELINEの僕が言ったらダメなセリフですね!すみません!」
セリスは勢いよく部屋の中へ引っ込んで、風圧でバタンと扉が閉まった。巴は無言で何か考えているらしい。美甘はその様子を床から眺める。
「…やっぱりそれしかない。会長に交渉しに行こ」
巴が目線を落として美甘を見つめながら言った。その目に浮かぶのは決意の色。巴はすぐにきびすを返してさらに上の階の会長室へ向かって歩き始めた。