依然ヴェールの軍勢に囲まれたままの巴たち。巴が静かに刀を握ったまま韋駄丸の方に向き直った。その手には、ヴェールの拠点で拾った円が描かれた地図のような紙が握られている。
「コレを会長に提出しましょう…何かの暗号かも」
「…ですね」
その瞬間2人の男が巴に斬りかかったが、2人とも足を蹴飛ばされて地面に倒れ込んだ。続けて4人がほぼ同時にナタを振り上げて韋駄丸に向かって走り始める。
「ッやば」
韋駄丸が静かに焦りを見せる。巴が心配ご無用、とばかりに敵の2人を吹き飛ばす。残り2人のうち1人が韋駄丸の右腕を掴む。刀を振らせないつもりだろうか。韋駄丸は右手を無理に動かそうとありったけの力を込めている。
「下からくるよ!」
もう1人と交戦中の巴が言った瞬間、敵が韋駄丸の腹に膝蹴りを叩き込んだ。
「っが…」
巴が戦闘中の相手を刀の持ち手で殴り韋駄丸の方へ向かう。最後の1人となった韋駄丸の対戦相手は、ナタを大きく振り上げて膝をつく韋駄丸に振り下ろそうとしている。巴の距離ではもはや間に合わないかもしれない。
韋駄丸がギロリと相手を睨んだ。その瞬間、韋駄丸は前転するように前に回転し、相手の顔に踵落としを喰らわせた。
「っ…!」
声にならないと息を漏らす相手。巴は助太刀に入ろうと思ったが、もはや不要とわかった。韋駄丸は黒い刀で相手を追い込んでいく。最終的には、攻撃を受けようとした相手のナタが真っ二つに折れてしまった
地面に倒れ込んだ男に巴が静かに近づき、例の地図を見せる。
「コレが意味することはなんなの?」
巴が刀を収めて問う。フードで顔が隠れた男は微動だにしない。時が止まっているかのように少しの動きも見せようとしない。
「知っているでしょう」
巴が再び問う。明らかに声にイライラが滲み出ている。男は黙ってゆっくりと首を振るばかりで、依然として声を発さない。韋駄丸が剣を向けて威圧するように見下ろしている。
「…ダメそうだな」
沈黙に耐えられなくなった韋駄丸が呟いた。巴も頷く。男は俯いている。自らの最後を待っているらしい。それに気づいた韋駄丸が静かに言った。
「殺さない。BLUELINEには引き渡すけど」
CEの画面を操作する韋駄丸。男はほんの少しだけ顔を上げて2人を見つめているらしい。韋駄丸は治安維持組織であるBLUELINEにこの軍勢を引き渡す判断をしたらしい。韋駄丸はそばの家の塀に座った。
「…良かった、簡単に命を奪う判断をする人じゃなくて」
韋駄丸の隣にぺたんと座った巴が小声で言った。韋駄丸は何も言わずに目線を落とした。人と目を合わせるのは苦手だ。
「…宇宙平和協会はそういう組織なんだから当然では?」
「そこは自己判断。私も極力命は奪いたくないと思ってるから、同じで良かったなーって」
微笑みかける巴。韋駄丸は目線を合わせられず、彼女の刀のあたりを見ていた。巴は元の無表情に戻って姿勢良く座り直した。
「BLUELINEが到着するまで、待ちましょうか」
巴が言った。いつのまにか日が落ちて、あたりは薄暗くなっていた。