倉庫の中は真っ暗だった。電気すらなく、棚に収まっているものがなんなのかすらよくわからない。足元もおろそかで、宇宙平和協会本部にも関わらず死霊でもいそうな雰囲気だ。
「封眼をどうやって見つければ…」
巴が呟くと、美甘は無言で首を振った。地面が埃まみれだからか、普通に地上を歩いている。
「…なんで電気がないん」
「どっかにスイッチがあるかもしれませんね…」
ミアーシャが返答した。彼女のあげられた手の周囲には、青白く光る水のようなものが漂っている。
「…導力感知とかは?」
美甘が囁くが、今度は巴が首を振った。この空間にはジトっとした導力があまりに多すぎる。テネブルタウンアウトの時の視獲盲獲ほどではないものの、気色の悪い古の導力がこびりつくようにまだらに溢れかえっている。
「それに封眼は、導力がすごく少ない…感知されにくいだけかも知れないけど」
巴が口を開いた。200年前、巴はおろか『闇薔薇の従者』ですら実物を視認するまで認識することができなかった代物だ。
「はぁ…どんなカタチ?」
「んー…銀色の金属製のルービックキューブみたいな立方体、かな…」
巴が美甘の問いかけに答えた。ミアーシャは無言で体勢を低くして辺りの棚を順に見ている。紺色の翼だけが棚の隙間からちらちらと見える。
「地道に探すしかないんですかね…」
「うーん…導力が認識できないとなるとそれしか…」
ミアーシャの呟きに反応する巴。美甘がそれを聞いて、一際深いため息をついた。
「あった…!」
数十分後、巴の目に銀色の器具が写った。八つの立方体を組み合わせて大きな立方体を形造ったような形状、左右に傾けると、反射するような光すらないこの部屋でも、虹色のフィルターがかかったようにテロテロと煌めく。サイズは10cmほどだろう。
美甘とミアーシャがすぐに棚を避けるように歩いて寄ってきた。巴は手にしたそれを2人に見せるように大きく前に突き出した。
「…封印期限はもう切れてるってこと?」
「うん。あとは簡単に外から開くはず…」
気だるげな美甘の声に食い気味で答える巴。美甘はむすっとした顔で巴の手に収まった不気味な器具を見つめた。
「…それの中身、本当に件の友人で間違い無いですよね?」
「そのはず…」
ミアーシャが真剣な表情で巴の両手を掴んだ。封眼がカシャンと重さに合わない音で棚に落ちる。
「あの…」
「もし中身が何かしらの厄災だったら取り返しのつかないことになります!」
ミアーシャが真剣な表情で言った。巴はその気迫に息を呑む。ミアーシャは我に返ったように手を離した。
「…あなたも知っていますよね。400年前の『最強』神嵜妖が、厄災を封眼に捕らえたことを…もしこの封眼がそれだったりしたら?」
「そんなこと……あるわけが…」
巴はすぐに立ち上がったが、ミアーシャの心配するような目つきの前にだんだん声が小さくなっていく。
「有り得なくは無い話です。神嵜妖は死霊狩りでしたから…」
ミアーシャが目を逸らしながら言った。美甘が上半身を少し傾けるようにしている。
「…そうだった時のためにあんたがいるんじゃないの」
美甘が鋭くミアーシャに言う。ミアーシャは両手に半透明な水のようなキラキラ輝く導力を纏わせた。
「…その通りです…ケド。あんま相手がやばかったらきついので任せっきりは勘弁してくださいよ…?」
ミアーシャはそう言うと、封眼を巴の手に乗せた。