「神嵜巴、到着しました」
巴が会長室の扉をノックしながら言った。すぐにガチャリと扉が開く。見慣れた赤髪の長身の女性が姿を現した。
「ミアーシャから話は聞いた。友人と再会できたようだな」
カーフが笑った。目つきは変わらず鋭いが、巴が取り戻したものを心から喜んでいるように見える。
「はい…!本当にありがとうございました…」
「だが、この件はまだ終わっていないからな…条件があっただろう」
カーフの言葉で巴は思い出した。BLUELINE協会部との共同戦線に参加するという条件があったのだ。今の今まで忘れていた、というより考える余裕がなかった。
「すでに協会部がオフィスで待っている。行ってみるといい」
カーフの言葉に素早く一礼して、階段を駆け上り始める巴。復活した友人のことを思うと、力が湧いてくるようだった。思わず口角が上がる。自分の近くにいなくても、見えない場所でも、大切な人は生きているのだと実感した。
「あ、巴さん!」
オフィスの扉の前に立っていたのはセリスだった。左右非対称なブロンド髪と、スーツ。当然かもしれないが、数時間前に会った時と全く同じ容姿だ。
「…ホントに会長に相談に行ったんですね」
セリスが曖昧な笑顔で言った。やはり韋駄丸と相性がいいようにはとても見えない。
「無事に目的達成できました…!」
巴が言うと、セリスは2本の細長い尻尾のようなベルトをわずかに動かした。“目的達成”という単語が悪役のセリフすぎたからかもしれない。
「それでその条件として、協会部の皆さんが追っている事件…?に同行することになったんです」
巴が続けると、セリスは微笑んだ。
「そういうことでしたか!心強いです!」
セリスの腰の後ろ辺りから垂れたベルトがクネクネと動いた。これは本当にベルト…?いや、尻尾…?巴には全く判断がつかなかった。
「ではオフィスの中へどうぞ」
セリスの朗らかな声ではっと我に帰る巴。セリスが半身をすでにオフィスに入れながら笑顔で手招きした。巴はセリスの後に続いてオフィスへ足を踏み入れた。そこは、想像以上に安心感のある部屋だった。
白い壁と木製の床。個人のデスクはあるものの、ステンドグラスのような仕切りで囲われていた。ライトは天井から吊るされたもので、柔らかい光を放っている。
「こういう感じなんですね…想像と違ったかも」
巴が呟くと、セリスは微笑む。
「はは…僕も最初来た時そう思いました…他の隊員の方も堅苦しい感じはなくて、すごく仕事しやすいんですよ〜」
セリスが言った。その「他の隊員」はオフィスから繋がる隣の部屋にいるらしく、かすかにその声が聞こえてきた。
「じゃ、皆さんに会いに行きますか」
セリスが微笑み、ゆっくりとドアを開いた。