「巴チャン!遅かったネ!」
ピンクと緑の髪のやつがソファの上から声をかけた。
巴はそっとドアを閉めた。
「巴チャン!!!」
数秒後にドアが勢いよく開き、アコニが飛び出した。巴は蒼白な顔で絶句する。
「…なんでいるの…」
巴の質問に少しも悪びれずにクルクル回るアコニ。
「エ〜、病室つまんないんだもん。来ちゃっタ⭐︎」
アコニが言い終わる前に、巴がアコニの肩を抑えた。
「怪我が治るまで安静にしててって言ったでしょ!!」
「ダイジョーブダイジョーブ!治療のおかげで痛くないシ〜」
「痛くなくてもダメだってば!早く病室に戻って…」
巴がアコニの手を掴みながら言った。アコニはぽかーんと見ている。
「…もう飛んでるヨ」
アコニが巴の背後の乗降口のドアを指差し、巴の視線もそちらに引き寄せられる…そこから見えるのは、遥か下に広がる街だけだった。
「あぁ〜……拙悟さんになんて言えば…」
「何をだ?」
巴が振り返ると、拙悟急が腕を組んで仁王立ちしていた。
「だからこの子は私の友達…つまり増援の1人で、ひと足先に来てたんです…!」
操縦室の奥の談話スペースで、巴と拙悟は机を挟んで座っていた。窓の外には雲しか見えない。
「なるほど…しかしどうやって入ったのだ…?」
拙悟が眼鏡を拭きながら言った。アコニは談話スペースの壁沿いにぐるっと部屋を囲むように設置されたソファにぬいぐるみのように座っている。巴は黙って首を振った。
「はぁ…とにかく。作戦だって行動すること、それと恥ずべき行動はしないこと。今回の作戦は特に危険なもので、西方の荒地で破壊の限りを尽くす巨大死霊の討伐だ、いいな」
拙悟がアコニに向かって歩き寄って言うが、アコニはペロペロキャンディを舐めることに夢中で一切聞いていなそうだ。
巴は改めて談話室を見渡した。飛空艇の一室とは思えないほど広々としていて、すべての壁に窓があり、その下にはソファがある。部屋の端には今巴が座っているボックス席のような部分があり、正面を見れば運転席の様子がよく見える。
そして、ミストを含むBLUELINE隊員6名が各々過ごしていた。
巴がいるものとは反対端のボックス席には、車掌のような服装の少女が座って両足をバタバタしている。猫か犬のような何かの耳が生えた黒髪の青年は、クリップボードをじっと見つめていた。白黒髪の女性は飛空艇の操縦席に座り、助手席にはミストがちょこんと収まっていた。
「そういえば、隊員の紹介とかまだでしたね」
セリスが巴の横に腰掛けながら朗らかに言った。
「なかなかタイミングがなかったですからね…」
巴が微笑みかけると、セリスは操縦席の白と黒の髪の女性を指差した。
「あれは“3号機”先輩。人間に見えるけど実は自律型傀儡。銃を使って戦闘もできるし、情報戦も得意なんですよ」
セリスが言った。
「傀儡って…人造の存在ってことですか?」
「そうみたいです…喜帝軍の晴姫さんとかみたいな感じですかね」
セリスはそう言いながら、指をすっと動かして耳の黒髪の青年に向けた。
「あれは威牙(ウェイヤー)くん。導力の盾を展開する能力を使う協会部の絶対防壁」
さらにセリスは車掌のような服の少女を指差す。
「あれはシリンダちゃん。BLUELINE関係者で最年少だけど、導力加速の能力で敵を素早く殲滅するよ」
シリンダはそれに気づくと軽く手を振った。セリスがにこやかに両手を振り返した。
最後にセリスは、拙悟がこちらを見ていないことを確認してから指差した。
「そしてあの人が拙悟さん。時間厳守が信条で、知っての通り厳格だけどなんだかんだ面倒見がいい人」
「そして僕は奇数セリス。今年入ったばっかりの新人だよ」
拙悟が振り向いた瞬間慌てて手を下ろしながらセリスが言った。巴は美甘とアコニを交互に見る。巴は軽く息を吐いた。
「このメンツで本当に20メートルの死霊なんて勝てるのかな…」
巴が小声で呟くと、セリスはニコッと笑った。
「絶対勝てるよ」