夜明け -片割れ三ツ巴-   作:NIGHTMARE⭐︎

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80 銀の戦艦

「もう間も無く目的地に着く。言い換えれば、いつ襲撃を受けてもおかしくない状況に入るということだ。絶対に気を抜くな」

拙悟が言った。巴が窓から外を見ると、すでに日は沈んでいたためよく見えないが、いつのまにかビルも家も何一つない広い風景の輪郭が見えた。素早く過ぎ去っていく岩石を見ると、改めてこの飛空艇の速度を実感する。

「エ〜、もう行っちゃうノ〜…」

アコニが足をジタバタさせると、巴がすっとリモコンを渡した。美甘がするっと床を泳いで近寄ってきた。いつもの薙刀を担いで、すっかり戦闘準備は万端のようだ。他の隊員たちも、すでに出撃が可能らしい。

 

「よし。着陸体制に入る。総員、戦闘準…」

その瞬間、ガツンと大きな衝撃が走った。何かにぶつかったように船体が激しく揺れ、傾いた。ライトが激しく点滅する。

「ッ…!何が…!」

衝撃で倒れ込んだセリスが叫んだ。助手席のミストが跳ね飛ばされたように立ち上がって、展望デッキへのハシゴを駆け上った。

拙悟が壁に捕まるように立ち上がり、厳しい表情で運転席の方へ歩いて行った。

「衝突したっぽい」

展望デッキでミストがつぶやいた。少し離れたところに、不吉な巨体が飛行していた。

「拙悟くん、ライトつけて」

談話スペースと操縦席にミストの声が響いた。拙悟が真剣な表情を貼り付けたまま、運転席の操作盤のボタンを押した。その瞬間、パッと飛空艇のヘッドライトが起動し、遠くの「ソレ」を照らし出した。

例の存在は前方200メートルほどの場所に浮いていた。全身が銀色の装甲に覆われた戦艦のように見える。クロムのような体表がヘッドライトの光をギラギラと反射し、左右に2対ある鋼の翼がゆっくりと羽ばたいた。

 

「…アレがそうか」

拙悟が窓ガラス越しに死霊を睨みつけながらつぶやいた。3号機の操作によって船体はすでに水平に戻り、電灯もすぐに復旧していた。

「あそこまでの巨体とどうやって戦うべきでしょうか…我々が個別で攻撃しても通じるように思えません」

威牙が呟いた。それに対し、甲板からゆっくりとハシゴを降りてきたミストが頷いた。

「それにそもそも浮いてる敵に安定して攻撃するのは難しいと思う」

ミストが落ち着いた(というよりもボーッとした)声で言った。巴はアコニを庇うように抱き止めていた手を少し緩め、妖刀に手をかけた。

「ボクの能力は地上限定だよ…」

シリンダがプシュンと煙を吐き出したような音を立てながらつぶやいた。拙悟がフロントガラスを見つめたまま歯を食いしばった。ドレッドノートは依然空中を彷徨うように飛行していて、今の所攻撃の意思は見えない。

「となると…」

「うん。飛空艇にのったまま迎え撃つしかない」

ミストが静かな声で言う。その表情はずっと変わらず無表情で、雰囲気は柔らかいままだ。

「でも頭上で対戦されたら、近くの村の人たちが困るだろうから、まずは避難指示を出しに行く。その間にターゲットが飛来したら…まあ数発撃ち込んで退いてもらう」

ミストが淡々と説明する。

「えっ…ってことは、ドレッドノートが空中を徘徊してる中で飛空艇を降りて、近隣住民を丁寧に逃すってことですか…?」

セリスの言葉にミストが頷いた。

「うん。住人が逃げ終わったら、この飛空艇で周りの心配をせずボコボコにできる」

ミストが言った。美甘がため息をつく。

「…村の建物やらを巻き添えに潰すのは気にしないん…?」

「…それはドレッドノートに聞いて」

美甘の問いかけにミストが回答した。拙悟がこちら側に向き直り、助手席に座るミストの邪魔にならない位置に立った。

「というわけだ。直径2キロ圏内の村は何ヶ所だ」

拙悟が3号機に尋ねる。3号機は小さなキュイーンという音をかすかに立てた。

「該当一件。ルイトカ村があります」

3号機が抑揚のない声で答えると、ミストが頷く。

「まずはそこに行く。関係のない負傷者は絶対に出させない」

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