飛空艇が周囲の砂を巻き上げながら、白い光と共に村の外れにゆっくりと着陸した。ドレッドノートとの戦闘は、やむなく空中戦しかないと判断され、住民が巻き添えにならないよう避難させるために来たのだ。
入り口が横にスライドするように開いた瞬間、隊員たちは素早く駆け降りた。
「BLUELINEだ!すぐにこの場から避難するんだ!」
拙悟が声を張り上げながら歩き始めた。巴と美甘はセリスの後に続いて村へ降り立つ。地面は砂と、それが固まった石で出来ているようだ。焼いた石を積んで作られたような小さな家が立ち並ぶかなり小規模な村で、一軒だけ高く聳えた見張り塔のような家があった。あちこちの街頭にはロウソクや松明が使われていて、巴は200年前の街並みを思い出した。
「ワ〜、すごい雰囲気〜」
いつのまにか巴の後ろに立っていたアコニが言った。
「アコニちゃん!映画見ててって言ったでしょ…」
「あんなバケモンが衝突してきたんだヨ!?映画なんかに集中できると思ウ!?」
巴の心配に対してド正論をぶつけるアコニ。巴はわずかにたじろぐ。
「いやでも怪我してるし…」
美甘がほぼ全身を地面に埋めた状態でアコニに呟く。彼女なりの心配だろう。
「別に歩くくらい平気だってバ!」
アコニが巴にすり寄りながら言った。
「ネ?それくらいいいでショ?」
アコニが、自分の背後に仁王立ちする拙悟に気付かないまま言った。
毒娘はポイッと談話スペースに戻された。
「はぁ…全く目が離せん」
拙悟が足早に村の奥へ歩いていくのを巴は見つめた。
「私たちも避難誘導をしないと…」
「でもさぁ…思ったんだけど、避難ってどこにすんだろ」
美甘がつぶやいた。その瞬間、あたりに激しい砂埃が舞って、何かが高速で突っ込んできた。美甘は素早く横に飛び退いて避けるが、そこにいたのはシリンダだった。能力を使って高速で走り回って住民に素早く避難を促していたらしい。靴の後ろや背中の一部が熱を帯びてオレンジ色に光っていた。
「避難する場所はあっち、南広場ってとこかな?BLUELINEの輸送車が5分くらいで到着するはずだから!」
シリンダがニコッと笑った。
「輸送車…住民はそれに乗って避難してもらうってことかぁ…」
巴がつぶやいた。シリンダは頷いて、ジュドドドっという音と共に地面を滑るように高速で走って行った。大量の砂埃を巻き上げながらである。
「けほっ…ヤダまじで…」
地面にほぼ全身を沈めていた美甘は顔に思いっきり砂を浴びて、不愉快そうにつぶやいた。
「住民の皆さんは南広場へ集まってください!すぐに輸送車が迎えにきて安全に送り届けます!避難して!」
セリスは駆け回りながら叫んでいた。ベルトと髪が夜風に靡く。白いローブのような服を着た住民たちは、すでにあらかた避難が完了してるようだった。街を見て回ってもほとんど見かける人間はBLUELINEの同僚だけだ。
「組織長!ほぼ全住民の避難が完了しました」
セリスが通信機に言う。
「“ほぼ”ならまだ。必ず全員避難してもらわないといけない」
通信機からミストが即答した。セリスは一瞬止めた足をすぐに動かして走り始めた。
「残りの住民は2人、監視塔に居座り頑なに動こうとしません」
続けて通信機から3号機の声が聞こえた。