「組織長!!セキュリティが全て解除され、数人の侵入者が襲撃してきた模様で…」
兵士の1人が本部内の最下層の地下二階にある部屋へ駆け込んだ。
「愉しめそう?」
組織長の声がした。奥向きの椅子に腰掛けているため後ろ姿しか見えないが、銀色の髪が青い照明を反射して煌めいた。兵士は手にした大画面型CEを差し出しながらゆっくりと組織長に歩み寄る。
「侵入者は現在4階をまとまって移動中。こちらの端末で様子を…ア“ッ!!」
組織長が端末を掴んだまま兵士を突き飛ばした。
「へぇ…中々動きにキレが或る…僕の玩具に適任かも」
組織長がじっと青い目で端末に表示された韋駄丸たちの様子を見ながらつぶやいた。
彼女こそが、五大裏組織中枢が1人、D.I.G組織長“シンドロン”である。
ジャキッ!
韋駄丸がまた1人の兵士を斬り倒した。シンドロンに監視されているとも知らず、韋駄丸、美甘、瓦紅京幹部たちは要塞の4階に攻め込んでいた。白や銀色で統一された不気味なほど無機質な壁面や床が生活感のない不自然さを醸し出している。兵士たちも只者ではなかった。
韋駄丸の攻撃を受けた兵士は、すぐに起き上がり、手にした改造銃を構える。
(一般兵でここまでの強さとは…)
韋駄丸がくるりと回転して銃弾を回避しながら考えた。瞬間、黒い触手が相手の首に絡みつき、その体が浮くほど強く締め上げた。
「がぁ…!」
兵士は気を失って床に崩れ落ちた。レヴルがなんでもないとでもいう風に触手を解き、先へ歩くリコルの後に続いた。美甘が韋駄丸を見上げ、それからまたレヴルの後ろ姿を見つめた。
「…なんなんあの人たちほんとに」
美甘が呟き、韋駄丸も小さく頷いて同意した。瓦紅京幹部たちは一般能力者とはとても言えないレベル、下手をすれば宇宙平和協会の準一級隊員レベルの戦闘力に見えた。
「組織長の部屋はおそらく下の方にあります…」
リコルが言った。韋駄丸はその顔をチラリと横目で見るが、彼女は変わらず余裕そうな表情を浮かべている。
「…なんで下?」
「この要塞に下から入るなんて不可能です。どうやったって私たちのように上から入るしかありません」
リコルが少し早口で答えた。美甘が薙刀を重そうに担いで頷くが、霧牟がため息をついた。
「ここ4階っしょ?最低でも下に3階はあるって…制圧だるくない?一気に下行っちゃダメ?」
霧牟が淡々と言った。アリシアがぎゅっと心配そうに箒を握った。
「…一気にってどうやって」
韋駄丸が聞くや否や、霧牟の右手に導力が収束された。狐面の下の表情はわからないが、その拳が白く光る。
バチュン!!
空気が裂けるような激しい音が響き、霧牟の腕の振りと共に足元の金属がぱきりと割れた。ダイレクトに通じた下の階から、兵士たちのざわめきが聞こえる。霧牟はそこになんの躊躇いもなく飛び込んだ。
「ちょ…」
韋駄丸が止めようとした時には、すでに先ほどの衝撃音が乱射される音が響き渡った。
「っぐ!!」
兵士の悶絶する声が何度も聞こえ、様子は見えないがまさに阿鼻叫喚となっている。リコルが韋駄丸の横を通り過ぎ、珍しく完全な無表情で霧牟が開けた穴からlひゅんっと飛び降りた。続けてレヴルも、触手をひらひらと舞わせて飛び込む。
「…行ったほうがいいん?」
「…多分」
美甘と韋駄丸が呆気に取られたまま耳打ちした。