D.I.G本部へ潜入した韋駄丸たち。霧牟の爆熱砲でスピーディに地下一階まで降りることに成功していた。
その階に入った瞬間、先ほどまでとの大きな雰囲気の違いに驚かされた。壁は一変して黒一色になり、青い照明がテカテカと目立つ。韋駄丸は美甘や瓦紅京たちを順に見る。
「ボスに近づいている雰囲気がある」
韋駄丸がつぶやくと、リコルも頷いた。
「ええ。おそらくはこの辺りでしょう…」
その時、暗い廊下の奥からカツンカツンと、革靴で歩く音が聞こえ始めた。韋駄丸をはじめとする全員が静寂に包まれた。
「御見事〜。悦く此処迄やって来たね!」
軽快な声と共に、水色の外套と帽子を纏った銀髪の女性が姿を現した。首元には青い宝石があり、ひらひらとベルトが揺れている。黒、水色、銀のカラーリングがかなり目立った。導力は特筆するほど感じない。
「お前は…」
「僕はシンドロン。此の組織の柱樞だよ」
マジシャンのような出立ちの目の前の女性が言った。韋駄丸は目を見開く。こうもあっさり組織のリーダーが姿を現すとは。韋駄丸はちらりとリコルの方を見ると、リコルはくいっと指を動かした。
その瞬間、韋駄丸は素早く相手へ向かって飛び出した。
「おゝ…些か直線的だね」
シンドロンは素早く後ろへ跳んで韋駄丸の蹴りを避ける。相手は武装など何もしていない生身の人間だ。あまり剣を使うわけにはいかない。
シンドロンはその場にすたっと着地し、服の内側から数本のナイフを取り出した。レヴルが素早く触手を叩きつけるが、シンドロンの姿はとてつもない速さで宙へ飛び上がって回避していた。
「チッ…速いですわね」
レヴルが鋭い目つきで相手を睨みながら言った。美甘が薙刀を構えて素早く走り、シンドロンへそれを振った。容赦などしていてはこちらが負けると判断したのだろう。赤い斬撃がその刃から繰り出され、シンドロンに直撃した。
「っ…!」
「やるねぇ」
シンドロンはニヤリと怪しく笑って斬撃を素手で弾き飛ばしていた。導力を使った気配すらない。
「は…どういう原理…?」
美甘が珍しく唖然として言った。
「僕に攻撃出來ると思った?殘念」
シンドロンがナイフをくるくると回しながら笑った。韋駄丸が思わず強く目を閉じ、もう一度開いた。
「なんかを無効化する能力…だろうね。だっる」
霧牟はそう言うと、素早く相手へ殴りかかる。遠距離斬撃でダメなら近接打撃で捕らえるつもりだ。しかしシンドロンは、パシパシと素早く霧牟の連続攻撃を次々に受け流していく。相手からやり返す気配すら見えない。
「…どうなって…」
韋駄丸がはぁっと大きく息を吐いてシンドロンを見つめた。蒼き奇術師は、ニヤリと笑ってナイフを回した。