デジタルワールドの管理者『ゲッターロボ』 作:マネモブ
ある日、お父さんのパソコンの中でピョコピョコと動く生き物を見つけた。
「かわいい!」
[わああっ!?]
「喋れるの?!すごい!すごいっ!!」
幼かった頃の私は、パソコンの中に生き物がいるなんて事をおかしいとも考えずにお喋りを始めた。
──どこから来たの?名前は?何が好きなの?──色々と質問してしまったなぁ。
──ええと、デジタルワールド:一号って所!ボクはアグモン!ハンバーグの画像データとか恐竜のデータが好き!
かくして自己紹介を終えた私とアグモンは友達となったのだ。
その後帰ってきたお父さんが言うにはアグモンは『デジモン』って存在でインターネットの中に住むいそーでんし……なんちゃらかんちゃらと言うらしい。
幼い私には理解が出来なかったが、アグモンが特別だと言う事は理解できた。
特別な友達という愉悦感から私はアグモンと遊ぶ事だけに熱中し始めた。
これまでの友人と放課後遊ぶことが少なくなっていった。
アグモンと格闘ゲームをして遊んだ時はアグモンの連戦連勝だった。
悔しかったから駄々を捏ねてやって貰ったタイピング勝負は私の勝ち。…もしかしたら負けてくれたのかも知れないけどね。今じゃわからないや。
パーティーゲームもRPGゲームもオセロも何から何まで──家で出来るモノは全てやった。
あの頃は、とにかく楽しくって一日中遊んでしまっていた。
そしてめっきり人と遊ぶのは無くなっていって、学校で私は仲間はずれにされ始めた。
それで良いと思っていた。だけど……これがお父さんの耳に入ってしまった。
お父さんはアグモンが入ったパソコンを仕事場に持っていってしまったんだ。
勿論泣いたし、駄々も捏ねた。だけどアグモンは帰って来なかったし、私は次第に元鞘に収まった。
けれど何とかアグモンとのメールだけはさせて貰って夜更かし気味だったなぁ。
あの頃は何から何までデジタルワールドブームだったから次第にデジモンという存在は人間と近くなっていた。
今、思えば近すぎたんだと思う。デジモンを隣人とは思わず、ペットや道具。挙げ句の果てには兵器とか。
私は虐待なんかのニュースが流れて胸が痛んだ。
アグモンは大丈夫かな?怖い仕事をさせられていないかな?
お父さんは大丈夫だって言うけど人間とデジモンでは住む次元が違うんだよ。
そして終わりが訪れた。
イーターって怪物が現れたのだ。悪い事件しか起こさなかったエーテルというエネルギーに引き寄せられたらしい。
世界中の都市が襲われて多くの人が死んだ。
オウムガイのような見た目でモノクロの見た目にオレンジの発光する部位。とても気色が悪かった。
それから日本中の人々が東京へと避難し始めた。北海道と沖縄から進行してきたイーターの群れは瞬く間に日本中を食い荒らしていった。みんな怖がっている。
泣いても解決しないと分かっていても大人たちは青ざめた顔で口を抑えて震えて、子供は顔を真っ赤にして泣き叫ぶ。
イーターは人を積極的に食べて、人型になる。
人型になればまるで人間のように振る舞って、人を殺す。
道具を使って殺してくる。
私も幼い頃にイーターに襲われた。
それは東京へ向かう途中の……高速道路での出来事だった。
渋滞で1mmも前に出れない中、イーターが現れた。トラックを吹き飛ばして触手を振り回して人を投げ飛ばす。
私は叫んだ。誰か助けてください。
誰も助けに来ない
でも叫んだ。お父さんが大変なんです。死にたくないんです
誰も助けに来ない。
叫んだ。「来てよ、アグモン!!!!!」
「わかった!」
私が呼んだのは特別な友達───一生忘れられない大切な友達……『アグモン』。
「やだぁ…やだあっ!!!」
お父さんが血を流して倒れている。生きている。
お母さんはもう死んでいる。頭を打って意識が朦朧としていた私とお父さんを助けようとして見つかって食われてしまった。
私はお母さんの血を浴びて意識をはっきりとさせた。
頬を大粒の涙で濡らして手足を震えさせながらお父さんを運転席から引っ張り出して必死に背負おうとする。
お父さんはとっても重くて私には運べなくて、イーターに見つかってしまった。
イーターはゆっくりと怖がらせるように私に向かってくる。
後ろから耳を劈く嫌な音を聞いて身体が恐怖で震えた。
もう、ダメだ。
そう思った時、空が光った。
この私は知らなかったけど地球全土がオーロラに包まれたらしい。
このオーロラが齎した現象が私たちの家族を救ったのだ。
「アグモン、ワァァープ進化ァァァァァァァァァ!!!!」
見覚えがある黄色い恐竜が颯爽と現れて光り輝いた。
それはメキメキと音を立てて竜人型となって、私の目の前に降り立った。
「助けに来たぞ⬛︎⬛︎ッ!」
黒い炎が身体を包み込み、黒曜の鎧を纏う。まるでお侍さんのようなその鎧をガチャリと鳴らしながら踏み込んで0と1で構成されたデータから独特な形の東洋剣である菊燐を作り出した。
私を襲っていたリーパーをその刀で一刀両断にし、吹き飛ばす。
「ガイオウモン!!!見参ッッ!!!!」
空間が揺らぐ程の大声はリーパーたちの注目を集めた。
「このガイオウモン、死にたい奴から相手してやるぞぉぉォォォ!」
怪しく光る東洋剣を振り回してリーパーの怒涛の攻撃を捌き切って逆に反撃を喰らわせる。
口でリーパーの触手に噛みついて振り回して無人の車に叩きつけた後に一刀両断。
人型のリーパーには飛び蹴りを食わらせた後に微塵切り攻撃。
いつの間にか、リーパーは全滅していた。
「うぅ……うわあぁぁぁぁあぁん!」
私はいっぱい泣きながらガイオウモンに抱きついた。
安心感だったのだろうか。怖かった、辛かったと泣き叫んでガイオウモンをオロオロさせていた。
そして私が落ち着いた時にガイオウモンが私の肩に手を置いてこう言った。
「良いか?よく聞くんだぞ?
⬛︎⬛︎は、このまま東京へ向かうんだ。
大丈夫、東京はボク“達”が守る。⬛︎⬛︎は安心してそこで眠って待つんだ」
「ア……アグモン…?」
「アグモン……アグモンなのか!?」
「……はい、ボクは貴方が育ててくれたアグモンです」
ガイオウモンは丁度起きた私のお父さんを起き上がらせて私を抱っこさせる。
そして私の頭を二度撫でて、東京とは反対方向へと歩いていく。
「ね…ねぇ!アグモン!一緒に東京へ行こうよ!」
私は泣いた事で真っ赤になった目で今にも消えそうなガイオウモンの背中を見つめている。
走って引き止めたかった。ようやく会えた。ようやく一緒にまた遊べる。
でもお父さんは、私を引き止めた。
「………ボク達は友達、そうだろ?」
「……?」
私はアグモンの質問に困惑した。
友達なら止まってよ。
行かないでよ。
一緒にいてよ。
お父さんは私を離さなかった。
「…… ⬛︎⬛︎、君はこの世界の為にボクの戦う理由だ」
「⬛︎⬛︎と遊ぶ日々はとても楽しかった。そして引き離された時は悲しかった」
「ボクは⬛︎⬛︎が好きだ。だから⬛︎⬛︎がいるこの世界を守るために戦う。例え君に忘れられるとしても」
「………相棒」
相棒……お父さんのことだ。
アグモンはお父さんのことを相棒と呼ぶ。
なんかかっこいいねと言ったらお父さんもアグモンも照れていた。
「⬛︎⬛︎の事、よろしくね」
「…言われなくても。お前こそ気張れよ」
「ああ、バイバイ」
行ってしまう。
「あああぁあああああああああっ!離して!!!離してぇ!!!!アグモン!!!アグモォォォン!!!!」
お父さんは離さなかった。
ガイオウモンは、名残惜しそうに振り返ってから東京とは逆の方向へと走った。
お父さんは……東京へと走った。
デジモンとの出会いは早過ぎたのかもしれない。
だって、そうでしょ?
私たちはあの日からこの?年もの間、デジタルワールドという場所の存在もデジモンの事も忘れていたのだから。