<3年前:5/17>
「ぐッ……」
「ナイフで刺されたら、痛いよね。レンもそうだったから!」
こいつは!!!
「あっ、ああああああああああああああ!!!」
「危ないな。近くの椅子を投げてくるとか……当たったらどうするのさ」
そういって距離をとる彼女に、机や椅子を思いっきり投げつけ蹴り飛ばし続ける。
徐々に、よけるのに飽きたか彼女は、
「付き合ってられないな。早く死になよ。血、止まっていないんだろ!」
私が蹴った椅子を受け止め、思いっきりこちらに蹴り返した。
「ぐふっ!!!」
思いっきりそれが体にあたり、のけぞってしまった。
それを見た彼女は私に近づき、追い打ちをかけようと椅子を叩きつけてきた。
「早く落ちろって!」
なんどもなんども、叩きつけられる。
それでも、気合で私は立ち上がり、応戦することにする。
「ああ、お前えええええええええええええ!!!」
「ああ!!! もう、うざいなあ!!! 何で出血多量で動けるんだよ!」
「お前だけは!」
無理やり引きはがして、壁に叩きつける。
「お前だけはあああああああああああああ!!!!」
思いを込め、蹴った机が彼女に当たり、
「っ!」
ばたりと思いっきり地面に倒れこんだ。
急いで、落ちたナイフを拾う私。
「はあ……はあ……。これで、これで!」
「そんなことしたら、テルナちゃん死んじゃうけどいいの?」
「……は?」
「それだけじゃない。ショーヤの家族も君の家族も。知り合いに彼の大事な人皆殺しにするように、頼んであるんだ」
「でたらめを!」
「これ、なーんだ」
そういって、彼女は私に携帯電話の通知画面を見せつけてきた。
非通知と書かれているその電話。
そこからは、
『カズヨ。カンジャ・テルナを見つけたわ。他の奴についても、居場所は特定してある。後はあなたの決断で、実行できるわよ』
「……貴様!」
怒りのあまり、胸ぐらをつかむ。
「そう怒るなよ。……ああそうだ、この条件をのんでくれるなら、僕のことを別に殺してもいいよ」
「いきなり何を……」
「僕の罪を肩代わりして」
「……卑怯者!」
「ねえ、ユキノちゃん。君って本当に状況を選べる立場? もう体、限界なんだろ」
胸ぐらをつかむ力が、だんだん入りづらくなってきている。
血を流し過ぎたみたいだ……。
「君が僕の罪をかぶってくれるおかげで、君の家族も守れるしショーヤも幸せにできるんだよ。しかも殺してもそれは続く。それってだいぶ破格じゃない?」
「くッ……」
悩む。
……悩む。
大事な人の顔を思い浮かべていく。
「わかったわよ……」
私はきっと、何かを間違えてしまったんだろう……。
「あんたの罪被るわよ」
大事な人が悲しむこと。
そのことが頭によぎった私は、
「あはは、ありがと。じゃあ、そうゆう事だから」
『は~、つまんないわね。わかったわ、じゃあね~』
「……で、殺さないの?」
「いわれなくても、殺してあげるわよ」
私は、
「お姉ちゃん……」
ああ、なんでだろう。
いつもは思い出したくても思い出せないのに。
なんでこんな時に限って
「ぐっ!」
妹との思い出が鮮明によみがえってきたんだろう。
あの時私は手を伸ばそうとした。
でもつかめたのは赤い塊だけだった。
あの日と同じ真っ赤な手。
ああ、
「あは、あははははははハハハハハハハハハハ」
扉を開いた彼と目が合った。
ああ、もう。
笑うことしかできないや。
<現代:5/16>
カズヨが去ってから、数時間たった。
誰も来ておらず、でも、何もする気が起きなくて……
ピロリん♪
謎の通知音が突然、部屋から聞こえた。
「あれ? これって」
ハル先輩の……携帯……?
ピロリん♪ と再び聞こえ始めた。
先輩の像の中からどうやらなっているみたいだ。
まさか……
そう思い、俺は
「……ごめんなさい」
石膏で固まっている部分を壊し、そして、
「……あった」
見慣れた携帯が、彼女の携帯がそこにはあった。
しかも、生きてる。この携帯、まだ動いてるみたいだ。
急いで、先ほどの通知を見る。
「これは……」
<現代5/17>
「何で……何でここにいるんだよ! ショーヤ!!!」
俺は、彼女に説明することにした。
殺人鬼のこいつに。
「……確かにあの時、俺もあの血まみれのユキノを見た時に、ほんとに彼女がやったんじゃないかって思ったさ。でも、俺の知っているユキノは、かっこつけたりもするけど、普通の女の子なんだ。何の意味もなく、誰かを殺すような奴じゃない。猟奇殺人なんかするやつじゃない! それが俺の知ってるユキノだから!!!」
「何で……なんで!?」
「……全員お前が殺したんだろ。カズヨ!!!」
グッと、彼女が口を紡ぐ。
「何を言ってるのさ! 僕じゃない! 僕は……」
「違和感があったのは最初からだ」
「え?」
「皆で一緒に捜査をすることになったとき、学校周辺や公園の周りで聞き混みしたよな。
だけど、ほとんどの奴が口をそろえて、言っていたんだ! ニュースで初めて事件を知ったって。
それに、監視カメラとかにも石像を置くところ以外まったくと言っていいほど、事件の様子が映っていねーんだよ!
あの死体は俺たちが発見するまで誰にも見られていなかったし、誰もわからなかった!」
「それで……まさかそれだけなんて」
「ああそうだ。それだけじゃない。今までの被害者は全員会っているんだよ! 俺とお前だけな!」
「!?」
「一人目の被害者は、みんなでラウンドワンで遊びに行ったときにすれ違った店員」
「あはは……そうだっけ? 昔のことだから覚えていないや」
「2人目の被害者は、おまえとふたりで一緒に行ったコンビニの店員。あそこは東側で西矢央子中学のやつが普段いかない場所だし、その時別々に行動していたレンとユキノには俺達があそこでサボっていたことなんて伝えていないから知るはずがないんだ。俺とお前以外に!」
「そんなの、たまたまだよ……」
「そして3人目。レンが殺された時も、お前は神社の上に行くように俺たちを進めていたよな。普段はあそこを上がりたがらない、めんどくさがりなお前が!
ずっと誘導していたんだろ? あの携帯だって、わざとお前が置いたよな。レンを見つけさせるために!
再開した後に起きた事件も、全部俺の知り合いを調べて、見て知ったんだろ!
この事件を追っていたアキミヤにハル先輩、テルナの3人についてもそうなんだろ!」
「考え過ぎだよ……馬鹿なんじゃないの?」
「馬鹿はテメエだ! 何が僕を見てよだ。
最初は3人が俺の部屋に並んだことなんてわけわかんなかったし、最初以外死体の置き場所が目立つ場所に置かれていたことについてもわけわからなかった。
俺の知っている人ばっか狙っていることについても!
なあ、それって全部わざとなんだろ! 見てほしいから!」
「……見られたがってるって、そんなのただの異常者じゃないか」
「……ハル先輩が残してくれていたんだよ! 14のメッセージとお前の犯行動機を!」
そういって、俺は14と書かれた録音を再生する。
『アキミヤさん! なんで、こんな事するんですか?』
『なんでって、こうしたらショウヤが見てくれるじゃん』
『あなた、っ!』
『……腹って普通致命傷のはずなんだけど、よく走れるね……どっかの誰かさんみたい』
「これでも、まだ言い訳するのか?」
「っ……まさか!」
気絶していたはずのユキノがニヤリと笑う。
「私が一人で、こんなところに何もしないでやってくるわけないでしょ。……ココノとハルには感謝しないとね」
そういって、立ち上がるユキノ。
俺たち二人は、アキミヤと先輩の携帯を手に、彼女に見せつけたのだった。
「……その携帯は!」
「……俺はずっと違和感あったんだよ。被害者全員に見覚えがあったからな。
確かにユキノは、俺の周辺をうろついている話をソフィ姉から聞いていた。
だが、それでも普通じゃわからないほど顔見知りが死んでんだよ! ユキノが脱獄する前に会話をしたクラスメイトとかな!
……なあ、いい加減認めてくれカズヨ……。そして罪を償え! もうこれ以上、誰も殺すな……」
「殺すな……僕は認めないよ。知らないもん。
それに、なんでショーヤがいないところに行かないといけないのさ!
僕は君と一緒にいたいんだ。見ていてほしいんだ。だからまた、この町に帰ってきたのに……君がいなければ何の意味もないじゃないか!」
「……ああそうか、そうかよ」
俺は笑う彼女に近づく。
「殺すのかい? それはいいね、僕は君のすべてになりたいんだよ。永遠に僕を見てよ、ショーヤあ!」
思いっきり、拳に体重を乗せて、彼女に打ち込む。
「かはっ……、殴るなんてひどいじゃないか……」
「これでお前とは終わりだ」
そういって俺は立ち去るのと同時に、一人の人影が、後ろから現れた。
「はいはい。5/18、0:06、殺人・死体損壊の容疑。並びに銃刀法違反で現行犯逮捕」
「え?」
俺は振り向かず、
「待ってよ! なんでだよ! 殺せよ! 僕を見ろおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「行くぞユキノ」
「うん……」
俺たち二人は手をつないで、外に出る。
そしてあの日、公園で見つけた死体から始まった一連の事件。
そのすべてにサヨナラの意味を込めて。
「まって! まって! まってえええええええええ!!!!!」
マンションの屋上の扉を
バタン!
閉めたのだった。
<現代5/18>
エントランス。
轟轟と響くサイレン音とその音に合わせて、赤い光が海のようにキラキラとうなりながら輝いていた。
「ユキノ……すまなかった」
「……気にしていないよ。しょうがないもの」
俺たちは手をつなぎながら、その光に向かって歩みを続ける。
そして、そろそろ出口につくギリギリのところで、彼女から手を放し。
「じゃあ、私は行くから」
笑顔で別れを告げられた。
行かないでくれ。
そう言いたかった。
今一緒に、彼女と逃げ出せたら。
そう何度も考えてしまっていた。
でも、それは……きっとユキノが嫌な思いをする。
だから。
「……待ってる……」
「……え?」
これだけ言おう。今伝えたい思いを言おう。
「お前が出てくるまで、俺はずっと待ってるからな!
だって、ユキノは俺を守ってくれるんだろ。だから、せめてお前だけはずっと一緒にいてくれ!
……絶対に生きてくれ!」
「ショウヤ……私は……」
「俺は、お前も大切なんだよ」
彼女をまっすぐとみて、言いたいことを全て吐く。
そして俺は見送る決意を固めた。
「だから絶対、戻ってこい! お願いだから……」
「……わかった」
そういう彼女は、タッとこちらに駆け寄り、顔を近づけ……
「待ってて、絶対に戻るから」
後ろに回した腕を離して、出口に向かっていった。
「ああ、必ず迎えに行く!」
後ろ姿しか見えなかったが、フッと笑顔を浮かべたように見えた。
そして彼女は、サイレンの中に消えていき、
……それから何年もの月日が流れた。
<未来:12/……>
雪の降る日
俺は、灰色の壁にもたれかかった。
「早すぎたかな……」
こういったことは初めてだし、経験した人もいないだろうからなるべく早めのつもりで来たが……
……あれから何年も時間がたった。
その後、俺は大学にも合格し、普通の企業に就職することができた。
何年も務め、「おまえ今度昇進するかもしれないぞ」なんて上司から言われるくらいには仕事も順調だ。
そんな時、刑務所から手紙が届いたので、今日会う約束をしたのだった。
ホントはもっと遠くで会う予定だったんだけど、俺が早く会いたかったからサプライズで現地に来た。
あいつ喜んでくれるかな……
そんなことを考えていると、ガチャリとドアが開く音がした。
「……え?」
こちらを見て驚いた表情をした、きれいな女性がそこにはいた。
あのころとはずいぶんと印象も変わった、明るい表情の彼女がそこに
「よ! 会いに来たぜ、ユキノ」
「……ショウヤ、……ただいま」
「……ああ、お帰り」
そういって俺たちは、手をつなぎ歩みだしたのだった。
これから先、きっと困難はたくさんあるだろう。でも二人なら乗り越えられる。
だから未来へ向かおう。
勇気を、もらったから!
皆は、as:9-nine-楽しんできてな!
俺はお金がなかったよ。