作:金髪幼女ロリ

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前回に合わせて、お嬢様系で書いていたらお姫様になってしまいました。
何故?


可愛いくて素敵なお姫様

 どこにでもあるこの普通の世界。

 

 僕らの世界はある日突然、違う世界と繋がってしまった。

 現代の空ではドラゴンや羽の生えた人間が飛び、向こうの大地ではトラックや電車が走ってしまう以上事態になってしまった。

 

 当然みんな大パニック。

 

 わけも分からず、てんやわんやしながらも、原因究明と事態の対処、収集を図るためみんなで協力しながら進めていく方針になった。

 当然文化の違いやお互いのダメダメな連中のせいで揉めることはあったけど、両方のお偉いさん達が血のにじむような努力でめちゃくちゃ頑張った結果、徐々に理解を得ることが出来たので、その結果、お互いの世界はもう気の許せる戦友同士になったのだった。

 

 あれから10年。

 

 僕らの世界は、向こうの世界の技術を取り入れることに成功。物流や産業、技術は大きく発展し凄まじい進歩を遂げるようになった。

 

 そんな時代の流れで僕は、時代遅れの大学なんか行くより異世界の学園に入って技術を身につけた方がいいよねって事で、高校の早い段階から向こうの大学を目指すことになったのだった。

 

 高校の時は勉強とか内申点とかテストとかすごく頑張って、奨学金やら国の制度やらで、異世界にある竜人の国、アルティメトア王国の国立大学みたいなところに一発合格することができたのだった。

 

 春。

 

 アルティメトアでは雪のように白い花が咲き誇っており、自分の世界と比べてこんなにも違うのかと感心しながら、世界船といわれる異世界と僕の世界をつなぐゲートを安全に、そして確実に行き来できるようにした、この世界で言うところの飛行機的なやつの窓から景色を眺めてるときにふと感じてしまった。

 今から始まるのは、慣れない土地で初めての一人暮らし。期待と不安に押しつぶされそうになりながらも一歩一歩進んでいく。

 ターミナルといわれるゲートから入国するものを管理する建物から出た僕は、異世界特有の龍車(この世界のバスみたいなもの)に乗り込み今日から住む家に行くのだった。

 

 それから入学式まで、あっという間だった。

 目まぐるしく物事が進んでいくので、徐々に心が不安になっていった。僕は元々内気で友達もいなかったので、そういうことには期待はしていなかったが、家族がいないのはやっぱり寂しかったので若干ホームシックにもなっていた。

 

 まさか、そんな僕に入学してすぐ友達ができるなんて……この時は夢にも思わなかったな。

 

 これから通う学園に足を踏み入れ、入学式が行われる体育館的な場所に向かうことにしたのだが……

「迷った……」

 さっそくキャンパス内で迷子になってしまった……。しかも、地図みてもさっぱりだし、誰かに場所を聞くとかも怖くてできないし……

 どうしよう……そう思って、あたりをうろうろしてると。

「君、迷子?」

 困り果ててる僕に、後ろから突然話しかけられた。

「ひゃっ!?」

 飛び驚いてしまった。

「嘘、びっくりさせた!? あはは、ごめんね……」

 振り向くと、息を飲むくらい美しい銀の髪をなびかせた、たくましい角と黒いしっぽが生えたきれいな女性が申し訳なさそうにスマンって感じの顔をしてそこに立っていた。

「あ、いえ、ありがとうございます。恥ずかしながら迷子になってしまって困っていたんですよね。あはは……」

 びっくりしたが、まあ国立大学だったらこうゆうきれいな竜人さんもいるんだろうな。そう思いながら答えた。

 

 この世のものでない、まるでお姫様のようにきれいな人にたいして、かなりデレデレする気持ちを抑えながら、できる限り自分なりの普通に平凡になるよう答えた。

「じゃあ、一緒にいこ。入学式の会場ははこっち。着いてきて!」

「ありがとうございます!」

 僕たちは、二人でキャンパス内を歩きながら、入学式が行われる体育館へと足を運んだ。

 そのとき、彼女がふとこちらを向いて話しかけてきた。

「1年生? って、さっき迷子になってたんだからそうだよね」

「あはは……恥ずかしながら」

 さっきの口ぶりからして、先輩なのかな? そんなことを思いながら返事すると、

「私も1年だから、お互い仲良くしようね」

 びっくりする答えが返ってきた。

「え!? 1年だったんですか!?」

「ちょ! そんな驚く!?」

「ごめんなさい、普通に先輩だと思ってました……」

「……まあ、あんな会話したらそう思うよね……」

 反省反省とちっちゃく言う彼女の仕草が、僕にはとても可愛く見えた。

「あっ、着いたよ」

 そういって、彼女が指をさすほうを見ると、そこには大きく立派な建物がそこには立っていた。

「助かりました! ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして。それより君名前は?」

 僕の名前を聞いてきた。

「僕は、白先ゆうっていいます。あなたは?」

「……私は、アイン。よろしくね、ゆう」

「よろしく、アインさん!」

 

 そんなやり取りをして僕らは別々に会場に入っていったが、アインさんはどうやら専攻する学部が一緒だった。しかも、選んだサークルまで同じときた。

 

 ここまで一致するってなるとちょっと申し訳なく思い、ストーカーしてるってを疑われてたりしないよな……とか思ったが、別に彼女はそんなこと微塵も思っていなかったらしく、飲み会では趣味でも意気投合したってことで、そこから仲良くなるのには、友達になっていくにはそこまで時間もかからなかった。

 

 まるで春色の順風満帆な学生生活がこの日から、始まっていった。

 

「ゆう。その、一緒に帰らない?」

「ゆう。一緒にランチなんて……ありがとう」

「ゆう。今度はあそこのカフェに……いいの! ありがと」

「ゆう、今日あなたのおうちに来てもいいかしら? レポートが間に合ってなくて……」

 最初は彼女も遠慮していた感じだったが、

「ゆう、あそびに行かない?」

「ゆう、買い物に付き合って」

「ゆう、これにあう? うれしい。じゃあ、これ上げるね」

「ねー、二人で海行こう」

「ちょ、携帯の充電大丈夫? 私、しようか? えー、なにその反応。まあ、任せなさいって。私、雷竜なんだから」

「えーい、ほっぺにぴりぴりくらえー」

 といった感じで、距離がだんだん近くなっていった。

 

 半年一緒に過ごせば、お互いに遠慮もなくなってくる。

 

「アイン、明日一緒に遊びに行かない?」

「アイン、今日時間空いてる? 見たがってた映画サブスクに来ていたから一緒に見よ」

 自然と僕からも自分から彼女を遊びに誘うようになっていった。

 

 友達やサークルの先輩からは、デートか? と茶化されることもあったけど、そんな恥ずかしい思いをする日々も、彼女がいるなら僕は悪くないなと思った。

 

 そんなこんなで、僕たちは出会ってから一年が過ぎた。

 

 春休み、

「ゆう。私みたい映画あるんだけどさ、一緒に行かない? あなたの世界のでやってるやつなんだけど……」

 いつもみたいに僕のベットで足と尻尾をだらーんとさせる彼女(目に悪い)が唐突にそんなこと言ってきた。

「えー? でも船は高くない? それに、その映画多分売れるから配信待ったほうが早いよ」

 彼女の足元近くで、ベットの縁にもたれ掛かる僕はいう。

「んー。や、そうなんだけどさ。私一回も行ったことないんだよね、映画館。やっぱ漫画とか映画とか見てるとさ、どうしても憧れとかあってね。いってみたいなー、なんて」

「でもなー」

 異世界の行き来って、人類史から考えてもつい最近できるようになったものだ。維持費とかの関係上、結構お金かかってしまうものだった。格安プランで往復20万とかざらだ。

「ゆうは、私がいろいろとバイトしてるの知ってるでしょ。それに、お金はたくさん貯金してるし……だから、ね。いこうよ」

 彼女は起き上がって僕の近くによってきた。

「確かにそうだが……」

 僕も彼女の顔を見ながら答える。

「ゆうなら、あっちの世界の立地に詳しいし案内してよ。ホテルも一緒にとるからさ」

 まあ、ホテルとかあんまり泊まったことないし……そう言って貰えるのはだいぶありがたいが……

「でも俺、今月ピンチなんだよな……」

 スマホで銀行アプリを見ながら僕は答える。

「ねえ、お願い。私、ゆうの分も出すから」

 うーん、出してくれるなら全然問題ないな……

「確かにそうだな。じゃあ、お言葉に甘えて」

「やったあ!」

 満面の笑みを浮かべるドラゴン娘は、俺にとってすごくまぶしく映った。

 こんな笑顔が毎日見れたら幸せなんだろうな。

 ふと、そんなことが脳裏によぎってしまった。

 急いで彼女とは違う方向を向いて、顔をそらす。

「どうしたの?」

 僕は一体何考えてんだよ。

 急にどうしたとか? 唐突になんでそんなことが脳裏に……とか、そんなことがグルグル回ってしまった。

 いや、今までのことをちょっと思い返せばわかることじゃないか。

 ぼく、彼女のことが出会った時からずっと好きじゃないか。

「いや、なんでも」

 ただ、今は告白しないでおこう。

 頃合いを見て、いつかしよう。

 例えばバイト代貯めて、旅行中の帰りに指輪をわたせ……

「あー……お金どうしよう……」

「ん? 出すって言ったじゃん」

「いや返すほう」

 あーって反応を彼女はする。

「んー、そこは大丈夫! 私、全然気にしないよ」

 僕は気にするんだよ。

 さっきまで浮かれた気分だったが、一気に血の気が引いた。

「さすがに往復20万近くするし、おごりってわけにもいかないよ」

 金の切れ目が縁の切れ目なんて嫌だぞ。それにおごられるだけの男になら下がりたくないし。

 そう考えながら、彼女に今の気持ちを伝えた。

 うーんと彼女が悩む。

 その後、はっとした感じでこっちを見た。

「わかった。じゃあ半年間、私の食費はゆう持ちで!」

「ふっ、その程度なら喜んで!」

「ありがと」

 天使のような可愛い笑顔でこちらを向く彼女。

 そんな喜ぶ顔を見て、情けないなと思う僕なのだった。

 さて、僕もバイト増やすか! 

 心の中でそう決意するのだった。

 

 あれから3ヶ月。

 

 様々な旅行プランを練って、いろいろと予約もとった僕らは、一緒に世界船にのって僕の国のターミナルで降りた。

 久しぶりの僕の世界。めちゃくちゃ久しぶりに帰ってきた。

 実家にも時間があったら行きたかったが、今回は彼女にそんな話していないし、それにその……まだ付き合ってはいないしな。

 

 そんなことを考えながら、僕らを乗せたシャトルバスは最初の目的地、町中にあるおっきな遊園地に到着した。

「わあ。ついたよ、ゆう! 夢みたい。私、遊園地って昔から興味あったんだ」

「アルティメトアにはなかったっけ?」

「ここまで大きくてすごいのはなかなかないよ。しかも、町中にこんなのなかなか。これ、かなりすごいよ」

「ふふん、でしょ」

「なんで、ゆうがどやるのさ」

 いいじゃないか。一応、僕が知っている中では最高のデートスポットなんだから。

「そ、それじゃあ、なににのる?」

 カバンやキャリーケースをロッカーに預けて、どこを回るか彼女に聞いた。

「うーん絶叫系で!」

 そう言って彼女が指さすのは、ジェットコースター。

「よーし、じゃあ行くか」

「やったあ」

 

 遊園地のベンチで二人はうなだれる。

 ……やばい、死ぬかと思った。

「足めっちゃガクガクする。あんなに怖いとは思いもしなかった」

「ああ、まさか自分たちの時間からは後ろ向きになるとか思いもしかった」

 そのせいで、未だに後ろから落ちる感覚がする。

「一旦落ち着こう。はあ、飲み物買ってくるね。何飲みたい?」

「コーラで」

「わかった」

 そう言って彼女は自販機に向かっていった。

 ……あれ? こうゆうのって男が行くもんじゃ……

 そう思っても既に手遅れなため、このまま待つことにした。

「お兄さんすみません」

 声がした方向に振り向く。

「ハイ、なんでしょう?」

 そこには、かわいい系の服をした、羽と細いしっぽが生えた悪魔っ娘の清楚な子がいた。

「お化け屋敷って場所分かりますか?」

 迷子か、そう思って立ち上がった僕は、地図を広げて彼女に道を教えた。

「お化け屋敷なら、ここのメリーゴーランドのところを右に曲がって左側のとこにありますよ」

「わあ、ありがとうございます」

「どういたしまして」

 そういって僕は、ベンチに座って、アインが返ってくるのを待った。

 だが、悪魔っ娘はもじもじとするばかりで、そこに立ち止まる。

「……どうかしましたか?」

 さすがに気になったので、声をかけてみる。

 すると彼女は、こっちを見つめてきた。

「あの……もし良ければなんですが……一緒に行けたりしません?」

「えっ、は? 」

 唐突に

「ちょ、それ」

 逆ナン? マジで? 

 急にそんなこと言われたので、頭の中がてんぱった。

 うれしい気持ちはあるけど、でも僕には待ってる人が……

 そうだ。

 アインの姿が思い浮かんだ瞬間、僕は冷静さを取り戻すことができた。

 ごめんなさい。僕、心に決めた人がいるんで。

 そう断ろう。

 心に決めて口に出そうとした瞬間。

「何してるの?」

 コーラとオレンジジュースのペットボトルを持つアインがそこにはいた。

「……ごめんなさい。連れが来たので失礼しますね」

 そそくさと僕は彼女と合流する。

「え? ああ……はい、楽しんでください」

 後ろで、ちっ女連れかよ。とか聞こえたが、今は怖い顔をする彼女にどうゆう言い訳なら怒られないかを考えねば。

 そう思いながら、僕たちは次のアトラクションに向かった。

「……綺麗な人だったね」

 不機嫌そうに彼女が口を開く。

「あはは、そうだったね……」

 でも君のほうがきれいだよって言いたかったが、火に油注ぎそうだったからやめた。

 それにそんなこと言えるわけないし……キャラじゃないし……

 そんなことを言ってはみたが、でも最後の言葉もなく、「あはは、そうだったね……」で止めたのは普通に失言だったってことに気づいたのもそう遅くはなく……。

「なっ! 私といるときは、ほかの人にテレテレしないの!」

 そういって彼女は僕の腕に思いっきり自分のしっぽを巻きつけた。

「え? ちょ、ま、アインさん!?」

「おりゃ!」

 そういって、彼女は思いっきり僕の腕に電流を流した。

「ちょ、うで! 腕痛い! ビリビリする! ぎゃあああ!」

 千切れるんじゃないかってくらい思いっきり巻き付けられた上に電流まで流されたので、さすがに声を上げてしまう僕だった。

 

「ふん。お化け屋敷行くよ」

 ぷすぷすと倒れる僕を尻目に、カツカツとアインは歩き始めた。

 しかしあんなに起こるとは……怒らせると怖いんだな。

 そんなことを考えながら立ち上がって彼女のもとに向かった。

 あれ? てか、え? 嫉妬するってことはまさか? 

 そう気づいた瞬間、僕はにやけが止まらなくなった。

「にやにやしてなーに?」

 むっとした表情で彼女に睨まれる。

 そんな表情が愛おしくてうれしくて、ずっと見ていたい。

「いや、なんでも」

 二人で並んで、お化け屋敷に向かう。

 しかし、これは早いところ決着をつけたい。

 そう思ったが、今は金欠なことを思い出し、過去の自分を恨む僕だった。

 

 

 夜。

 遊園地をめちゃくちゃ堪能した僕らは、今日止まるホテルにチェックインをするのだった。

 が、

 ……あまり詳しくはなかったうえ、彼女に「全部任せて!」って言われたので、全部を任せてしまった自分も悪いと思うが……

「あはは……ごめん、部屋別々だと高くてさ」

 まさか一緒の部屋に泊まるなんて……

「いや、僕は全然いいんだけどさ」

 それに、幸いベッドは二つあるみたいだし。

 気まずいことになんてならないだろう……たぶん……きっと……うん……

「ならよかった……」

 彼女はそう言って安堵した。

 でもそこからは……

「「……」」

 ……気まずい。好きな人とはいえ、二人きりなんて。これまで気にしたことなかったのに、ホテルって場所のせいもあるか、どうも落ち着かない。

 いつもは、超気軽に話せるのに……。

 この時はなに話せばいいかわからなくなってしまった。

 何か話さないと。何かないか……

 そう考えていた時、

「わ、わたし先シャワー使うね」

 気を使ったのか、彼女は先に風呂場に向かっていった。

「う、うん。わかった」

 とっさに了承してしまったが、言った後に気づいた。

 これ、問題を先延ばしにしてるだけだ。

 そう思って彼女のほうを見ると、

「……覗いちゃだめだよ」

 ドアから半分顔を出して、ジト目でそんなこと言ってきた。

「うっ!」

 あまりの可愛さに、変な声が出てしまった。

 ひらひらと手を振りながら、ドアを閉める彼女。

 やばいめっちゃドキドキしたとか、顔思いっきりにやけてしまったけどきもくなかったよなとか、これさっき声めっちゃ聞かれたよなとか、いろいろぐるぐる思考を巡らせて、その間もずっとどぎまぎして……

「……いったん水でも飲んで落ち着こう……」

 そういいながら、冷蔵庫に入れた水を飲んで、彼女が出てくるのを待つのだった。

 

 向こうでは聞けない、懐かしいスズメの鳴き声で目が覚めた。

「……朝か……」

 そのあとは何事もなかった。

 本当に何もなかった。

 お互いシャワーを浴びて、持ってきたゲームで対戦して、遊園地楽しかったねーとかいろいろしゃべって、明日の映画楽しみだねーって言ってそのまま眠くなってきたから眠った。

「まあ、そうだよね……はは」

 いや別に、付き合ってるわけじゃないし、そうゆうのはね……ね。

 期待してたわけじゃないけど、さ。

 ……きもいな。

 舞い上がり過ぎだ。自生しないと。

 そう思いながら、僕は起き上がった。

 ふと、彼女のカバンからいろいろこぼれ落ちてたのが見えた。

「……珍しいな……」

 片づけてあげようと、ベットから出て机に向かった。

 ふと、そこにあった彼女の赤い手帳みたいなのに手を取った。

 これ、アルティメトアのパスポートか? 

 こんなに真っ赤なのも珍しいな……

 そう思って彼女のカバンの中にしまおうとした。

 その時、机にカチャンとカードが落ちた。

「やべ」

 ひらいて、彼女のパスカードをパスポートに挟もうとした。

 その時、アインの本名ってまだちゃんと教えてもらっていないことをふと思い出し、ちょっとした好奇心で、パスポートの名前の欄に目をやってしまった。

 正直ここで見たこと、それは多分一番しちゃいけなかったことだとすぐに後悔した。

 ルナ アインザンバー アルティメトア

 固まった。

 あまりにも衝撃的な名前がそこにはあった。

 ……この名前、まさか……

「ん~? ゆう、どしたの?」

 急いで、パスポートを彼女のカバンにしまった。

「いや、なんでもない」

「そう? おやすみ~~」

 そういって、彼女は二度目を決め込んだ。

 それを見て、ほっと一息つく。

「……これまさかだよな……」

 そうおもい、携帯でさっき見た名前を検索した。

 ……やっぱり、アルティメトア。

 あの国の王族が並ぶ写真に彼女の姿があった。

「あいつ、お姫様だったのか……」

 その時、僕はこれまでとんでもないことをしていたんじゃないか? 

 そんな気分に襲われてしまった……

 

「ごめん御手洗に行ってくる」

「わかった。席座っておくよ」

 そういって、さっき映画館内で彼女と別れた。

「……あいつがお姫様。そんなの……」

 トイレの個室でふとつぶやく。

 ネットニュースの写真といつものだらけた姿を頭の中で見比べる。

 ……一致する。やっぱりどうみても、いつも見てる彼女だ。それ以外はあり得なかった。

 そんな彼女が、写真の向こうで、テレビとかでよく見るようなえらい人たちと写真を撮っていた……

 そう思うと、昨日のどぎまぎやこれまでの笑顔も、本当はもっと遠いものなんじゃないかと、自分には過ぎたものなんじゃないかと……

 そう思うと、あまりにも身分違いの恋だって言われた気がしてしまい、気が気でなかった。

 本当にこのままでいいのか? 

 僕には分不相応じゃないのか? 

 ぐるぐる頭をはたらかせても答えは出ない。

 もし、彼女に今の気持ちをぶつけたら、気にしないとか言ってくれるのだろうか? 受け入れてくれるだろうか? 

 それとも、笑って馬鹿にされるだろうか……。

 そんな事は昨日の反応からしてもありえない。

 断言したい。

 でも直接、本人に聞いたわけじゃない。

 怖い。

 悲観的な考えだけがグルグルしてしまった。

 ふと時間に目が映る。そろそろ上映が始まる時間だった。

「戻らないと……」

 

 映画は頭に入らなかった。

 そのあとも……全部上の空だった。

 嫌なことばっか考えてしまって、彼女のことを全く見ることができなかった。

「ねえ、ずっと変だよ? 大丈夫? 気分悪い」

 昨日と同じホテルの部屋でそんなことを聞かれた。

「ごめん、昨日はしゃぎすぎちゃってさ……気分悪いから寝るね」

「わかった……、何かあったら言ってね」

 彼女のやさしさがチクリと胸に刺さる。

 今の気持ちをいってもいいのか? 

 でもそれは、彼女にとって迷惑なんじゃないか? 

「おやすみ」

 寝て起きたら、吹っ切れてたいな。そう思いながら僕は逃げるのだった。

「うん、おやすみ。ゆう」

 小さく彼女の優しい声が聞こえたとともに、視界は暗転した。

 

 結局ダメだった。

 僕は情けないな。

 そう思うと、だんだん自信がなくなっていった。

 情けなさに、恐怖に支配された。

 ……昔の僕はこんな性格だったよな……

 急にふと、そんなことを思い出した。

 たしか、性格が変わっていったのはアインと出会ってからだったっけ……。

 そう考えたら、今の明るい性格になることができたのは全部彼女のおかげだということに気づくことができた。

 大学が上手くいくかなとか、一人暮らし不安だなとか、始まるまではずっと鬱々していた。

 そんな僕が一歩前に踏み出す事ができたのは、彼女がそばにいてくれたからだ。

 彼女と出会ってからの思い出がいろいろと頭によぎったとき、僕は彼女がいかに大切な存在かを改めて理解することができた。

 ……なんだ、それなら答えは簡単じゃないか。

 世界船の中。

「……どうかした?」

「何でもないよ」

 僕はまた、一歩踏み出す決意を固めた。

 

 夜。

 僕たちを乗せた船はアルティメトアについた。

 二人で一緒に、行きなれたファーストフード店で晩御飯を済ませた後、ターミナルからでて、少しした公園に僕は彼女を連れた。

「こんなところに連れてきて急にどうしたの?」

 いまから僕は彼女にひどいことを言う。

 しかし、連れてきたのはいいけどどう切り出そうか。

 そんなことを考えていると、

「月がきれいだね」

 ふと彼女がそんなことを言った。

 昨日一緒に見た映画でも、たしかそんなセリフあったよな。

 昔の小説だっけ? 

 そんな一節が、告白シーンで使われたとか使われなかったとか……。

 ロマンチックな問いに、

「君のほうがきれいだよ」

 つい本音で返してしまった。

 ぱあっと彼女は喜ぶ。

「ゆう」

 笑顔を見せる彼女を今から悲しませることになる。

 僕はひどい男だな。そう思い、

「ごめんだけど、それはできない」

 すぐに僕は彼女の顔を見ずに否定するのだった。

 

「……そう、じゃあ言い方変える。卒業したら、結婚して」

 彼女はあきらめず、ド直球できた。

「……それはだめだよ。僕は君とは付き合えない。結婚なんてもってのほかだ」

 そんな彼女に向かって、淡々と答える。

「……どうして?」

 こっちに目を合わせようと彼女はこっちに来ながら問いかける。

「……釣り合わない。身分が違い過ぎるんだ僕は」

 それを言った瞬間、この前よりも深く暗い顔でこっちを見つめてきた。

「そう、知ってたんだ。私がこの国のお姫様なの。みんなには隠してたつもりなんだけどな……」

「ごめん、僕も最近知ったんだ」

 そういって、僕は彼女と距離をとった。

「ふーん、それで? 付き合えないのと何か関係があるの?」

 僕が離れた以上に彼女は距離を詰めてきた。

「そんなの、さっき言っただろ。身分が……立場が合わない。普通でしょ。一般人とお姫様、合わないよ」

 否定したいことをだらだら並べながら、反論とも言えない答えで僕は答えた。

「関係ない。そんなもの、関係ないよ」

 優しく諭すように僕を見つめて彼女は答えた。

「昨日一緒に見た映画もそんな話だったよ。最初に二人で見た映画も……」

 続けて放たれた彼女の言葉に、僕は同意をしたかった。

 でも、リアルで身分が違うものが釣り合わないのは当たり前だ。

 僕で彼女には苦労してほしくない。

「あんなのただの創作だ。君が関係なくても、ほかの人はそう行かないんだよ」

 彼女の眼を見ず、僕は思ってもいないことを口にした。

 彼女も顔に出るタイプだし。僕も顔には出てしまうタイプだと思う。

 互いにつらそうな顔をする。

 これまでの3ヶ月に、今まで楽しかった思い出に、泥を塗るようなことしてひどい話だと思う。他人だったら、最低な奴だといってしまうだろう……。

 3ヶ月間、僕たちはこの旅行をお互い楽しみにしていたのだ。

 何日もかけて計画を立てて、バイトの日程も合わせていって、そこでようやく行くことができたこの旅行。

 そんな日を台無しにしてしまった。

 この日を僕は後悔するだろうし、今もしてる。

 でも、今しかない。

 今日じゃないと、このままずるずると引きずってしまう。

 そんなのだけは、絶対だめだ。

 そう心に思った僕は、彼女に顔を向けず優しく話した。

「僕はもう、これ以上君には近づかない。会うのもやめよう。お金については明日返すよ。大学もなるべく合わないようにするから。だから、お互い忘れよう。ね」

 そういって、思いっきりその場を離れようとした。

「忘れるわけないじゃん!!!」

 立ち去ろうとした僕の腕を、彼女が無理やりつかんでしっぽを巻き付けた。

「忘れられるわけがないでしょ!」

 怒鳴る。

「忘れられるわけない! あなたと出会ってからの人生、私は毎日楽しかった! 家族と過ごしながら、王族としてふるまわないといけない。肩ひじ張った、息苦しい思いをこれまで過ごしてきた。猫かぶって生きてた! そんな生活が嫌で、身分を隠して普通の学園に通うことにした。みんなサークルの友達とかみんな優しかったけど、でも一番あなたの前で私は素の自分でいることができたの! 家族といるよりも、あなたといるほうが一番安心できたの! 私には、あなたしかいなかった……」

 温かいものが背中に流れる。

「ねえ、ゆうお願い。会わないとかそんなこと言わないで。あなたのそばにいさせて。私を私でいさせて! あなたと一緒にいさせて……」

 僕は彼女に抱き着かれて、泣きながら引き止められてしまった。

 ……そういうのは見たくなかった、彼女には笑顔でいてほしかった。

 でも、

「……分不相応なんだ。ごめん」

「だからなに? そんなの、知らないよ。あなたと一緒にいられないなら、私何もかも捨てれるわよ! ねえおねがい、こっちみてよ! 振り向いて、あなたの本当の気持ち聞かせてよ。それまで絶対にはなれない。離れてなんかやらない!」

 振り向かない。

 そのまま僕は

「……ごめん、でもきめたんだ」

 彼女を引きはがして、そのまま歩き出した。

「……アイン。君とは友達でいたかった。僕にとって初めてこんなに仲良くなった人だったから。多分好きにならなければ一緒にいられたんだろうけど、それはもうできないから。だからごめん」

 歩きながら別れを告げる。

「……わかったよ。ゆうがそういうなら……」

 後ろでか細く、はかなく悲しげな声が聞こえた。

 これでいいんだ。これでいいんだよ。

 泣く彼女に、かわいそうな彼女に今すぐ抱き着いて謝りたい気持ちを抑えながら、走りだそうとした。

「ごめん、やっぱ無理」

 瞬間、耳元で聞こえるはずのない声が聞こえた。

 バチバチっと音がする。

 一瞬の痛みとともに後ろを振り返ると、

「私、無理みたい」

 悲しい表情を浮かべた彼女が僕の背後にいた。

 意識が遠のく中で僕は、悲しみを浮かべつつもどこか恍惚の表情を浮かべている彼女を見て僕はこんなにも愛されているんだなと思いながらぷつんと切れるのだった。

 

 

 そして、目が覚める。

「おはよう。ホテルの時も思っていたけどさ、寝顔かわいいかったよ」

 知らない天井。知らないベッド。知らない部屋。

 知らない場所で僕は、首輪に手枷に足かせをつけられて壁にそのまま固定されていた。

「なんでこんな。ここはどこ? アイン、なにしてるの」

 そう問いかけると、彼女はすぐ謝った。

「あなたの思いを聞いて私もあなたに合わせようとしたけど、ごめん。やっぱ無理だった」

 そして、そのあとハイライトのない瞳で僕を見つめ口を開ける。

「それにねえ……ゆう、私ショックだったんだよ。初めての告白をあんな形で、わけわからない断りかたされてさ。だって、わかんないじゃん。みんな分かってくれるかもしれないじゃん。最初からあきらめることなんてないのに、自分にはできない、自分には無理、不釣り合いだなんて……意味わかんないよ。それに、私は本当に気にしないのに……」

「それは……」

 彼女は縛られている僕に思いっきり抱きつき、ぎゅーっとしっぽを体に巻きつけた。

「だからね、私思ったの。私たちにできないことなんてないって、みんなにわからせたらいいんじゃないかって。もちろんあなたにも。だってそっちのほうがわかりやすくていいでしょ。みんなに理解してもらえるんだから。だからまずは一年間、私の部屋で同居しましょう。そうしたら、あなたの考えだってかわるはずよ。大丈夫、お父様もお母様もわかってくれるわよ。もちろんあなたのお義父様とお義母様もね」

 自分は選択肢を間違えたかもしれない。

 最初から彼女と距離をおくなんて、そう思ったことが最初から失敗だったのかもしれない。

「大学は一緒に一年休学にしてもらったわ。逃げられたくはないからね……」

 最初から僕はうじうじせず、腹をくくればよかったのだ。

 こんな愛してくれてる彼女を捨てようとしたんだ。

 馬鹿だ。結局、一番覚悟がなかったのは、うじうじしたのは僕だったじゃないか。

 彼女は徐々に僕の上にまたがってくる。

「拒否権はもうないわよ。だって私たち彼氏と彼女じゃない」

 僕は、優しかった彼女が恐ろしい笑顔を見せた後、唇に甘いキスをするのを……

 ただじっと優しく受け入れたのだった。

 

 

 




次は妹か厨二病っ子の予定です。
お嬢様系期待してたやつはホンマすまん。
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