仕事が忙しすぎて、ここまで遅れました。
後、まったく思いつきませんでした。
私の名前はカゼサキ・ハル。
昔から不幸でした。
普通のおうちに生まれたのですが、暗くじめっとした性格でクラスの人達とも打ち解けられず、終いには虐められることだってありました。
小学校にもあまり行きたくなくなって、誰に対しても塞ぎ込むようになって、部屋から出ることも出来なくなったある日。
『ごきげんよう。ハル』
窓に写った女の人が挨拶をしてきました。
私と同じ姿をしてるけど私とは違う。
『ワタクシは楽園の使徒。あなたが幸せになる為に遠路はるばるとやってきましたわ。女王様』
勝気な表情をした私がそこにはいました。
楽園の使徒が来てからは毎日が思い通りの連続。不幸だった今までが嘘みたいに幸せになりました。
いじめっ子達は学校からみんな居なくなったし。500円玉が1枚、頭に降ってきたし。買いたかった漫画の限定版の発売日を忘れてたことにかなりあとで気づいたから、急いで買いに行ったら売っていたし。あの猫ちゃん可愛いなーってじーっと見てたら、近寄ってきた上撫でさせてくれたし。四つ葉のクローバーを帰り道に見つけたし。
大きなものから小さなものまで、毎日が楽しくて幸せな日々を過ごす事となりました。
そして月日は流れ、高校最後の春
「初めまして。自分カンジャ・ショウヤって言います。図書委員には成り行きで入ったのですが、入った以上精一杯頑張るつもりです。そのー、よろしくお願いします」
私は運命の相手と出会いました。
カンジャ・ショウヤ君。
人相が怖く、むすっとした顔の男の子。
最初は怖い子が来た程度にしか思ってなかったけど、真面目で愛想もあったのでだんだんと目で追っていくようになりました。そしてたまに目があって、ドギマギしたりもしました。
私たちが仲良くなるのは、そう遅くはありませんでした。
結構少年漫画が好きだったり、ゲームの趣味が合ったりして、委員会のある日がとても充実したものになっていきました。
こんな日が毎日、続けばいいのに。
そんなことを考えていました。
でもそんなことは無理なんだって、思い知らされました。
彼の隣で、笑顔で歩く彼女の姿を見て。
泣きました。
思いっきり泣きました。
その時、窓に使途が表れ優しい声で私に聞きました。
『事実確認は行いましたか?』
私はとっさに首を横に振り、使途の言葉を否定した。
『なら、確かめないといけませんわね。別に、学校でそうゆう噂が流れてるとかそんなじゃないのでしょう?』
そんなこと、わかってる。
幼馴染とか、妹とか友達かもしれない。
そんなのわかってる。
「……無理」
できないよ……
そううずくまって、泣くことしかできなかった。
自信もないし、本当にそうだったら立ち直れない。
『あなた……今うずくまって、ずっと見ないふりして、あるかもしれないチャンスをないものにして、本当によろしいのですか? 一生後悔するのは、ハル。あなたなんですわよ』
知ってるわよ。そんなこと、
「わかっているわよ……でも、怖い。怖いの」
『……あなたは、幸運を持っている。毎日、こんな日が続けばいいのに。そう思ったから今の幸せだった毎日があるのですよ』
「そんなの……」
『それを棒に振るおつもりですか? 自信がないからって勝手にあきらめて、彼がほかの女性と幸せになるところを指をくわえてみてるおつもりですか?』
そんなのはヤダ……。でも、
『そう……そんなにうじうじしてるのなら、ワタクシに体を貸しなさい』
「……え?」
『あなたが聞けないっていうのなら、ワタクシが直接彼に聞きに行きます』
「ちょっと」
『そのほうが手っ取り早いですわ』
「まって、それは」
『ではお聞きしますが、今のあなたに聞くことができますの?』
「それは……」
できない。確かにこの娘の提案は魅力的だった。
『窓に、手を重ねなさい。大丈夫、すぐに戻りますわ』
「……わかったわ」
そういって、そっと手のひらを重ね合わした。
その瞬間、視界が暗転して、すぐに視界が明ける。
「信用してくれてありがとうございます。ハル、私はあなたを必ず幸せにしますわ」
私を見つめる私は、窓越しにいつも見ていた彼女と同じ凛々しい表情をしていた。
『……ありがとう、えっとその。……フウ』
「フウ?」
『その、楽園の使途だと、前々からどうしても呼びづらくて……前にお母さんから私の名前の候補聞いたときにフウって名前が印象に残ってたの。だからあなたの名前にって今読んでみたのだけど……その、嫌じゃなかった?』
そういうと、フウは嬉しそうに笑顔で
「ハル。ワタクシはあなたのそういうところ大好きですわ。必ず幸せにして見せます」
そう答えたのだった。
いつもの喫茶店で晩御飯を食べた俺は、一緒にいたクラスメイトのアキミヤ・ココノと現地解散することになった。
「またね、ショウヤ君」
「おう、アキミヤもまた明日な」
お互い反対方向に歩き始める
さてと、帰ろうかな。そう思いながら、駅に向かおうとした。
その時、人影が見えた。
「あれは……、ハル先輩か?」
図書委員の先輩がそこにいるように見えた。
誰かを探しているように、あたりをきょろきょろしてる様子で、そこにいた。
何かあったのかな?
少し気になった俺は、すぐに近くに駆け寄った。
「ハル先輩。どうかしましたか?」
「あら? あなたハルを知ってるのですか?」
駆け寄ってすぐに、先輩と思わしき女性に話しかけた。
だが、振り返った女性の顔は凛々しく、いつもの先輩と同じ顔なのにいつもとは違う表情の彼女がそこにはいた。
「はい。えっと、サキカゼ先輩のお姉さんとかですか?」
「ええ、双子の妹。フウって言います」
へえー、妹さんか。
「いつもお姉さんのお世話になっております。自分カンジャ・ショウヤといいます」
「まあ、あなたがショウヤ様でしたか。こちらこそ、ハルがいつもお世話になっています」
「こちらこそ、いつもお世話になっております」
丁寧にお辞儀までされて、優しくあいさつされたのであいさつでとっさに返した。
丁寧で返されたからには丁寧で返さねば。そう思った俺は、フウさんにいつも思っていることを話した。
「先輩には……ハルさんにはものすごく助けていただいて、いつも本当に感謝しかないです」
「あら、そうなのですね。ワタクシも、今年に入ってからハルがあなたの話ばっかするものだからどういったお方か少し気になっておりましたが……とてもご丁寧な方で、かっこいいと思いますわ」
「あはは、ありがとうございます」
フウさんが急に、何か知らないけど突然かっこいいって言ってくれた。
「あら? こちらはお世辞ではありませんわよ」
お世辞はやめてくださいよ~。とか言い返そうとしたら、その前に本人から言われてしまった……。
……やっべー、すげー照れる……。
「そういえば、先ほど女性の方と一緒にあのお店から出てきたと思うのですが」
「あ、えーっと、その、友達です。たまたま、同じ喫茶店で食事をとることが多かったので、ちょっと仲良くなったって感じです」
「そうなんですね。別にお付き合いしてるわけではないと」
「ぶふっ!!!」
あまりにも衝撃的過ぎて、吹き出してしまった。
俺は考えたことなかったけど、彼女からそんな気を感じたことがなかったから、唐突にそんなこと言い始めるフウさんにびっくりしてしまった。
「別に、そんなじゃないですよ。それに、それはアキミヤにも迷惑だろうし」
ボソッと付け足す。
「まあ、そうなのですね。では、ハルについてはどう思っていますの?」
「どうって?」
「ワタクシ、昔っからコイバナが好きで、ハルがあなたのことを話してるときに、ピキーンっと来たのですよ」
「ぴ、ピキーンと……?」
「ええ、ピキーンと。それで、ハルのことはどうお考えでして?」
どうって聞かれても……
「……俺から見た先輩なんですけど、めっちゃ優しくて仲良くしてくれる、尊敬する先輩ですね」
「ほう?」
わくわくした表情でこっちに詰め寄ってきた。
「ちょ、ちか」
「お構いなく。続けてください」
「続けてくださいって……べ、別にそれだけですよ! 大体、たまたま一緒の委員会で、ゲームとか漫画とかの趣味があったから仲良くなったってだけです」
本当にそれだけだから。いつも話してるとき距離が近いから、ちょっといいにおいがするなとか、おっぱい大きいにたまに目が行ってしまうなとか考えたことないから。
「あら? あの娘がそれだけで仲良くなるなんて珍しいですわね」
「え? そうなんですか?」
「ええ……。ワタクシたちからしますと、正直ほかの理由がある。そうとしか考えられないですわ」
「そ、そうなんですね」
「ええ。惚れたりすることなんてそれだけで十分ですわ」
「え?」
「ああ、先ほどのはこちらの話ですわ。気にしないでくださいまし」
「わかりました」
俺の答えを聞いた後に、フウさんはスーッとこちらから離れていった。
「ショウヤ様、本日はお付き合い頂きありがとうございます」
質問は終わったのだろう、彼女はもう帰るつもりだ。
ハル先輩の話、もっと聞きたかったな。
そう思いながら、
「こちらこそありがとうございました」
そう答えると、こっちを向いて、先輩と同じ顔で、小悪魔的な笑みで
「ショウヤ様。ワタクシは、貴方のことをお義兄様と呼べる日を楽しみにしておりますわ」
そういったと思ったら、フウさんは改札口に向かってそのまま帰っていった。
振ってきた手を振り返して、俺も帰ろうと……
「は?」
目が点になる。
それって、
「はああああああああああああああああ!!!!!!!」
この日、駅前に一人の男の絶叫が響いたのだった。
『とのことでしたわ』
窓の向こうにいるフウは、うれしそうに答えた。
でも、さっきの話を聞いた私は……
「……それって、ただの先輩としか見られてないよね~~~……」
ベットに倒れこみ、涙を流していた。
『ちょ、どうして泣いてるのですか!? 別に、あの娘とも付き合ってはいないし、多分ですがあなたのことも意識していますわ』
「多分でしょ多分。うわーん」
ぽろぽろと涙があふれ出てきた。
『もう、うじうじばっかして。そんな事ばっか言ってたらいつの間にかほかの方にパクっといただかれますわよ』
「うう……」
『それが嫌なら明日にでもショウヤ様に告白しなさい! 本当に手遅れになっても、ワタクシは知りませんわよ』
うずくまってたらフウに説教されてしまった。
そんなこと言われたって私には……
フウに昨日言われたことを思い出して、悶々となる。
「うう……」
告白しろって……、そんなこと言われたって私には無理だよぉ……
「先輩」
大体、告白って。誰かを好きになること自体初めてなのに告白するなんて、そんなすごいことやっぱりできない。少女漫画とかみたいにされたりしたりしたいなとか思ったことはあるし、そんな妄想したこともあるけど、やっぱ無理~~~~。
「ハル先輩」
うう~~。でも取られたくないし、だからって覚悟決まんない。
どうしよう。仕事にも手がつかないし、泣けてきた。
そんなこと考えていると、
「ハル先輩!」
「え? あ、しょ、ショウヤ君!?」
突然ショウヤ君の声が聞こえた。
ああ、そういや今日一緒だったな。
そんなことを思い出して、思考を整理していると。
「どうかしました……?」
突然質問された。
「へあ、えーっとああ、別に何でもないよ。その、私何かしちゃってた?」
「あー。その何かぼーっとしてたから、何かあったのかなって」
やば、
「べ、べべべべ別に何でもなななななななn」
思いっきり立ち上がって駆け出す。
「ちょ、先輩!?」
「いやホント、本当に何でもないから! わっ!?」
思いっきり図書室から出ようとして猛ダッシュして、ずっこけてしまった。
「ちょ、大丈夫ですか!?」
「うぅ……」
たまたま、彼に膝枕をしてもらう形になってしまった。
泣きたい。情けなさ過ぎて、顔から火が出そう。
ここから抜け出して、どっか行きたいとかそんな事ばっか考えてしまう。
「思いっきりすっころんだけど、怪我とかは……よかったしてなさそうだ。意識もありそうでよかった」
上を向いてると目が合う。
ショウヤ君はやっぱりかっこいいな。
そんなことを考えていたら、
「あーもう、好き」
そう、ぼそっとつぶやいた。そして私は、はっと気づく。
上を向くと、赤面してる彼の顔があった。
戸惑った私は、急いで否定をしようとする。
「こ、これは違うの。忘れ「俺は、好きですよ。先輩のこと」……へ?」
彼も私に目を合わせて、好きと伝えてきた。
頭が、一瞬で真っ白になった。
何て言われたかわからなくなってしまった。
だんだん理解していったので、
「へ、へ? あー! もう。からかってるのー。やめてよー、もう。それって、先輩としてってことでしょー」
精一杯の照れ隠しをした。
多分ひどいことを失言してしまったかも……。
言った後に、そんなこと考えてると。
「……俺は、一人の女性として好きですよ」
「……え?」
彼は私を膝枕しながらまっすぐ見つめて、そう返してきた。
本気? 今本気って言った?
頭がうれしすぎて真っ白になる。ドーパミンとかとんでもないかもしれない。
「えーっと、その」
何か、何か……うう……
「……不束者ですがよろしくお願いします」
多分ほかの人に見せてはいけないくらい気持ち悪いかもしれない笑顔で、声も上ずりながら返事をした。
照れてきたので手で、顔を隠す。
その直前、嬉しそうにしてる彼の顔が見えた。
この秋、私の春が来た。
ルンルンで気分ランランにスキップしながら帰る。こんな日は初めての経験過ぎて、
今日は私の中で記念日だ。
そんなことを考えていたら、
「そこの人、ちょっといいかしら」
ゴシック調の服を着た、真っ黒の見ず知らずの女性に話しかけられてしまった。
私は見ず知らずの女の人に、路地裏に連れていかれた。
「あなたが、カゼサキ・ハルね」
「あなたは?」
薬指に付けた十字の指輪を見せつけ彼女は答えた。
「私は、ハコブネ。彼の……カンジャ・ショウヤの相棒兼、フィアンセよ」
「え?」
「あなた、彼に気があるでしょ。悪いことは言わないから諦めなさい。私、泥棒猫に私は容赦する気はないの」
それが何を意味するのか、わからなかった。
「何言ってるんですか? 彼の彼女は私です」
とっさにそう答えてしまった。
「へえ……」
瞬間、彼女は私に近づきました。
「!?」
私の左手の薬指を握り、
「あら? 容赦しないって、私はさっき言わなかった?」
反対方向に曲げた。
「あ、くああっ」
「今日はこれで勘弁してあげるわ。でも、もしあなたがまだそんなこと言うのなら、その時は……ね」
外された指を抑えながら、恐怖でその場から逃げてしまった。
「痛い……」
さっきの場所からははるか遠くの場所についた私は思いっきり道路に転んでしまった。
外された指に当たったので、泣いてへたり込んでしまった。
『ハル!? 何があったの?』
聞きなれた私のことを心配する声が聞こえた。
「大丈夫。大丈夫だから」
フウが心配そうに、お店の窓から見つめてきた。
『その指……、大丈夫なわけがないでしょう! 何があったの!?』
「ほんと、ほんとなんでも……ショウヤ君……」
『彼に何かされましたの!?』
「それは違う!」
『では誰に』
「それは……」
私は、フウにさっき何があったかを話した。
『そうでしたか……それは厄介なことになりましたわね……』
「……」
『ですが、ショウヤ様と付き合えた事についてはグッジョブですわ。よく頑張りましたわね、ハル』
優しくこっちに話しかける。
『でも、その後はいただけませんわね。ハコブネ……ニュースとかで聞いたことがありますわ。確か当時の同級生を何人も殺害したとか……』
「そんな……そんな人がフィアンセなんて……。でも、あの時の告白したときのショウヤ君って、婚約者とかがいるって様子じゃなかったし……」
『そうですわね。まあ頭のおかしい方の考えることなんて、真に受けないほうがよろしいですわ。それよりも、今後のことを考えた方がよろしいですわ』
「そう、そうだね」
確かに何とかしないと、いろんな人にも危害が及びかねない。
「どうしよう……あ」
そうだ。
『ハル? どうかしましたか』
「フウ、私は女王様なのよね。それは信頼してもいいのよね」
『ええ。あなたは楽園の女王。何でも貴方の思い通りにできますわ』
「……考えができました」
「見つけましたわ、ハコブネさん」
駅近くの路地裏、指を外された場所に向かうとそこに彼女はいた。
「あなたは……カゼサキ・ハル?」
「調べましたわよ、あなたのこと」
死んだ目で私を見てくる。
「そのうえで、宣言いたしますわ」
そんな目に負けてたまるか。
「「私(ワタクシ)は、ショウヤ君の彼女です。あなたの物じゃない!」」
彼女は呆れた顔で近づく。
「……あなた馬鹿なの? 指外されるだけじゃ満足できなかった?」
どこかしらを攻撃してくるのだろう。今にも殺されそうな目に、立ちすくんでしまう。
だけど私は賭けてみる。ハルの提案に。
「別に、もうあなたから攻撃をもらうつもりなんてありませんわ。そして、彼のことをあきらめていただきます」
「呆れた。一人、非力なあなた。この場所で消すのは造作もない事よ。それをわかってるのかしら」
確かにあたり一面、だれもいない。誰も寄り付かない、真っ暗な場所。交番の近くとはいえ、人を殺すのには適している。
でも、そんな事はわかってる。ダイナミック自殺したいとかじゃない限り、わざわざ自分から選んだりしない。
「あなたは何をおっしゃっていますの?」
この場所だからこそ勝てる。
「え?」
「……確かに私一人できましたわ」
廃ビルの窓ガラスに手を置く。
そして、フウと入れ替わる。
「でも、私はすべて思い通りにすることができるの。多分そういう能力があるみたいなの」
「は? 何を言って……」
彼女がそういおうとした瞬間、
「ハル!!!」
私の、大好きな人の声が聞こえた。
「え?」
戸惑うハコブネ。
それもそのはず、私が事前に相談したのだから。
「大丈夫か? ……お前、いまさら何してんだ。まだ少年院のはずだろ! ユキノ!!!」
本当はいい感じのタイミングで、警察を呼んでもらう予定だったけどショウヤ君が来たのは予想外だった。
だが、これでちょっとあった恐怖心も私の中から消えた。
「なんで、ショーヤがここに……」
動揺するハコブネさん。
ショウヤ君は怒りをあらわにしていた。
「おまえ、もしハルに手を出したらその時は……」
「まって、ちがうの。私は」
「あの時言ったよな。もう会うつもりはないって」
「お願い、待って」
「……じゃあな。行きましょうハル先輩」
待って……、まって
遠くで泣きじゃくる、か弱い女の子の声が聞こえた。
かわいそうだとは思った。これでよかったのかなとか罪悪感も。
お巡りさんとすれ違う。
ショウヤ君が通報したのだろう。
私は彼の腕に抱きつき、彼と一緒にその場を後にした。
彼のお家。
怖い思いをしたとさっき話したら、今日は泊まっていいとのことだった。
「大丈夫でした? 指以外にもあいつに何かされたりしました?」
慣れているのか、私の指をテーピングしてくれた後にも確認してくれた。
うれしい。
少し甘えたくなった私は、
「大丈夫……じゃないかも」
そういって、彼の手をぎゅっと握った。
「ショウヤ君、ぎゅっと握り返してください。後、さっき見たいにハルって呼び捨てで呼んでください。この先もずっと」
正面を見る。
彼の顔は慈愛に満ちていた。
「それくらいなら、よろこんで。ハル」
そう言ってショウヤ君は、私の手を思いっきりギュッと返してくれた。
あったかい。
ほんとは最初ほど怖くなかったけど、合法的にいちゃつけるし、これくらい役得しても許されるわよね。
そう思いながら彼の体温を思いっきり楽しんだ。
リビングに座って、私は今日の晩御飯を買いに行ってる彼の帰りを待つ。
『よかったわね、ハル』
ふと窓を見る。
「どうしたのフウ?」
フウは寂しい表情でこちらを見つめた。
『あなたの成長がみられてよかった。これで、心おきなく楽園に帰れますわ』
そういって、体から光の粒子があふれ出てきていた。
「え? 何言ってるの?」
『最初から、そう楽園に言われていたのですよ。そして、それが叶った。だから』
そういって、フウは私の前から消えようとした。
「そんな事させないわよ、フウ」
『え?』
私がそう呟いた瞬間、散っていった光の粒子はフウの体に戻っていき、再構成された。
そして、窓にも手を置かず私の体にフウを入れた。
「あなたも私の、そばにいなきゃだめダメ。勝手に消えていくなんて許さないから」
「ちょっと!? というか、なんで急に体を変えて……というか、なんであなたも一緒にいるんですの!?」
フウは困惑を隠せていない様子だった。
「ただいまーって、どうしたハル?」
そんな中で、彼は帰ってくる。
というわけで、フウを慰めつつ、あいさつすることにした。
「何言ってるの? あなたも一生、そばにいるのよ。私たち三人、ずっと一緒よ。というわけで、ほら挨拶。体を共有しているとはいえ、あなたも彼と一生暮らすのだから挨拶はしておかないと」
「えーっと、そのハル?」
「ショウヤ君、ちょっと待っててね。ほらフウ、一度会ってるのだからあなたなら平気でしょ」
「でも、私は」
「もうしっかりしないとダメじゃない。いったん私は下がるから!」
「ちょっと!?」
そういって私はフウにバトンタッチした。
「えーっと、その、え? どういゆう」
「あー。その、お久しぶりですわねショウヤ様。今日もお日柄よく」
あまりにも日和ったあいさつに、そうじゃないでしょ! と耳打ちをめちゃくちゃしまくる。
「うるさいですわね、あなたが説明なさいハル!」
「ちょっと!?」
さすがに怒られた。
無理やり私に戻ったので、今までの事情とこれからを私から説明することにした。
「ハル!? 本当に大丈夫ですか、その、さっきフウさんの名前もさっき名乗っていたんですけど……」
「あー、えーっとショウヤ君。驚かないで聞いてほしいんだけどね」
「はい」
「この娘がなんて教えたか知らないですが、私二重人格なんですよ」
「え?」
「いつもは、私……ハルなのですが、たまにフウの面も出てくるときがあるのですよ」
「へ? 妹じゃなくて?」
「はい。なので、これからショウヤ君は私と一緒にフウも好きになっていただきます」
「ちょっとハル!」
「下がるんじゃなかったのフウ」
「そんなこと教えていただかなかったのですが!? というか、それいいのですかハル!?」
「だってこれから一緒に過ごすのですよ。あなただけのけ者になんてしたくないもの」
「そんな勝手な!」
「だって女王だもん」
渋い顔をしてフウはあきらめた声で、
「わかりましたわ。まったく貴方はもう、少々勝手になりすぎですわ。ワタクシとしては、この先思いやられましてよ」
和解できた私は、うれしくなって。ガッツポーズをとるのだった。
「えーっとそれで話はまとまりましたか?」
完全にこの場で置いてけぼりだったショウヤ君は、私たちの隣で正座して待機していた。
「ええ、ちょうど終わりましたわショウヤ様」
フウが答える。
そしてフウは、ショウヤ君の前に正座し正面を切って目を見開いた。
「そ、そそその、先ほどにも紹介上がりました。ワタクシ、サキカゼ・フウと申します。fふふふふ不束者ですがこれからずっとよろしくお願いします」
「お、おう、こちらこそよろしくお願いします」
告白する従者とそれにOKする王子様。
それを見届け、私はいいものが見れてすごくうれしい気持ちになりました。
これから私たち3人はこの楽園で幸せに暮らしていくのです。
それには、様々な困難が待ち受けていると思います。
ですが、これは絶対事項なんです。
だって、私は楽園の女王様だから。
二次創作で書く予定だったものをオリジナルにしたやつなのですが、ド直球すぎて正直これええんかとも内心思ってますが、まあええやろ。
一応次回作も書いてはいます。
ただ忙しくなるので更新は遅れてしまうかもしれないです。
<本当は入れたかったけど入れることができなかった裏設定>
ハルはフウについて、出会った時からずっと自分が部屋にいないと出てこないと思い込んでいたため、序盤のフウは部屋にしか出てきません。
ですが、途中でフウがハルの体を使って外に出ることを提案したことがあり、それが成功したこともあって、フウはハルが外にいても出てこれるようになりました。
ハルは、ユキノと戦う直前でそこに気づいたため、今回の作戦を思いつきました。
最初からハルじゃなかったことについては、万が一のことがあった際にハルの体を守れるようにフウが提案したからです。
ユキノは次の機会にでも