夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません! 作:佐久間2525
第一話 転生
僕のヒーローアカデミアという作品をご存じだろうか。
個性という能力が発現するようになった世界。そこで無個性の主人公がヒーローを目指してなんやかんやする物語である。
ちなみに僕は内容をあまり知らない。アニメを1・2話程度流し見した程度だ。主人公の幼馴染キャラクターに過去のトラウマが刺激されて先へ進めなかった…。面白そうだから気にはなっていたんだけど。
そんなヒロアカの世界に自分が転生したのだと気づいたのは2歳のころ。
テレビで「おかあさんといっしょ!」的な教育番組に、オールマイトがゲスト出演していたのを目撃した瞬間である。
「…おーるまいと?!」
「あら、もうオールマイトのこと知ってたのね~。パパに教えてもらったのかしら?」
「え、ほんもの?あにめじゃなくて?」
「オールマイトは本物のヒーローさんだよ~かっこいいねぇ」
「ひーろー?…ひろあか!?」
筋骨隆々のマッチョがいい笑顔で踊っている衝撃映像で僕は前世の記憶を取り戻した。と同時に、自分の生まれ変わった世界が僕のヒーローアカデミアの世界であると気づく。
しばらくは大混乱だったが、時間とともにそれも落ち着いた。2歳の子どもなんてものは遊ぶくらいしかすることがないのだ、思考を整理する時間も有り余る。
優しい母と、忙しいながらも家族を愛してくれる警察官の父に囲まれ、日々は平穏に過ぎていった。
「ライト~、今日は天気いいからお散歩いこうか?」
「うん!こうえん行きたいな」
「お友達来てるといいね」
今世の僕の名前はライトというらしい。随分とキラキラネームだ。
前世で聞きかじった知識では、この世界では個性と結びついた名前が多かったはず。「てつてつてつてつ」とかいうキャラの名前がTwitterでバズってたから何となく覚えてる。
ライトとかいう名前から考えられる僕の個性って「光」系じゃないかと予測しているのだが、どうだろうか。なかなか強い個性の予感。
黄猿みたいに戦えたらトップヒーローとか目指せたりしちゃうのでは。「光の速さで蹴られたことはあるかい?」って決め台詞にしちゃってさ。
個性の発現は一般的に3歳ごろまでに起きる。僕もあと2週間で誕生日がくるし、そろそろ個性出ていいと思うんだけどな。
そんなことを考えながら、母と公園までの道を歩く。つないだ手をブルブラと揺らしていると、なんだか胸騒ぎがした。荒々しい息遣いと、誰かが走ってくる大きな足音。母と顔を見合わせて、立ち止まったその時──角から男が飛び出してきた。
「チッ、どけ!!」
「わっ、」
「かあさん!」
フードを被った怪しい男に押されて、母がしりもちをつく。咄嗟に、座り込んだ母の前に立ちふさがって男をにらみつけた。心臓がバクバクとうるさい。
大柄な男だ、息も荒いし、目が血走っている。頬にある傷から血を流したその男は、一瞬迷ったそぶりを見せた。
母と、僕とをじっと見て何かを考えている。ポケットに手を伸ばして、こちらに近づく男の目が昏くて、背中に汗が伝う。
「この近くにオールマイト来てるらしいよ!」
「え、マジ!?どこどこ!?」
ふいに、その足がピタリと止まった。少し離れたところで交わされた会話。内容を聞いてかどうか、焦った様子でポケットから手を引き抜いた男は、こちらを一瞥することもなく走り去っていった。ぽろりと何かポケットから光るものが落ちたが、気づく様子もない。
「び、びっくりしたねぇ…」
「うん…。かあさん、怪我しなかった?」
「大丈夫よ、ちょっと転んじゃっただけだから」
「なんだか怖いおにいさんだったね」
「そうだね。なんだったのかしら」
しりもちをついたままの母を助け起こしつつ、地面にきらりと光るものが目についた。さっきの男のポケットから零れ落ちたものだ。
「これさっきの人の落とし物なんだけど、どうしよ──」
何となく手を伸ばして、拾い上げたものは銀色に光る指輪。
掌に乗せて母に話しかけた瞬間、頭が割れるように痛んだ。
『わあ、ありがとう!綺麗な指輪!』 この人は誰?幸せそうに笑う女の人。
『ごめんね伸くん、話があって…別れてほしいの』 話している相手は、さっきの男の人?
『っ、ぁっ、やめ゛っ、…!』 だめだよ。首を絞めちゃその人、息ができない。死んでしまうよ。
『お前が…お前が悪いんだ…』 力なく横たわった女性の指から、指輪が抜き取られる。荒い息と、走る音が聞こえて、
『これさっきの人の落とし物なんだけど』 僕は僕と目が合った。
「うぐ…ぉえッ…!」
「ライト、どうしたの!?」
頭が割れるように痛い。情報の洪水に溺れて、息の仕方すら忘れる。暗いアパートの一室、そこで彼女は死んでいる。さっきの男に殺された。
「ひ、ひとごろし、さっきの、アパートで、ひもが、首が、ヒッ」
「落ち着いてライト!どうしたの!?きゅ、救急車…!」
虚ろな目が記憶の中でこっちを見つめている。呼吸がなくなって、その目から光がなくなっていくのが何度も、何度も頭の中で繰り返された。
慌ててどこかに電話している母の声すら遠くなり、過呼吸のさなか、パニックのままに視界が暗くなった。そこからは覚えていない。
◇◆◇◆◇◆◇
といわけで僕の個性が発現した。
医者曰く「サイコメトリー」というそうだ。
壁越しに視力検査させられたり、鉛筆の持ち主がだれか聞かれたり、脳波を測ったり。なんか色んな検査をした結果、診断された結果である。
いや、全然名前と関係ない個性なのかよ。ライト要素どこよ。
なんて考えられていたのは束の間。
慌てて病院に駆けつけてきた父に事情を説明すると、険しい顔をした父にぐしゃぐしゃと頭をなでられた。
「お前と母さんが無事でよかった。大変だったな、ライト」
「うん…ちょっと怖かった」
「でもちゃんと母さんを守ってえらいぞ。さすが俺の自慢の息子だ」
力強い大きな手に撫でられると、ようやく肩の力が抜けた。もしあの時、近くにヒーローがいなかったら、僕と母さんも死んでいたかもしれない。そう思うといまさらになって恐怖がこみあげてくる。
「夜神さん、特徴に一致する男を確保したとのことです!あとアパートの方でも女性が亡くなっていたと連絡ありました。死因も絞殺で間違いないだろうと…」
「息子の前でやめろ、報告は向こうで聞く」
「アッ、すみません!」
父さんの部下の人だ。やっぱりあの人亡くなってたんだな、とか。男の人捕まってよかったな、とか。思うところは色々あるけど。
「…父さんのお名前って夜神っていうの?」
「ん?あ、まだ名字とか分かってなかったのかライト。夜神っていうのはお家の名前で、お父さんの名前は総一郎だ」
「じゃあぼくの名前って…」
「夜神月だよ」
…いや、ヒロアカの世界じゃなかったの!?!?
デスノートなんですか!?!?
個性とかある世界なのに!?
「どうしたライト、顔色が悪いぞ」
「だ、だいじょうぶ…ちょっと頭痛いから目つぶる…」
今日の衝撃の出来事全部吹き飛んだ。なぜ今まで気づかなかったんだ自分。前世の記憶取り戻してから半年くらいあったんだから気づけよ。
ということはナニ。
僕はいずれ新世界の神になる!とか言って顔芸をし始める運命にあるんですか…!?
そんなのってないよ…!
主人公:
夜神月に成り代わった平凡な男(前世の記憶あり)
賢くはないけど、体は夜神月のものなのでスペックは高い。デスノートはLが死んだところあたりまでアニメで見た記憶あり。ヒロアカの知識はあんまりない、1・2話程度しってる。
ごく平凡な倫理観、正義感の持ち主で、残忍なニュースを見ると犯人に怒りを覚えるタイプ。
トロッコ問題について、レバー切り替えたら自分の選択で1人殺すことになっちゃうな…と思うタイプ。実際に自分がレバーを切り替える立場になると、短絡的な思考で咄嗟に人数少ない方に切り替えて後悔する人。気に病む