夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません!   作:佐久間2525

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第十二話 方針

 

 

「作戦会議だ」

『…ン?』

「僕がこのノートを有効に使うための方向性を考える」

 

自分の部屋、机に向き合いながら黒いノートの文字をなぞる。ルールが細かい文字で書き連ねられているソレは、名前を書くだけで人を殺せる…人知を超えた道具。

 

「ノートを使うのは、犯罪を減少させるためだ」

 

目的と手段だけは履き違えないようにしなければ。この先どれだけ心が擦り切れようと、僕は原点を見失わない。

他者のために自分を犠牲にしてしまう優しい人たちが傷つかない世界を作りたい。そのために、ノートを使う。

 

「しかし早速と犯罪者を大々的に殺すわけにもいかない」

『なンでだ?ノートで殺したってお前の仕業とはバレないぜ』

「個性社会をなめすぎだよリューク。犯罪者の死亡に一定の法則性があると見抜かれたが最後、警察かヒーローか…誰かは必ず僕を見つけ出す」

 

多少時間は要するだろうが。

それは、いい。覚悟の上だ。いつかは報いを受けるつもりではあるから。

問題は、警察かヒーロー以外の者にバレた時のこと。

 

悪意のあるヴィランがノートの力を知ったのなら。それが一番恐ろしい。

 

「なぁリューク、このルールって本当のやつか?」

『んあ?なになに…』

 

ノートの表表紙、その裏側。小さな文字で書かれたルールを指し示すと、死神はギョロリとした目でそれを追った。

 

〈以下の人間はデスノートで殺すことができない。人間界単位で124歳以上。生後780日未満。残りの寿命が12分以内〉

 

『ああ、本当だぜ。流石に124年以上生きてる人間なんざ見たことないから、試したことはないけどな。生まれたてのやつは確かに殺せなかったぜ、ケケケ』

「そうか…」

 

これは嘘のルールでも何でもない。

ということは、だ。

 

以前オールマイトや黒霧、青山の記憶を読んだ時に対面した悪意──超常黎明期から裏社会を牛耳り、今もなお伝説上の存在としてひそかに語られる存在。

 

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一番厄介そうな奴がよりにもよって。

 

「敵連合のブレーンは奴だ。少なくとも本人と連合の両方が無力化されるまでは大々的に動けない」

『ふゥん。無力化って、そいつが自然に死ぬのを待つのか?』

「いや、あと数年もしないうちに奴は倒されると思うから。それまでは細々とやるよ」

 

なあ緑谷。

君なら、僕みたいな卑怯な力を使わなくたってオールフォーワンを倒してくれるだろう?OFAを受け継いで、不屈の意思でここまで突き進んできた君なら。

強くなる手伝いはいくらでもしよう。障害物は取り除こう。

 

だから…いつか君にオールフォーワンを必ず倒してほしい。僕はその日が来るのを楽しみに待っているから。

信じているよヒーロー。

 

「さて、まだ捕まっていなくて、敵連合とも関係がなくて。死んだ方が世のためになるようなヴィランは…誰がいたかな」

 

 

◆◇◆

 

 

職場体験明け、月曜日。教室は活気に満ちていた。

髪が8:2になった爆豪を瀬呂と切島が腹を叩いて笑ったり、各々の武勇伝を披露したり。たった5日間とはいえプロヒーローから直接教えを受けられる期間は、それぞれに実りが多いものになったようだ。

 

「飯田、怪我大丈夫かよ?」

「ああ、この通り!リカバリーガールにも診てもらったからね、完全復活さ」

「緑谷のやつがメール送ってきたときは何事かと思ったけど、本当に危なかったんだな。通報しといてよかったぜ」

「ヒーローが大勢来てくれて助かったよ。ありがとう」

 

そう言いつつ朗らかに笑う飯田の表情に影はなく、クラスメイトは密かにほっと息をついた。お人好しの集まり、ヒーロー科。飯田がずっと思い詰めている様子を心配していたのは、緑谷や夜神だけではなかったということである。

 

ニュースで様々な憶測が飛び交っているヒーロー殺しの死。興味がない訳ではなかったが、流石にそのことを直接聞くような無神経さはなく。だれもステインの名前を出すことなく、職業体験について語り合う時間が流れる。

 

「はい、HRはじめます。早く席に着け」

「せんせ~まだ夜神くんが来てませ~ん」

「アイツはまた家の都合で休みだ。…ちっ

「うわ、舌打ちした」

「相澤先生、機嫌悪っ」

「今日も時間割に変更なし。朝のHR終了。無駄口叩いてないで教室移動しろ」

「そして相変わらず連絡が爆速」

 

7月には期末試験あるから勉強しろよ、と最後に投げかけた言葉で教室が阿鼻叫喚になるのを背に、担任はのそのそとドアから退出していった。

 

話題はテストの話に移り変わる。順位の低い者たちはこの世の終わりかのように嘆き、高いものは「普通に勉強していれば大丈夫なのでは?」と余裕の表情。あまりの落差にぎゃいぎゃいと騒ぎが広がる中、ふと気が付いたように上鳴が「夜神ってよ」と声を上げる。

 

「アイツあんなに授業休んで大丈夫かよ。テストやべーんじゃねぇの?」

「ぷぷ、あんなに『僕賢いです』って感じの顔して、実はオイラより順位低かったら面白いのに」

「なんか週一くらいで休んでるしワンチャンあるかもよ」

「あら、ご存じありませんの?夜神さんは全国模試一位常連。このクラスでも一番成績がいいかと思いますけれど」

クソ!!そんなこったろうと思った!!

「何なんだよあいつ!!強個性で勉強できてイケメンでよ!!逆に何を持ちえないんだ!!!」

 

騒がしい男子が僻みに舌打ちをし、負けず嫌いの爆豪が静かに眉を顰め、女子がやれやれと首を横に振る。いつも通りの騒がしい1年A組だ。

 

そんな中、飯田は静かに、当人がいない夜神の席を眺めていた。

 

「飯田くん…その、もう大丈夫?」

「ああ、怪我ならもうこのとおり──」

「怪我じゃなくて。その、お見舞いに行ったとき、なにか悩んでいるような気がしたから。まだあんなことがあったばかりだから、無理に聞くのも悪いかと思ったんだけど。でも話をせずに後悔したばかりだから、やっぱり聞こうと思って…ごめん口下手で。でも、悩んでるなら話を聞きたいんだ」

 

友人の言葉に、僕は人に心配をかけてばかりだな、と息をつきつつ。飯田は笑って見せた。

 

「大丈夫、実はあのあと夜神くんもお見舞いに来てくれてね。話を聞いてもらったんだ」

「え、そうなんだ…!」

「彼にも心配をかけたようだけれど…励まされてしまったよ。彼の期待に応えるためにも、僕は兄さんを超える立派なヒーローになりたい」

 

そう言い切る様子に嘘はなくて、緑谷も安心した様子で表情を緩めた。

 

「それにしても今になって思えば、彼の様子が少し変だったのが気にかか──」

「おーい二人とも!!授業遅れるよ!!移動しなきゃ!!」

「ム、それはまずい!!委員長たるもの時間は厳守せねば!!行くぞ緑谷くん!」

「えっ、あ、うん!」

 

タイミングが少しずれる。それだけである男の辿る運命が決められていく。それに気づかないまま、彼らはいつも通りの日常へと帰って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

物言わぬ死体に、手袋を外してそっと触れる。

霊安室に入れられていた体はひんやりと冷たい。思わず肌が粟立った。

 

「…心臓麻痺ですね、個性の使用痕はみつかりません」

「検死結果と一致するね。ご苦労様」

 

タイミングがあれだったから何らかの個性かと思ったが、まあ杞憂だよな。公安の職員はそう呟いて、手元の紙に何かを書きつけている。その様子を横目に、僕は白い布をそっと捲って、顔を覗き込んだ。マスクも何もかも取り払われた素顔。自ら鼻を削ぎ落した跡には、彼の狂気が相まみえる。

 

「これ平日にわざわざ視る必要ありました?どうみても病死じゃないですか」

「保須襲撃事件でこっちも色々と慌ててね。なんでも情報が欲しいんだ。他に何か読み取れたかい?」

「…ヒーロー殺しと敵連合は一度接触していたようです。方向性の違いから決裂して、仲間にはならなかったようですが」

「なるほど、有力な情報だ。敵連合は仲間を集めたがっている…と」

 

そうか、僕はこれまでも不可解な死を遂げてきた人の死因を特定してきたから。ノートで僕が殺した人を僕が視る、なんて状況が発生するんだ。一つ勉強になった。立ち合っている公安職員は疑うそぶりも見せない。

 

「で、ついでに視て欲しい男がいてね。この前、月くんが突き止めてくれた麻薬売買ルートを辿ってたら、なかなかの大物が釣れたんだ。けどまぁ口の堅いことに顧客情報も何も吐きゃしない」

 

一通りステインの死体から情報を読み取り、伝え終わると次にやることを伝えられた。今、相当に顔色が悪い自覚があるのだけれど、気にもされていない。いつもの個性過剰使用だと思われている。ぶっ倒れる前には自己申告するので、基本、彼らから声をかけられることはない。

 

彼とはまだ数回しか仕事したことないから知らないのかな。僕は、この程度の個性使用で体調が悪くはならない。そこに気が付けばやけに僕の様子がおかしいのはバレそうだけれど…。まぁいいか。気づかれない分にはありがたい。

 

「奴の名前は義爛。それなりに名の通ったブローカーさ。引き出せるだけの情報を引き出してほしい」

「了解しました」

 

一瞬、死体の寝そべるベッドを振り返り、その白く固まった肌を目に焼き付ける。後悔はしない。そう決めたから、謝ることもしない。ただ、記憶に刻むように骸を見つめるだけだ。

 

「月くん?移動しますよ」

「はい。行きましょう」

 

さて、いつも通りの仕事をしよう。

 

……

 

『個性を消すクスリねぇ。ほんとにそんなモン作れんのかい?』

『あぁ、必ず。ただ作るのに金が足りん。投資をしてくれる奴を集めている』

『それが本当に出来るなら金を出したい奴はごまんといるだろうし、紹介もできる。…が、まだ現物がないんじゃなァ。どうやって作るモンなんだ?』

『それは言えない』

『じゃあ金も諦めなガキ。もう少し商売のやり方を勉強してくるこった』

『……。俺の個性と、もう一人。二つを使って作るクスリだ。理論上は必ず個性を消せる』

『だぁかぁら。理論とかンなもん知らねェのよ。せめてその個性持ちここに連れてきな。話はそれからだ』

『ッチ!いい、話は決裂だ。時間をとらせたな』

『若頭。コイツ殺っときやしょうか』

『やめろ。これでも有名なブローカーだ、殺すのはまずい。…先見の明はないようだがな』

『おうおう、吠えるね坊ちゃん。またそのクスリが完成したら咬ませてくれや。流通は手伝うぜ?』

 

会話が、頭に流れ込む。

死穢八斎會の若頭…治崎廻と義爛の会話の様子。決裂したようだが、不穏な内容だ。公安の職員に報告するか一瞬迷って、口を閉じる。

 

「裏社会に関してかなり広い情報があるようなので、そっちはあとで報告します。急ぎの報告として、敵連合に人材を紹介してほしいと頼まれて義爛が当たりをつけていたメンバーを伝えます。一人目、分倍河原仁。個性は『二倍』で1つのものを2つに増やす強個性です。所在地は…」

 

とりあえず、死穢八斎會の件に関しては自分で調べたい部分があったので、伏せて報告を始める。公安の目は敵連合に引き付けられているので問題はないだろう。

 

トガ ヒミコ、荼毘。ニュースで見たことのあるヴィランもいるし、逆に今まで存在を知らなかった者もいた。特に荼毘に関しては、義爛も情報をほぼ持っておらず、炎系の個性ということしかわからない。両名とも特に敵連合に興味のある様子ではないらしく、義爛が何度か説得するような様子を見せていたのが印象的だ。

 

「よし、あとで書面でもまとめてくれ。捜査班組むぞ。1班は分倍河原の調査と確保を…」

 

まぁ、彼らに関しては公安に任せておこう。後ろ暗い捜査をする集団でもあるが、腕は確かだ。先んじて身柄を押えられたら敵連合の戦力増強は防げる。オールフォーワンの足を引っ張るうえではそれなりの一手だろう。

 

『地下室から小さい子の泣き声が聞こえるって噂だぜ』

『勝手にのぞくと若頭にバラされる』

『……。俺の個性と、もう一人。二つを使って作るクスリだ』

 

僕は、こちらを調査する。

 

「すみません、今日はもう頭が痛くて…。個性使えそうにないので帰りますね」

「ああ、気が付かなくて悪かったね。貴重な情報感謝するよ。送って行かせるから少しだけ待ってくれるかい」

「いえ、今日は父が早上がりらしくて。一緒に帰る予定なので大丈夫です」

「そうかい?君も狙われている可能性があるからくれぐれも気を付けてくれよ」

「もちろん、承知していますよ」

 

 

◆◇◆◇

 

 

「珍しいなライト。父さんに迎えに来てほしいだなんて」

「最近忙しくて話せてなかったから。いいでしょ、可愛い息子のわがまま聞いてよ」

「はっはっは、まぁ偶にはいいな。どうだ、昼飯まだだろう。何か食べに行くか」

「そうだなー、この前テレビで見た店で美味しそうなやつあったんだ。連れて行ってほしいな」

「いいぞ。どこの店だ?」

 

珍しく午前だけの出勤の父は、電話をするとすぐに駆けつけてくれた。厳しそうに見えるが意外と息子に甘い父である。そこに付け込んでいる罪悪感を感じつつ、車の外。視線の先に目的のものが目に入ったのを確認して、うぅ、と小さくうめく。

 

「ぅおぇっ…ごめん父さん…個性使いすぎてちょっと気分悪い…」

「だ、大丈夫かライト!?いったん車止めるぞ」

 

常備されているエチケット袋を握りしめながら俯いて見せると、焦った様子の父は途端に慌てて車を止めた。運転席から降りて心配そうに背中をさすってくれる手にまた罪悪感が募る。

 

「まったく公安の連中は…!一体どこまでうちの息子を扱き使えば気が済むんだッ!また今度抗議してやるからなっ」

「いいよ父さん、僕が望んでやってることだから。…ごめん、お水欲しいんだけど買ってもらえたりって…」

「…はぁ、まったく。どうしてお前はそう…。分かったよ、買ってくるから待ってなさい」

 

重苦しいため息とともに、自販機を探して父が遠ざかっていく。その背が見えなくなったのを確認して、僕は小さな声で死神を呼びつけた。

 

「リューク、おい。リューク」

『なんだよライト。体調はいいのか』

「もともと別に悪くないよ。それより、あそこの大きい屋敷見えるか」

『ン…あの庭もでけーやつか。見えるぜ』

「あれに地下室があるはずなんだ。ちょっと様子を見てきてくれ」

『ハ?なンで俺がそんなことをしないといけない?めんどくさいし嫌だね』

「りんご飴」

『ん?』

「瑞々しいりんごを真っ赤な甘い飴でコーティングしたお菓子だ。パリパリの触感と、中のジューシーな触感が絶妙なハーモニーを奏でる」

『り、りんごのさらに上があるのか・・・!?!?』

「キラキラと艶めく様子はまるで宝石みたいなお菓子だぞ。ああ、働き者の死神がいたらついつい買っちゃいそうだなー。どうするかなー」

『…しゃーねえなあ!!いっちょこのリューク様がおつかいに行ってやろうじゃねェの!!』

 

びゅん!と張り切った様子で飛び出していった黒い影を見送る。これでもし。僕の想定するようなものが何も見つからなければ。その時はまた現時点での情報を書面にまとめて公安に出しておこう。

でも、もし最悪の想定通りなら…。

 

「ライト。ほら、水だ」

「ありがとう父さん。少し休んでいたら楽になってきたよ」

「本当か?無理はせずに、今日はもう家に帰ろう」

「ええ、折角だからご飯行こうよ。体調はもう大丈夫。父さんとこうしてゆっくり出来る機会なんてそうそうないから、何だか勿体ないよ」

「…本当に大丈夫なんだな?」

 

念押しする父にしっかりと頷くと、しぶしぶといった様子で車を発進させ始めた。死神はノートの持ち主の所在は分かるらしいから、まぁ勝手に追いかけてくるだろう。

 

「(杞憂だといいけど…)」

 

あの日本屋敷の地下深く。そこで行われていることが、どうかおぞましいものではありませんように。

 




ネクストコナンズヒーント!ターゲットは…ペストマスク!
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