夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません!   作:佐久間2525

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職場でインフルエンザもらって死んでます。


第十五話 暗雲

 

 

 

「敵連合の所在はつかめましたか」

「いや、情けないことにさっぱりでね」

「相手の個性も個性ですからね…」

「そうなんだよ。ワープってやつがまぁ厄介で」

 

馴染みの公安職員は疲れた顔で目頭を揉んだ。この人も目良さんと一緒でろくに寝ていないんだろうな。可哀想に。

 

「月くんも、休みに悪いね。ここのところ毎週だろう」

「僕の個性が社会のお役に立つのであれば、ヒーローの卵としてこれ以上に光栄なことはないですよ」

 

本心ではある。

最近は自己保身の面が強くなっている感も否めないが。

 

死穢八斎會の件から既に4日が経過。公安内部であの事故について話題に上がることさえない。激情に任せて随分派手にやってしまった自覚はあったが、まだ尻尾は掴まれていない様子。

しかし完全に油断はできないのが個性社会の怖いところだ。気が休まる日がない。

 

「義燗の記憶で視たヴィランはどうですか?」

「そっちの方も目下捜査中。渡我被身子は個性で顔を変えられるため所在不明、荼毘は出自も所在も不明、引石健磁は目撃情報があったため捜査員を派遣しているところだ」

「…そうですか」

 

少し落胆する。

あれだけの情報を得ておきながら、警察もヒーローもまだ身柄の確保に至っていないとは。

 

この間にそいつらが敵連合に勧誘されたらどうする。また犯罪をおかして被害者が出たら。誰かの命が失われたら、取り返しがつかないじゃないか──。

 

なんて

 

「(僕がノートに名前を書けばいい話なのに、なに人のせいにしようとしてるんだろうな)」

 

思わず自嘲が溢れた。

 

本名が分からない一部は別として。現時点で名前も顔も分かっている数名をノートに刻む。たったそれだけの行為で、僕が懸念するいくつもの悲劇を防げるはずだ。

それなのに行動を起こしていない時点で、彼らを責める権利など僕にはない。

 

しかし、ステインも治崎たちに関しても僕は個性を使って彼らの罪を確かめた。彼らのせいで不幸になる人が今後も現れると確信したが故に。ノートに名前を書くなどという悍ましい行為を実行に移せたんだ。

 

…つくづく小心者で臆病な自分が嫌になる。この期に及んで冤罪で人を殺してしまうことに怯えているんだから。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「…? 何ですか、この叫び声」

 

自己嫌悪にまた陥りかけた時、薄らと届いた叫び声に現実に引き戻された。男性の声だ。穏やかな様子ではない。

 

「分倍河原仁だ。彼だけは君に教えてもらった所在地で確保できてね。取り調べをしているんだが、ずっとあの調子らしい」

 

分倍河原…たしか敵連合に義燗が紹介予定だった男だ。

 

「もしかして今日僕が呼ばれたのは…」

「彼の取り調べに協力してもらうためさ」

 

今日も頼りにしてるよ、と肩を一つ叩かれて、いつものように頷いておいた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

あぁ、裂ける!俺が裂けてしまう!

 

あああああぁぁぁッ!?!!

 

喉が痛い。今叫んでいるのは俺か?オレじゃねェよ。誰だ?俺か?

 

俺って誰だ。誰が俺なんだ。分からない。

 

いよいよサツにも捕まっちまうし、俺の人生ツイてないことだらけだ。何が悪かったっていうんだろうな。

 

裂ける!!ぁぁあ、裂けちまう!!

 

躓き方によっちゃ、人間ってのは何処までも転げ落ちていく。ここがどん底だ、人生の終着点だって思ってもドンドン更に下が見えてくるんだ。そこまで落ちた人間に、這い上がる術なんてものはない。

 

「おい、暴れるな!!敵連合との接触はあったのか答えろ分倍河原!」

「ヒッ、誰だ畜生!!お、俺か!?俺は俺か!?

「…チッ、狂人め!!」

「失礼します。取り調べの応援にきました」

 

裂ける。形を保てなくなる。俺は消えちまうのか?俺は俺じゃなかったのか?じゃあ誰が俺なんだ?

もう嫌だ。何も分からない、苦しい、辛い、誰か助けて──

 

「大丈夫です、落ち着いて」

 

誰かに手を握られたのと同時。頭が急に大きな布で包まれた。

あぁそうだ。包めば一つなんだった。

 

「フゥ…フゥ…」

「そのままゆっくり息を。大丈夫ですよ。貴方は本体です」

「お、俺は俺なのか?違うよな!」

「間違いなく貴方が本体ですよ。分身ではないです」

 

布をかけて来た人物は、俺の手を力強く握りしめて頷いた。布の合間からチラリと顔を覗く。まだまだ年若い、学生かと思うような男だ。とても警察として働くような年齢には見えない。

 

「こんにちは。僕はLと言います。貴方の名前を聞いてもいいですか」

「ひ、ヒーローかよ。名前なんざ聞かなくても知ってるだろ警察様方はよ。教えてやるぜ!」

「知ってますけど、貴方の口から聞きたいです」

 

不思議なやつだった。警察やヒーローから見たら俺みたいに一度転落したやつなんてゴミクズみたいな存在だろうに、微塵もそんな素振りを見せない。口から飛び出す正反対の言葉に関しても、気にする様子すらなかった。

 

「お願いします」

 

何処までも真っ直ぐな目でこっちを見やがる。どうせこいつは違う世界の住人だ。見れば分かる、恵まれた立場に生まれ育ったやつの空気感。

 

正直、気に食わない人種だが…裂ける前に助けてもらった恩があるから、黙りでいるのも気が引ける。

 

「…分倍河原仁だ。アンタ、俺に何の用だ?興味ねェな!」

「義燗というブローカーに持ちかけられた話について伺いたくて来ました」

 

聞けば敵連合とやらを調査する途中で俺は捕まったらしい。とばっちりじゃねェか!義燗から存在は聞いてたけどまだ会ったこともねェよ!

 

やっぱり俺ってツイてないよな。運がない奴っていうのは何をやろうとしてもダメなんだ。

 

何だかヤケっぱちな気分になって洗いざらい喋った。どんな話を持ちかけられたか、今までにどんな犯罪をおかしたか、自分が如何に持たざる人間であるのか。

 

脈略も時系列も何もないグダグダとした話を、Lと名乗った青年は静かに聞いていた。肯定も否定もされず、ただ時折相槌だけが落とされる。

 

そんな些細な反応にですら嬉しいと思ってしまうあたり、俺は随分人との関わりに飢えていたらしい。

 

「…ぐらいだな。どうだ、しょーもない話だろ。最高に面白いよな!?」

「いいえ。勇気がいるでしょうに、話してくれてありがとうございます」

「え、う」

「分倍河原さん」

 

いつかのあの刑事を思い出す。16の時、バイクで事故っちまったとき調書をとった人。

 

『人生躓いてもやり直せますから』

 

そんなのは思い切り躓いたことのない人間の言い草だと、今になると思う。どうしようもなく持っていない人間ってやつは、転び方も派手なんだ。ちょっと段差に足を取られるとかそんな次元じゃない。

 

この青年も、同じことを言うだろうか。大変でしたね、でも大丈夫ですよ、立ち直れますよって。

 

違うんだよ。一度決定的に躓いた人間ってやつはもう戻れないんだ。

 

彼の口から無責任な慰めが出ないか、こんなに警戒してしまうのは何故だろうか。短時間でも自分より随分と年若い男の優しさに絆されたからこそ、その言葉で傷つくのを恐れているとでもいうのだろうか。

 

「過去は無かったことに出来ません。貴方の考える通り、一度犯した罪は消えず、転落した人間に社会は冷たい」

「…ッ、そうだな。ンなことねェよ!

 

予想外に、青年はそんなことを言った。慰められたくないと思いつつ、バサリと切り捨てられるのもどこか悲しい。いつも俺はどっちつかずだ。

 

「それでも、貴方の罪はまだ償える範疇にある」

「な、そ、相当盗みとかしたぜ?してねェけどな!」

()()()()()()()()()()。傷つけていない。その一点で、僕は貴方という人を尊重します」

 

ひたり、とまた真っ直ぐな眼差しがこちらを向く。今まで見たどのヒーローとも違う、翳りを帯びているのに光っている目。

 

「心根が優しい貴方にどうか、この先は幸が多いことを祈っています。今日はお話ありがとうございました」

 

上着はどうぞ、あげます。また覆面か何かを差し入れるように担当官には伝えておきますね。と言い残してLと名乗った青年は去っていった。

 

「…若いのにいい奴だったな…。いけすかねェ野郎だ!」

 

頭に被せられた上着を解けないようにギュッとくくりつける。

 

まだ俺も、未来を夢見ていいんだろうか。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

「嘘はありませんでした。まだ敵連合とは接触していなかったようです。犯罪歴も窃盗などが主なもので、傷害罪等はなかったみたいですね。十分、更生可能な人かと思います」

「ご苦労様。新しい手がかりは得られなかったけど彼の個性は便利そうだ」

 

報告に、公安の職員は満足げに頷く。あれだけパニックになっている人を相手にもう少し対処は考えてもらいたいものだ。

 

「心根の優しい人です、多分荒事には向きませんよ。くれぐれも、向き不向きは考えてあげてください。酷使するような事があれば僕も見過ごせませんから」

 

正直、公安という組織に関して僕は知らないことも多い。彼らの善悪の基準を計りかねているともいう。だからこその警告。便利な個性持ちを見過ごすような人達ではないことを知っているので。

 

「上にはそう報告しておきます」

 

しばらくは目を光らせておいた方がいいかな。

 

 

……

 

 

 

まだ引き返せる段階の人だ。サイコメトリを使ってそう思った。同時に、ノートで無作為に名前を書かなくて良かったとも。

 

分倍河原仁は犯罪者ではある。敵連合に入っていたらその色に染まっていた可能性だって充分に考えられる。素直で、何にでも染まりやすそうな人だったから。

 

可哀想な人でもあった。中学生という年若い時分に天涯孤独の身に。16歳で事故を起こして職も住処も失い、転がり落ちるように犯罪人生。誰も手を差し伸べはしなかった。

 

彼のように、どうしようもない過程で人生を転げ落ちていく人なんてきっと沢山いるのだ。大多数のヴィランは育った環境や境遇に何かを抱えている。救われなかったから人に牙を剥く。

 

情状酌量の余地なんてものを考え始めるとキリがない。

 

「彼はまだ大丈夫…。引き返せる、真っ当な道に」

 

だからこそ人を裁くという行為は難しく、法で雁字搦めに縛られている。

 

そういった手順を全て無視して人を殺す僕の行いは──結局のところ何処まで行ってもエゴでしかないのだろう。

 

『オマエはもう引き返せないところにいるのになァ』

 

ケタケタと愉しそうな死神には返事をしなかった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

午前の授業が終わり、昼食に向かうタイミング。ピンポンパンポン、と校内放送のチャイムが鳴った。

 

『1-A夜神月くん。至急職員室まで来るように』

 

名指しの放送に、教室内の視線が一斉に僕の方を向く。

 

「ヤガミンなにやらかしたん?」

「また相澤先生怒らせたのか?」

「なんで僕が怒られる前提なんだよ」

 

とクラスメイトに反発はしてみたものの、覚えがなくて内心冷や汗である。何したっけ?

 

最近の自身の行動を振り返れば後ろめたいことしかないので、正直怖いのだが。

 

「失礼します、1-A夜神です」

「来たか。校長室入れ」

「エッ…ハイ」

 

恐々とした気分で職員室に入るのと同時に、待ち構えていた相澤先生に声をかけられる。本当に何。校長室って初めて入るんだけど。

 

「相澤です。夜神を連れて来ました」

「ありがとうなのさ」

「失礼します…って、あ」

 

黒いヒーロースーツの背中を追い、校長室に足を踏み入れたのと同時。膝あたりにぽすりと軽い衝撃が走った。

 

何事かと下を見てみると、つい数日前に会ったばかりの白い少女が僕のズボンにしがみついている。

 

「壊理ちゃん?」

「ご、ごめんなさいエルさん」

「どうしたの。目元赤いね」

 

足元に突進して来た少女に目線を合わせるためにしゃがみ込む。可愛らしいワンピースを着ているが、表情は何処か暗いものだ。先ほどまで泣いていたのか目が充血している。

 

「病院でまたパニックを起こしてしまったようでね。個性が暴発したみたいなんだ」

ごめんなさい、ごめんなさい…

 

校長先生から聞いた話によると。壊理ちゃんは現在、警察の保護下という扱いになっており、病院に留め置かれていたそうだ。

 

非道な実験に遭っていたという過去を踏まえると、血縁の死穢八斎會・組長の下に戻すわけにもいかず。怪我が治るまでは病院、その後は孤児院という話になっていた。

 

しかし、今日は注射を見た瞬間にフラッシュバックを起こしてパニックになり、個性を発動させてしまった。幸い周囲の看護師もすぐに離れたので人的被害はなく、対応歴のある相澤先生に連絡が来たと言う話だった。

 

「そう、怖かったんだね。大丈夫だよ」

「でもまたわたし…」

「今日は自分で落ち着けたじゃないか、すごいよ。大丈夫、壊理ちゃんの個性は誰も傷つけない。ゆっくり慣れていこう」

「うん…」

 

壊理ちゃんはまたコントロールできない個性に恐怖を抱いてしまっているようだ。可哀想に。何故こんなに小さな子が自分の個性に怯えなければいけないのか。

 

「…というわけで、うちで保護することにしたのさ!」

「校長先生。話を三段くらいとばしてます」

「いつも話が長いと言われるから簡潔にしたつもりさ」

「極端すぎます」

 

目を赤くしたままの壊理ちゃんをソファに座らせてあげつつ、校長先生の話に耳を傾ける。

 

雄英は国立の教育機関であると同時に、個性研究機関としての一面も併せ持つ。

非常時には個性をコントロールできない民間人の保護も担当している施設らしい。

 

壊理ちゃんの個性が暴走しても止められる相澤先生の存在。そして個性コントロールをアドバイスできる僕がいることから今回の保護に踏み切ったとのことだ。

 

「基本は支援員が付くけど、夜神君もたまに様子を見てあげてほしいのさ。その方がきっとその子のためになる」

 

「もちろんお任せ下さい。壊理ちゃん、早速クラスのみんなを紹介するよ」

「…迷惑じゃ、ないですか?」

「全然!壊理ちゃんと遊べて嬉しいよ。みんなきっと喜んでくれると思う」

 

 

 

……

 

 

 

「というわけで、本日からたまに教室に来る壊理ちゃんです」

「よ、よろしくお願いします…」

 

ぺこり、と僕の腕の中から小さく頭を下げる少女に、クラスから歓声が上がった。主に女子勢。

 

「かわいー!!!」

「髪の毛ふわふわやー!」

「エリちゃん!よろしくねー!」

「妹を思いだすわ、ケロ」

 

きゃあきゃあと持て囃され、頬っぺたを突かれ大混乱といった様子の壊理ちゃん。嫌そうではないので様子を見守りつつ、相澤先生にアイコンタクトをとる。寝袋に入ったまま頷かれたので5時間目は好きに使っていいらしい。

 

「まだ諸事情あってあまり外では遊べない子なんだ。5時間目フリーらしいから一緒に遊んでくれない?」

「そんなのモチのロンじゃん!」

「何して遊ぶー?」

「折角なら広いところ行こうぜ!せんせー!演習場借りていいですかー!」

「好きにしろ」

「いぇーい!」

 

体の至る所に包帯を巻いた少女。事情あっての保護。気になるところなんていくらでもあるだろうに、それを見せる事なく明るく振る舞えるのは流石ヒーロー科だなと思う。

 

 

「何しようか。鬼ごっことか?」

「隠れんぼは?」

「氷鬼ー!」

「だるまさんがころんだ!」

「ム、意見が多いな。ここは僕が委員長として採決を取るべきか?」

「いやいや、そこは本人に聞いてあげようよ。エリちゃん、何して遊びたい?」

 

演習場に移動して来たクラスの面々は、様々な遊びをあげてワイワイと盛り上がっている。芦戸に尋ねられた壊理ちゃんは、うろ、と目を彷徨わせて顔を俯けた。これは…。

 

「ご、ごめんなさい」

「どうしたの?謝らなくて大丈夫だよ」

「したい遊びなかった?他のにしようか」

 

急にしゅんとした様子の少女に、天下の雄英生が揃いも揃って狼狽えている。

 

僕にはなんとなく壊理ちゃんが俯いた理由がわかる。なんせ彼女の記憶を視た限り、そんな遊びは一度もした事がないのだ。どれを選んだらいいのか分からなくなってしまったんだろう。

 

それにまだ人との接触は怖い…のかな。今日は見るだけの遊びが良さそうだ。

 

「壊理ちゃん。今日は僕がやりたい遊びを選んでもいいかな」

「…!うん」

「ありがとう。そうだな、見るもの…。サーカスって知ってる?」

「絵本でよんだことある…!」

 

「ここに居る人達ね、みんなすごい人だから似たようなことできるよ。見てみたい?」

「「「エッ」」」

「うん…!!」

 

言うと同時、少女の期待の視線が向けられる。キラキラと輝く目に、突然の無茶振りを受けたクラスメイトはざっ!と円陣を組んでコソコソ話を始めた。

 

「サーカスって何だ、玉乗りとか?!」

「空中ブランコとかじゃね…!」

「火の輪くぐり!」

「…あれ、意外とできそうか」

「俺のテープで取り敢えず空中ブランコするか」

「私の個性で浮かせちゃえば安全やね!」

「轟くんの個性も見せ方によっては口から火を吐くみたいにできないかな」

「めっちゃいいじゃん!」

「爆豪とかセンスマンだし、空中火の輪くぐりとかできるんじゃね?」

チッ、なんでそんなカッタリィこと…」

「出来なさそうな感じ?じゃあいいや」

「だれも出来ねェとは言ってねぇわカス!!!くぐり殺したるわ!!」

「ナイス〜」

 

チラチラとこちらに視線を送ってくるクラスメイトに激励を込めて、グッ、と親指を立てる。途端にブーイングが返って来たが僕は壊理ちゃんの椅子になるという大役があるので動けんのだ。悪いね諸君。

 

まぁ自分でも適当なことを言ったなと思ったものの、流石ヒーロー科。

 

瀬呂、麗日さん、蛙吹さん、芦戸さんによる空中ブランコに始まり。

動力が砂藤、切島、障子、尾白、飯田の人力メリーゴーランド。

緑谷が投げたフラフープに轟が着火、爆豪が空中で潜るド派手な火の輪くぐり。

口田が呼び寄せた動物たちとの触れ合い。

峰田のもぎもぎジャグリング。

エトセトラ、エトセトラ…。

 

まぁ、いい歳した僕も思わず感心してはしゃいでしまう楽しさだった。割と雑なフリだったのに対応力がすごい。

 

なお全てに必要な道具は八百万さんが作成していた。縁の下の力持ちだ。

 

「すごい、すごいすごい…!」

「どう、楽しい?」

「うん!なんかね、わーってなってね、みんながキラキラしてすごかった!」

「楽しめたみたいで良かった」

 

「わ、私達も頑張った甲斐があるというものですわ…」

「ヤオモモなんか萎んでる!クッキー食べな!」

「飴ちゃんもお食べ!」

 

「どォだチビ助。俺が一番すごかっただろ」

「お兄ちゃんもすごかった!!どーんって飛んで、シュッって!!」

「はん、たりめーだ」

 

ふん、ふん、と鼻息を荒くしてすごかったと伝え回っている壊理ちゃん。頬を赤くして笑っている様子を見ると、あぁ良かったなと思う。そうだ、こういう光景を僕はみたかった。子供は幸せでいるべきなんだから。

 

「あのね!絵本で見たやつでね!観覧車ってやつがあってね、それもできるかな…!」

「ま、任せてくださいまし…!」

「無理があるってヤオモモ」

「流石にもう脂質が尽きるでしょ」

「いいえまだやれます!砂藤さん、追加のお菓子を下さいまし…!!」

「ダメだ止まらないわこの子!!」

 

 

暖かくて幸せな空間をじっと目に焼き付けて、静かに俯いた。

 

またあの子の笑顔を曇らせるような輩が現れたなら…その時こそ。1秒も躊躇わず。僕は成すべきことを成そう。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「素晴らしい個性持ちを発見したぞ!」

『へぇ、それはどんな?』

 

「警察に連れられてカウンセリングに一度来ただけじゃが、なんでも【巻き戻し】の個性らしい。時間を巻き戻す、まさに個性特異点の極みといったような個性じゃわい」

『…その手の個性は僕が奪っても中々使えない気がするけど。脳無にでも与えてみるかい』

 

「それが個性の使い方までやけに具体的に判明しておってな。お主でも使いこなせるかもしれんぞ」

『ふぅん…それは面白いね。ぜひ一度お目にかかりたいものだ』

 

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