夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません!   作:佐久間2525

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第二話 入学

 

 

衝撃の事実を知ってから、12年。時間の流れというものはなんとも早い。二度目の人生となれば尚更だ。

 

大きな校門をくぐりぬけながら思わず遠い目をしてしまう。振り返ってみれば、中々気苦労の絶えない日々だった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

自分の名前が夜神月であり、父親が警察官とくればどう考えてもデスノートの彼である。ヒロアカの世界とばかり思い込んでいたのに、一体どういうことかと頭を抱えたものだ。

 

「あんな頭脳戦できないし、したくもないし。天国にも地獄にも行けないってナニ……コワ……」

 

どうやって病院から帰ったかも覚えていないが、茫然自失でいつの間にか家にいた。震える僕を守ってくれるのはふわふわの布団だけだ。もうここから出たくない……。

 

「ライト、今日も天気いいよ。お散歩行く?」

「うーん、きょうはいいかな」

 

今は思考を整理する時間が欲しい。

昼間から暖かい布団にくるまり、自分の世界に閉じこもる。

 

大前提として、ここがヒロアカの世界であることは間違い無いと思う。個性というものがあるし、ヒーローだって活躍してる。

 

問題はデスノートの世界としてどの程度、原作に忠実なのかという点だ。死神はいるのか、デスノートはあるのか、僕はいずれキラになるのか、Lと対峙することになるのか。考え事が次から次へと浮かんでは消えていく。

 

……いや、待てよ。そもそもLって存在するのか?

 

もし。

万が一の話だが。

将来の僕がノートを手に入れたとして。気の迷いで「新世界の神になる!」とか言い出したとしよう。

しかしLという異次元の頭脳を持つ存在がいないのであれば、それは誰にも裁かれることのない行為なのではないか。

 

ああ、デスノートもLが死んだところまでしか見てないのが惜しいな。最終的に夜神月ってどんな末路を辿ったんだろうか。ヒロアカも全然知らないから、どうなるのか全然わかんないし。

僕を転生させてくれた神様も、もっと知ってる世界に来させてくれたら良かったのに。

 

「ライト、父さんに顔を見せてくれないか?」

「ん…?どうしたの、きょうお仕事は?」

「昨日のこともあるからな、休みを取った。…どうだ、体調は」

「頭がいたいのも治ったし元気だよ」

 

珍しい。多忙な父が休みを取れるだなんて。

布団をそっとめくられた先、やけに真剣な表情で話しかけてくる父に首を捻りながらも応える。

 

「個性の方はどうだ。少し慣れたか」

「あ、昨日からつかってないや。れんしゅうしたほうがいい?」

 

自分の名前の方に衝撃を受けてそれどころでは無かったとも言う。

 

「いや、お前が嫌な気持ちになるなら無理に使わなくていい。その、なんだ……」

「?」

 

やけに深刻そうな表情だ。厳格な父が言い淀む姿は珍しい。

個性があんまりよろしく無かったのだろうか。戦闘には向かないながらも、結構あたり個性だと思っていたのだけど。

 

そういえば。もし僕がキラになってしまったら父さんにも迷惑をかけることになるよな。すでに警察の中でかなり重要な地位にいる父だ、身内の不祥事なんてお荷物以外の何者でもない。

 

…あ、そうだ。父さんならもしかして知ってるんじゃないか。

 

「とうさん、Lって知ってる?」

「エル?人の名前か?」

「ええと、色んな国で活躍してる探偵みたいな人で、どんな難事件も解決するみたいな…」

「ふむ」

「捜査機関から信頼されてて、遠く離れた場所からでも犯人を突き止めて捕まえられる」

「それはすごいな」

「うん。世界の名探偵。他の人には解決できない事件も謎も、なんでも解き明かしちゃうんだ」

「警察も大助かりだな」

「でしょ」

 

そんな感じだったかな。実はすごく賢いということと、座り方が独特ということくらいしか覚えていない。

 

「うぅん、聞いたことはないな」

「!そうなんだ」

 

警察の偉い人な父さんが言うなら間違いない!

この世界にLはいない!!

勝った!!第3部完!!!

 

不安が晴れて笑みが浮かぶ。

じゃあこの世界はデスノートは関係ない説が強くなってきたぞ。

なんだ、たまたま夜神月って名前で生まれてきただけの話か。ビビらせるなよ全く。

 

布団から跳ね起きてうんうん頷いていると、何かに思い至ったらしい父が目を瞬かせた。

 

「ライトはヒーローになりたいのか」

「え?」

「確かにその個性を伸ばせばライトの言うようなヒーローになれるだろうな」

「ん?」

「Lっていうのはヒーロー名だろう?ライトのL。いいと思うぞ、シンプルだが覚えやすい。探偵ヒーロー、L。いいじゃないか」

 

???

どんな思考が働いてそうなった?そんな話してたっけ?

 

「全く…昨日のことがあったから落ち込んでいるのかと思えば、強い子だ」

「きのう」

「怖い思いをしたのに、もう人助けのことが考えられるなんて。ライトは賢いし優しいな」

 

…なるほど?少し読めてきたぞ。

 

両親から見た僕は、昨日、個性が発現し、あろうことかそれで人が殺される場面を見てしまった哀れな我が子(3歳未満)だ。そして何か思い悩む様子で引きこもり、気もそぞろな様子。よっぽど心配して見守ってくれていたのだろう。

 

そんな最中の会話である。やけに具体的に語られる人物像は、父から見れば僕の将来の夢として捉えられたということだ。幼児なりにショックな出来事を乗り越えて、前向きに個性を活かすことを考えたのだろうなぁ…と父は予測した様子。

 

少し親バカがすぎるよ父さん。こんな子供がそんなに深く物事考えてるわけないだろ。

 

そりゃあショックなのはショックであったが、今はそれ以上に自分の将来について頭を悩ませていたのだが、変な方向に勘違いされたらしい。僕は別にヒーローになりたいわけでは──いや、待てよ?

 

「…ぼく、ヒーローになれると思う?」

「ああ、なれるさ。そりゃあ狭き門だが、ライトなら大丈夫だ」

 

ヒーローといえばこの社会においてトップ層OFトップ層。信頼が厚く、警察以上に市民から求められる存在。

 

目指すのありだな。

 

もし同じような知識を持った転生者(L)がいたとしても、ヒーローとしての社会的地位があれば疑われまい!ノート手に入れても使う気ないけど!!念には念をね!!

 

 

◇◆◇◆

 

といった経緯からヒーローを目指し始め、父さんのコネもフル活用しながら鍛えた結果。なんとか雄英高校ヒーロー科という狭き門を潜り抜けた次第である。

長い道のりだった。

 

これまた大きな教室のドアを潜ると、既に席についていた数名から視線を向けられる。

 

「夜神さんおはようございます。やはり合格されてましたのね」

「あ、入試会場で会った…八百万さんだよね。おはよう」

「なになに、そこの美男美女もう知り合いなの?」

「ええと、夜神さんとうしろの彼…轟さんとは推薦入試の会場でお会いしましたの」

「推薦組!しかもみんな超美形…!まぶしー!」

「ケッ、またイケメンかよ…どいつもこいつも」

「他のみんなは一般入試組?どこの会場だった?」

「私はC!なんかさー…」

 

わいわい、と盛り上がる会話。とても入学初日とは思えない。みんなコミュ強の陽キャ達だ…。顔面に爽やかな笑みを貼り付け、一歩後退し、自然と席につく。僕は大人数の中では喋るタイミングあんまり分からないタイプの陰キャなんだ。夜神月らしさを意識すればそれなりに話せるけど、限度もある。ここは大人しく空気になろう…。

 

「君!机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者に申し訳ないとは思わないのか!?」

「思わねーよテメェどこ中だ端役が!」

 

あああムリ、ああいうタイプの人類が一番怖い…。前世の小学生時代のトラウマががが。例の幼馴染くんじゃん、あの性格で面接通ったんだ、まじかよ。教室見た瞬間いるなあとは思ってたけど性格もそのままかよ、丸くなっててくれよ。

 

「──お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

なんかいる…。この人担任なの?ほんとに?

前世の常識に邪魔をされて目を白黒させていると、あれよあれよというまに入学式をすっぽかして個性把握テストをすることになった。嘘だろ、母さん入学式見にきてるのに。

 

「なんだかすごい学校だね」

「うん、さすが日本最高峰のヒーロー科…!初日からまさかこんなに飛ばしてくるだなんて正直予想できてなかった。それにしても相澤先生のヒーロー名が喉元まで出かかってるのにもどかしい…」

「そうなんだ。すごい、ヒーロー詳しいの?」

「人より詳しい自信はあるよ!昔からヒーローノートとか作ってて…て、あ、ごめん。自己紹介もせずにぶつぶつ言っちゃって…。僕の悪い癖なんだけど」

「いいよ、急に話しかけたのはこっちだから。僕、夜神月。よろしく」

「緑谷出久です。よろしくね。…ちなみにその手袋って夜神くんの個性に関係してるの?あ、答えづらいことだったら!全然!あれなんだけど」

「別に大丈夫だよ。僕の個性、物とか人に触って情報を読み取る個性なんだ。だから不用意に読まないように普段は手袋してる」

 

やった、主人公と会話することに成功した。

グラウンドまでの道すがら、個性の話や好きなヒーロー談義をしながら歩く。このくらい人の良さそうな人とだったら身構えずに会話できるんだよなー。安心感がある。

 

「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった」

「…67m」

「じゃあ個性使ってやってみろ」

 

そうこうしていると個性把握テストがはじまった。爆豪のガラの悪い掛け声とともにボールが遥か彼方に飛んでゆく。なるほど、こんな感じか。

 

「よし。トータル最下位のものは見込みなしと判断し、除籍処分にしよう」

「「「「はああぁぁ!?!?」」」」

 

あと数名のリアクションの結果、初日からいきなりハードモードと化した。ヒロアカってこんな感じのストーリーなんだ。

 

「どうしよう除籍処分だなんて…」

「緑谷、顔色悪いけど大丈夫?」

「うん、ちょっと不安で…1種目の50m走もそんなにだったし。夜神くんは平気そうな顔だね…」

「あー、まぁ僕はそこそこは大丈夫だと思ってるんだ。緑谷も絶対大丈夫、自分を信じて」

 

なんせこの世界の主人公である。絶対こんなところで除籍とかならないんだろうな。僕なんかに励まされても元気は出ないだろうが頑張ってほしい。

 

「次、夜神」

「はい」

 

ざっと結果だけ言おう。

総合7位、障子くんの一つ下で、尾白くんの1つ上の順位になった。そこそこ頑張れたのではないだろうか。

 

サイコメトリという個性でどうしたのかというと、人の動きを読み取ったのである。

 

僕が手で触れて読み取れる情報は多岐に渡り、人体に触れればその人の過去の行動などがわかる他、体の動かし方なども読み取ることができる。車にさわれば運転方法がわかるようなものである。

 

幼少期にヒーローを目指すと宣言した僕は両親の手厚いバックアップを受けながら特訓し、時にプロアスリート、武闘家、警察官、ヒーローと握手を繰り返した。最適な体の動かし方などを学習し、体に覚えこませているというわけだ。

 

ヒロアカ世界の人体は前世基準から考えると素のスペックがかなり高い。爆豪がさっき言ってた中学校でソフトボール67m(個性なし)もとんでもない話だが、この世界では割とない話ではないのだ。したがってハイスペックが確約されている夜神月が最適になるように鍛えてできないはずがなく。

 

結論、僕は増強系の個性ではないがそこそこに戦える仕上がりとなった。

 

さて、問題の除籍だが。

 

あれー?主人公が最下位に見えるんだが気のせいか…?恐る恐る本人を見ると、この世の終わりかというような表情で立ち尽くしている。おいおい、大丈夫か?ここでヒロアカ終わるの?ヒーローアカデミアここじゃない感じ?

 

「ちなみに除籍は嘘な。君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

はー??

焦って損した!!

 

 

◆◇◆◇

 

まあ、何はともあれ初日は無事に終了した。

ここから僕のヒーロー人生始まるんだなと思うと感慨深いものがある。

 

「では明日から通常授業であるため教科書類を忘れないように。以上。さようなら」

 

やけにあっさり終わるHRを聞きながら、カバンを持って立ち上がる──その瞬間。視界の端を黒い影が横切った。

 

こめかみを、冷たい汗が伝う。

 

「あー、初日から盛り沢山だったな〜!」

「そうだ、懇親会兼ねてカラオケとか行かね!?」

「いいね〜行く人手あげて〜」

「夜神どうする?」

 

教室の喧騒が、随分と遠い。上鳴になんとか「ごめん、今日は母さんが入学式に来てたから一緒に帰るんだ」と返事をして、足早に教室を出た。

 

階段を駆け下りる。少しの距離が今はもどかしい。

 

先ほど視界を横切った黒い影。教室の位置から考えると、多分あのあたりにあるはず。バクバクとうるさい心臓を押さえながら、恐る恐るソレに近づく。

 

 一見すると、黒いだけのノートだ。

 

でも僕はそれがどれだけの不幸を呼ぶか知っている。

ある意味では呪われたノート。

 

「DEATH NOTE…」

 

それでも。僕はそれを拾う選択肢しか持ち合わせていなかった。

 

見過ごすには、僕はこの12年で人の悪意を知りすぎた。

 

自分が人生の岐路に立っていることを自覚しながらも、進むことしかできなかったのだ。

 




念押ししますが賢い系主人公ではありませんので(作者が賢くない)アホなことしてんな〜と思ってもスルーしてください。
ちなみに主人公は「Lおらへんなら万が一があってもバレへんな!勝った!ガハハ!」と言っておりますが根津校長(ハイスペック)の存在や塚内警部(嘘をみぬく)の存在を知ったら咽び泣くと思います。考えの甘いやっちゃで…。

全編を通してLは出てきません。デスノート側で出てくるのは夜神家とリュークくらいのものです。20話くらいで締めたいなと思ってるのでサクサク原作飛ばします。入試も早速飛ばしました。

1話に評価してくださった方、ありがとうございます。大変励みになります。
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