夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません!   作:佐久間2525

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第四話 訓練

 

 

 

「秘密だったのに。知られちゃったな……」

 

夕陽が差し込む校舎。

あたりに人気はなく、ガランとした雰囲気が辺りを満たしていた。

静かに落とされた声はどこか自嘲気味で、乾いた響きをしている。

 

責めるような言い方ではなかった。どこまでも自分の不注意にため息をつくような、そんな様子。

しかし視線は鋭くこちらを見据えている。

 

知られたからには、そのままにはして置けない。力強い眼差しがそう訴えかけていた。

 

ただ落とし物を拾って手渡しただけなのに。予期せずして知ってはいけないことを知ってしまったらしい。

 

 

 

 

 

時は夜神月と死神との邂逅、その数日前に遡る。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

デスノートとかいう呪いのアイテムを手に入れてしまった僕だが、意外と何事もなく朝を迎えた。死神はまだ姿を現していない。

結局、殺人衝動に襲われることもなかったし、実にすがすがしい朝だ。

 

電車から降りて雄英までの道のりをゆったり歩く。

 

肩にかけた通学用のカバンがやけに重たい。そんなに荷物入れたつもりはないんだけど、何入れたっけな。

 

教科書、着替え、タオル、水分、筆記用具。

そして黒いノート。

 

…ちゃんと正しい方持ってきたよな?

なんか今になって不安になってきた。一応見とくか。

 

家出てからガス栓締めたか不安になる現象だ。気が小さいからこういうことがすぐに気になる。なんて考えてノートを取り出していたタイミングで、後ろからどん、と衝撃が走った。

 

ぽろりと鞄からノートが滑り落ちる。 

 

「あ」

「おっ、とと。セーフ」

 

地面につくかと思われたそれは、パシっと小気味の良い音を立ててクラスメイトの手のひらに収まる。すごい反射神経だな。いや、感心している場合ではないのだけれど。

 

クラスメイト…緑谷は気さくな笑みを浮かべて、隣にやってくる。

 

「夜神くんごめんね。勢い余ってぶつかっちゃった。はい、ノート」

「いや、僕が急に立ち止まっちゃったのが悪いから。拾ってくれてありがとう」

「……」

「ん?」

 

差し出されたノートが、スッと引かれた。

 

「いや、実はちょっとだけ中身見えちゃって…なんか僕の名前が書かれてたから気になっちゃって」

 

見ちゃダメかな?と遠慮がちに投げかけられる問い。しかしその目は期待に輝いているのが見て取れる。うっ、眩しい…!

 

その手に掲げられる黒いノートの中身は見られると当然まずい…なんてことはなく。全然見られてOKなやつだ。

 

なぜなら、緑谷の名前が書かれているということは、そいつはカモフラージュの方のノートってことだからな。

持ってくるやつ間違えてなかった!セーフ!

 

「全然いいよ。もしかしたら、気分を悪くさせるかもだけど」

 

「えー、何が書かれてるんだろう…!?なになに…

 

『緑谷出久、個性は強化系?出力は強いが身体にダメージあり。強化できるのは体の一部だけなのか、全身なのかは要観察。類似の能力を持つヒーロー、オールマイト』

…って、え」

 

そう、それはデスノートっぽい黒いノートだが中身はただのクラスメイト観察日記だ!

 

今のところデスノートを使う予定はないが、もし、万が一!いや、億が一!あれを使うことがあったとして。

怪しげな黒いノートを所持しているのを目撃されたら、それだけで詰む気がする。(いや、ほんとに使う予定はないんだけどね?)

 

ので、カムフラージュのために勉強に使うノートも全て黒いノートに統一した。

 

そして普段からどこで書き物をしていても怪しまれないように、クラスメイト観察日記という妙ちきりんなものまで作って、こうして持ち歩いているというわけだ。

 

「僕の個性って情報収集に特化してるんだけどさ、個性に頼らず観察する癖もつけたほうがいいかなと思って、最近書き始めたんだ。気を悪くしたならごめんね」

 

言い訳もこの通り。

今のところ存在は確認できないけど、もしかしたら野生のLがその辺から急に出てくるかもだし。警戒するに越したことはない。

 

「いや、それは全然…!僕も昔からずっとヒーローノート作ってるから気持ちはわかるんだ!…それで、その、オールマイトに類似っていうのは…」

「ああ、それはね──」

 

どうだ、この完璧な気構えは。

僕はいつだって完璧な優等生の仮面を被り続けてやるからな。来るなら来い、L!!

やっぱりウソです、ごめんなさい、来ないで。

 

 

 

……

 

 

午前中は、意外と普通の科目を学習するらしい。

黒板に書かれる内容は初日にしては随分と難しいが、問題なくついていけそうだ。さすがは夜神月ボディ。ハイスペックな脳で何より。

 

英語の時間に「退屈だ…」的な顔で窓の外を眺める原作の夜神月仕草をしてみたけど普通に先生に当てられて焦ったよね。閑話休題。

 

 

5限目。ヒーロー基礎学の時間である。

 

実践演習が多いと噂の科目だ。

雄英に入学するまでに、できる限りの努力はしてきたつもりだがどこまで通用するのか…。

 

僕の高校での目標は3つ。

 

 ①デスノートに関わらない

 ②クラス内で上位の成績を収め、一目置かれる。社会的信用を得る

 ③主人公と仲良くなってご都合主義で生き残る

 

①は1日目にして頓挫したから、ノートを使わないにシフトするとして。

 

②は必須だ。もしノート関連で何かあった時、優等生のほうが疑われにくい。はずだ。

③もできれば頑張りたい。少年漫画の主人公の仲良いやつとかって大体死なないイメージあるし、仲良くなったらそれだけで生存率が上がると思うんだよね。ONE PIECEとかもほら、麦わらの一味は誰も死なないじゃん?あんな感じ。

 

「わーたーしーが〜…普通にドアからきた!」

 

「うおおお、マジのオールマイトだ!本当に教師やってんだな!」

「気迫が凄すぎて画風まで違うぜ…!」

 

ということで、授業で変に力を抜くことはしない。全力で優秀な成績をもぎ取りにいく心持ちで挑むとしよう。

 

「早速だが今日はこれ!戦闘訓練だ!」

 

 

 

 

 

何も書かれていないクジを見つめて一人佇む。僕だけペアからあぶれたらしい。うっ、2人組作ってねでペア作れなかった前世のトラウマが蘇る…!今回はくじ引きだから仕方ないけど…!

 

「あの、オールマイト先生」

「む、余りは夜神少年だったか!どうしても21人だと1人余るからな、1巡した後でペアと対戦相手を決めよう!」

 

なんだか出鼻をくじかれたような気分だ。

少しいじけながら他のペアの戦闘訓練を見守る。

 

みんな雄英に合格するだけあって、なかなか見応えのある試合ばかりだった。まぁ、緑谷VS爆豪の訓練が初っ端からインパクト強すぎて、他のペアが霞んでいた部分もあるけど。

 

そんなこんなで待つこと1時間ほど。

 

「じゃあ夜神少年のペアと対戦相手をクジで決めるぞ〜。…ペアは八百万少女、対戦相手は麗日少女と葉隠少女だ!」

 

「よろしくお願いしますわ、夜神さん」

「うん、よろしく八百万さん」

「やった〜!もう1回チャンスだ!汚名挽回!」

「透ちゃん、それをいうなら名誉挽回やない?」

 

八百万さんとなら取れる戦術の幅が随分と広がりそうだ。創造って中々のチート個性だと思う。どんな状況にも対応できる万能個性で羨ましい。

 

「や、夜神おまえ…!?それは許されないだろ…!?」

「そうだぞ!何女子に囲まれてんだよ!」

「いやくじ引きの結果に文句言われても」

「その場所オイラと今すぐ代わりやがれ!」

「いや、さっき八百万さんと組んでたのお前じゃないか…」

 

なんて一部の男子に突かれる一幕もありつつ。ようやく戦闘訓練がスタートした。

 

 

 

「さて、始まりましたわね。おそらくヴィランチームは透明化した葉隠さんが遊撃にまわる可能性が高いと思いますけど…夜神さんはどう思われます?」

 

ビルの入り口。油断なく構えた八百万さんに問いかけられ、僕はその場にしゃがみ込んだ。

 

「少し待ってね…兵器の隠し場所は3階の東。作戦は

『透ちゃんをウチの個性で浮かせちゃえば足音もしないし絶対にバレない!こっそり奇襲しちゃえ!』らしい。

現在は2階に上がる階段の上で葉隠さんが待ち構えてて、麗日さんは核兵器前で待機中。瓦礫を浮かせられるようにスタンバイしてるね」

 

地面に触れて個性を発動させると数分前にこの場所で交わされた会話が脳内に浮かぶ。そして壁越しに物体を見ることもできるので、人員配置まで丸わかりである。

 

「詳しく説明してなかったけど、僕の個性はサイコメトリ。壁越しに物を見たり、その場所で過去に交わされた会話を見たり…まあそんな感じの個性だよ」

「すごいですわ夜神さん!推薦入試会場で3kmマラソンをかなりお早く走っていたので、てっきり身体強化系の個性かと…」

「はは、その辺は結構頑張ったんだ。ところで作戦があるんだけど──」

 

 

……

 

そのあとは早い物だった。

隠れている場所が丸わかりの葉隠さんを八百万さん特製のトリモチバズーカで確保。3階に突入したあとは麗日さんが飛ばしてくる瓦礫の群れを、これまた八百万さん特製の形状記憶シートが防ぐ。浮いて逃げようとする麗日さんを、僕が投げ縄を足に巻き付けて引き寄せたら確保終了である。

 

 

─あれ?僕最初しかあんまり仕事してないな?

 

講評ではそれなりに最初の索敵とか情報収集は褒められたけど、残りの作戦は八百万さんありきなんだよな。

もっと精進しなければ、クラス内でいい成績を取るのなんて夢のまた夢だ。

 

なんて授業終わりに脳内で一人反省会を繰り広げていると。

 

「夜神さん!」

 

がしり、と両手を掴まれた。

 

「私たち、相性バッチリだと思いませんか…!!」

「えっ」

 

周囲の時が止まる。教室に戻ろうと足を進めていたクラスメイトが一斉に足を止めた。

 

「や、夜神〜!お前、訓練中に八百万とナニしてやがった!?ナニしたのか!?!?」

「いやいやいや。…えーと、何の話かな八百万さん」

 

「私、感動しましたの!今回作ったものをお渡ししたら、夜神さんがすごく上手に使いこなしてくださったことに!」

「まあ僕の個性は、初めて触った物でも練習なしで使いこなせるのが強みだから…」

「それですわ!何でも作れる私と、何でも使いこなせる夜神さん!素晴らしい相性だと思いませんこと…!」

 

ああ、なんだ、そういう話か。って何を期待してたんだ僕は。

まあ確かに個性の相性は抜群だと思う。

今回も投げ縄とか初めて使ったけど、どう投げたらどの程度飛ぶとか伝わってきたし。僕が索敵、状況に応じた道具を八百万さんが作って、僕が使う。確かに色んな状況に対応可能なコンビではある。

 

「また是非一緒に訓練させてくださいね!」

「こちらこそお願いしたいくらいだよ。今日はありがとう」

 

輝かんばかりの満面の笑みが弾けた。

うわ、かわいい…。勘弁して、手とか握られて笑顔向けられたら軽率に好きになっちゃうんだが。

 

前世の僕、見ていますか。

こんなにスムーズに女子と会話できたことが一度でもあったでしょうか。今世の僕は幸せにやっています。

転生っていいもんだ。

 

男子からこのあと突かれまくったり色々あったけど、楽しい1日だった。

デスノートなんてもの拾っても急に不幸になるわけでもないし、家族仲もいいし、体のスペックは高いし、女の子とも話せちゃうし…!

僕の人生、案外薔薇色かもしれない。

 

高校の目標その4に青春を謳歌するとか追加しちゃおうかな〜。

 

 

 

 

 

浮かれポンチとは僕のことです。海よりも深く反省しています。

 

ルンルン気分で放課後も無駄に校舎を徘徊していたバカです。よりにもよってオールマイトの落とし物なんて拾っちゃって(コスチュームのマント)、本人に届けてあげようかなーなんて個性を使っちゃいました。

 

気分が最高潮に良かったせいで、個性の効きもなんかすごくて。色々知っちゃダメな秘密まで見ちゃいました。シルバーエイジ以前からずっと使ってたマントだったのか情報量が半端じゃなかった。

 

AFOって何、あいつ絶対ラスボスでしょ。悪行のレベルと数がヤバすぎるよ…。大体あいつが悪いじゃん。吐き気を催す邪悪ってやつだ。

 

OFAを緑谷に譲った下りはかろうじて持ってる原作知識で知ってたけど、それ以外のやつは全部知らない怖い情報がいっぱい。嫌になっちゃうね。

 

 

 

「秘密だったのに。知られちゃったな……」

 

そんでもって不用意に「オール、フォー、ワン…?」なんてマントをもったまま呟いたせいでオールマイトに超鋭い目で見られてる。せめて黙ってれば良かったのに。僕って本当にポンコツ。夜神月ボディの無駄遣い。

 

ナンバーワンヒーローの気迫にたじろいで、足か一歩下がった。怯えた様子にようやく気がついたのか、オールマイトの口からため息が出る。

 

「ハァ、すまない。怖がらせるつもりはなかった」

「あの、すみません勝手に読み取っちゃって。落とし物を届けようとしてて…」

「いや、君の個性を知りながら不用意なことをした私が悪い。だがその知識は持っているだけで危険が及ぶんだ」

 

少し考え込んだオールマイトは一枚の名刺を差し出してきた。

 

「知り合いに特定の記憶だけを消せる個性の持ち主がいる。ちゃんと医師免許を持っている人だ。ひどいことを言っている自覚はあるが…彼の処置を受けてもらうことはできないだろうか」

 

ここで君のためなんだ、とゴリ押ししてこないのがこのヒーローの優しいところだ。

まあ僕としてもこんなやばい記憶持ってるよりもサクッと消してもらったほうが危険もなくてありがたい。そう思って返事をしかけて…思いとどまる。

 

もしデスノート関係や前世の記憶が間違って消えたら、まずいことにならないか…?

そもそも僕の記憶に干渉されること自体リスクが高すぎる…!しまった、安易に頷けなくなったぞ。

 

「多分、ここで記憶を消してもまた同じことの繰り返しになると思います。なので、僕を秘密の共有者として信じてくれませんか」

「それは…君に危険が」

「勝手にAFOについて調べたりは絶対にしません。もちろん、他の誰かに伝えたりも」

 

ここはもうゴリ押しだ。作戦も何もない。

 

「それに、僕なら緑谷が個性を使いこなす手伝いもできると思います」

「なに、それは本当かい夜神少年…!?」

「はい。僕の個性は読み取ることに長けているので、緑谷が個性を使うたびに怪我をしている原因も分かります」

 

多分。知らんけど。

もう勢いでしか喋ってない。

大事なのはパッション。最後に残るのは情熱しかない…!

 

「僕だってヒーローの卵だ。力になれることがあるなら、何だってやりたい。

…信じてください。決して無茶はしない。緑谷のサポートに徹します」

 

イメージするのはあの真っ直ぐな眼差し。「僕はキラじゃない、信じてくれ竜崎…!」って言ってた時の夜神月である。

見よこの澄み切った目を。これが嘘をついているやつの目か‥?!

 

僕をじっと見つめていたオールマイトは、しばらく黙り込んでいたけれど、やがて根負けした様子で肩を落とした。

 

「そこまで言うなら信じるよ、夜神少年。…けどどうしてそこまで」

 

知らなかったことにするほうが、君にとっては平和だろうに。そう問いかけられて一瞬迷う。何とか綺麗なセリフを…。

 

「友達の力になりたいのって変なことですか?」

 

「ふ、はは。いや、そうだな。当たり前のことだ。…これから緑谷少年は大変な道を歩むことになるだろうが、君のような友人がいると心強いだろうね」

 

よっしゃ乗り切った!!!そんで持って成り行きで緑谷の特訓相手とかいう仲良しポジションもとった!!

 

そう、結局これって計算通りだったんだよね!結果オーライっていうか!

 

成り行きとかではなく!計算!!そういうことにしとこう!

 

 

 




本物の夜神月であれば「秘密、知られちゃったな…」って追い詰める側なのに、ポンコツ成り主だと逆の立場になるからあら不思議。ちょっと序盤の文章ミスリード狙ってみたんですが、どうでしたでしょうか。(こいつデスノートの存在を誰かにバレたのか的な)

個人的に八百万が好きなので絡ませましたが、恋愛メインの作品ではないので今後も頻繁に出てくるかというとそうでもないです。(予定)

前回、感想や評価下さった方ありがとうございます!誤字報告も助かります!
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