夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません! 作:佐久間2525
1話(幼少期)
2話(幼少期回想と入学初日)ノート拾う
3話 ノート使うか試すシーン「やっぱノートなんか使うわけないよね」
4話(翌々日。授業)オールマイトの秘密を知る
5話(さらに翌日) ◀ イマココ
3話(リュークとの会話。ノート拾って5日後)
予期せずオールマイトの秘密を知ってしまった翌日。
無機質な印象を受ける会議室で、頬杖をつきながら携帯をいじる。手持ち無沙汰だ。
時計を見ると、待ち合わせ時刻から20分が経過しようとしていた。平日に人を呼び出しておいて待たせるなよ。
こっちは一応学生だぞ。
あ、緑谷からメッセージだ。
──────
イズク:おはよう
イズク:もしかしてマスコミにつかまってる?
イズク:こんなに遅いの珍しいよね
月:おはよう
月:今日家の用事で学校休むんだ
月:また授業の内容教えてくれると助かる
月:あとマスコミってなに?
イズク:そうなんだ。またノート貸すね
イズク:オールマイトのことを取材しに沢山来てて…すごいことになってるよ
イズク:あ、相澤先生がマスコミに注意しに行った
イズク:耳郎さんが個性で盗み聞き
イズク:あ
イズク:小汚い!ってマスコミの人に言われてるみたい
月:草
──────
いや、夜神月は草とか使わないよな。違和感がすごい。スタンプとかで返信する方が無難だったか?
それにしても仕事してるだけなのに突然罵倒される相澤先生おもしろすぎる。確かにどこか小汚いけど。
「お友達とメッセージのやり取り?高校生活順調そうだね」
優等生らしい返信ってどんなのだろう、と考え込んでいると視界に顔がニョキっと割り込んでくる。ゴーグルの奥の瞳が、楽しそうにニンマリ細められていた。
なんだ、この人か。
「ホークス、ビックリさせないでくださいよ。…まぁ今のところ楽しいです、雄英」
「それは良かった」
九州を中心に活躍している新進気鋭のヒーロー、ホークス。甘い顔と豊富なファンサービス、そして確かな実力で人気急上昇中。
そして、世間には知られていないがヒーロー公安委員会直属のヒーローである。
「遅れてごめんねー、途中で銀行強盗に出くわしちゃってさ」
「いいですよ、お忙しいのは知ってますから」
「雄英に入学したばっかりの君にそれを言われるとこっちの立つ瀬がないな~」
「授業は何とかついていけそうなので大丈夫ですよ。ほら、僕賢いので」
「言うねー全国模試1位。でも実技とかあるでしょ?」
「ええ、昨日もありました。…単位とかは問題ないって聞いてるんですけど違いましたか?」
「違わないけど、学生の経験を奪っているのがどうも据わりが悪くてね。俺は平日に休ませるのはやりすぎって言ったんだけど、上がどうしてもってさ」
まともだ。他の公安の大人を知っているだけに余計にそう思う。
年齢が比較的近いからか、以前からなにかと気にかけてくれる。中学生の時からの付き合いだから、かれこれ3年ほどか。
「今日の現場なんか特に子供に見せるものじゃないだろうに」
「僕もう高校生ですよ。今日の事件は… 『ヒーロー殺し』 ?」
深いため息を落として、彼はドサドサと机の上に資料を落とした。風圧で飛んだ一番上の資料を、赤い羽根が掬い上げて僕の手元に差し出してくる。
「1か所目、関東○○市内、4名のヒーローが殺害された。同じような傷口と共通する死因から、警察は同一犯の犯行と断定、捜査開始。翌年、2か所目。関西○○市内にて5名死亡。3か所目、九州で4名。そして今月…」
「既に2名が死亡、ですか」
「再起不能にされたヒーローもすでに16名にのぼる。これだけの被害が出ているのに一向に捕まえられない警察とヒーローに、世間からの批判が多くてね。上も随分と焦ってる」
添付されている写真に視線を落とす。
全身に刻まれた、刀傷。とどめは恐らく、首に真一文字に走った一撃だろう。周囲の地面には多量の血液がしみ込んでいる。
「判明しているのは自らをステインと名乗っていたこと、血のように赤い巻物と全身に刃物を携行していること」
「…それだけですか?」
「情けないことにね。身元も不明」
なるほど。今回の僕の仕事は、このヒーロー殺しステインに関する情報を集めることらしい。
なかなか骨の折れそうな仕事だ。
「分かりました、取り合えず現場に行きましょう」
……
壁に押し付けられるヒーロー。
血の付いた刃物を舐める怪しげな男。
『から、だが動かない…』
『ヒーローを騙る贋物めが。お前のような偽物が蔓延るからこの社会は腐っていく…』
無慈悲に振るわれる刀。噴水のように吹き上がる血潮。
どさりと物言わぬ骸になったヒーローが転がって、静寂がひろがる。
ヒーロー殺しは振り返ることなく、すぐに現場を立ち去った。
数分後、死体を見つけた歩行者の悲鳴が響き渡って現場がにわかに騒がしくなり──
「…ヒーロー殺しの個性は血液を舐めることで対象の動きを制限するものだと思います。刀だけに気を取られると、小ぶりなナイフや靴に仕込まれた刃に傷をつけられて終わりですね」
「なるほどね。早速重要情報だ」
「逃げた方向は…向こうですね。移動しましょう」
現実に帰ってくる。
目をそっと開くと、そこには血まみれの路地裏なんてどこにもなくて、ただ人気のない、静かな空間だけがあった。耳には、死にゆくヒーローが己の血で溺れて藻掻く、苦悶の声がこびりついているのに。
「大丈夫?」
「ええ、もう慣れたので…。ここの物陰に隠れてヒーローをやり過ごしたみたいです。人の気配を感知するのが得意なのかな」
「包囲網を敷いてるのに見つからないわけだ」
地面に触れて、移動しての繰り返し。
「そこの配管からビルに登ったみたいです。ホークス、あげてください」
「はいよー。…そろそろ休憩入れようか?」
「いえ、まだ大丈夫です」
ヒーロー殺しは慎重かつ大胆に街を移動していた。
時にビルの上まで配管を辿って駆け上がり、時にマンホールを開けて地下に潜り。
僕は人に触れればその人の体のことや個性のこと、なんだったら過去まで視ることができる。けれど、地面に触って分かるのはそこで何が起きたかということだけだ。
だからステインの行方を追うのは逐一移動しながら足取りを追うほかない。そういった点で、捜査の効率を高めるために機動力のあるホークスと組まされる機会が多いというわけだ。
「ふぅ…」
ステインが潜んでいた街路樹の上に羽で引っ張り上げてもらいつつ、眉間をもむ。
大変に有用な僕の個性だが、連続で使用していると頭が痛くなるというデメリットがある。夜神月スペックの脳みそがこんなに疲弊するんだから、前世の僕の脳みそだと使うことも出来なかっただろうな。
「移動距離がすごいね。どこかに潜伏しているから見つけられないとばかり思っていたけど、逆だ。動き続けているから捕捉できてない」
「…そうみたいですね。ぴょんぴょん飛び回って、猿みたいなやつだ…」
「月くんやっぱ疲れてるね?声に覇気がないよ」
飲み物買ってくるからちょっと待ってな、と頭を撫でられた。そんな子供扱いをされる年齢はとうに過ぎたのだけれど。
じんわりと痛む頭を木の幹に預けつつ、そっと個性を使用した。
同じ枝に腰かけたステインが、街を眺めている。視線の先にはオールマイトが映る街頭テレビ。なんだろう、今までとは違う表情だ。なんというか…やわらかい?
『間違った世は正さなければ…』
さっきから何回も言ってるソレ、なんなんだよ。聞き飽きた。
ああ、無性にイライラする。
自分の理想のためなら人を殺していいとでも思っているのか?
分からない。こいつのことが何も。いや、今まで犯罪者の心理が理解できたことなんて一度もないのだけれど。
暫く体を休めたステインは、視界の端にヒーローを捉えると、すぐに木から飛び降りて路地裏に駆け込んでいった。ヒーローには見つからなかった様子。
また移動することになるな──と思った瞬間、視界の端で赤い何かがヒラヒラと舞うのが見えた。
あれ、と思って個性を解除すると、それは現在も変わらずにそこにある。
枝の少し先にある小さな布の切れ端。
頑張れば手が届かなくもない位置だ。
「ぅおわっ…!」
掴んだ、と同時に枝から滑り落ちた。目算、3m。受け身とれるか…!
「はい、ナイスキャッチ俺~。なにしてんの月くん、危ないでしょ」
「あ、りがとうホークス…。びっくりした…」
「ビックリしたのはこっちだよ、もう」
ホークスに軽く頭を小突かれるが、今はこの布である。なにそれ、と視線で問いかけられるが、個性の発動に忙しい。
『それ赤黒くんのヒーロースーツ?なんか地味だけど…マフラーはワンポイントになってていいね』
『救助に使う止血布だ。マフラーではない。お前はなんだそのちゃらちゃらした格好。ヒーロー活動にそんなもの必要ないだろう』
『えー今時かわいくないと人気でないよ~』
『……』
『血染!お前高校やめるって本当かよ』
『ここに、俺の求めるヒーローはない。腐敗している…』
『英雄に回帰しなければ!!贋物が行うことに何の意味がある…!』
『ちょっと、道ふさがないでくれる!?まったくこんなところで迷惑なんだから』
『……』
『言葉など…言葉では変わらない』
『正さねば…誰かが血に染まらねば…!』
とっている行動も、掲げている理念にも、賛同することはできない。けど…自分の理想のために足掻き続ける根性だけは、大したものだと思った。
「赤黒血染、31歳。私立ヒーロー科を1年生で中退…学校名分からないんですけど、あとで制服の絵描きます。10代後半は街頭で演説のようなものをしていますね。スタンダールという名前でヴィジランテ活動をしていた時期もあるみたいですけど、その時期は多分あんまりこの布を身にまとっていなかったみたいです。何らかのきっかけでヒーロー殺しに転向。最初に手にかけたヒーローは同じ高校出身のシールダー。2件目は…」
「ちょいちょい、待って待って」
布から視た情報をツラツラと伝えていたら、ホークスから待ったがかけられた。
「その布、ステインのものだったの?」
「はい、枝に引っかかって破れたみたいですね。昔から使っていた物らしいのでかなりの情報取れました」
素性はこれでハッキリした。あとは次の犯行の前に本人を捕まえられたら今回の仕事は完璧だ。
「そうだ、ニーガル、シルバーロックがこの市内では次のターゲットになるみたいです。写真を眺めている場面が見えました。事務所が確かこの近くのはずです、急いで向かいましょう」
「おっけ、話は分かった。それは俺が行くけん、月くんは公安の迎えと一緒に家に帰ること」
「えっ」
「なに?まだ仕事するつもりだったの?個性使いすぎて顔白いよ」
ああ、どうりで頭が痛いと…。
かなりの情報を得て気分がハイになっていたらしい。
僕がついていっても足手まといだから、ホークスの判断は当然のものだ。
「ここで待っとったら車来るけんね、じっと座っといてね」
先ほど購入していたらしいカフェオレを渡され、道脇のベンチに促される。心配そうに何度か振り返ってくるホークスに早くいってくれと手を振りながら、僕は少し項垂れた。
カチ、カチ。
すこし、迷っている。
カチ、カチ、カチ。
腕に着けた時計が針を進める。
ホークスは間に合ったかな。彼は速すぎるヒーローではあるけれど、ステインがここにいた時刻からは時間がたちすぎているから、ギリギリかもしれない。狙われているヒーローも現状2人いるのだから、どちらにステインがいるかも運だ。
カチ、カチ、カチ、カチ。
秒針のリズムに合わせて、ボタンを引く。
するりと現れたのは、時計の基盤の下に隠された白い紙。
「(好奇心で原作再現しちゃったけど…するべきじゃなかったな)」
赤黒血染。
先ほど知ったステインの名前。
それをこの小さな紙に書くだけで、今後、ヒーローの犠牲者は出なくなるだろう。
そう分かっているからこそ、こんな仕込み時計作るんじゃなかったなと思う。
現に、僕の心は揺れている。
先ほどじっくりと視て分かったこと。ステインは自分の行いを反省することも、後悔することもないだろう。例え捕まってタルタロスにいれられたって、思想を変えることはない。断言できる。
想像してみる。
もし、ホークスが今日、彼を捕まえられなかったら。
また犠牲者が出る。1日中、彼の痕跡を追っていた僕が言うんだ、間違いない。
亡くなったヒーローの私物にも触れさせてもらった。優しそうな人だった。大きな活躍をしているわけではないけれど、地域の人に愛されていたヒーローだった。
あれのどこが偽物だったというんだろう。僕には分らない。
人を殺すのは悪いことだ。
けど、人を殺した人を殺すのは悪いことなんだろうか。
迷う。
僕なら、次の犠牲が出る前にステインを…赤黒血染を殺すことができる。誰にもばれることなく、自然に。誰にもばれやしない、ばれようがない。
痛む頭を抱えてずっとそうして迷って、迷って…結局僕の手は、最後まで動いてくれなかった。
次の日。
ステインはもうあの時には市内から逃亡した後で。
新たに2名のヒーローがすでに亡くなっていたと聞かされた。
彼の行方は、まだ分かっていない。
…
イズク:おはよう
イズク:今日も家の用事?
月:おはよう
月:いや、今日は体調不良
月:頭がすごく痛くてさ…
月:昨日は学校どうだった?
イズク:え、そうなんだ…!お大事に!
イズク:色々あったよ。マスコミが侵入してきてブザーが鳴ったり
イズク:クラスの委員長が飯田君に決まったよ
イズク:副委員長が八百万さん
月:ありがとう
月:色々大変だったんだね、また来週詳しく聞かせて
月:すごい、2人ともぴったりの人選だね
イズク:だよね
イズク:土日もあるしゆっくり休んでね!
イズク:水曜日はUSJってところで演習らしいから、一緒に参加できるといいね
月:楽しみにしてる
月:ちょっと相談があるんだけど
メッセージは削除されました
月:ごめん間違えた
月:また来週ね
月くん、ノート使ってた方が犠牲者少なかったんじゃない?(原作通り17人殺害・23人再起不能になる予定)
なおこの後クラスメイトの兄が襲撃されてさらに気を病む模様。
ちなみに学校に行っていれば、崩れた校門に触ってヴィラン連合の存在とUSJ襲撃ついてある程度知ることができましたが、タイミングを逃しました。本番を待ちましょう。
捏造設定のオンパレードです。おかしいところも多々あるかと思いますが、優しい目で見て頂けると幸いです。
感想、評価くださった方ありがとうございます。