夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません!   作:佐久間2525

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クラスメイトとの平和な交流回です。


第六話 対話

 

 

 

ぼう、っとした心地で窓の外を眺める。月曜日だからだろうか、どこか憂鬱な気分だ。

ポケットから取り出した携帯に、新しい通知はない。

 

『なあ、ライト』

 

ハァ。知らず知らずのうちにため息がもれた。

ヒーロー殺しの新たな被害者は出ていないだろうか。今はそればかりが心を占めている。

 

『おーい、聞こえてるか?』

 

ふりふり、と。目の前で黒い手が視界を遮る。

…人目があるところでは話しかけてくるなって言ったのに、死神は1日前に交わした約束も覚えていられないらしい。

 

『おいってば、いいのか』

 

無言の抵抗で窓の外をじっくり眺める。

何もない空中に急に話しかけたら僕が変人みたいになるだろ。察しろ。頼むから。用があるなら家で伝えてくれ。

 

 

「夜神くん…俺は何かキミの気に障ることをしてしまっただろうかッ…!」

 

『ずーっと、このメガネのやつが話しかけてきてるけど、無視していいのか?』

 

「それを先に…ッ…!」

「え?」

「ご、ごめん飯田。ぼーっとしてて聞こえてなかったんだ」

 

リューク、お前そういう大事なことは先に言ってくれ…!

何かずっと僕を呼んでいたらしい飯田は、不安げな表情でこちらを見つめていた。クラスメイトにガン無視されたらそんな顔にもなるよな。本当に申し訳ない。

 

「僕に何か用?」

「その、先週の木曜日に委員長決めがあったのだが、聞いているかい?」

「うん、緑谷から大体は」

 

マスコミが校門を越えて侵入してきたり、食堂の人がパニックになったりと大変だったらしい。それを機転と責任感でなんとかしたのが目の前の彼だという。

 

「活躍聞いたよ。頼れる君に委員長はぴったりだね」

 

僕だったら一緒にパニックになる自信しかないから、純粋にすごいと思う。素直な気持ちでそう伝えると、彼は照れた様子で口元を動かした。

 

「ありがとう。夜神くんにそう言ってもらえると自信がつくよ。君にだけ意見を聞けていなかったから気になっていたんだ」

「それはどうもご丁寧に。クラスメイト一人一人を気にかけれるところも委員長向きだと思うよ」

「…君は褒め上手だな、まったく。では、君の言葉に恥じない僕でいられるように、委員長という職務を全うすると誓おう!

「わ」

朝からすまないね!今日もお互い頑張ろう!では!

 

唐突に元気になった委員長の後ろ姿を見送りながら、腕をさする。びっくりした…。急に80dBくらい出すじゃん…。

気圧されて間抜けなポーズで固まっている僕に、後ろからくすくすとした笑い声が届く。

 

「ふふふ」

「…おはよう八百万さん」

「おはようございます、夜神さん。随分楽しそうなお話でしたわね」

 

鞄を机の横にかけながら、にこりと笑顔で返されると、不貞腐れた表情も途端に崩れる。

 

「八百万さんも副委員長になったんだよね。周りの状況を見るのが上手だし、判断も早いからぴったりだと思う。頼りにしてるね」

「あら…ありがとうございます。自分が言われると照れますわね」

「?事実しか言っていないつもりだけど…」

「本心から言われてるのがわかるのが余計に、という話ですわ」

 

そう言った八百万さんはなぜか廊下側に顔を向け、パタパタと手で顔を扇ぎ始めている。気になってそっとのぞき込んでみようかとしたところで、教室のドアが開いた。

 

「おはよー!あ、ヤガミン復活してる!!」

「…ヤガミン?」

「そう、夜神くんを略してヤガミン。先週クラスメイトのあだ名考えてたんだ。八百万はヤオモモ!」

 

よ、陽キャだ~。芦戸さん、先週は話す機会があんまりなかったけど、すごい明るい人だな。初めてつけられたぞ、あだ名なんて。

 

「え、まって!!なんかヤオモモ顔赤くなーい!?」

「気のせいですわ」

「絶対赤いって!これは…ラヴの予感ってやつ!?」

「芦戸さん!!!」

「え、なになに!!恋バナしてた!?」

「透おはよ~。ねえねえ、この二人あやしいと思わない?」

「おはよう!!思う!!めっちゃ思う!!先週のヒーロー基礎学からビビッときてました!」

「だよね!!」

「お二人ともやめてくださいまし!!」

 

うわあ、女子の会話だぁ…(思考停止)

前世は縁もなかったような色めいた話の中心に、どうやら僕が添えられているらしい。まあ顔はいいからな、夜神月だもの。ただ中身はコレなんだよなー。残念極まりないというか、しょっぱい感じというか。

 

「その、僕はともかく八百万さんが可哀そうだからやめてあげてよ。先週も個性のことで意気投合してただけだし…ね、八百万さん」

 

ここは潔く話の芽を摘んでおこう。勘違いされたら相手側に迷惑だろうし。

そう思って振り返った先、廊下側に向けられていた彼女の顔はいつの間にかこちらを向いていて…なんかスン、って感じの表情でこちらを見ている。

 

どういう感情?

 

「うわぁ…」

「ヤガミンそういうタイプなんだぁ」

「朴念仁」

「唐変木」

「二人して急に流暢な罵倒浴びせるのやめてくれない!?」

 

よしよし、ヤオモモ可哀そうに!と葉隠さんと芦戸さんが二人で肩をさすっている。えぇ、そんなに変なこと言ったかなあ。僕とセット扱いの方が可哀そうだと思うけれど。

 

そうこうしているといつの間にか教室にクラスメイトも増えていて、話題も美味しいスイーツの話に切り替わっていた。

 

「女子との会話って難しい…」

「わかるぜ、相棒」

「上鳴」

「女心ってやつはよォ、秋の空らしいぜ。意味しらねえけど」

 

知らないのかよ。あとお前と相棒になった覚えはない。

 

まあでも。

 

「男子でお前だけあだ名もらってるの狡くね?芦戸〜俺にもつけてくれよー」

「えー…じゃあカミデン」

「なんか語呂ワルッ」

「はいはい!俺はー?」

「瀬呂はぁ‥セロハン」

「そりゃこの流れじゃそうなるよね」

「オイラは!!オイラはなんて呼んでくれるんだ!!なあ、オイラのリトル峰田にもぐぶッ」

「はーい、朝から下ネタ禁止〜」

「爆豪とかあだ名つけにくいなー、バク…カツ…」

「かっちゃんでしょ」

「かっちゃんね」

「かっちゃん!」

「かっちゃんって呼ぶな雑魚ども!!クソっ、幼稚な呼び方広めてんじゃねェよクソナードが!!」

「ごめんねかっちゃん、つい…」

「コロス!」

「まあそんなにカッカするなよ、かっちゃん。…ふふ」

「自分で喋っといて笑ってんなよカス!!お前らもぶっ殺す!!」

 

賑やかな教室を見ていると、何だか心が暖かくなる。

 

「ふ、あはは」

「あ、夜神くん笑った」

「テメェもあとでブッ殺すからなエリート野郎が!!」

「遠慮なくヤガミンて呼んでくれてもいいよ、かっちゃん」

「誰が呼ぶかカス!!!かっちゃん言うな!」

「夜神くん意外とノリいいタイプだ〜」

 

少し気が晴れたような心地だ。

無意識のうちに握りしめていた腕時計から、そっと手を放す。

そうだ、今は。学校にいる間だけはステインのことも、ノートのことも忘れよう。

相変わらず視界の端を死神はうろつくけれど、僕は雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒なんだから。

 

そう思いなおして姿勢を正すと、ちょうど相澤先生が教室に入ってくる時間になっていた。

 

「はいみんな、おはようございます。HRサクッと済ませるから早く座れー」

「ザワ先、おはようございまーす」

「また寝袋のままじゃん」

「これが合理的なんだよ。はい、今日は時間割も特に変更なし。連絡事項もないからHR終わりな」

「はっや」

「5秒で終わったぜ。新記録じゃん」

「1限移動だよね、早めに行っとくか」

 

どこか軽くなったような体を動かし、次の教室に行こうとした時。相澤先生に呼び止められた。一緒に移動してくれようとしていた緑谷に先に行くように頼み、立ち止まる。

 

「先週のことだが」

「あ、入学早々2日も休んじゃってすみませんでした」

「…家の用事っていうのはお前の個性に関係することか?」

 

ええと。仕事のことに関しては、あまり口外はしないように言われているんだけどどうしよう。絶対に言ってはいけないというわけではないけれど、シンプルに公安の外聞が悪い。

先生にどんな形で話が通っているのか、ホークスに聞いておくんだったな。

 

そうして一瞬言い淀むだけで、相澤先生としては察するところがあったらしい。

 

「2年前、担当地区で事件があってパトロールしてた時」

「…?」

「連続切り裂き魔だったか。事件があった現場でお前を見かけた」

 

ああ、あったなそんな事件。若い女性ばかりを狙う卑劣なヴィランの犯行だった。確か5人犠牲になっていたはず。

 

「大人も1人付き添いでいたが、危険な場所にいるし顔色も悪いしで声かけようと思ったんだ。けどいきなりヴィランの特徴を言い始めた時点で、何をしてるかは理解はしたよ」

「ええと、個性使用許可証はちゃんと試験うけたので、当時も持ってました…」

「心配してるのはそこじゃない」

 

子供にさせる仕事じゃないと言っているんだ。小さな声で担任教諭はやるせなさそうに呟いた。

 

「あの連中はまだお前を連れまわしてるのか」

「まあ、便利な個性ですから」

「…相談があったらいつでも言え。俺じゃなくてもいい。お前はまだ庇護されるべき学生の身分だということを忘れるな」

 

重いため息を溢し、それでも飲み込んでみせた相澤先生は、出席簿で僕の額を小突いて廊下を歩いていった。

ホークスといい相澤先生といい、大人はどうして僕の頭をつつきたがるのか。

 

「僕は、僕にできる範囲のことを精一杯やるだけです」

 

返事は、多分ギリギリ彼の耳には届かなかっただろう。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

さて、放課後である。

 

訓練場γにて。僕の前には、指を擦り合わせて気まずそうなオールマイトと、不思議そうに首を傾げている緑谷がいる。

 

「オールマイト、どうしたんですか。夜神くんと2人で訓練場に来て欲しいって」

「うぅん、その…そのだね。君が爆豪少年に個性のことを少し話した時は、あんなことを言ったのに、こんなことを報告するのは、アレなんだが…」

「報告は、ハッキリ端的に行きましょうオールマイト先生。時間が勿体無いです」

 

「ハイ。私の不注意で夜神少年に事情がばれました」

「ええええ!?!あああ、そっか。夜神くんは個性が…!」

「そう、オールマイト先生はああ言ったけど僕の不注意なんだ。でも知ったからには僕もできることをしたい。君の個性訓練、僕に手伝わせてくれないか」

 

緑谷に事情を説明すると同時に、オールマイトの体がプシュー…と煙を立てて萎んだ。いつ見てもショッキングな光景だ。ナンバーワンヒーローがここまで傷ついているのを見ると、AFOの恐ろしさを実感する。

 

「でも夜神くんに訓練を手伝ってもらえるのは心強いよ。正直、個性訓練に行き詰まってたんだ」

「扱いの難しそうな個性だもの、仕方ないよ」

 

さて、サイコメトラーとしての本領発揮である。捜査においては地面や物品に触れてその場の記憶を視ることが多い僕だが、人体に触れれば個性についても知ることができる。(他にも健康診断っぽいことや、体の動かし方の癖、印象に残ってる過去のこととかも分かるよ。便利な個性だよね)

 

というわけで。

 

「とりあえず君の個性を把握したい。なるべく記憶とかプライバシーな部分は見ないように頑張るけど…、それでも多少はのぞいてしまうと思う。それが嫌ならやめておくよ」

 

誰だって自分の過去なんて見せたくないだろう。僕なら嫌だ。気持ちはわかる。

 

中学生の頃。落とし物を拾って渡しただけなのに、手を払いのけられたのを思い出す。僕の個性はもう知れ渡っていたから、誰もが素手で触れるのを嫌がっていた。仕方がない。そういう個性だ。この顔と運動も勉強もできるスペックのおかげで虐められたりしなかったのは幸いだっただろう。前世の僕がこんな個性持っていようものなら、まあ酷い目にあっただろうけどね。

 

普段気をつけて手袋をするようにしているのは、人を嫌な気持ちにさせないためという面もある。

 

「嫌なことなんてあるもんか!夜神くんが努力して鍛えた力じゃないか…!」

 

一秒も、一瞬たりとて迷うことなく。

緑谷は力強く僕の手を両手で握りしめてきた。

ずっと血みどろの犯罪を見てきた僕の個性を、認められたような気がして。何だか勝手に救われたような気持ちになってしまった。

 

「僕は少しでも早く強くなりたい。そのための努力ができることが本当に嬉しいんだ。だから、僕を助けて欲しい、夜神くん」

 

ああ。この信頼に応えたい。このヒーローを支える友人でありたい。

 

心の底から熱い気持ちが湧き上がってきて、僕は静かに頷いた。

 

 

 

 

 

…‥

 

 

 

『ムコセーがこっち来んなよ!』

『デク!いつまでそんなバカな夢みてやがる。クソナードがよ』

『ごめんねぇ…ごめんねぇ出久。お母さんが…個性のある身体に産んであげられなかったから』

 

視覚だけで感じ取っているわけではないので、言葉で表現をするのは難しいのだが。

あえて言い表すなら、水をずっと潜っていくような感じ。

 

個性因子というその人にとってかなり根幹を占める部分を視るとなると、相当深く潜らなければならない。通り過ぎるたびに聞こえてくる緑谷の過去を、なるべく見ないようにしつつ深く、深く潜る。

 

緑谷はヒーローだ。

少なくとも、今日の僕は彼の言葉に救われたから。彼はヒーローだと言い張りたい。

 

僕は緑谷を無個性の可哀そうな人として見たくないのだ。彼はすごい人だ。強い人だ。勝手に過去を覗き見て、同情を抱くなんてことは彼に対して失礼すぎる。

抱くとすれば尊敬だ。よくぞここから立ち上がった、折れなかった。ああ、君は最高のヒーローだ。君みたいに正しい人がノートを拾っていたら…。

 

いけない、雑念が混ざり始めた。これだから人の個性を視るのは難しいんだよな。

 

深い深い内面の世界を潜り続けて、現実ではどれほどの時間が過ぎたのか。ようやくそれらしきものを見つけた。

 

「(個性因子が強大だ…普通の人の何倍あるんだろう…)」

 

人から人へ受け継ぐ個性というだけあって、凄まじい存在感だった。これまで潜ってきた緑谷の内面の世界とはまだ馴染んでおらず、違和感がものすごい。六畳一間の和室に巨大なミラーボールがある感じというか…。

 

「(ふむふむやっぱり体に個性がまだ馴染んでいないことも原因…いや、個性因子が強大になり過ぎてて耐えられる人の方が少ないのか)」

 

体にかかる負担としては1点に集中するより全身に分担した方が良さそうだ。ある程度今後の見通しが立ったところで、そろそろ個性を解除するかと思ったところで、違和感。

 

「(‥?何か隠れてる、というか層になってる?)」

 

個性因子のそのさらに奥があるような感覚に、より深く潜ろうとしたところで──

 

『君、誰?継承者じゃないね』

『縺ゅ>縺、縺ョ謇句?縺ァ縺ッ縺ェ縺輔◎縺?』

『萓オ蜈・閠?↓縺ッ螟峨o繧翫↑縺?□繧阪≧』

『縺セ縺?逵?縺?h』

『諤・縺ォ襍キ縺薙@繧?′縺」縺ヲ』

『……』

『謨丞援縺ォ繧医m縺励¥縲∝搖繧』

 

 

いくつもの声がして、急速に弾き出された。

 

 

……

 

 

「…いや、あなた方が誰ですか!?」

「うおわっ!?」

 

ガバリ!と身を起こして叫ぶと緑谷が仰け反った。驚かせてしまったらしい。

 

「あの、オールマイト先生。お聞きしたいんですけれどOFAって喋ります?」

「え?いや、喋らないと思うよ…?」

「でもなんか7人くらい喋ってて。なんか凄い眠そうだったけどいたんです!」

「えええ…?」

 

とまあ、オールマイトと緑谷を困惑させてしまう一幕はあったものの。無事に今後の個性の運用についてはアドバイスできたと思う。

 

「なるほど僕は個性を発動させるという意識が強過ぎたんだ、そうだ身体能力の一部な訳だからギアを上げるように全身でぶつぶつぶつ…」

 

まあこの調子なら大丈夫そうだ。お役に立てたようで何より。

 

 

月曜と火曜日はそんな感じで平穏に過ぎて、明日はいよいよ2回目のヒーロー基礎学の日らしい。USJっていう演習室にいくんだとか。

楽しみだなぁ。

 

 

 




鈍感系主人公みたいなムーヴしてるけど、前世の意識引きずりすぎて勇気が出ないタイプの男です。やーい、意気地なし〜

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