夜神月に成り代わってヒロアカ世界に転生したけどデスノート絶対に使いません!   作:佐久間2525

9 / 19
第九話 特定

 

 

雄英体育祭。

かつてのオリンピックに代わるほどの熱狂を見せる、雄英主催の一大イベントだ。ここで活躍した生徒が将来のトップヒーローになることも多い。

個性が台頭したこの超常社会。平等な条件でできるスポーツはもはや存在しないと言っていい。個性を使用してよいならばどんな競技でもそれに適した個性を持つ人が有利になるし、個性使用不可にすれば異形型の一人勝ちだ。かといって異形型の参加不可なんて条件を付けたら、差別問題に発展するわけで…現代のスポーツはほぼ個人の趣味に留まっている。

 

そういった背景もあり、国民は競争に飢えているのだ。

磨いた技をぶつけ合う、個性を使用した派手な戦い。それは見ていて楽しいだろう。

 

理解はできるのだけれど──

 

 

「(未来のトップヒーローの個性、本名、顔が大々的にバレるのってどうなんだろう…)」

 

 

この世界に転生してテレビを見るたびに毎年思っていたことだ。

本名と顔が分かれば人を殺せるノートなどという存在を知っているだけ、余計に。

 

「(まぁヒーロー社会は盤石だと示したい国の方針なんだろうし、仕方ないけど)」

 

雄英は国立であるから、そういった思惑も絡んでいることは透けてみえる。ヒーロービルボードチャートなんてものが運営されているのと似たような理念だろう。

 

栄誉を求めて活躍するヒーロー候補生。

娯楽に熱狂する国民。

ヒーローの卵を宣伝して治安維持に役立てたい国。

視聴率を求めるメディア。

 

これだけの思惑が絡んでしまえば運営の仕方を変更するなんて、もはや不可能なんだろうな。難しい問題だ。

 

 

 

・・・

 

 

『ぁぁぁ…ライトォ…俺ァそろそろ限界だ…禁断症状が出ちまう…』

 

物思いに耽っていると、ふいに声をかけられた。サイコメトリで周囲に人影がないのを確認して視線を空中に向ける。

 

「へぇ、そう。出るとどうなるの」

『こう体が捻じれて、そりゃあ見るも無残な姿になるぜ?見たくないだろそんなの』

 

そう死にそうな声で話しかけてくるのはただいまリンゴ抜きの刑2日目のリューク。

ということはUSJ襲撃からまだ2日しか経っていないってことか。

最近いろいろ忙しかったから時間が経つのが遅く感じるな。

 

雄英高校は水曜日に襲撃を受け、木曜日は臨時休校、そして本日…金曜日は通常通りの授業というスピード復活を果たしたわけだが。未曾有の大規模ヴィラン襲撃に冷や汗を流している公安上層部にはそんなことは関係なしだ。

 

主犯二人は取り逃がしたとはいえ、その他のチンピラヴィランは大勢確保された。取り調べにおいて僕の個性が役に立つのは言うまでもなく。公安がどうやってこの案件に関わることになったのか知らないが、いつもの如く依頼が来て、また学校を休んでの仕事と相成ったのである。今は休憩中。

 

 

「…無残な姿。ね。興味あるから眺めてることにするよ」

『ライトの人でなし!悪魔!死神!』

「死神はお前だろ」

『ううぅ…ウゥ!!もう限界だ~!!リンゴ食べたいリンゴリンゴリンゴリンゴ…!!!

 

宣言通り空中で手足を捻じらせ始めた死神は、もう無視することにした。お前がヴィランの襲撃を教えてくれなかったのが悪い。

 

それよりも、僕がいま考えるべきは体育祭のことだ。

 

 

 

──

 

イズク:夜神くん体調どう?

イズク:なんか相澤先生が週明け話があるから覚えてろって

イズク:珍しく怒ってるように見えたけど

イズク:なにしたの??

 

月:体調は大丈夫

月:緑谷こそ足大丈夫か?

月:お礼は来週改めて言わせてもらうけど

月:助けてくれてありがとう

月:あと相澤先生が怒ってるのは知らない。コワい。助けて

 

イズク:リカバリーガールに治してもらったから平気!

イズク:夜神くんが無事でよかったよ

イズク:そっちに関しては助けられそうにないと思う…

イズク:健闘を祈る

 

月:薄情者め

 

イズク:そうだ、雄英体育祭の話もしてたよ

イズク:もう2週間後に迫ってるって

 

 

──

 

 

10分ほど前に緑谷とやりとりしたメッセージを眺める。相澤先生が怒っているのは、多分また休んだからだろうな。何度も忠告しているのに、そのことごとくを無視されているのだ、一言申したくもなるだろう。週明け、平謝りするしかない。

 

というか、体育祭に関しては、こんな状況でも通常通り開催するのか。まあ、ヴィランに屈しないという姿勢を見せる上ではこの上ない一手、なのだろうけど。

そんなことをぼんやり考えつつ、携帯を片手に頬杖をついていると、不意に休憩室のドアが叩かれた。同時に、美味しそうなにおいが鼻孔をくすぐる。

 

「夜神くん。お弁当届いたので持ってきました」

「え、目良さんがわざわざ…ありがとうございます」

「今キミの周囲に不用意に人を増やしたくないので」

 

目の下に濃い隈を飼っている彼は目良さん。恐らく雄英に襲撃があってから一睡もできていない人である。公安の中では中間管理職といったところのポジション。

 

仕事に追われている中なのに様子を見に来てくれたらしい。

懸念しているのは──僕の身の安全か。

 

「…やっぱり僕、狙われると思います?」

「分かりきったことを聞くのは時間の無駄ですよ」

 

疲れた声で彼はため息をついた。

 

「死柄木と名乗るヴィランに目をつけられたと聞いています。公安内部にまでは侵入してこないでしょうが、警戒するに越したことはありません」

「そうですよね。…そうだ、目良さんとしては、僕が雄英体育祭に参加するのってどう思いますか?」

 

先ほどまで考えていたことを聞いてみる。ヴィラン連合に目をつけられている今、体育祭になんて参加しようものなら相手に情報を与えることになる。僕としてはなるべく避けた方がいいと思うのだが。

 

「警備は盤石なので心配することはないでしょうが、キミの個性が詳しく知られるのはまずいですね」

「ですよね。よし、体育祭は欠席することにします」

「……」

 

もの言いたげな目良さんは、一瞬口を開きかけて、重苦しいため息でそれを流した。どうしたんだろう。

 

「…冷めないうちに弁当どうぞ」

「ありがとうございます。やった、焼き肉弁当だ」

「午後はあと1人視て頂ければいいので、ゆっくり食べてもらって大丈夫です」

 

自分は今から会議があるので、と言い残して目良さんは去っていった。さっきの様子は気になるけど、どうせ聞いても答えてくれないんだろうな。これまでの経験則からそんなことを考えつつ、僕は静かに弁当を食べた。いいお肉が入っていて美味しかったとだけ述べておこう。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

休憩室から幾ばくか離れた地点で、憂鬱さで足が止まった。

 

雄英体育祭なんて、誰もがその舞台を夢見る一大イベントだろうに。ああもあっさりした様子で欠席するだなんて言われると心配になる。

しかしどの口がそんなことを言えるだろうか。自分は公安の一員だ。

 

ホークスを育てていた時も感じていた罪悪感が胸を刺す。

まだ成人していない子供を、正義のためと銘打って酷使している事実。こうして彼の個性を利用している立場である以上、心配なんて口に出す権利もない。

 

「…すみません、目良です。夜神家の警備に関してなんですけれど、配置を強化できたりって…」

 

せめてできるサポートをしよう。そうやって自分はいつもこの罪悪感を誤魔化してきたのだから。

電話を片手に廊下を歩きつつ、あくびを一つ。

 

早く我々の仕事がなくなる世の中になってほしいものだ。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

さて、雄英体育祭である。

今日にいたるまでの2週間、色々とあった。

授業を受けたり、ヴィランの記憶を読んだり、相澤先生の小言を聞いたり、緑谷の特訓に付き合ったり…。

 

そんなこんなで迎えた本日、校長先生に直談判して不参加の権利を勝ち取った僕は、控室のモニターで騎馬戦の様子を見守っていた。

相澤先生から単位取得のためのレポート課題を出されたことだし、しっかりと観察しておこう。みんなの成果と課題、バシバシ見つけるぞ。

 

「大混戦って感じだな~。お、瀬呂の今の個性の使い方うまい。峰田のチームは作戦がいいな」

 

緑谷は最近ようやく特訓の成果が出てきて、個性を怪我せず使えるようになってきたので既に大暴れしている。一回戦の障害物競走も一位通過、現在の騎馬戦も他のチームに飛び移ったり、爆豪と空中戦したりと縦横無尽の活躍だ。それに触発されてか、他のクラスメイト達の動きも大変良い。

 

手元の用紙にガリガリと所感をメモしつつ、再度モニターを眺める。

レポートのためには全員の動きを見た方がよいのだけれど、どうしても僕の視線はある二人に吸い寄せられた。

 

C組の生徒と騎馬を組んでいる青山と、八百万さんたちと騎馬を組んでいる轟。

 

僕が、この2週間で()()()()()()()()と当たりをつけたクラスメイトだ。

 

 

 

……

 

 

相澤先生には探るなと言われたが、クラスメイトを危機に晒すようなことを僕が放置できるかと言ったら、答えは否。とはいえ、担任の善意からくる言葉を完全無視するのも気が引ける。

そのため僕はごく消極的に、「見つかったらいいな」くらいの心持ちで内通者探しを始めた。とる方法は簡単で、クラスメイトとのスキンシップを増やしたのである。

 

おはようと肩に触れる、実技授業でハイタッチ、呼び止めるために肘を掴む…などなど。女子にスキンシップをとるのは勇気を要したが、何とか乗り切った。

この時、触れるのは一瞬でいい。なんせ僕の個性を使うわけではないので。

 

目的は、()()()()()()()()()()()()()()こと。

 

大々的にUSJで個性を使用した今、クラスの誰もが僕の個性について理解したはずだ。サイコメトリが情報を得るのにいかに特化しているのか。

もし、同じクラスに内通者がいるのなら必ず考える。自分にもしあの個性が使われたらどうしよう、と。

 

 

『…俺に触るな』

おはようと声をかけただけで睨みつけてきた轟。

 

『ッ!?…おっとごめんよ、急に声をかけられたからびっくりしちゃった☆』

背後から肩に触れると大げさに後ずさった青山。

 

同じクラスに内通者なんているわけがない。クラスメイトとの接触が一通り終われば他のクラスに目を向けよう。そんな楽観的な気持ちで始めた検証は、たった数日で2人もの拒絶を引き出してしまい。しかし確たる証拠は出てこないまま、今日に至る。

 

 

・・・・・・

 

何も見つからなければいいのに、と願う心と。本当に内通者がいるのならみんなの安全のために早く排除すべきだと囁く声と。二つがせめぎ合ってどうしようもない気分だ。

轟はナンバー2ヒーローの息子であるのだから、内通者であるわけがない。なんて考えもしたのだけど。保護者の身元確認なんてものは入学の時点で雄英が済ませているだろう。青山の両親だって名のある資産家だ。そういった理由で疑惑を払しょくすることも出来ず。

 

結局、相澤先生が心配した通りになっている。自分の個性で、クラスメイトの未来を閉じようとしている現状が、恐ろしくて仕方ない。

 

 

「昼休憩挟んで午後の部だぜ!じゃあな!…イレイザーヘッド飯行こうぜ」

「寝る」

 

「腹減った~」

「早くメシ行こうぜー」

「みんな、お疲れ様」

「あ、夜神!」

「出てきてええの?カメラに写っちゃうとまずいんじゃ…」

「ここは死角になってるから大丈夫だよ。みんな騎馬戦すごかったね」

 

生徒の出入り口、競技を終えて昼食に向かうみんなを出迎える。ヴィランに情報を与えないための欠席であることは伝わっているらしく、心配そうに声をかけられた。

 

「ほんとに悪いな夜神…あの時不用意にお前の名前をヴィランに教えることになっちまってよ」

「もう、何回謝れば気が済むんだよ。気にしてないって言ってるだろ?どっちにしろ僕の存在は相手にバレていただろうし、それに体育祭も元々出る気はなかったんだってば」

「だって雄英体育祭だぜ?ヒーローにアピールできるチャンスなのにさ」

「僕は陰で活躍するヒーロー目指してるから。目立たなくていいの」

「ふっ…影のヒーローか。お前も分かっているな」

「いや、常闇が想像してるのとはちょっと違うと思うけど…」

 

なんてクラスメイトと会話しながら、気づく。

轟と緑谷の姿がない。

二人は?と尋ねると、なんか話があるとかで轟が緑谷を連れて行ったぜ。と答えられた。

 

…ちょっとまずいんじゃないだろうか。

 

「僕、様子を見てくるよ。みんなはご飯食べてて。午後も頑張ってね」

 

内通者疑惑のある轟が、OFA継承者である緑谷に接触を図った。

僕の考えすぎで済めばいいんだけど──

 

 

……

 

 

「記憶の中の母はいつも泣いてる」

 

考えすぎどころの騒ぎではない。僕はなんて馬鹿なのか。

 

「お前の左側が憎いと…俺に煮え湯を浴びせた」

 

誰にだって知られたくない過去はある、そう分かっていたはずなのに。

少し拒絶されたくらいで、なにが内通者の疑惑だ。馬鹿か。

通路の影。先に立っていた爆豪に黙ってろ、と口を押えられつつ、僕は立ち尽くしていた。

 

クラスメイトの口から語られる過去…ナンバー2ヒーローの家庭での実態。虐待とも呼べる苛烈な訓練、崩壊した家族、心を壊した母。

気軽に人に知られたくないはずだ。僕を拒絶するのなんて当たり前のことだ。そんなことを根拠に、僕はクラスメイトを疑っていたのか。

 

爆豪と二人して身じろぎも出来ず立ちすくみ、緑谷が宣戦布告に堂々と言い返すところまで聞き終えて、ようやく肩の力が抜けた。ずるずると壁に背中を預けて座り込むと、途端に鋭い目つきが寄こされる。

 

「…ッチ、盗み聞きしようとしたんじゃねェからな。通りがかったら勝手にしゃべり始めただけだ」

「だろうね。君は気になることがあるなら正面から聞くか…そもそも人の事情とか気にならないタイプだろうし」

「ハッ、分かってんじゃねえかエリート野郎が。…で?テメェがここに来たのは氷野郎を疑ってたからか?」

 

投げかけられた言葉に、思考が一瞬止まった。僕が轟を疑っていることがバレた?

 

「な、んでそれを…」

「パーソナルスペースが広いやつが急にべたべた人に触る理由なんざ、ちょっと考えりゃ分かるだろうが」

 

なるほど、僕の最近の行動は、彼に思惑を見抜かれていたらしい。この二週間、肩に触れても訝しげに見られるだけで振り払われなかった理由が判明した。

しかし僕は彼を少し誤解していたみたいだな。キレやすくて直情型とばかり思っていたけれど、その実、人のことをよく見ていて冷静なタイプだ。僕の個性や行動だけで、普通そこまで考えないだろうに。

 

爆豪は確認したいことを聞き終えたのか、苛立たしげな様子で「優勝するのは俺だ」と言い残して、通路を去っていった。僕に宣言されても仕方ないんだけどな。

 

 

◆◇◆◇

 

 

さて、轟のことが誤解だったとなると、青山に関しても僕の思い違いなんだろう。また手掛かりはなくなってしまったけど、クラスメイトが内通者ではない可能性が再び見えてきて少し心が軽くなった。

 

「おい夜神」

「相澤先生、どうしましたか?」

「お前、決勝に出場する選手のボディーチェックしてこい。ポケットに投げ道具が入っていないか軽く見る程度でいい。個性も使うな」

「…?はい、分かりました」

 

スタジアムの通路を歩いていると、解説席に戻る途中の先生に呼び止められた。頼みごとをされるのはいいのだけれど、なぜほかの教員でなく僕に頼むんだろうか。

 

「それで内通者探しはやめにしろ。俺たちも調査はしている」

「…やっぱりバレてましたか」

「お前が素直に俺の言うことを聞いたためしがないからな」

 

なるほど、相澤先生にもここ最近の行動の意図はバレていたらしい。少し僕はこっそり何かをするというのが苦手な気がしてきたぞ。爆豪にもバレてたし。

 

「分かりました。お言葉に従います」

 

 

「というわけで相澤先生に頼まれたので僕がボディチェックをします」

「くそ!!ミッナイ先生がよかった!!!」

「ほんとだよ!!何してくれてんだよ夜神!!!」

「お、お前…!!そんなウソついて女子の体なで回すつもりなんだろ…??オイラには分かるぜ、仲間に入れろよ友達だよな…!!

「女子を騙してチアガールさせたお前らと一緒にするなよ」

 

相澤先生に釘を刺されたわけだし、これでもうクラスのみんなを疑うのはやめにしよう。ポケットの中を確かめるように軽く触れても、誰も避けるそぶりも何もない。轟だって、ボディチェックに何も言わず応じている。

 

内通者なんてうちにはいなかった。

そう結論付けて最後の一人…青山に近づいたところで、彼が一歩後ずさった。

 

「…?あとは青山だけだけど、ボディチェックさせてくれる?」

「あ、その…ちょっとおなかが痛いかも☆」

「いいよ、トイレに行った後でも」

「ッ、その…実は…さっきは大勢の前で言い出せなかっただけで、僕も騎馬戦の記憶がないからさ!最終戦は辞退しようと思うんだ…!」

「えー、青山くんもやっぱそうなん?」

「さっきは『僕はやるからね』とか言ってたのに」

「男らしいぜ!!」

 

どうして。

ここで僕から逃げさえしなければ、君のことを信じられたのに。

そんなに顔を青くして、冷や汗をかいて。やましいことがあるって、嫌でも伝わってくる。

 

黙り込んだ僕と、後ずさる青山を見て、爆豪だけが眉をひそめて舌打ちする。

 

「…そっか、先生には僕から伝えておくね」

 

また、嫌な報告を相澤先生にすることになる。

どうしてこんなことばっかり。

泣き叫びたいような気持をぐっとこらえて、僕は青山に微笑みかけた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「えー、青山は、ご家庭の都合で海外に転校することになった」

 

翌週。体育祭終わりで盛り上がっていた教室が、一斉に静かになる。

 

「ええええ、うそ、そんな急に…!?」

「あいつ水臭すぎるだろ!!言えよ!!」

「家庭の事情って言ってるんだから急なことだったのじゃないかしら…ケロ」

「それなら仕方ないか…えぇー、まじかよー」

 

クラスメイトの急な転校。突然のことに騒めくみんなは、相澤先生の暗い様子には気づかない。ほとんど普段のテンションと差はないから仕方ないが、それでも声は沈んでいる。爆豪は、窓の外を眺めていて顔が見えなかった。

 

「寂しくなってしまいますわね」

「そうだね…。本当に、残念だね」

 

一つ空いた席が、ポツンと存在を主張していた。

 

青山と彼の両親は、ヴィランに雄英のカリキュラムや校舎図を流したことで逮捕された。与したヴィランがあのオールフォーワンであったことから情報は統制されており、一般的には他国へ引っ越したことになっている。そのように公安が情報操作していた。

 

あああ、殺される…ここを出たら私たちも…

 

彼の両親の記憶も視た。恐怖で支配されていた人たちだった。目の前であんなものを見せられては、仕方がないと思ってしまった。

ある意味では被害者なのだ。現に、決して大した犯罪はしていない。ただ少し情報を流しただけ。

それでも、彼の行動で今後クラスメイトが傷つく可能性がある以上、見過ごすわけにもいかなかった。

 

せめて、僕は覚えていよう。

彼という一人のヒーローの未来を閉ざしてしまったことを。

 

「(オールフォーワン…)」

 

人を恐怖で操る、強大なヴィラン。全ての元凶、諸悪の根源。

今もどこかで人を傷つけて喜んでいるであろう男を想像し…早くいなくなってくれたらいいのにと願わずにはいられなかった。

 




あああごめんよ青山くん、まだ林間合宿の場所もバラしてないのに体育祭で退場にしちゃった…!!轟くんを疑うとかいうガバ推理するくせになんで最終的に当てちゃうのか…。

誤字報告、評価、感想ありがとうございます。とっても励みになってます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。