【完結】カルカとモモンガに救済を!   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第3章 リ・エスティーゼ王国
第12話 黄金と青


カルカは、ウルへと伝言が来た際、嬉々として反応して見せたものの、それがあまりにも短いものであったことに加え、許容できない内容であったために、その日の夜は中々寝付くことができなかった。

 

そして次の日、以外にも思っていたより早くウルから伝言が飛んでくることになった。

 

それを認知したカルカは、疾風の如く、食いつくようにして応答して見せる。

 

『ウ、ウル様!!ご、ご無事ですか!?』

 

『カルカ様、申し訳ありません。昨日はあのような伝言をしてしまいまして…』

 

『そ、そんなことより、一体何があったのですか?』

 

カルカは酷く困惑して見せたが、ウルの話を聞いてもまだ

 

困惑は続いていた。

 

『ホニョペニョコ…そのような吸血鬼が…それにそれを倒した漆黒のモモンというのは…その、同郷の方なのですか?』

 

『いえ、同じ南方で旧友ではありますが、国は違います…。ですが、追っているのは、最終的には同じものになります』

 

『災厄の大魔皇…それに、その麾下である2体の吸血鬼と3体の魔皇ですか…』

 

『ええ、モモンのおかげで、5体のうちの1体は屠れました』

 

ウルの言葉に、カルカは戸惑いを見せながら言葉を発する。

 

『…その大魔皇と魔皇…それに吸血鬼は一体何が目的なのですか?』

 

『…それは…』

 

ウルは非常に言いにくそうに口を紡いだ。

 

カルカはなんとなくその意味を理解してしまう。

 

『…聖王国も…標的、なのですか?』

 

『…恐らくは…少なくとも、王国、聖王国、帝国、法国は…それに竜王国と評議国も標的かもしれませんが…こればかりは不明な点が多いです…』

 

カルカは絶望に似た感情を抱く。

 

先のウルの話では、吸血鬼や魔皇ですらウルと同等の力を持つというのだ。

 

そして、それを束ねる災厄の大魔皇は、ウル一人ではまず勝てないと…。

 

カルカの知る限りでは、吸血鬼と魔皇への対抗手段ですらウルと漆黒のモモンくらいしか知りえない。

 

漆黒のモモンに関しては、ウル自身が自分と同格というのだから、そこに間違いはないだろう。

 

しかし、それでも単純に考えても2対5である。

 

余りの3を、それも大魔皇を入れた状態での3を、各国が協力したとて、相手取り勝てる未来が見えないからだ。

 

『ウル様は…どのようにお考えですか?』

 

『そうですね…相手の情報の一切が不足しています…戦いに備えて準備をする…くらいしか今はないですかね…』

 

『そうですよね…』

 

カルカはすでに頭がパンクしかけている。

 

何せ、今の今まで断片的にですら得ていない情報であったからだ。

 

災厄の大魔皇も、その配下である吸血鬼と魔皇も…。

 

全てが初耳であった。

 

聖王国が各国との関りが薄いことが原因の一つかもしれないと考えてはいた。

 

(実際にはウルとモモンの作り話だからなのだが…)

 

故に、この情報源となるのは、ウルと漆黒のモモンしかいないという結論に至る。

 

『ウル様…一度首都ホバンスに来ていただくことはできますか?ぜひ詳しい話をお聞きしたいです…。それに、大臣等重役を集めての会議にも、参加していただきたく思います』

 

『えっ…あーっと…。実は、このまま王国の首都で調査をしようと思っておりまして…それが終わってからでも大丈夫ですか?』

 

『お、王国…ですか…。わかりました。ですが、無理はしないでくださいね?ウル様に何かあったら…私は…』

 

カルカは、動揺し、震えて見せる。

 

『はい、お気遣い感謝いたします…。それでは一度切らせていただきますね…』

 

『はい…それでは、また…』

 

伝言を切ったカルカは、小さくため息をつく。

 

そして、決意に満ちたような目を抱き、私室を後にした。

 

 

それからおよそ1週間後…。

 

アインズとナザリック勢が、リザードマンの集落と友好的な関係を結ぼうと奮闘している頃…。

 

エ・ランテルの冒険者ギルドを通じて、各国に先の大魔皇の情報が報告に上がることになる。

 

聖王国においては、先んじてウルから情報が齎されていたため、大臣を通して、聖王女にその書状が一早く舞い込んできた。

 

その書状を見て、カルカはウル本人の話と全く同じであることを受け、正式に宮殿内で会議を行うに至った。

 

宮殿の大会議室には、カルカ聖王女を始め、王族でカルカの兄カスポンド、そして聖騎士団団長のレメディオス、神官団団長のケラルト、さらに各大臣と招集に応じた一部の南部貴族の姿が見られた。

 

他にも、九色の一部や、各副団長の姿も見られる。

 

急な招集にもかかわらず、これだけの重要人物が集まったのは他でもない。

 

それほどに事態が重いからである。

 

「…以上が、白銀のウル並びに先日アダマンタイト級に昇格した冒険者である漆黒のモモン、それにエ・ランテルの冒険者ギルドからの報告にあった内容でございます」

 

聖王国の外務大臣が、報告書を読み上げる形で発言を終える。

 

会議室内は今までになく騒然とする。

 

災厄の大魔皇とその配下の吸血鬼と魔皇…そしてその強さと過去に齎された災厄…。どれも見過ごすことのできないものであったからだ。

 

騒然とする会議室であったが、一人の男が口を開く。カルカ聖王女の実兄であるカスポンドであった。

 

「その情報に、確実な信ぴょう性はあるのですか?」

 

「…確実、と申されますと些か疑問は残ります。我々聖王国の冒険者である白銀のウルと、王国の冒険者、漆黒のモモン、両名の情報のみで、確実性のある史実や証拠となる様なものは現状ではありません」

 

その発言に対して、外務大臣が答える形でゆっくりと言葉を発した。

 

続けて防衛大臣が手を挙げて発言する。

 

「しかし、現実に聖王国内に悪魔が出現し、アベリオン丘陵では亜人と手を組み攻めてきた…。これは真実である証拠の一端となるのでは?」

 

「…大変な無礼を承知で申し上げます。白銀と漆黒の作り話…という線はありませんか?」

 

防衛大臣の発言に対し、南部の要所である城塞都市デボネを領内に納める、南部の大貴族が一種の可能性を提示する。

 

「その線は考えにくいかと存じます。…もし仮にそうだとしたら、カリンシャ、アベリオン丘陵、そのどちらにも悪魔は出現していないかと…。これまでに悪魔の出現があったのであれば他の可能性もありますが、私の知る限りでは聖王国に悪魔が出現したという話は聞いたことがありません」

 

デボネ領主の意見を否定したのは、九色の一人、パベル・バラハであった。

 

そして、デボネ領主は再度口を開く。

 

「…再びの大変失礼な発言をお許しください。…所謂自作自演という可能性は考えられませんか?名声を得るために、何かしらのアイテムを駆使して、悪魔を出現させることも可能でしょう」

 

「それこそありえないかと思います。私は彼の戦闘を直に見た一人ですが、彼の力は、聖王国最強とうたわれている聖騎士団団長レメディオス・カストディオを大きく上回るモノでした。そんなことをしなくても、彼の名声はいずれ高まっていたものと考えられます」

 

「アイテムによる悪魔の召喚の可能性はあるが、ウル殿がそれを行った…というのはありえないだろう。彼の善行と誠実さは、誰もが理解しているはずだ」

 

デボネ領主の発言に対し、ケラルトとレメディオスが反撃する。

 

誰もがそれを否定することなく、少しの沈黙が流れる。

 

「大変に申し訳ない発言を致しました。お許しいただきたい」

 

「いえ…あなたは可能性の話をされただけです。謝罪の必要はありません」

 

デボネ領主に対し、カルカが凛として応対して見せる。

 

「私は、これは事実だと考えております。カスポンド様が信ぴょう性のお話をされましたが、実際に吸血鬼の一人、ホニョペニョコが討伐されている…。これだけでも、この事態に対処する理由にはなるはず…。しかも、白銀のウルと同格の力をもつとされる漆黒のモモンが、あと一歩で命を落としていたかもしれない程の強さ…。つまりは、ウル殿ですら大魔皇の配下が相手では、苦戦を強いられるということになります」

 

聖堂大臣が、神妙な面持ちで答えると、カルカは意を決した様子で口を開いた。

 

「私も、そのように考えております。ウル様と漆黒のモモン殿は、互いに国は違えど、災厄の大魔皇に国を滅ぼされています。南方から来たという話も、先の大魔皇を追っているという話も、聖王国に来た当初から仰っていたこと。今我々が為すべきことは、最悪の事態を想定し、聖王国のみならず、周辺国家一丸となってこの災厄に対処するべきと考えています」

 

普段であれば、南部貴族派閥が難癖をつけるなどして、様々な会議や議題がまとまることはなかったが、ことこの事案に関しては、南部のみでどうにかできるものではないと感じていたのか、南部貴族からの反発はなかった。

 

カルカの提案は、周辺国家との連携においては、各国の動きを見て判断するという点で収まりを見せたが、その他に関しては、なるべく混乱が起こらない形での国民への周知を含め、国として行動に移すことになるのであった。

 

 

 

リ・エスティーゼ王国、首都リ・エスティーゼ。

 

聖王国の北東に位置する、人間国家である。

 

その首都で、ウルは特に意味もなく散策をしていた。

 

理由は簡単で、聖王女であるカルカに会いたくないからである。

 

別に嫌って会いたいわけではない。

 

明確な理由がある。

 

それは、もちろん、自身とアインズで作り上げた嘘話を深堀されたくないからである。

 

ウルは、そこそこ頭も回るし、賢い。

 

その辺は自身でも些少自覚しているところであり、少なくともアインズよりは良いことは確かである。

 

しかし、ことこれがアルベドやデミウルゴスと比べると、天と地ほどの差がある。

 

もしこの嘘…作り話を一から構成したのが、アルベドやデミウルゴスであれば、同等の知恵者がいない限り、見破られることはないだろう。

 

だが、それを為したのは凡人と凡人よりちょっと頭が回る程度の一般男性2人である。

 

尋問なんてされた日には、すぐにボロが出てしまうのは明白だと考えているのだ。

 

故に、少なくともこの作り話を、デミウルゴスが才を以てして限りなく真実に持っていく算段を付けるまでは、なるべく上層部連中との直接の接触は避けよう、というのがウルの思惑であった。

 

さて、意味もなく散策とは言ったものの、一つだけやることはあった。

 

それは、この王国の首都に情報収集として潜入しているセバスとソリュシャンに会いに行くことである。

 

暫く首都を見て回った後に訪ねる予定であったが、予定が少し狂うことになる。

 

それは、王国首都の市民たちの反応である。

 

エ・ランテルですら、すでにウルは認知されていたのだ。

 

首都であるここで、それが為されていないわけはなかった。

 

いつもの白銀の鎧ではなく、動きやすい白を基調とした服装に愛刀2本を下げているだけであったが、街ゆく人が気付かないはずもなかった。

 

それは顔である。

 

聖王国のローブルの至宝とうたわれるカルカ、そして黄金の姫と言われる王国の第三の王女。

 

その2人をそのまま男にし、更に一つ美しく、かっこよくしたような顔をしているウルである。

 

周りの人々が注目をしないわけはない。

 

例え上着の下にアダマンタイト級のプレートを隠していようが、誰であるかはバレバレなのである。

 

そのため、ゆっくりと街を散策することは叶わず、やけくそにいっぱい酒でも飲もうと酒場に入る始末であった。

 

酒場の扉を開けると、昼下がりということもあり、席は結構空いている様子であった。

 

自分を除けば、2組しかいなかった。

 

「店主さん、エールを一つ頂いても?」

 

「…はいよ」

 

ウルはカウンターに腰かけると、ぶっきらぼうな親父に注文をする。

 

ウルの顔を見て一瞬驚いた様子を見せたが、特に畏まるようすはなく、短く返される。

 

「(こういうのが楽でいいよなー)」

 

と思いながら、出てきたエールを口に運ぼうとした瞬間、2組しかいなかった客のうちの1組のに声を掛けられる。

 

「申し訳ありません…。もしかして、聖王国の白銀のウルさんではありませんか?」

 

ウルは声を掛けられたことで、エールを持つ手を下げ、振り向く。

 

長い金髪に凛とした美しく若い女性であった。年の頃は20になるかならないかくらいであろうか。

 

「ええ。そうですが…。あなたは?」

 

「ああ!やっぱり!!お会いできて光栄です。私は、ラキュースと申します。蒼の薔薇というチームで冒険者をしています」

 

ウルは大きく目を見開いた。

 

「蒼の薔薇というと、あのアダマンタイト級冒険者の、蒼の薔薇ですか?」

 

「はい、そうです」

 

「これはこれは、こちらこそお会いできて光栄です」

 

ウルは敬意を表し、カウンター席から立ち上がって挨拶をする。

 

「あの、もしよろしければ、私たちの席でお話でもいかがですか?仲間を一人ご紹介させてください」

 

「お邪魔でなければ、ぜひ…」

 

ウルは、ラキュースから案内される形で、その席へと向かった。

 

 

「へー、たった一人でギガントバジリスクを…あんた戦士だろ?よく倒せたなっ!」

 

「ええ、まあ正確には聖騎士なので、信仰系の魔法が使えるんですよ。といっても、本職は剣なんですけどね」

 

先ほど紹介したいと言われた大柄な女性、ガガーランと会話をしながらウルはエールを呷った。

 

「信仰系ですか?実は私も信仰系の魔法詠唱者なんです」

 

「そうでしたか…。いやー、申し訳ない。私はアダマンタイト級になったばかりでして、先輩である皆さんのことすらまともに知らず…」

 

「そういや、あんた、一か月も経たないうちにアダマンタイトになったんだろ?すげーじゃねえかっ!」

 

ガガーランは、ウルの肩をポンポンと叩き、称賛する。

 

「いえいえ、ただタイミングよく悪魔だの亜人だのが侵攻してきただけですよ」

 

「噂には聞いてるぜ!悪魔と亜人、1万だろ?それを倒しきっちまうのがすげーんだよ!なっ!」

 

「ええ、私たち蒼の薔薇のチームでも、難しいかもしれないわ」

 

ウルの謙遜は、特に2人に悪い印象を与えず、逆に実力を笠に着ない誠実な男であるという認識を与える。

 

「それで、ウルさんはなぜこの王都に?」

 

「あー、ちょっと調べたいことがありましてね…」

 

「なんだよ?そりゃ…俺たちが何か知ってたら教えてやるぜ」

 

ウルはエールを呷り、一息つくと口を開いた。

 

「実は、災厄の大魔皇ってのを追ってるんですが、その息がかかってるかもしれない組織を調べようかと思いまして…」

 

ウルの発言に、先ほどまで笑みを浮かべて話をしていたラキュースとガガーランが一瞬で真顔になる。

 

それは、最近ラナーから聞いた災厄の大魔皇の話の方ではなかった。

 

「ウルさん…もしかしてその組織…八本指では?」

 

「ええ、そうですけど…ご存じなんですか?」

 

「…なあ、ウル…協力しねーか?あんたがいれば、相当な戦力になる」

 

「…話せる範囲で結構です…お聞かせ願えますか?」

 

 

 

リ・エスティーゼ王国

 

首都にある王城の一室、第三王女の私室。

 

黄金の姫と呼ばれるラナーが、一人椅子に座りながら思案に耽っていた。

 

「災厄の大魔皇にその配下の吸血鬼…魔皇…。一体どこから現れたのかしら…」

 

ラナーは当初、災厄の大魔皇という話が聖王国から王国へ流れてきた際、作り話であると断定していた。

 

今迄にその一部の情報すら入手できなかったからである。

 

しかし、先日のエ・ランテル近郊でのホニョペニョコの出現と討伐騒ぎをきっかけに、その考えを改める。

 

「真実…だとしたら、私が気付けないほどの巧妙な手口…相手方にあたし以上の知恵者が…」

 

ラナーは今までにないほどに考え込む。

 

「一番手っ取り早いのは、白銀か漆黒から話を聞くこと…。けれどそれは難しい…」

 

ラナーは不意に立ち上がり、窓から王都を眺める。

 

「クライムを使って接近させる…。でもそれは漆黒相手には無理…ナーベという女は危険ね…。クライムが殺されかけない…。でも逆に白銀は遠すぎる…国をまたぐのは面倒ね…」

 

窓に手を置き、顔を近づける。

 

「蒼の薔薇なら利用できるかしら…白銀であれば近づきやすい…人柄も悪くない…」

 

ラナーは窓に追いた手を顎へと移動させる。

 

「でもなにかが引っかかる…まるですべてが仕組まれたような…であれば、やはり白銀…。白銀の仕業ならば、警戒する必要がある…下手な接触はこちらの立場が危うい…」

 

王国、いや、周辺国家随一の頭脳にして、精神に異常をきたしている女は、その後も思案を続けていた…。

 

 

蒼の薔薇との話し合いを終えたウルは、軽率な発言をしたことに些少の後悔を覚える。

 

「なんか、結構めんどくさいことに片足ツッコんじまったなー」

 

ちょっとした好奇心で聞いたそれは、以外にも王国に根強く張り巡らされていた様子で、手を出すべき案件ではなかったと感じた。

 

大きくため息をつきながら、ウルは当初の目的であった、セバスとソリュシャンが滞在する高級住宅街へと足を運んでいた。

 

アインズから聞いた情報を頼り、一つの屋敷のドアをノックする。

 

「はい、どちら様でしょうか?」

 

「セバス、俺だ。ウルだ」

 

扉は即座に開かれ、それと同時にセバスが片膝を突いて平伏する。

 

「よせ。俺は至高の41人じゃない。お前たちが忠誠を表す必要はない」

 

「で、ですが…」

 

「…じゃあこれは命令だ」

 

「…承知いたしました」

 

セバスはゆっくりと身体を起こして見せる。

 

「今回はどのような用件で参られたのでしょうか?」

 

セバスは非常に緊張した面持ちで口を開いた。

 

先ほどウル本人から忠誠は必要ないとのことであったが、セバスの心情でそれをおいそれと受け入れられはしない。

 

自身の創造主であるたっち・みー様以上の強者にして正義を重んじるお方である。

 

加えて、たっち・みー様に留まらず、多くの至高の41人の御方が友と言われる存在。

 

セバスにとっては、それだけで忠義を尽くすに値するのである。

 

それに加えて、アインズ・ウール・ゴウンやナザリックは数々のご高配を賜っている。

 

それゆえ、至高の41人の御方々を同格かそれに近い忠義を尽くすは当たり前だと感じているのだ。

 

「いや、ちょっと聞きたいことがあってな…ソリュシャンもいるのか?」

 

「お聞きしたいことですか、承知いたしました。ええ、おります。ご案内いたしましょうか?」

 

「ああ、頼む」

 

「では、こちらに」

 

ウルはセバスに案内される形で、ソリュシャンのいる一室へと向かった。

 

 

「なるほどな…俺が得た情報と同じだな…」

 

「ウル様もお調べになられていたのですか?」

 

「ああ、成り行きでな…」

 

ソリュシャンの疑問に、ウルは短く答える。

 

もちろん、成り行きというのは蒼の薔薇から聞いただけであり、それは事実であった。

 

しかし、ソリュシャンとセバスからしてみれば、それは謙遜に映っていた。

 

ナザリックにおけるウルの評価は、アインズと同等の頭脳を持っている、である。

 

故に、全ての行動に意味があり、全ての言葉に裏があると考えられている。

 

2人がそう考えてしまうのも無理はない。

 

「しかし、この第三王女ラナーの情報は確かなのか?」

 

「はい、何度も調査を繰り返し、確信を得ています」

 

「…類まれなる頭脳の持ち主か…セバス、具体的にどの程度だと考えている?」

 

「はい、アインズ様やウル様には遠く及ばないものであることは間違いないですが…、アルベド様やデミウルゴス様に勝るとも劣らないかと…」

 

なるほど、ということは、俺などでは話にならない程の知略の持ち主ということだな…などと心の中で呟く。

 

「危険…ではあるが、うまく利用すれば王国を丸ごとアインズ・ウール・ゴウンの友好国にできるってことか…」

 

「さすがはウル様、仰られる通りでございます。恐れ多くも同じ考えで、デミウルゴス様が動いております」

 

ソリュシャンが頭を下げながら、感嘆にも似た声を出す。

 

デミウルゴスが動いている、というのを知り、少し寒気が走ったが、とりあえず今は気にしないことにした。

 

「で、麻薬に貴族連中との繋がり…他にも多岐に亘って犯罪行為を行っているわけだが…特にこの奴隷娼館ってのが気になるな…。これはつまりは、女…まあ男の可能性もあるんだろうが、奴隷っていうくらいだから、無理やりってことなんだよな?」

 

「はい、仰られる通りでございます。村娘などの平民を中心に人攫いを行い、奴隷娼婦として働かされているようです」

 

「ちっ…くそが…胸糞わりーな…」

 

ウルは、思わず不穏なオーラと力を滲み出してしまう。

 

「…仰られる通りかと存じます」

 

セバスは何とか言葉を口にするが、そこには些少の怯えと震えが見えた。

 

そのオーラと力は、ウルからしたらたいした事はないものであったが、セバスとソリュシャンからしてみれば、恐怖を感じるものであった。

 

「…わかった。とりあえずはこの奴隷娼館だな…。潰すにしても、より詳しい情報は必要だ」

 

「…ウル様自ら、誅殺されるのですか?」

 

「…そのつもりだが、何か問題でも?」

 

「いえ、なんでもございません。申し訳ございません」

 

ウルはソリュシャンが何を言いたいのかを、瞬時に理解し、不快な感情を消し去る。

 

「いや、悪いな。もちろん、アインズさんに報告してくれてかまわない、迷惑をかける」

 

「そ、そんな、謝罪など…。出過ぎた真似をし、申し訳ございません」

 

「いいってば…そんなに頭下げられちゃ、ヘロヘロさんに怒られちまう…。俺のソリュシャンをいじめるなってな…」

 

「ウ、ウル様…」

 

ソリュシャンは大きく目を見開き、感動した様子でウルを見つめる。

 

そんなソリュシャンを暫く見つめていたが、ウルが決心した様子で立ち上がり、口を開く。

 

「邪魔したな…。とりあえず、その奴隷娼館の所在地付近をウロウロしてみるよ」

 

ウルは、セバスとソリュシャンに見送られる形で、屋敷を後にした。

 

 

 

セバスの屋敷を出て、適当な宿屋で夜を明かした後…。

 

ウルは、奴隷娼館近くの大通り…には向かわなかった。

 

ふいに、王都の冒険者ギルドに挨拶がてらに顔でも売っておこうと思ったのだ。

 

加えて、デミウルゴスが何やら王都で暗躍する計画をセバスから聞いていたこともあり、巻き込まれた際に少しでも動きやすいように認知度を上げておこうという意味もあった。

 

そんな風にして王都の冒険者ギルドの扉を叩くと、案の定、辺りの人々の注目の的になる。

 

ウル自身は、冒険者ギルドに入るにあたって、服の下に隠していたアダマンタイトのプレートを見えるように出しているから仕方ないな…などとも思っていたが、それは当然ながら的外れであることは言うまでもない。

 

ウルは人々の視線に簡単な会釈をもって答えると、受付嬢のいるカウンターへと足を運ぶ。

 

いつもであれば、ウルから要件を言って会話がスタートするのであるが、今回はなぜか受付嬢から声を掛けられるという珍しいパターンであった。

 

「あの、白銀のウル様でございますか?」

 

「はい、ちょっとご挨拶にと思いまして…」

 

「それはご丁寧に…。あの、早速で悪いのですがウル様のことをお探しの方々がいらっしゃいまして…」

 

「はい?」

 

受付嬢の突然の話に、ウルは思わず呆気にとられる。

 

そしてその疑問を即座に解消するように少し離れた席から声が轟く。

 

「おーい!!ウル!!こっちだ!!!」

 

その声は、非常に男性的な、しかし女性的な声であった。

 

「ああ、ガガーランさんじゃないですか。あ、もしかして私を探していたのって…」

 

「はい、冒険者ギルドで待っていれば会えるかなと思っていたのですが、正解でした。ウルさん、こちらへ…」

 

ウルの言葉に、ラキュースが華のような笑顔を見せる。

 

ラキュースに案内されるまま、ウルは歩みを進める。

 

昨日はいなかった女性が他に3名見られた。

 

恐らくは、同じく蒼の薔薇のメンバーであろうことは予想できた。

 

「ウルさん、紹介させてください。こちら蒼の薔薇のメンバーで、ティアにティナ。そしてこっちがイビルアイと言います」

 

「ティアだ、よろしく」

 

「ティナだ…鬼ボスがお世話になっている」

 

「ティアさんとティナさんですね、ウルと申します。こちらこそよろしくお願い致します」

 

少し遅れて、イビルアイが口を開く。

 

「イビルアイだ…お前がウルか…なるほど、噂負けはしていないようだな」

 

「イビル…アイ、さん…ですか。…よろしくお願いします」

 

ウルはほんの少し、些少の不信な目線を向けたが、瞬時に解消された。

 

ほんの一瞬ではあったが、どうやらイビルアイはその視線に気づいたようだ。

 

「(こいつ…気付いたか…。もしかすると噂以上だな…)」

 

イビルアイは思わず顔を伏せる。

 

「ごめんなさい、この子、人付き合いが苦手で…」

 

「いえ…お気になさらずに…、それで一体どのようなご用件でしょうか?」

 

ラキュースの助け舟は、全くの的外れであったが、不穏な空気を醸し出さないためにも、それに乗る形で会話を先に進めた。

 

「…八本指だ。協力するのだろう?」

 

「ええ、そうです。…昨日ラキュースさんとガガーランさんに会った後、色々と嗅ぎまわったんですが…。まずは裏の娼館から潰すべきかと思うんですが、皆さんはどのようにお考えですか?」

 

ウルの言葉に、5人は息を呑んで固まる。

 

それは、ラキュースとガガーランが会話の中で、ウルはあまり詳しくは知らなそうであったと、先ほど他のメンバーに話していたことに起因する。

 

勿論、ラキュースとガガーランの言葉は真実であった。

 

ウルが八本指について本格的に調べ始めたのはつい昨日のこと…。

 

ウルが八本指について詳しいのは、もちろん長い期間王都で情報収集をしているセバスとソリュシャンの情報源あってこそだが、ラキュース達にはそんなことはわからない。

 

故に、ラキュースからしてみれば、『昨日調べ始めたばかりで、正に最も潰すべき拠点を言い当てた』のだ。

 

「…お前、どうやってそこまで調べた?ラキュース達からの情報は一般的に出回っている情報のみだったはずだ…。それだけでそこまでわかるはずはないんだがな…」

 

イビルアイは些少の驚きと恐怖を滲ませながら口を開く。

 

「…断片的な情報から、可能性をかいつまんで洞察しただけです。そしてそれがたまたま当たっていた…それだけの話です」

 

なるほど理にはかなっている。しかし、何年も王都で生活しているのであればそれも可能であろう。

 

しかし、この男は、ウルは聖王国の冒険者なのだ。

 

王都に来たのも数日前…。信じられない洞察力と頭脳である。

 

「…ラナーと同等の天才…かしら…」

 

ラキュースの小さな呟きに、他の蒼の薔薇のメンバーが唾を飲み込む。

 

しかし、ウルはふっと笑って見せると謙遜した様子で口を開く。

 

「ラナー王女のお噂はかねがね…私如きの頭脳では、足元にも及びませんよ」

 

「到底そうとは思えない」

 

「素直にすごいと思う」

 

ウルの言葉に、ティアとティナが否定の意味を込めて呟く。

 

「…話を戻しましょう。ウルさん、あなたの言う通り、今の現状では、その裏の娼館を叩く必要があると考えています。ですが、八本指の手は、想像以上に根深い…その…」

 

「…貴族どころか王族にまで根を張っている可能性が高い…ですよね?」

 

ウルはセバスから齎された情報を、さも自分が知りえたように口走る。

 

「そ、そうです…。ですので下手に手を出すと、こっちが被害を受けるだけでなく、王都の住民にも被害が出る可能性があるのです」

 

「…だから、突入するにしろ潰すにしろ、一気に片を付ける必要があるということですね」

 

「…そういうことだ…。お前は確かに強い…。私よりもな…。だが、考えなしの行動は控えることだ…。まあ、そこまでバカでないから大丈夫だとは思うがな」

 

ウルの頭の回転力と情報の把握性に驚いていたのも束の間、他人をほめるなどめったにない、加えて自身の強さに自信を持つイビルアイが、そのような発言をしたことに、蒼の薔薇のメンバーは目を見開く。

 

「ええ、もちろんですよ。まあ、向こうから仕掛けてきたら…その限りではありませんけどね」

 

 

ウルが立ち去った後、蒼の薔薇のメンバーは暫し沈黙を要していた。

 

その沈黙を破ったのは、ティナであった。

 

「…顔だけならいける」

 

「この状況で言うべき言葉ではない」

 

ティナの発言に、ティアが突っ込んだことで、会話が再開することになる。

 

「…あの男、一瞬で私の正体に気付いていた」

 

イビルアイの発言に、他のメンバーが目を見開く。

 

「…不幸中の幸いだったのは、偏見がなかったことだな。大量の亜人を斬り伏せたと聞いていたから警戒はしていたんだが…」

 

「まじかよ…仮面越しにでも分かるって、とんでもねーな」

 

ガガーランは、軽く冷や汗を流して椅子の背もたれに寄りかかる。

 

「…それ以上にまずいのは、奴の強さと洞察力だ…。あの男は危険だ…。できれば関わりたくない」

 

「…イビルアイがそんなに警戒するなんて珍しい」

 

「明日は槍が降る」

 

イビルアイの発言に、ティアとティナが反応する。

 

「あなたはどのくらい強いと考えているの?…例えば、蒼の薔薇全員でかかれば勝てる?」

 

「恐らく無理だな…少なくとも、私より強いのは確かだ…」

 

イビルアイの発言は、再度蒼の薔薇のメンバーに沈黙を生み出すこととなった。

 

 

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