感想、評価、是非お待ちしております!
「まずは、お2人の時間をお邪魔したことをお許しください。私はブレイン・アングラウスと申します」
ウルとクライムの会話に入り込むようにして入ってきた男が、謝罪を述べながら口を開く。
ウルの知り合いでもなければ、クライムの知り合いでもなかったため、2人は些少の困惑を見せていたが、名前を聞いた時点で、クライムは何かに気付いた様子であった。
「お名前は…王国戦士長と互角に渡り合った戦士とお伺いしております」
「なるほど…それで、なにか御用ですか?」
ウルが質問を投げるが、どうやら用があるのはクライムの方だったようで、視線がウルから外れる。
「…何でしょうか?」
「…なぜ、なぜ君はあの殺気を前に立っていられたんだ…」
「えっ…」
「聞きたいんだ…あれは常人では耐えられないものだった…。私だって耐えきれないほどのものだった…。だが君はちがう…どうしてできたんだ…あれだけのことが…」
クライムは思い出すようにして俯く。
「…わかりません…。ですが、もしかしたら主人のことを考えていたからかもしれません…」
「主人…?」
「はい。私の仕えているお方のことを考えたら、頑張れました」
「そんなことで…」
ブレインは心底信じられないといった様子であった。
「ブレインさん…でよろしいですか?」
「はい…」
「クライムさんには、恐怖を乗り越えるだけの忠義があったということです。人は、大切なもののためであれば、信じられない力を発揮することができます。それが、人の強さだと私は思います。他に譲れない何か…まずはそれを見つけることです」
「…私には捨ててしまったものばかりですね」
ブレインは酷く落ち込みながら俯いて見せた。
「大丈夫です!私にもできたのです、アングラウス様であれば必ずできます!」
「…君は優しく、そして強いんだな…ありがとう」
さて、そんな風にしてどこか感動的な会話が繰り広げられていたが、不穏な空気を察したウルが口を開く。
「…クライムさん、ブレインさん、今すぐここから離れて頂けますか?…恐らく、私のお客のようです…」
ウルの言葉に、ブレインとクライムはそれを視界に捉える。
黒いローブに身を纏い、それぞれが二本の短剣を有していた。
恐らくは、あの娼館から送られてきた暗殺者であろうことは推測できた。
「…挟まれましたね…」
「彼らは何者ですか…?」
「…実は、先日裏の娼館なる近くで女性を助けたのですが…その報復でしょう」
クライムは大きく目を見開き、ブレインは目を細める。
それぞれに抱いた感情は異なっていたが、この状況下でそれを問いただすことはなかった。
「毒物か…クライム君…注意しろ…暗殺者だ…」
「お邪魔かと思いますが…わたしも戦いたく思います。王都の治安を守るためにも、民を守るためにも!」
クライムは抜刀して構える。
「ならば、私も協力させてもらう」
ブレインもクライムに続いて剣を抜いた。
「わかりました…。では、あっちの3人は私が片づけますので、そちらのお2人はお任せします」
「「はいっ!」」
ウルは、ブレインとクライムに背中を預ける形で剣の柄に手を添えた。
3人とは言え、ただの暗殺者などにウルがやられるわけもなく、一撃で切り伏せられる。
ブレインは、ブランクを埋めるなどと言っていたが、その実力はクライムとは比べ物にならず、特に苦戦せず勝利を収める。
一方、クライムは実力的には相手の方が上であったため、苦戦を強いられるが、ウルの援護と助言のおかげで、武技を発動させ勝利する。
その後、息のある一人に『魅了』をかけ、情報を引き抜く。
推察通り、裏の娼館から送り出された暗殺者であり、狙いはウルの命であった。
「八本指って…王国じゃかなり大きな犯罪組織だよな?」
「ええ、そうですね。サキュロントの名前は聞いたことがあります。アダマンタイト級の実力がある、六腕の一人だとか…」
ブレインとクライムは、暗殺者から齎された情報を確認し合う。
「それで…ウル様はこれからどうされるおつもりなのですか?」
「そうですね…。とりあえずは娼館に乗り込んで潰そうと考えております。助けられる命は助けたいですから…」
ブレインの疑問に、ウルは嘘偽りなく答えた。
「でしたら、私にも協力させて頂けませんか?」
「私も、お願いします!」
「…ブレインさんなら大丈夫かと思いますが、クライムさんには危険かと思いますよ」
「危険だからと身を引いていては、主人に仕える価値のない男だと証明してしまうようなもの…。どうか、ご一緒させて頂けませんか?」
クライムの決意に満ちた目に、ウルは小さく笑いかける。
「…わかりました。ではお2人共、お力添えを…」
ブレインとクライムは互いに顔を合わせ、笑顔を見せたかと思うと、ウルの後ろに着いていくように歩き始めた。
スタッファンという男は、豚を超えた強大な肉の塊のような男であった。
もし暗がりで彼を見たのであれば、オークのように見えるものもいるであろう。
そんなスタッファンは、今日もベッドの上で女性を殴りつけ、自身の性癖と性欲を満たしていた。
ベッドで横たわる女性は、もはや悲鳴をあげる気力もないのか、呻き声を漏らすのみであった。
しかし、何やら奇妙な音が響く。
カチりという音と共に、扉がゆっくりと開く。
「なっ!」
慌ててドアの方を見たスタッファンの視界に、一人の美しい男性が入る。
だが、その男性は、スタッファンにとって憎むべき相手で会った。
「おまえは…白銀の…」
ウルはスタッファンの傍に立つ。
そして、力なく横たわる女性を見てから、冷たい視線をスタッファンに送る。
「…なるほど、やはり潜入して正解だった…これで、これ以上苦しむ人が出なくて済む…」
「な、何を言っているんだ、お前は!!ここがどこだか…へっ?」
スタッファンの腕が弾け飛ぶ。自分の腕が宙を舞うのを認知する。
直後、強烈な痛みが走る。
「ぎ、ぎやああああああ!!!」
続けてもう一方の手、右足、左足と切断される。
「あああああああああああっっっっ!!!!!!」
「痛いか?安心しろ…。簡単には殺さねーからよ…」
ウルは『軽傷治癒』の魔法をかける。
四肢を失った人間に対して行うには心許ない魔法で、手足が生えることはなく、傷口を些少塞ぐに留まる。
流血が少し収まったことで、痛みも幾ばくかマシになり、言葉を吐く余裕が生まれる。
「痛い痛い…な、なんで…こんなこと、お、俺は貴族だぞっ!」
「わからないのか?…めでてえ野郎だ…」
ウルは再度刀を振り回す。
まるで、チャーシューを切り分けるかの如く、傷口が塞がりかけている四肢を切り刻んでいく。
「うぎゃああああああああ!!!!!!!」
…この叫び声を何度聞いただろうか。
切り分ける手足がなくなれば、治癒魔法で生やしてまた切り分ける。
10分くらいは続けた感覚であったが、体感ではもっと短いようにも感じた。
次第に、回復し傷口が塞がろうとも、スタッファンは物言わぬ肉塊に変わっていた。
死んではいない…ただ、精神が持たなかった。
それだけのことである。
これ以上は痛めつける意味もなくなったとばかりに、ウルは止めの一撃を放つ。
首が切れて吹き飛んだのも束の間、全身がこま切れ肉のように切り刻まれる。
「『百連斬』」
強者相手にはほとんど意味をなさない、一撃一撃に威力のないものだが、クズを切り刻むにはもってこいのスキルであった。
ぼとぼとと、びちゃびちゃともとれる音を奏でながら、不潔な床に零れ落ちていった。
それを見届けたウルは、深く一呼吸置き、刀に突いた血を薙ぎ払って鞘に納める。
酷く傷ついた女性を見つめる。
心に再び怒りの念が生まれる。
だが、ツアレの時よりもそれは穏やかなものであった。
なぜならば、もうこの男によって苦しむ女性は生まれないのだから…。
「『大治療』」
ツアレにやったのと同じように治癒魔法を展開する。
傷だらけだった女性の身体はみるみる回復していき、生気を取り戻す。
「っ…!私は…一体…!!か、身体が…ひっ!!」
女性は痛みと苦しみから解放された様に自身の身体を見つめるが、ウルを見て一瞬身体が強張る。
「大丈夫です…あなたを助けに来ました…」
「わ、私を…助けに…?」
ウルは優しく笑いかける。
「お辛かったでしょう…もう、大丈夫ですから…」
女性は涙を浮かべる。
この男は違う。
今迄会ってきたどの男よりも高貴で、美しく、優しい。
「…私と共に来ますか?命も身体も、生活も…その全てを保証すると誓いましょう…」
「…はい…。ありがとう…ございます…」
女性はウルの手を取り、まるで赤子のように泣き喚いた。
ウルはその後、数人いた仲間と客と思しきクズを切り殺し、奴隷娼婦として働かされている男女問わず助け出し、回復魔法を施していく。
その数、女性8人、男性3人の計11名であった。
皆例外なくひどい傷を負っていたが、肉体的、精神的にもツアレに比べると幾ばくかマシであった。
マシであったからこそ、未だに捨てられずに働かされていたのであるが、それがまたウルの心に不快感を抱かせる。
助け出した11人を一カ所に集め、ウルはその人たちを見つめる。
身体の傷は、『大治療』で完治している。
精神面においても、傷ついてはいるものの、意思疎通ができる程度には保たれていた。
「あの…本当にありがとうございます…」
一番先に助け出した女性が、顔を赤らめ、お礼を口にする。
「気にしないでください…それよりも、私は皆さんに謝らなくてはなりません…」
ウルはそういって、深々と頭を下げる。
その様子を見て、皆に動揺が走る。
「助け出すのが、遅くなり、大変申し訳ありませんでした」
「な、なにを…頭を上げてください…」
「あなた様が来なければ…僕たちは今も…ずっと…」
「あなた様は命の恩人…ありがとうございます…」
年の頃は15歳程度であろうか?
可愛らしい男女三人が涙を浮かばせながらウルに駆け寄る。
他の者も、困惑しながらもお礼を述べている。
「…寛大なお言葉、ありがとうございます。それでは皆さん、いかがいたしますか?衛兵に保護してもらうか、それとも私と共に来るか…。私と共に来るのであれば、命と生活の保障はお約束しましょう…。もちろん、このような酷いことはしないと、神に誓ってお約束します」
「わ、わたしは行きます!あなた様と一緒に!!」
「ぼ、僕も…酷いこと…されないなら…」
皆理由は様々であったが、ウルと共に行く決断を口にする。
「承知いたしました。では、今から聖王国にある私の屋敷に向かいます。…ああ、ご心配なく、一瞬で到着しますから…。さあ、どこでもよいので私に触れて頂けますか?」
皆何を言っているのかをよく理解できなかったが、言われた通りにウルの服や体に触れる。
「皆さん、触れていますね?決して離さずに、よろしいですね?」
11人全員が首を縦に振る。
それを確認したウルは、上位転移の魔法を発動させる。
瞬間、先ほどまで所狭しといった様子で12人の人間がいた一室は、静寂だけが残された。
ウルは、突然小汚い娼館から、豪華な屋敷の一室に転移したことに驚きを見せる11人に『ね、一瞬でしたでしょ?』などと笑いながら声を掛ける。
11人は驚きと尊敬の眼差しを抱き、次第に涙をためる。
そして、そんな彼女らをルカに託す形で、引き渡す。
「予見はしていました。皆さん、どうぞこちらに、まずは、身体を清めましょう」
ルカは、まるで全てを知っているかのような口ぶりで11人を案内していく。
去り際に皆がウルに軽く頭を下げながら退出し、入れ替わるようにしてクレマンティーヌが入ってくる。
「…ねえ、ウル。あの人たちってまさか…」
「ああ、娼館にいた人たちだ…。クレマンティーヌも頼めるか?」
ウルは何やら装備を整えながら話している。
「もしかして、また行くの?」
「ああ…まだ、終わってない」
ウルの言葉には、些少の怒りが滲んでいた。
クレマンティーヌは苦悶の表情を浮かべる。
「…死なないでね、絶対に…」
ウルは驚く。クレマンティーヌの目に涙が溜まっていたからだ。
理由はわからない。本気で俺のことを心配しているのか、はたまたツアレや彼女らを見て何か思うところがあったのか。
だが、何にしろ、であった頃の様相は全くない。
ウルは思わずカラッと笑って見せる。
「変わったな…、お前…」
「…ウルさんが…変えたんだぞ…」
クレマンティーヌも、苦し紛れに笑顔を見せる。
「そうだな…。いってくる…」
ウルは少し気恥ずかしそうにしながら、一言だけ残し、その場から掻き消えた。
「いってらっしゃい…」
クレマンティーヌは、誰もいない部屋で、一人小さく呟いた。
裏口から侵入したクライムとブレインは、サキュロントとコッコドールと対峙していた。
サキュロントから致命傷を受けていたクライムであったが、ブレインの助けもあり、何とか勝利を収める。
サキュロントが負け、絶命したのを見たコッコドールは逃走を図ろうとしたが、突然現れたウルに顎を殴られ気絶する。
「ウル様…そちらは…」
「ええ、皆助けて、うちの屋敷に転移させました」
「転移…魔法…ですか?」
「はい、第七位階魔法の上位転移で…」
その言葉に、ブレインはもちろん、クライムも驚きの表情を表す。
「だ、第七位階…そ、それは…」
「冗談…ではないようですね…」
クライムとブレインの驚愕を見て、ウルはしまったと感じる。
そして、即座に言い訳を考え口を開いた。
「…信頼するあなた方二人だからお話ししました…他言無用でお願いします」
「「はい…」」
信頼されているという言葉に嬉しさはあったが、それ以上の驚きでうまく言葉が出なかった。
「クライムさん、少しそのままで…『大治療』」
「…!?」
クライムの致命傷の傷が、みるみると回復して見せる。
「こ、これは…!?」
「これは、第6位階ですね」
「一体…何者なんですか…ウル様は…」
次々と伝説級の魔法を行使するウルに、ブレインはわなわなと震えながら口を開く。
「…ただの冒険者ですよ…アダマンタイトを有する、ね」
…その後、コッコドールはじめ、娼館関係者は全て衛兵によって逮捕される。
ウル、クライム、ブレインも、それぞれに帰路に就いた。
クライムは、自身の主人ラナーがいる王城の一室の前で立ち止まる。
二回に分けてノックをするが反応がない。
少し怪訝に思ったが、再度二回ノックする。
「クライムですね。入ってください」
聞きなれた可憐な声が聞こえる。
一瞬何かあったのかと不安になったが、問題はなかったようだ。
「遅くなり、申し訳ありませんでした」
クライムは部屋に入り、ラナーの姿を捉えると、少し頭を下げる。
バタンという窓を閉める音が聞こえる。
「心配しました…」
窓で夜風にでもあたっていたのであろうか?
だが、そんな考えはすぐに消える。
ラナーが胸の前で手を組み、少し悲しそうな表情を見せた。
「本当に心配したんですからね…それで、一体何があったのですか?」
クライムは、自分如きを本気で心配してくれているラナーに心底感動しながら、今日の出来事を話した。
クライムが退出した後、ラナーは今までにないため息をついて見せる。
「まさか…漆黒があの悪魔の主人で、白銀がその友人だなんて…」
ラナーは自身が想定していたよりもはるかに切迫している状況に、天才とうたわれる頭脳をフルに回転させる。
先ほどまでの密談と、クライムから齎された情報…それらを精査するように、凄まじい速度で処理されていく。
「白銀と漆黒が知り合いというのは、すでに得ていた情報ですが…そこは隠す気がなかったから…ということでしょうか…。いえ、表面ではモモンとしては友人としてだけね…死の支配者なる人物と友人というのは隠している…」
部屋をうろつきながら、顎に手を当てる。
「強さもさることながら、警戒すべきはその頭脳…あの悪魔ですら私と同格…、にもかかわらず、あの悪魔が足元にも及ばない知能を有していると…」
鏡の前に立ち、自身の顔が反射して視界に入る。
表情がいつもよりも硬い…、理由など明確である。
「でも、その話に偽りはない…。白銀が青の薔薇とクライムに接触をしてきたのがその証拠…。それに、クライムは完全に白銀に心酔している…。その上で、娼館を潰して見せた…」
「これはいうなれば警告…。私の考えうることなどわかりきっているのだという…。でも、悪い話じゃない…」
ラナーは、人間が浮かべてはならぬ笑顔に似た表情を浮かべる。
「おかげで、夢に一歩近づける…。いや、近づくどころか、数年以内には…。ふふっ!!」
ラナーは不敵な笑みを浮かべながら、頬に手を置く。
「まずは、八本指…。あの悪魔の話では、王国にでる被害は物資と犯罪者のみ…。安すぎるくらいね…。それと演技…痛みのない保証は頂けたから、そこは心配ないわ…」
頬をぷにぷにとさせながら、顔の表情を変えていく。
「その後は、多少の犠牲の上に、ザナックお兄様に王位を継いでもらって、死の支配者の実質的な属国となり、王国は安泰…私はクライムと辺境の地で2人きり…」
そこまで考え、ラナーはふと一つの疑念を抱く。
「でも…なぜ白銀はクライムにあのようなことを…まさか本当に才能が…?…それとも私の気づいていない何かが…」
ラナーは、生まれて初めて知恵比べで負けたような気分を味わう。
悔しさはなかった。逆に嬉しさがあった。
「同じ人間で…知恵勝負ができるだなんて…思ってもみなかったわ…彼とお近づきになるのもいいかもしれない…。聖王女には何か言われるかもしれないけれど…誰も文句はいわないわ…だって、命を助けて頂くんですもの…」
ラナーは作りたかった表情が完成したのか、ゆっくりと頬から手を離すと、メイドを呼ぶベルと鳴らした。
ブレインは、居候先である、王国戦士長のガゼフの屋敷へと入る。
用意されたパンにシチュー、ワインを呷りながら、会話が弾む。
「ほお、あのクライムがお前が耐えきれないほどの殺気に…」
「ああ、すさまじかった…。彼に剣の才能はなかったが、ある面では俺以上だ…」
ガゼフは少し神妙な顔つきになる。
「さっきの話に出てきた、ウル殿は…一体どれほど強いのだ?」
「そうだな…俺とお前、2人掛かりでも傷一つつけられないだろうよ…」
「…そうか。できれば、俺も会ってみたいものだ。娼館の件で礼も言いたいしな…」
「ははっ!そういうのはあんまり好まないお人だぜ…あのお方は…」
ブレインはワインの入ったコップを呷る。
「ウル殿か…できれば、是非とも王国に居ていただきたいものだな…」
「そりゃ、聖王女様が許さないだろうよ…巷じゃウル様にゾッコンだって話だしな…」
「しかし、お前があったというシャルティーなる化け物も気になる…。王の話では、災厄の大魔皇の麾下の一人だと言っていたが…」
「シャルティアな、シャルティア・ブラッドフォールン。…もし他の5人…いや4人の力が、シャルティアと同格だっていうなら…、対抗できるのはウル様か、シャルティアと同格と言われてたホニョペニョコを倒した漆黒のモモンくらいなもんだろうな…」
その話を聞き、ガゼフは反論の意を唱える。
「いや…もう一人だけいる…アインズ・ウール・ゴウン殿なら…先の2人の強さに匹敵するやもしれん…」
「…お前が助けてもらったという、あの大魔法詠唱者か…」
「ああ、彼含め3人…数的不利は変わらんな…」
ガゼフはふっと笑って見せると、コップに入ったワインを思いっきり呷ってみせた。
ウルは、今日を以てセバスたちが王都に借りた屋敷を立ち去るとのことだったので、八本指の計画の再確認もかねて、デミウルゴスを呼び出して話を聞いていた。
「なるほどな…。俺の役目は、大体理解した…とりあえずはクライムが死ななければいい、そういうことだな…」
「はい、ゲヘナ後の私、魔皇ヤルダバオト戦と吸血鬼シャルティア戦に突入すれば、彼の命は保障されますが…。八本指への誅殺の際には100%というわけではありませんから」
「そこで、クライムと関係を構築した俺の出番ってわけだな…」
「そのとおりでございます…。しかし、まさかここまでお考えであったとは…このデミウルゴス、驚嘆しております」
ウルは、デミウルゴスが何をいっているのかよくわからなかったが、とりあえず話を合わせることにした。
「まあ、な…だがよ、この最後がいまいちわからないんだが…これ、やる意味あるのか?」
「もちろんですとも。これがあればこそ、ウル様の存在は王国で確固たるものになります。加えて、聖王女…いえ、聖王国への楔ともなるでしょう…」
うん、何言ってんのかさっぱりわからない。
「まあ、罪なき人々を殺さないってんなら、何の問題もない…で、王国の犯罪者だけで事足りるのか?」
「はい、すでにこちらで羊皮紙以外に価値のあるものは算出しておりますが、羊皮紙に回せるだけでも1,000は下りません…。早々に問題になることはないかと…」
「…なるほど、ならいいか…まあ、いくら犯罪者だからとはいえ、少し引け目もあるがな…」
「なんと…ウル様はかような下劣にまでお慈悲を…」
「勘違いするな。慈悲はない…ただ、哀れだと、そう思うだけだ」
ウルは今日手にかけた犯罪者…というよりも人というか豚の形をした化け物のことを思い出しながら、言葉を放った。
そして、俺も負けず劣らずの化け物だな…と考えながら、思わず笑みを零した。