【完結】カルカとモモンガに救済を!   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第23話 vsアインズ

「ウル殿!!」

 

ガゼフは、自身が立ち向かおうとしていた黒い仔山羊が一瞬で両断されたことに驚く暇もなく、自身の前に降り立ったものへ叫ぶ。

 

「ガゼフさん…ご無事で何よりです」

 

「来て…くれたのか…」

 

ガゼフは感嘆に似た声を発する。

 

直後、後ろから数人の男たちが駆け寄ってくる。

 

1人は馬に乗った、ウルと面識のない男であった。

 

「「ウルさん!!」」

 

「ブレインさん、クライムさん…なぜここに…?」

 

「それはこっちのセリフですよ…。聖王国の冒険者であるあなたがなぜ…」

 

ブレインは酷く驚いた様子で口を開く。

 

「…罪なきものを救うのに、理由がいりますか?」

 

「ウ、ウルさん…」

 

クライムは些少の涙を浮かべながら呟く。

 

「貴殿が…ウル殿…。お初にお目にかかる、私はエリアス・ブラント・デイル・レエブンと申します…。この国を救いに来てくださったのですか…?」

 

「丁寧なご挨拶、痛み入ります…。王国と帝国の戦争に横やりを入れるつもりはありませんでしたが…。奴が出てくるのであれば話は別です…。こんなものは戦争じゃない…」

 

ウルは少し怒気を込めた口調で言い放つ。

 

「…それよりも、皆さん急いでこの場を離れていただきたい…。奴が来ます…」

 

ウルがそう言い切ったと同時に、空中からゆっくりとそれが降りてくる。

 

「久しいな、ガゼフ・ストロノーフ殿…。そして、白銀のウル殿」

 

ガゼフは、アインズの顔、身体、そして姿を見て小さく笑って見せる。

 

「なるほど…人間ではなかったか…」

 

「そうか…素顔を見せるのは初めてであったな…」

 

アインズはスッと視線を移す。

 

「私が動けば、必ず貴殿も動くと思っていたよ…白銀のウル殿…」

 

「……」

 

ウルは押し黙ったまま、アインズを見つめる。

 

「しかし…王国と帝国の戦争に、聖王国の白銀たる貴殿が介入するということの意味は…理解しているんだろうな?」

 

「聖王国?…白銀?…一体何を仰っているのかわかりかねますね…」

 

ウルはゆっくりと刀剣を抜刀して見せる。

 

そしてアインズは何かに気付いたように目を細める。

 

「…ウル殿…胸元のプレートはどうした?」

 

「一体何の話ですかな?」

 

「…なるほど、なるほど。手放したか…聖王国での地位も…そして名誉も…」

 

アインズのこの一言で、後ろの男4人は気付くことになる。

 

「ウ、ウル殿…まさか…」

 

「冒険者を…やめて…いや…」

 

「聖王国を捨てて…」

 

「…巻き込まないために…か…!」

 

ガゼフ、クライム、ブレイン、レエブン侯が驚愕の表情を浮かべながら口を開いた。

 

「…つまりこういうことか?今の貴殿は…ただのウルであると…。その上で、この私と対峙していると…」

 

「流石はアインズ殿…。察しが良くて助かりますね…。故に、聖王国へは手出し無用で頼む…。そしてさらに言うならば、私は戦争を止めに来たのではない…」

 

ウルはゆっくりと息を吐き、アインズへと切っ先を向ける。

 

「…虐殺を止めに来たのだ!」

 

「つまり…私と戦うと…?」

 

「アインズ殿が、首を差し出す…という手もあるぞ?」

 

ウルの言葉に、アインズはくくっと笑って見せる。

 

「なるほど、なるほど…。確かに雑魚をいくら狩ったところで、我が力の証明にはならんな…。いいだろう、その挑発に乗ってやろうではないか…。もちろん、聖王国への手出しもしない…証人は後ろの者どもでよいな?」

 

ガゼフ達は、その言葉を受け止め、首を大きく縦に振る。

 

「…後ろのお仲間と兵隊さんは、一緒じゃなくていいのか?」

 

「その言葉、そのまま返させてもらおう、白ぎ…いや、ウル殿」

 

互いの視線が交差する。

 

戦場とは思えない静けさが、一瞬であるが流れる。

 

刹那、ウルの姿が掻き消える。

 

それを感知したように、アインズは右手を前方に差し出す。

 

アインズの黒い様相を見せるバリアと、ウルの刀剣の切先が衝突する。

 

凄まじいほどの力の奔流が辺りを包み込む。

 

近くにいたガゼフたちは、その奔流に飲み込まれ、吹き飛ばされまいと足を踏ん張る。

 

「こ、これは…ッ!!」

 

この場で唯一、ウルの力を見たことのないレエブン侯が驚愕の表情を浮かべる。

 

「(このお方は…ウル殿は…もしや本当に…っ!)」

 

ウルの踏み込んだ力と切っ先は、次第に勢いと力をなくし、平常に戻っていく。

 

アインズの発したバリアにも大きくヒビが入っているが、突破はできていなかった。

 

「ウル殿の力…非常に楽しみだ…!」

 

「その余裕…いつまで続くのか、見ものだな?アインズ殿!」

 

ウルが再度力を込めて、バリアを突破しようとする。

 

それを感じ、アインズは大きく後方へと退避し、魔法を発動。

 

ウルが距離を詰める…。

 

そんな様相を見せながら、ウルとアインズのPVP、その火ぶたが切って落とされた。

 

 

カルカ達は、そのままの王国へと遠征できるよう、準備を整えてからウルの屋敷へと向かった。

 

通りとウルの屋敷の敷地を隔てる門の前に差し掛かった際、一人の女性を目にし、一行は足取りを止める。

 

「ルカさん!」

 

その姿を捉えたカルカは、思わず名を叫んだ。

 

「カルカ聖王女陛下…。そのご様子ですと、カルカ様の元にも手紙が届きましたか?」

 

「はい!やはり、ルカさんのところにも?」

 

要点のみの、詳細のない会話であったが、それだけで互いがこれから何を為そうとしているのかが分かった。

 

「…お一人で向かわれるのですか?」

 

「それが最善と判断しました…」

 

「我々と、共に行きませんか?…ウル様を連れ戻したいのです!」

 

カルカの言葉に、ルカは少し悩んで見せた後、些少の納得を示す。

 

「わかりました。ですが、この人数では機動力に欠けます。半分にしていただけるのであれば、共に参りましょう」

 

「何を言う!戦力は多いにッ!!」

 

レメディオスが抗議の声を上げるが、それは首元に瞬時として向けられた得物によって遮られる。

 

思わず大きく目を見開く。

 

全く反応できなかった。

 

「ウル程ではありませんが…私はあなたより圧倒的に強い…。申し訳ありませんが、吞んでいただけないのであれば、別行動をとらせていただきます」

 

「くっ!!」

 

ルカが本気であれば、レメディオスは命を刈られていたことを理解し、押し黙る。

 

その様相を見て、カルカやケラルトは酷く驚いたが、決断を急いだ。

 

「わかりました。レメディオス…聖騎士団と神官団の半分を率いて、あなたは首都に戻ってください…」

 

「カルカ様!?ですが!」

 

「姉さま…我ら3人全員が聖王国を出ることは、元より考えていなかったはずです…少しの間、聖王国内の執務はカスポンド様に、そして防衛は姉さまに託します…」

 

「……承知、した。グスターボはカルカ様と共に、イサンドロは私と共に行くぞ…」

 

レメディオスは十分に納得してはいない様子であるが、現状を巻き返せないと悟り、聖騎士団へと指示を飛ばす。

 

ケラルトも少し遅れて、二手に神官団を分ける。

 

「では、参りましょう…。恐らく戦争には間に合わないとは思いますが、ウルはそう簡単には死なない…」

 

「…聖王国としても、戦争に参加する意思はありません…。ウルさんを回収後、速やかに帰投致します…」

 

カルカは、ルカの言葉を補うようにして口を開いた。

 

「…承知いたしました。もしもの時は…私一人で行動します。私一人であれば、アインズに聖王国が目を付けられることもないでしょう…」

 

「…その際は、よろしくお願い致します」

 

ルカはカルカ一行と共に、馬を駆け、カリンシャの街を後にした。

 

 

「『光輝赤の体』、『飛行』、『魔法詠唱者の祝福』、『無限障壁』、『魔法からの守り・神聖』、『生命の精髄』、『上位全能力強化』、『自由』、『看破』、『超常直感』、『上位抵抗力強化』、『混沌の外衣』、『不屈』、『感知増幅』、『上位幸運』、『魔法増幅』、『竜の力』、『上位硬化』、『天界の気』、『吸収』、『抵抗突破力上昇』、『上位魔法盾』、『魔力の精髄』ーー」

 

アインズは、自身を強化する魔法をこれでもかと発動させる。

 

しかし、それはアインズだけではなかった。

 

「『神の御旗の下に』、『斬撃強化』、『神聖強化』、『魔力効率向上』、『魔法耐性向上』、『吹飛軽減』、『状態異常無効』、『業鎧』、『会心上昇』、『速飛行』ーーー」

 

アインズよりは見劣りするものの、ウルも戦闘時における必要な強化を施して見せる。

 

「では、行くぞ…ウル!!、『魔法三重最強位階上昇化・魔法の矢』!!」

 

「来い…アインズ!、『神聖連斬』」

 

降り注ぐ多数の魔法の矢を、ウルは神聖属性をもつ連続の斬撃で振り落とす。

 

そして、そのままアインズへと瞬時に接近して見せる。

 

「『骸骨壁』!」

 

「『螺旋斬撃・翔』!!」

 

地面から生えるようにして現れた骨の壁を、ドリルのように回転しながら飛ぶ斬撃で粉々に破壊する。

 

「『黒曜石の剣』!」

 

「ッ!!『飛翔斬』!」

 

アインズの放った黒い剣の間を縫うようにして、三日月形の斬撃を飛ばす。

 

二本の黒曜石の剣を、ウルは両手の刀剣で華麗に捌き、はじき返す。

 

「『闇の盾』」

 

アインズも同様に、最初にウルの切っ先を防いだ魔法の盾でウルの斬撃を防ぐ。

 

「やはり…陽動がなければ当たりもしないか…」

 

「流石に、そう簡単に近づかせてはくれないな…」

 

互いが互いに、文句を垂れるようにして口を開く。

 

「まあ、小手調べはこの辺でいいだろ…?アインズ」

 

「そうだな…ウル」

 

ウルの身体に、神聖属性が雷のような音を立てて纏わりつく。

 

「(来るか…ウルさんの基本スタイル…瞬身聖雷…)」

 

圧倒的なスピードを以て獲物に接近、切り刻むものである。

 

戦士同士の戦いであれば、何とか対応できるそれも、魔法詠唱者であるアインズにとっては、非常に難しい。

 

これに対処する方法は、限られてくる。

 

「『上位アンデッド創造・蒼褪めた乗り手』、『上位アンデッド創造・蒼褪めた乗り手』」

 

レベル70の蒼褪めた乗り手を2体召喚する。

 

「(げっ!めんどくさっ!…とにかく、アインズさんの動きを警戒しつつ、なるはやで倒すか…いや…)」

 

ウルは一瞬嫌な顔を見せる。

 

それを見たアインズは、少し満悦と言った様子を見せる。

 

「(ペイルライダーを囮に、必中魔法の準備だな…)」

 

「(ペイルライダーと戦う振りして、速度重視のスキルを放つか…)」

 

それぞれがそれぞれの思惑を抱きながら、PVPが苛烈を極めていくのだった。

 

 

ガゼフ達は、ウルとアインズの戦いに、圧倒的な衝撃を受けていた。

 

「ゴウン殿…想像以上の魔法詠唱者であった…」

 

「ガゼフ殿の言う通り、敵に回してはいけない存在であったな…」

 

ガゼフとレエブン侯はこの戦争に対する想いを口にする。

 

「もし、あのウルさんでも勝てないのであればモモンでも無理だろう……一番は今ここにモモンが来てくれることだが…」

 

「ウルさんならきっと、勝ってくれます!」

 

ブレインとクライムは、ウルに全てを託すような言い回しをする。

 

「しかし…ウル殿は一体何者なのですか…本当に、我らと同じ人間なのですか?」

 

「戦闘だけ見ればそう思うかもしれませんが、彼の御仁は心優しき正義を重んじるお方です」

 

「あの人こそ、本物の英雄だと、自分は確信しております…!」

 

「ああ、まさしく人類の希望だ…」

 

だが、そんなウルへの希望も、戦闘を見ていると些少の不安を有することになる。

 

「ゴウンめ…!凶悪なアンデッドばかり召喚しおって…」

 

「ウル殿が…劣勢、ですね…」

 

「くそっ…助太刀できない己の弱さが憎い!」

 

「…何か私たちにできることはないのでしょうか…」

 

ブレインとクライムの悲痛にも似た叫びは、ガゼフとレエブン侯の心にも深く刺さることになった。

 

 

さて、ウルとアインズのPVPは、両者とも本気であれば、まず間違いなくウルの圧勝である。

 

この戦いにおける両者の本気度具合は、アインズが8割程度、ウルが4割程度である。

 

これは、このPVPが遊び半分で行われていることに加え、ウルとアインズの力が、ほぼ拮抗していることを現地民に誤認させる意味合いがある。

 

その上で、両者とも本来の実力を隠すことで、もし両者に敵対する者が現れれば、その誤認させた力量差を以てして叩きのめす、という思惑があった。

 

故に、この戦闘行為において、盗み見と盗み聞きを防止する策をあえて施していない。

 

ナザリック勢の調査によると、法国と評議国あたりが監視の目を向けてくるであろうと考えているようだ。

 

両国とも、周辺国家においては、最も強大な力を持っている国家である。

 

その両国がどう出てくるのか、それに布石を打つ意味合いもあるのだという。

 

…全てはラナーから齎された情報と、デミウルゴスの頭脳によって導き出された策であるのだが…。

 

上記の作戦もあったため、ウルは思いっきりアインズからの魔法を受けるなどして、追い込まれている感を出して見せる。

 

強大な魔法を2発喰らったところで、地面を転げまわり、ガゼフ達の元へ墜落する。

 

「ッ!ウル殿!!」

 

「グハッ…!」

 

ガゼフが叫ぶのと同時に、ウルは派手に血反吐を吐く。

 

白銀に煌く鎧も、所々が砕け、血と土汚れが目立つ。

 

特に腹部の傷が深く、右わき腹が抉り取られるような傷を負っていた。

 

ガゼフは傷口から見える内臓に、苦悶の表情を浮かべる。

 

少し遅れて、他の3人も駆け寄ってくる。

 

「…『重症治癒』」

 

治癒魔法を展開したことで、傷口が塞がりを見せる。

 

「ご無事ですか!?」

 

片膝を突いて呼吸を整えているウルに向かって、クライムが声を掛ける。

 

「…離れるように…お願いしましたが…」

 

ウルは不満を漏らすようにして言葉を発した。

 

「…ッ!ウルさんをおいてはいけません!」

 

クライムの発言に、意を唱えとするウルであったが、前方の少し離れた位置で別の人物が口を開いた。

 

「お前たちに何ができる?」

 

「…アインズ・ウール・ゴウンッ…!」

 

その姿に気付いたクライムが、キッと目を尖らせる。

 

「ウル殿…貴殿の力は素晴らしい…人間にしておくのはもったいないほどにな…。だが、この私には…『死の神』である私には到底及ばない…諦めろ…」

 

「…それも、そうだな…」

 

クライムの表情に驚きが、ガゼフ達の顔には、苦悶の表情が走る。

 

やはりだめなのか、と。

 

人の身では、抗えないのか…と。

 

そして、ウルが小さく笑って見せる。

 

「確かに、死の神の力に、人間の力の『まま』で抗おうってんだ…。無理に決まってるよな…」

 

「言葉には気を付けろ…今の発言はまるで、貴殿が『神の力』を有しているように聞こえるぞ…」

 

アインズの指摘に対し、ウルはゆっくりと立ち上がって見せる。

 

そして小さく笑って見せると、確信を持った口調で叫ぶ。

 

「ああ、そう言ってんだよ!アインズ・ウール・ゴウン!!」

 

瞬間、膨大な力が、聖なる力がウルを中心に渦巻いて見せる。

 

その圧倒的な力は、天を突かんばかりに、巨大な塔を思わせる程の高さへと形成される。

 

「…ッ!き、貴様…まさか!!」

 

アインズは、思わず半歩後退する。

 

ガゼフ達も、その力に圧倒され、大きく目を見開いたまま固まって見せる。

 

そんなガゼフ達に、ウルは小さく、そして優しく語り掛ける。

 

「…少し、いや…できる限り下がっていただけますか?わたしの力に巻き込んでしまう…」

 

「ウ、ウル殿…」

 

ガゼフは驚きのあまり、今までにないか細い声を発する。

 

「急げッ!!」

 

「ッ!」

 

ガゼフ達は、一瞬顔を見合わせたのも束の間、すぐにその場から走って後退する。

 

それを感じ取ったウルは、再度アインズへと視線を向け、口を開いた。

 

「…本当は、災厄の大魔皇と戦うまで隠しておきたかったんだが…仕方ない…。いくぜ…」

 

力の奔流が、一瞬で消失して見せる。

 

事切れたわけではない、瞬時のウルの身体と刀剣へと、その力が逆流したように吸収されたのだ。

 

「ッ!!」

 

アインズは瞬時に大きく後退して見せる。

 

距離にして100mは離れたであろうか…。

 

しかし、これだけの距離が離れているにも拘らず、酷く静けさを取り戻した戦場に、ウルの落ちついた声が響くようにしてアインズへと届いた。

 

「…天・解…ッ」

 

刹那、抑え込まれていた聖なる力が、一気に解放される。

 

それは爆発であり、暴発であり、暴風。

 

圧倒的なまでの力の奔流が、カッチェ平野に駆け巡った。

 

 

帝国軍陣地、最前線。

 

ニンブルは、驚愕的な力の奔流に、大きく目を見開いて驚く。

 

あれは一体なんだ?

 

聖なる力が、触れれば一瞬で蒸発しかねない程の力が、天を衝かんばかりに放出されている。

 

アインズの力ではない。

 

絶対に違う。

 

あれは、ウルの力だ。

 

あんな神聖な力を、邪悪なアンデッドであるアインズが発動できるわけはない。

 

その考えは、正しかった。

 

「う、嘘だ…あれは…、あ、あの力は…白銀のウルが発している力は…」

 

ダークエルフが酷く困惑した様子で呟く。

 

ニンブルは、それを聞き逃すまいと、耳を澄ませて声を拾う。

 

刹那、圧倒的なまでの力の奔流は一気に掻き消える。

 

その瞬間を狙ったかのように、ダークエルフは再び口を開く。

 

「聖なる…神の力だ…ッ!」

 

ニンブルは大きく目を見開く。

 

呼吸をするのも忘れてしまうほどに…。

 

そして訪れる。

 

ダークエルフの言葉を肯定するがごとく、爆発的な神聖たる力がカッチェ平野を支配する。

 

暫く目を凝らす。

 

驚愕する。

 

…ニンブルは、この日みた光景を死ぬまで、一生、墓に入っても、忘れない。

 

その白銀のウルの姿を…。

 

白銀に輝く、神聖なる全身鎧を…。

 

背中から生える一対の…片翼が2mはある天使の翼を…。

 

頭に浮かぶ、神々しい天使の輪を…。

 

後にニンブルは語る。帝国中で語ることになる。

 

…カッチェ平野に現れた、白銀のウル…聖なる神の降臨を…。

 

 

 

アインズは、ウルから発せられる圧倒的な神聖属性を有する力の奔流に揉まれながら、思わず表情を緩める。

 

「(天解…何年ぶりだろうか…この力を、姿を見るのは…ッ!)」

 

ウルをウルたらしめた力…。

 

チートもチートの、…聖騎士としての最高到達点たる力…。

 

熾天使の力を、そのままその身に纏うことのできる力…。

 

だが、この場でそれを知っている素振りを見せるわけにはいかない…。

 

故に、これ以上にない驚きを表す…。

 

「天解…だと…?」

 

「…そうだ…天解…」

 

聖なる力の奔流が収まりを見せ、徐々にウルの姿が確認できるまでに視界が晴れる。

 

「…『熾天使の聖騎士(セラフ・ジ・ホーリーナイト)』!!!」

 

「ッ!!」

 

白銀に輝く、神聖なる全身鎧を。

 

背中から生える一対の天使の翼。

 

頭に浮かぶ、神々しい天使の輪。

 

間違いないと…。そんな表情を浮かべて口を開く。

 

「…バカな…、聖なる神の…力だと…。そんなはずは…そんなはずはないッ!」

 

ウルはその言葉を聞き、ゆっくりと刀をアインズへと向ける。

 

「確かめてみるか?…構えろ、アインズ…」

 

「ッ!!」

 

アインズは、握っているスタッフを前方へと構える。

 

…一瞬であった。

 

アインズを巻き込む形で、聖なる斬撃が放出された。

 

その斬撃は、雲を焦がし、天を裂き、世界を割らんばかりの、一直線の光の壁に似た様相を見せるに至った。

 

 

ウルとアインズが相対してから、早くも3時間が経過していた。

 

空中を、地上を、いくつもの魔法とスキル、斬撃と殴打が、

 

閃光のように弾ける、そんな戦闘を繰り広げていた。

 

空気は魔力で焼かれて異様な匂いと雰囲気を醸しだし、地上は隕石が、斬撃が、衝撃が齎したクレーターや大穴、ひび割れが多く見られる。

 

さて、帝国軍と共にいるマーレと、王国軍側後方に控える、パンドラズアクター扮するモモンとナーベは、ある任務を言い渡されていた。

 

それは、あるタイミングで、マーレはウルを、モモンとナーベはアインズを牽制するというモノであった。

 

これは、両者が一定の体力を下回って戦闘行為を行わないように…要するに死なないようにするという目的だけでなく、現時点において、漆黒のモモン&白銀のウルvsアインズとナザリック勢という構図を知らしめる意味も兼ねていた。

 

これにより、後に両陣が手を組む、または友好的な関係を気づいていく流れになった際に、『元から仲が良かったわけではない』という印象を与え、他のプレイヤーや国家をけん制する意図があった。

 

ウルとアインズの戦闘行為は尚も続いているが、両者とも体力ゲージは3割程度。

 

「んー、やはりウル様もアインズ様も、力加減が絶妙ですなっ!」

 

「はい、素晴らしいことかと…」

 

モモンに扮するパンドラズアクターであったが、周囲に確実に耳目がないためか、本来の言動がちらほらとみられる。

 

ナーベも、特に気にした様子ではない。

 

「さて、そろそろですね…。両者とも最後の一撃をお放ちになられますよッ!」

 

「…参りましょう」

 

モモンとナーベは、出番とばかりに不可視化を解き、駆け出していった。

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「はぁ…はぁ…」

 

ウルとアインズは互いに息を荒げながら、一定の距離を持って対峙している。

 

「その力…まごうことなき…聖なる神…」

 

「そっちこそ…死の神の名に恥じぬ…力だ…」

 

互いが互いに追い詰められているにも拘らず、どこか楽しそうな雰囲気を見せる。

 

「そろそろ…終わりにしよう…」

 

「…ああ、決着をつけよう」

 

モモンガの周りに、開戦時に見せたときと同じ、強大な魔法陣が形成される。

 

対して、ウルの周りには魔法陣は形成されないが、スキル発動に際した膨大な聖なる力が吹き荒れる。

 

暫くして、互いがいつでも発動できる準備が整う。

 

「超位魔法!『失墜する天空(フォールンダウン)』!!」

 

「『神聖・次元断切(セイクリッド・ワールドブレイク)』!!」

 

アインズの放った魔法は、ウルを中心に円形状に、

 

ウルの放ったスキルは、アインズに向かって一直線に、地面をこそぎ抉りながら突進していく。

 

「もうッ!!逃げられんぞぉ!!!ウルーーー!!!!」

 

「はああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

…世界が静止する。

 

刹那、言葉で言い表すことなど不可能なほどの魔法が、斬撃が両者へと襲い掛かる。

 

それぞれが耐えるように、しかし苦痛にも似た声を上げながら攻撃を受ける。

 

ーーー後にこの戦いは、『聖と死の戦い』と呼ばれる。

 

周辺国家の歴史上、最大の一騎打ちとして、長い歴史の中に埋もれることなく語り継がれていくのであった。

 

 

 

ウルは、意識を失いかけそうになりながらも、前方を何とか捉える。

 

残っている体力は5%程度…。

 

当初の予定通りの残数である。

 

次第に砂ぼこりは晴れ、片膝を突いているアインズを発見する。

 

ライフエッセンスを発動し、アインズを観察する。

 

もし偽装していなければ、アインズの体力も同じくらいであることが分かった。

 

フラフラと立ち上がりながら、ウルは地面に落下していた刀を拾い上げ、ゆっくりとアインズに近づく。

 

もはや、俊敏な動きはできないほどに削られていた…。

 

アインズはゆっくりと近づいてくるウルに対し、苦し紛れの魔法の矢を放つ。

 

ウルは殆どの矢をはじき返すが、一本だけ弾ききれず、肩にそれを喰らう。

 

「ガッ…」

 

辛うじて立っていたウルに対し、その攻撃は動きを止めるには十分な威力を持っており、片膝を突いてその場に座り込む。

 

「はぁ…はぁ…すばらしい…すばらしい力だ…ウルよ…」

 

「ぐっ…お前もな…アインズ…」

 

今度はアインズがゆっくりと歩を進める。

 

ウルはそれに対して身体を持ち上げようとするが、無理だと判断し、刀を振りかぶる。

 

アインズもそれに反応し、持っているスタッフに魔力を込めて振りかぶる。

 

ーーー両者とも、ガギンッという音をたてて防がれる。

 

…互いにではない。

 

ウルの刀はマーレのスタッフに。

 

アインズのスタッフは、モモンのグレートソードに防がれた。

 

それと同時に、ナーベがウルを抱えて後退する。

 

後退を確認したモモンも、マーレのスタッフを弾きながら後退する。

 

両陣に一定の距離が保たれる。

 

少し遅れて、ガゼフ達がモモンの背中を追うようにして駆けてくる。

 

「ウル殿ッ!!」

 

ウルは返事をしない。お得意の死んだふり…というより、意識のないふりである。

 

ガゼフやブレイン、クライムが必死でポーションを与える。

 

しかし、回復量が足りず、対して傷は塞がらない。

 

レエブン侯は深い傷口に、自身の服を破り裂いて止血する。

 

「皆さん…ウルさんを、エ・ランテルまで…私達もすぐに後を追います…」

 

「…その、必要は…ない…。我らも撤退させてもらう…」

 

アインズの言葉に、クライムが叫ぶ。

 

「モモンさん!!今しかない!!!あの化け物を倒すのは、今しかない!!!」

 

「…無理だ…。あのダークエルフもまた…私やウルと同等に近い力を持っている…」

 

ダークエルフにその見た目とは裏腹の警戒するような目線を向ける。

 

「そんな…」

 

クライムは絶望にも似た声を上げるが、それをナーベに咎められる。

 

「ガガンボ…今はウルさーーんの命の方が優先。早くしなさい…」

 

「…ッ!ナーベ殿の言う通りだ…。悔しいが、そうする他ない…」

 

「くっ!!」

 

ガゼフも心中穏やかではないが、ウルの生かアインズの死か…優先順位を判断できぬほど冷静さを欠いてはいなかった。

 

ウルを運ぶ準備が整うまで、モモンとマーレが睨みあう形で牽制していた。

 

そして、アインズがゆっくりと口を開く。

 

「ウルに…伝えておけ…。お前の力と…覚悟に免じて…アインズ・ウール・ゴウンの名にかけて…我々は、聖王国には…手を出さないと…」

 

アインズの後方に、転移門が展開する。

 

マーレがモモンを警戒しながら、アインズを支えてゆっくりと転移門へ入っていく。

 

再びアインズが口を開く。

 

「この戦いは…お前の勝ちだ…ウル…」

 

言い切ったと同時に、アインズとマーレは転移門へと消えた。

 

 

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