【完結】カルカとモモンガに救済を!   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


最終章 三魔皇
第25話 聖なる神


ウルが聖王国に復帰してから2週間が経った頃。

 

アインズ・ウール・ゴウン魔導国の建国宣言と共に、エ・ランテルの正式な割譲、加えて漆黒のモモンとナーベが魔導国に与したという報告が各国へと伝達される。

 

ウルと同様に、英雄と呼ばれる存在である漆黒の魔導国入りは、各国、特に王国が受けた衝撃は大きいものであった。

 

王国を始め、帝国、聖王国の三か国は、白銀のウルと漆黒のモモンの双璧を以て、魔導王ならびに魔導国への対抗手段とする考えであったため、それを根底から覆されることとなってしまう。

 

モモンの魔導国入りは、対個人最高戦力であるウルを有する聖王国を以てしても突破口がなくなったことを意味し、魔導国の動向を静観する他なかった。

 

また、今回の戦争で王国側は8万人近い民兵や将兵、貴族を失うだけに留まらず、別任務を遂行していた第一王子のバルブロとその一行が行方不明となっており、実質死亡の扱いとなった。

 

これを受け、王国では第二王子のザナックが次期王位継承を受ける算段となり、ザナックとレエブン侯、そしてラナーが王国の再建と魔導国との友好的関係を築くために奮闘し始める。

 

 

聖王国には、王国の書状だけに留まらず、帝国や法国からの書状も届いていた。

 

国交がほとんど機能していなかった帝国と法国からの書状がなぜこのタイミングで届いたのか。

 

それは火を見るよりも明らかであり、ウルの存在である。

 

両者とも主張は異なるが、そこにウルが大きく絡む内容であった。

 

王国、帝国、法国からの書状内容について、緊急で宮殿会議が執り行われることとなり、対応の大枠は決定されたが、『ウル本人に確認する必要性のある情報あり』という意見が多数出たことで、首都ホバンスにてウルを招集することとなった。

 

聖王女執務室において、カルカとケラルト、そしてカスポンドと南部貴族筆頭で、南部要塞デボネの領主、そしてウルが顔を合わせていた。

 

ちなみに、レメディオスは諸事情でこの場にはいなかった。

 

「急な御呼び立て、申し訳ありません、ウル様」

 

「傷の方は癒えましたか?」

 

「とんでもないです。ええ、もう全快といっても差し支えないかと」

 

カルカとカスポンドの問いかけに、小さく頭を下げながら答える。

 

「それは何よりです…。しかし、聖王国をお去りになったと聞いた時は驚きましたぞ…。その上であの魔導王と一騎打ちとは…」

 

「多大なるご迷惑をおかけし、申し訳ありません」

 

デボネ領主の大貴族が、顎に手を当てながら口を開く。

 

聖王国において、聖王女派閥と南部貴族派閥の軋轢は大きい。

 

しかし、ウルが聖王国に現れ、加えて聖王女と恋仲になったという辺りから徐々に軋轢は小さいものになっていた。

 

その大きな立役者ともいえるのが、南部貴族で最も力を持つデボネの領主の存在であった。

 

ウルの力を、早い段階から『聖王国の希望』と謳い、南部貴族をまとめ上げようとしていたのだ。

 

それも聖王女派閥への反発、という意味ではなく、調和という手段を取るためである。

 

いうなれば、ウルを出汁に使い、修復不可能な段階まで片足を突っ込みかけていた北部と南部の関係性を修復しようとしていたのだ。

 

それが軌道に乗りつつあった段階でのウルの聖王国脱退事件であったため、当時のデボネ領主の心情は穏やかではなかった。

 

しかし、結果としては後述するウルの新たな功績と、王国と帝国、法国のウルに対する評価と呼称によって、更に歩調を合わせる要因となった。

 

「今回、ウル様を御呼びしたのは他でもありません。先日の王国と帝国の戦争の際に発生した、ウル様とアインズ・ウール・ゴウン魔導王との一騎打ちについてです…」

 

カルカが概要を説明すると、カスポンドが一つの書状を出す。

 

内容は短いものの、魔導国からも書状が届いていたらしい。

 

「『魔導国は、ウル殿との一騎打ちの件は、魔導王とウル殿との個人間で行った者であり、国としての戦いではないことをここに宣言するものであり、魔導国はこれに対し、聖王国に一切の責任はないものとする。また、魔導国、聖王国の間で、友好的な関係を構築していくことを強く希望するものである…』と、要約するとこのような書状が届いております」

 

「…魔道国との友好関係、これは現段階では慎重に事を進める、という判断を致しました。ウルさんはいかがお考えですか?」

 

カスポンドの発言に、ケラルトが補足してウルに問いかける。

 

「そうですね…。戦力…という点だけで見れば、友好的に関係を結ぶのが得策でしょう…。魔導国には、魔導王を除き、私に近い力を持つものが少なくとも6体はいます。…敵対すれば、まず間違いなく滅びるのはこちらですね。」

 

「ウル殿…その6体というのは一体どこで知りえたのですか?」

 

カスポンドが素朴な疑問を提起する。

 

「…私は一度、魔導王の本拠地に行った…というか強制的に転移させられたことがあります」

 

ウルの言葉に、カルカ達は驚きを見せる。

 

「ど、どう言うことでしょうか…?魔導王に連れ去られた…ということですか?」

 

カルカは思わず椅子から立ち上がり、小さく涙を浮かべて見せる。

 

「連れ去られた…という表現は正しくはありませんが、向こうから会いたいからという理由で…まあ、招待されたというような感じでしょうか?…拒否権はありませんでしたが…」

 

「…なるほど、合点がいきました。つまり、ウル殿は一度魔導王と会っていた…。だから魔導王の強さと危険性を認識していた…ということですね?」

 

「…その通りでございます」

 

「…そのようなことを、ずっと一人でお抱えになられていたのですか?」

 

「そのような大層なことではありませんよ…。ただ、それ故に見過ごせなかった…というだけの話です」

 

デボネ領主とカスポンドは、開いた口が塞がらないと言った様子であった。

 

「魔導国は強大です…。向こうには私が7人いるようなものなのですから…。故に敵対は絶対に避けるべきかと…」

 

「そうですね…。会議では友好的関係を保留にしましたが、これは無理にでも友好的な関係に持っていく必要がありますね…」

 

「さらに言えば、大きなメリットが一つあります」

 

「それは一体なんでしょうか?」

 

カルカが少し首を傾げて見せる。

 

「…魔道国の戦力を、一部でも災厄の大魔皇に向けることができるかもしれません」

 

「…帝国は魔導王こそ災厄の大魔皇である可能性が高いという認識ですが…これは誤りであると…」

 

「はい、奴は死の神であって、災厄の大魔皇ではありません。友好的な関係を結べる可能性があるという点では、魔導王は我々にとって武器にもなりえます」

 

死の神という発言を受け、今回の招集に当たって聞きたかったもう一つの事柄を、ケラルトが口にする。

 

「ウル殿…魔道王が死の神であることは、我々も知りえるところです。…その上でお聞きします…。あなたは、本当に聖なる神、なのですか?」

 

ケラルトは、非常に緊張した趣で口を開いた。

 

暫し沈黙が流れる。

 

カルカ達も唾を呑むようにしてウルの言葉を待っていた。

 

「正確には、『聖なる神の力』を有している人間にすぎません。聖なる神そのものではありません」

 

「ですが、聖なる神の力はお持ちということですね?」

 

「…その通りでございます…」

 

カルカの確認の言葉に、ウルは少し俯いて答えて見せる。

 

「にわかには信じがたい話であるが…、それはかの六大神と同じ、ということですかな?」

 

「…六大神というのを直接見たことがないので何とも言えませんが…、力だけで言えば、間違いなく同じといえるかと…」

 

皆の表情が固まる。

 

その中で、ケラルトが意を決したように口を開いた。

 

「…ウル殿。大変不敬なお願いであることは承知の上で…あなたのお力を、我々にもお見せいただけないでしょうか?…王国、帝国、法国からの書状では、殆ど同じ内容でウル殿のお力が示されております…。信じるに値すると、我々は考えておりますが、どうしても、その聖なる神のお力を一度拝見したいのです…」

 

ケラルトは、ウルに対して向けていた感情を全て押し殺し、まるでカルカに対して向けるような敬意と畏怖を以てして深々と頭を下げて見せた。

 

その後、カスポンドやデボネ領主、だけでなく、カルカですら頭を下げたことで、ウルは承諾の意を示すことになった。

 

「…わかりました。ですが、ここでそれを解放すると、宮殿が跡形もなく消し飛んでしまいますので…移動してもよろしいですか?」

 

ウルのとんでもない発言に、一同は騒然として見せるが、すぐに準備を整え、首都ホバンスから少し離れた、人里のない平原へと移動することになった。

 

 

 

ウルとカルカ達一行は、途中でレメディオスに声を掛け、首都ホバンスの近郊、殆ど人が立ち入らない平原へと移動した。

 

「皆さん、そこに一カ所に集まってもらえますか?」

 

カルカにケラルト、レメディオスにカスポンド、それからデボネ領主に、護衛の聖騎士団と神官団は、言われた通り、一ヵ所に集まりを見せる。

 

それを確認したウルは、一つの魔法を発動させる。

 

「聖なる球壁」

 

その魔法は、カルカ達を包み込むようにして、半球の聖なる防壁を生み出す。

 

「こ、これは!信仰系第六位階魔法ッ!!」

 

「おお…なんと…」

 

カスポンドとデボネ領主が驚きの声を上げる。

 

カルカ達も、初めて見る魔法に、目を見開いて感動に似た表情を見せる。

 

しかし、これは序章に過ぎない。

 

本番がここからであることは、誰もが知りえていた。

 

「よろしいですか?」

 

ウルの声掛けに、カルカ達は首を縦に振った。

 

「では…、天解…ッ!」

 

膨大な聖なる力が吹き荒れる。

 

球壁に守られているカルカ達に、その力の奔流が襲い掛かることはないが、思わず反射的に顔を守るようにして手で庇う。

 

『宮殿が吹き飛ぶ』。

 

先のウルの発言が、嘘ではなく真実であることが、これを見て証明される。

 

聖なる力の奔流が収まりを見せ、徐々にウルの姿が確認できるまでに視界が晴れる。

 

カルカもケラルトも、レメディオスもカスポンドも、果てはデボネの領主も、聖騎士達も神官達も大きく目を見開いた。

 

そこには、圧倒的な美しさを持つ…天使のような姿を表したウルがいたからである。

 

背中に生える一対の巨大な天使の翼に、頭上に輝く天使の輪…。

 

加えて、ウル本来の美しい顔立ちに鍛え抜かれた肉体…。

 

それに目を奪われないものなどいなかった。

 

「…『熾天使の聖騎士(セラフ・ジ・ホーリーナイト)』」

 

ウルは、大きく広げた翼を、ゆっくりと身に寄せるようにしてたたんで見せる。

 

そして、ゆっくりとカルカ達に近づき、同時に球壁を解除する。

 

「いかがでしょう?これが私の本来の力となります」

 

カルカ達は、押し黙ったまま、一ミリも動けずにいる。

 

…暫く身を固めたままであったが、カスポンドが小さく口を開く。

 

「神だ…これは…間違いなく神の力…だ…」

 

「熾天使の聖騎士という力です。聖騎士としての最高地点にして…」

 

ウルが力の解説をしようとした瞬間、全員が意図せず同じタイミングで、膝を折って平伏して見せた。

 

勿論、カルカも例外ではなかった。

 

聖王女である彼女が膝を折る…。

 

それは、本来であれば絶対にありえないことであるが、それを咎めるのは目の前のウルだけであり、周りの者は皆、全く疑問に思ってなどいなかった。

 

「今までのご無礼を、お許しください!聖なる神、ウル様!!」

 

「我々はあなた様に絶対の信仰を捧げることをここに誓います!!」

 

「カルカ様と聖王国のため、どうか我が忠義を捧げることをお許しください!!!」

 

カルカとケラルトが顔すらも伏して大声で叫ぶ。

 

いつもはアホなレメディオスですらも、ウルの力を姿を目にし、まるで忠臣のような態度を取って見せる。

 

「なっ!!ちょっと、やめてください!!私は忠義も信仰も捧らる様な者ではありません!!」

 

「いえ、あなた様はまごうことなき聖なる神…」

 

「どうか、我らに救いの手を差し伸べていただきたく…!!」

 

デボネ領主とカスポンドですら、ウルの前に忠義を尽くすようにして口を開く。

 

「先ほども言いましたが、私は神ではありません。神の力を有する、ただの人間です…」

 

「で、ですが…。私はウル様の…その力を前に、すでにそうとは考えられません!!…」

 

カルカは、一瞬顔を上げてウルの姿を捉えるが、目にすることすら不敬であると感じたのか、再び顔を伏せて見せる。

 

「…そのような態度を取られるのであれば…私は聖王国から去らねばなりませんね…」

 

ウルの発言に、カルカ達は酷く困惑した様子で、最後顔を上げる。

 

「そ、そんなッ!!我々の何が…ッ!!////」

 

カルカが異議を唱えようとして見せるが、一瞬のうちにウルが目の前に現れ、膝を突いて自身の顎をくいッと持ち上げられたことで言葉を詰まらせてしまう。

 

そして、顔を真っ赤に染め上げる。

 

美しい顔に、頭上に輝く天使の輪。加えて視界の端に映る巨大な真っ白な翼に、一瞬で思考が停止する。

 

「私は、人間です。そして、カルカ様、あなたの恋人でございます。どうか…変わらずに接しては頂けませんか?」

 

「ッ!!!//////」

 

ウルがそう言い、微笑を浮かべたことで、カルカは更に顔を真っ赤に染め上げる。比喩でも何でもなく、顔から煙のような蒸気を発生させる。

 

「どうか、他の皆さまも…同じように接して頂きたい…」

 

ケラルト達は悩む。悩まざる終えない。

 

もはや、間違いではない…。

 

目の前にいるウルは、聖なる神…その力を有している。

 

聖なる神がどのような姿で、どのような力を有しているかなど、彼女らが知っているはずもないのだが、それでも目の前の存在が神以外のなにものでもないという確信だけはあった。

 

故に、その願いを聞くには、自身の存在が矮小で、承諾しかねるものであった。

 

しかし、カルカは違った。

 

「あなた様が…ウル様がそれをお望みであるのならば…そう致します……。ウル様…っ!!」

 

カルカは膝を戻す…かと思いきや、目の前にいるウルに思いっきり抱き着いて見せた。

 

そういうことじゃないんだなー…という感情がウルの中で生まれたが、それを咎めるようなことはしなかった。

 

「ッ!!すごい…本当に…本当に天使の翼なのですね…」

 

「ちょっと…くすぐったいですよ、カルカ様」

 

「まあッ!感覚があるのですか??もっと触らせてくださいなッ!」

 

まるで、本当に恋人のように、きゃぴきゃぴと言った感じでウルとカルカが抱擁しながら会話をしている。

 

それを見たケラルト達は、思わず顔を見合わせ、微笑する。

 

…確かに、目の前のウルは、聖なる神の力を有した存在だ。

 

しかし、それは力を有しているだけで、彼の言う通り同じ人間であることの証明に他ならなかった。

 

ウルは辛抱溜まらんと言った感じで、天解を解いてしまう。

 

天使の輪も、翼も、掻き消えるように消失する。

 

元の、いつものウルの姿に戻ったことでカルカは些少の不満を滲ませていたが、それでもウルから離れようとはしなかった。

 

そして、そのまま再度ウルとカルカが楽しそうに会話をしている姿をケラルト達は目にする。

 

そして、何かを決断したように覚悟を決めたようにして、ウルとカルカの元へ歩み寄っていくのだった。

 

 

カルカ達に平伏されてしまう、という事故が発生をしたものの、無事に解放されたウルは、首都ホバンスの街を歩いていた。

 

時刻はすでに19時を少し回っており、街も暗闇に包まれつつあ。

 

この様に時間が遅くなった理由は他でなく、カルカ達との会話が弾んでしまったことにある。

 

その際に、アインズとの戦い後、ウルの意識がなかった時の話にもなったのだが、ウルが不意に特に大した意図はなく発した、

 

『ラナー様にも直接お礼を言わないとですね』

 

という発言に、カルカとケラルトがこれでもかという覇気で、

 

『『ぜっっったいにダメですッッ!!!!』』

 

と怒号を浴びせられたのには、驚いたものである。

 

理由を聞くと、何やらはぐらかしてながら、

 

『ウル様を狙っておるのですッ!』

 

と、非常に真剣な様子でカルカが弁明していた。

 

更に問いただしたことで、その内容が、

 

『ウル様の…その…子種がほしいと…いっておりました…』

 

とケラルトが白状したように答える。

 

実際、ちょっと身が震えた。

 

『え、何それ怖い…』

 

とウルが発言すると、

 

『そうです!だから絶対に2人で会ってはいけませんよ!!』

 

と再度カルカにくぎを刺されたのだ。

 

実のところ、ラナーはすでに魔導国とつながりがある。

 

あのデミウルゴスとアルベドが感心するほどの頭脳を有しているとのことなので、改めて警戒するに越したことはないだろう。

 

恐らく、俺の子種が欲しいというのも、俺との子どもを作ることで、魔導国にとって自身の価値を高める作戦かもしれない…。

 

非常に恐ろしいことである。

 

そんな風に、再度身震いをして見せると、近くの路地の奥の方から何やら声が聞こえてくる。

 

『へへ!俺の子種をくれてやるぜッ…』

 

非常に聞き取りづらかったが、この路地の奥で何が行われようとしているのか、察するには十分であった。

 

自身に起こるかもしれない状況、同じ境遇であろうそれを助けようと、ウルは路地の奥へと駆けて行った。

 

 

「ッ!パパのバカ!!だいっきらい!!!」

 

1人の少女は、大声を上げて家から飛び出し、街を駆けていく。

 

暫く進んだところで、後を追われていないことを確認しながら大きくため息をつく。

 

暫く走っていたために、息が荒い。

 

息を整えるようにして、今度はトボトボと歩き始める。

 

お父さんが帰ってきたのは、1か月ぶりであった。

 

危険な任務に就くことの多い父であったため、会えるのを楽しみにしていたのだが、実際に会ったら会ったで、喧嘩になってしまったのだ。

 

父の言い分は正しい。

 

自分に聖騎士は向いていないし、逆に弓の才能はある。

 

しかし、私は母に、聖騎士の母に憧れているのである。

 

最近では、もう一人憧れを抱く聖騎士がいるのだが、その話になった際にも、彼とお前は違うだとか、お前はお前の道を進むべきだとか、俺の才能を継いでいるのだから自信をもてだとか…。

 

つまるところ、私が求めている言葉が帰ってこなかったのだ。

 

私の気持ちなんてわかってくれない。

 

それが、父と喧嘩をしてしまった大きな理由である。

 

…まあ、喧嘩と言っても、私が勝手に怒って出て来てしまっただけなのであるが…。

 

「はぁ…。何やってんだろ、私…」

 

父の休日、非番はそう長くはない。

 

2日後の朝にはまたアベリオン丘陵と接する砦へ向かう。

 

「折角久しぶりに会えたのになー…」

 

少女は考え事をしながらトボトボと歩く。

 

…故に気が付かなかった。

 

いつの間にか、暗い路地に入り込んでしまっていたことに。

 

何やら怪しげな男たちがたむろっていたことに…。

 

「お?なんだ、嬢ちゃん、こんなところでどうしたんだ?」

 

「…い、いえ、何でもないです…」

 

男に声を掛けられて、ようやく少女は自身が置かれている状況に気付く。

 

「おいおい、すんげー目つきだな…。でも、可愛らしい顔してんじゃねーか!!」

 

「…ッ!すみません…。あたしはこれで…」

 

別の男の言葉に耳を貸すことなく、その場を離れようとするが、また別の男に腕を掴まれる。

 

酷い嫌悪感が少女の身体を走り抜ける。

 

「まあまあ、そう言わずに、おじさんたちと遊んでいこうぜー」

 

「やっ!離してください!!」

 

男の腕力は強く、少女には振り払えなかった。

 

「んだよ…結構いい身体してんじゃねーか…」

 

「嫌ッ!やめてくださいッ!!」

 

少女は涙ぐんで拒否するが、それを受け入れてくれるような連中ではなかった。

 

「へへ!俺の子種をくれてやるぜッ…」

 

「やめてっ!やだ!!誰かッ!!!たすけ…ッ」「おっと、叫ぶのはなしだぜ…へへ」

 

男がズボンをまさぐりだしたことで、少女は本格的に危機感と嫌悪感を露にするが、口元を押さえつけられて助けを呼べなかった。

 

「(嫌ッ!!パパッ!!!助けて!!!!)」

 

少女は男の下半身が露になりかけているのを、ギュッと目を瞑って見ないようにする。

 

「無駄だぜ…こんな路地には誰も…」「変態にドーンッ!!」「ぐはっ!!」

 

下半身が露になりかけた男が、何かにぶつかって更に路地奥へと吹き飛んでいく。

 

「な、何だてめーはっ!!」

 

少女は予想していた男の言葉とは違うものが耳に入ってきたことで、ゆっくりと目を開ける。

 

「こ、こいつッ!ウルだ!白銀のウルだ!!」

 

「お、光栄だね。お前達みたいな変態にも知られているとは…」

 

少女は大きく目を見開く。

 

強姦男が口にした名は、自身が憧れている聖騎士の、冒険者の名前であったからだ…。

 

「で、お前ら、大人しく牢屋に入る気はあるか?」

 

「ッ!くそ!!おい、ずらがる…」「しかし逃げられなかった」「がはっ…」

 

目にも留まらぬ速さで、暴漢共の首元に手とうをぶち込む。

 

男どもはたまらず意識を失い、その場に倒れ込んだ。

 

「いやー、まさか首都にもこんなのがいるとはねー…」

 

ウルの言葉に、少女はようやく冷静さを取り戻す。

 

瞼に溜めていた涙を拭い、バッと立ち上がって口を開いた。

 

「危ないところを助けていただいて、ありがとうございます!私はネイア・バラハと申します!!白銀のウル様とお見受け…」

 

「うおっ!目が怖いッ!!…パベル殿!?」

 

ウルはビクッと身体を震わせる。

 

少女もわっと言葉を止めて驚く。そして気付く。

 

「…パベル・バラハは父ですが…。父を知っているのですか!?」

 

「え、はい…。パベルさんとはお知合いで…って、え…じゃああなたがパベルさんの娘さん…。あー…似てる…」

 

ウルがネイアの顔をじっくりと覗き込むようにして観察したことで、ネイアは顔を真っ赤にして目をそらしてしまう。

 

「(ええ…なんでこんなに見てくるの…///。あ、もしかして目…。パパと似てるから…それにしても…)」

 

ネイアは一呼吸おいてから、再度ウルの顔を見る。

 

と同時に、ウルもネイアの顔を見ながら、全く別の感想を抱く。

 

「(かっこいいな…///)」、「(射殺されそうな眼だ…)」

 

そうして二人は、暫く見つめ合っていたとか…。

 

 

「いやー、すみません、あまりにも似ていたのでつい…」

 

「いえ、私の方こそ、ずっと見てしまって…///」

 

互いに先ほどのお詫びをするように口を開く。

 

大通りの交差路にある女神像の周り、その縁石に腰かけながら、2人は会話を弾ませる。

 

ネイアがウルに憧れを抱いていたため、ウルの今迄の戦闘や活動の話から始まりをみせ、今はネイア自身の身の上話になっていた。

 

「なるほどー、パベル殿と喧嘩を…」

 

「はい…。自分が悪いことはわかっているのですが…」

 

ネイアははぁ…と大きくため息をついて見せる。

 

だが、ウルは些少の疑念を抱いた。

 

「いや、そんなこともないですよ…。ネイアさんくらいのお年頃の娘さんであれば、当然の反応だと思いますよ」

 

「え…?そうですか?」

 

「ええ、かくゆう私も、12年前はそんな感じでしたからね…」

 

「ウルさんも、ですか?」

 

「ええ、まあ俗にいう反抗期ってやつですかね?」

 

「反抗…期…ですか?」

 

ネイアはウルの言葉が理解できていないのか、首を傾げて見せる。

 

(あー、反抗期って言葉、この世界には定着していないのか…)

 

ウルは少し考えた後、言葉を変えてみせる。

 

「そうですね…。親から自立して、大人になろうとしている…といったところですかね…。自分のことは自分で決めたい…そんな感情ですよ」

 

「ッ!はい、まさしくそれですっ!!」

 

ネイアは酷く腑に落ちた様子で、思わず立ち上がって身体の前で握りこぶしを作る。

 

「…ですが、親からしてみれば、それは理にかなっていないことも多い。心配故に、最善の道を勧めてくる。…だが必ずしもその最善の道が自分の進みたい道とは限らない…」

 

「ッ!はい…父の言っていることは、正しいのです…。自分でもそれはわかっているのですが…」

 

ネイアは、再度縁石に座り込む。

 

「ふふっ…。大丈夫ですよ、パベル殿はお優しい。ネイアさんのことを、とても大切に思っているのですから…。きちんとお話をすれば、分かってくれます…。いえ、もうわかってくれているかもしれませんね…」

 

ウルは、そういうと、ゆっくりと立ち上がって見せた。

 

「では、私はこの辺で…。ネイアさんも今日はもう帰られた方がいい…。奴らの仲間がいないとも限らない…」

 

「ッ!はい。今日は本当にありがとうございましたッ!!」

 

ネイアはガバッと立ち上がると、深々と頭を下げてきた。

 

…その後、家に帰ったネイアが、パベルと仲直りしたのは言うまでもないが、ネイアが男に襲われそうになったことを聞いたパベルは酷く困惑したことに加え、それをウルに助けられた話をしたことで、パベルはウルに大きな恩義を感じることになるのであった。

 

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