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善戦、苦戦と様々であったが、5体のメイド悪魔全てに勝利を収めたカルカ達は、宮殿下で簡単な集合を見せ、各々に勝利を祝していた。
「この勝利は大きいわ…少なくともこれで、三魔皇の戦いに横やりを入れられることはないわね…」
「ああ…後は、ウルと魔導王が勝利するだけだ…」
ラキュースとイビルアイの言葉に、皆が一様に上空へ目線を向ける。
「やはり、2対3…」
「劣勢…」
ティアとティナの言葉に、皆が目を細める。
「それに…アベリオン丘陵の時よりも、三魔皇がより強い気がするんだが…」
「そうですね…。真の力…と言ったところでしょうか?」
レメディオスとケラルトが、低く唸るようにして口を開く。
次の瞬間、カルカ達のいる位置の前方10m先辺りに、2つの何かが飛来する。
ウルと魔導王であった。
「くっ…」
「かはっ…」
アインズは片膝を突いて見せ、ウルはそれに加えて小さな血反吐を吐く。
「ッ!ウル様!!」
「魔導王陛下ッ!」
カルカとフールーダが、それぞれ心配するようにして声を掛ける。
皆も一様に、2人の様子を見て驚く。
まず最初の驚きは、ウルの姿であった。
まるで天使…いや、もはや神と言っても差し支えないであろう姿に、見たことのないものは、口を大きく開けて固まる。
…が、それは長くは続かなかった。
ウルも魔導王も、装備や身体に大きな損傷を負っているのが目に入ったからだ。
…三魔皇の恐ろしさを、改めて実感する。
ウルと魔導王という、人智を超えた力を持つ2人掛かりであっても苦戦を強いられるのかと…。
そして、絶望の3柱が、ゆっくりとウルと魔導王の前に降り立つ。
「どうした?この程度か?」
「同格同士の戦いで、数的不利は苦しかろう…」
「そこから動かなければ、すぐに楽にしてあげるわ…ウル、魔導王…」
ヤルダバオト、グリード、エンヴィが不敵な笑みを浮かべる。
その笑みに、カルカ達は不快感以上におぞましき恐怖を覚える。
「…ウル殿、まだ戦えるな?」
「当たり前だ…アインズ殿…」
2人はゆっくりと立ち上がる。そして、ウルは何かを決意したかのように口を開く。
「ウル殿、このままでは負けるぞ…」
「…ああ、そうだな」
魔導王とウルの発言に、カルカ達は苦悶の表情を浮かべる。
しかし、ウルも魔導王も、言葉の割にはそこまで追い込まれている様相は見せない。
「…使うしかないな…」
「…本気か?」
「ああ…」
そして、その瞬間、圧倒的な光がホバンスを支配する。
その光に、皆が驚愕の声を上げる。
「な、なんだ!?これは…ッ!!」
「天解…?でも、もうすでにウル様は…」
イビルアイとカルカが怯えるような様相で口を開く。
圧倒的な聖なる力と光…そして天使の羽と思しきものが無数に空中へと散らばる。
そして、カルカ達は驚愕する。
太ももまで伸びた艶やかな黒髪…。
艶めかしい肉体を有した…2mはあるであろう身体…。
3対の天使の翼…。そして頭上に輝く2重の強大な天使の輪…。
…そして、それが有するもの…女性が、ウルの背中にびったりと張り付いて、抱き着いているのである。
カルカ達は驚愕の様相を見せたまま固まる。
そしてその固まりを許さないとばかりに、それは呟いて見せた。
「なんじゃ…久しぶりに呼び出されたと思うたら…また随分とけったいな状況ではないか…のう、ウルベノムや…」
艶めかしい肉体を、ウルの背中に擦り付けるようにして、その天使の姿を要する女性は口を開いた。
…どうやら、驚いているのはカルカ達だけでなく、魔導王、そして呼び出したであろうウルも同様のようであった。
アインズは、横で繰り広げられているアダルトな様相に、一瞬、いや数秒言葉を失った。
自分の認識とウルの認識がずれていたのであろうか?
いや、ウルが発動したの間違いなく、想定したものであった。
至高天刀…。それがもつ強力な力…。
至高天の熾天使を呼び出せるという、破格の性能を持つその力の発動を、アインズは待っていた。
…至高天の熾天使は、本来、20mはあるであろう強大な天使、最強の天使の姿をしているはずである。
それが一体どうしたことだろうか。
アインズの横、ウルの背中にびったりと張り付いているそれは、2m近い身長を持つ、この世の者とは到底思えない、絶世をも通り越した神のような美女であった。
背中に3対の天使の翼を有し、その頭上には神聖な天使の輪が二重になって光り輝いている。
アインズは驚きのあまり言葉を失っていたが、ゆっくりと左手を頬に寄せ、何とかウルに伝言を飛ばす。
『ちょ、ちょっと、ウ、ウルさん!?何をしたんですかっ!!!』
『な、何って…ッ!!至高天刀を具現化して、至高天の熾天使を召喚したんですよ!!!』
なるほど、アインズの認識とのズレはなかったようである。
しかし、それならばこの状況に説明がつかない。
『じゃ、じゃあ、その背中のそれは一体何なんですかっ!!』
『お、俺が聞きてえよ!!なんだよこの女神様はッ!!!』
『聞いてみてくださいよ!!!誰なんですかって!!』
アインズもウルも、これ以上ないほどに驚きを見せていた。
三魔皇たちも、一体何が起こっているのか理解できていない様子であった。
その様子は、カルカ達にとってみれば、その女神のような女性の力に驚いているように見え、ウルとアインズにとってみれば、計画にないことだからな…といった様相である。
実際の三魔皇の感情は、もちろん後者である。
ウルは、背中に感じる素晴らしくも劣情を抱く感覚を抑え込み、ゆっくりと後ろを振り向いて小さく口を開く。
「あの…どなたですか?」
「…なにをいうとるんじゃ…至高天の熾天使、セラフ・ジ・エンピリアンに決まっておろう…、お主が今、自分の意思で呼び出したんじゃろうが…」
「えーっと…その、想像していたのと全然違くて…」
「はぁ?…一体何を言っておるのじゃ…。目の前にいる悪魔どもを殲滅するために呼んだんじゃないのか?」
ウルはここで、一旦自称至高天の熾天使との会話を辞め、伝言に切り替える。
『アインズさん、至高天の熾天使です!!この人ッ!!!』
『え、えぇ…!!!でも、至高天の熾天使って、こんなんじゃなかったじゃないですか!!一体どういうことですか!?』
『そんなの俺にもわかんないですよ!!あー!!どうしたいいですか!』
『そんなこと私に聞かないでくださいよ!!!ウルさんが呼び出した…というか、ウルさんの刀に封じられていた至高天でしょ!!何とかしてくださいよ!!!』
ウルとアインズがこれでもかと言い合いをしていたが、至高天の熾天使が口を開いたことでそれを中断する。
「で、わらわは何をしたらよいのじゃ?ウルベノムよ…」
「何を…と申されましても…あの三魔皇…というか、悪魔を倒そうかと…」
「なんじゃ…やはりそうか…ならなぜ…」
「ウル様ッ!!!」
至高天とウルの会話に、一人の女性が割り込んでくる。
非常に大きな声であった。
ウルも、至高天も、果てはアインズもその声に振り返る。
…カルカであった…。
目に大きな涙を浮かべ、今にでも自害してしまいそうな表情を見せていた。
「そ、そそそ…その女性…天使様は…一体、どなた…なのでしょう…??」
カルカは、何度も言葉を詰まらせる。
「えっ…何、と言われても…」
ウルは何か良い言いわけがないかと考え込むようにして言葉が詰まる。
カルカからしてみれば、ウルのその同様は、酷く心情に思うところがあった。
浮気…いや本命…??そんな風に考えてしまったのである。
「ウ、ウル様の……ウル様の…女性なのですか…??」
「い、いや…そういうわけでは…」
カルカの頬に、一筋の涙がスゥっと流れ降りる。
それを見て、ウルは頭をフル回転させて考え込むが、それは上品な笑い声によってかき消される。
「ふふっ!なるほど、可愛い女子よの…。うぬが、カルカ・ベサーレスか…」
「ッ!は、はいッ!!」
カルカは、突然名前を呼ばれ、ビシッと背筋を伸ばして見せる。
「安心せい…。わらわは、至高天の熾天使じゃ…。ウルベノムの持つ刀…その本来の姿でな…。決して、ウルベノムの女などではないぞよ?」
「か、刀の…本来の…お姿…。ほ、本当…ですか?」
「本当じゃ…」
至高天とカルカの会話は静かに落ち着きを見せるが、また新たな怒号に似た声が響く。
「し、至高天!!!至高天の熾天使じゃとーーッ!!な、何というお力!!!何というお姿なのじゃーーー!!!!」
老人、フールーダが、おいおいと涙を溢れさせながらその場で両膝を着く。
…至高天の熾天使は、思わず引くような表情を見せる。
「…おい、ウルベノム…。なんじゃ、あの気持ち悪い人間は…」
「あー…その辺の感情は俺たちと同じなのね…」
「…なんか一気に親近感を覚えますね…この人に…」
フールーダの様相に、ウル、至高天、アインズは、一様に目を細めて嫌悪感を露にした。
「しっかし、とんでもなー奴だな…ウルも魔導王も…」
ガガーランは、再度上空で繰り広げられている戦闘を見ながら…というか、目で追うことなど不可能ではあったが、眺めながら口を開く。
「それに、至高天の熾天使…天使の最上位か…文献にすら殆どのっていない…」
「…聖なる神、死の神と呼ばれているんですもの…驚くのも疲れてしまったわ…」
その言葉に反応するようにして、イビルアイとラキュースが小さく呟くようにして口を開いた。
ラキュースは、ふっとカルカの方へ視線を移す。
胸の前で両手絡ませ、目をトロンッとさせている。
その目線の先にいるのは、間違いなく聖なる神の方であろう。
誰が見ても、恋する乙女…嫌もはや執着や依存に近い表情を浮かべている。
「(さすがの私も…あそこまでではないわね…)」
ラキュースは思わずふっと息を漏らす。
傍にいる聖騎士団団長と神官団団長も、妙に乙女らしい表情をしている。
レメディオスは力バカ、ケラルトは腹黒女と聞いていたラキュースからすれば、目を疑うものであった。
しかし、そこに大きな疑問はなかった。
「(私もラナーも、ほんの少し関わっただけで虜になったんだもの…関りの深いあの3人が心奪われるのも、無理ないわね…)」
ラキュースは大きくため息を漏らす。
「…初めてだったんだけどなー…」
「…?何か言ったか?ラキュース?」
ラキュースのとても小さな声に、イビルアイは疑問を投げかける。
「ん?…あれには敵わないなーって…」
「ふっ…何をいまさら…私達では、逆立ちしてもあの強さは得られんさ…」
「ふふっ…そうね…」
ラキュースの言葉の意味を正しく理解しているイビルアイではなかったが、言葉だけ見ればどこか会話が腑に落ち、思わず笑ってしまった。
ウルが召喚した至高天の熾天使の姿形に酷い困惑を表していたカルカであったが、ウルの女性ではないと知り、些少の安心を抱く。
しかし、内心は穏やかではなかった。
それは、外見だけに留まらない。
というよりも、この場にいる全員がそれを抱いていることだろう…。
「…ッ!強い…あの魔導王や、ウル様と互角…肩を並べて戦えている…ッ!!」
「…おお、なんと素晴らしき力なのだ…ッ!!」
カルカとレメディオスが感嘆に似た声を上げるが、ケラルトだけは、何かを考え込むようにして目線を鋭くしている。
それに気づいたレメディオスが、少し首を傾げる。
「どうした?ケラルト…?」
「姉さま…いえ、あの熾天使…様は、ウル様が召喚されたと言っておりました…。つまりはウル様の御力ということになります…。あの力を使えば、魔導王にも、アベリオン丘陵時の三魔皇にも勝てたのでは…と思いまして…」
「むむっ!!確かにそうだな!!ウルめ…力を隠していたのかっ!!」
ケラルトの推察に、レメディオスは些少の怒りを滲ませる。
ウルが初めからあの力を使っていれば、魔導王との一騎打ちの時も、三魔皇襲来の時も、こんな面倒なことにはならなかったのに!…と思っているのだろう。
「…災厄の大魔皇との戦いに備えて隠していたという線もありますが…そうではない…と考えているの?」
カルカは、未だ表情を硬くしたままのケラルトに向かって言葉を吐く。
「…あの力には、代償、リスクのようなものがある…とは考えられませんか…?その、例えば…命…とか…」
ケラルトの言葉に、カルカや先ほどまで怒りを滲ませていたレメディオスの表情が大きくゆがむ。
カルカの瞳が潤みだし、口が開かれようとした瞬間、横やりが入る。
「それはないわ…少なくとも、命と引き換えではないでしょう」
横やりを入れてきたルカの言葉に、カルカとレメディオスから少しだけ安心したような雰囲気が漏れる。
「…何か根拠が?」
「至高天の熾天使との会話です…。彼女は、ウルに『久しぶりによばれた』と言っていました…。つまり過去にも召喚したということです…。命が代償であるならば、今ウルは生きていない」
「そ、そうだッ!そうだな!!おい、ケラルト!!全く変なことを言って!!私とカルカ様を不安にさせるな!!」
「そ、そうよ、ケラルト…。私、心臓が止まりかけたわ…」
レメディオスとカルカは、ただ推察しただけのケラルトに、目を尖らせて抗議する。
しかし、ケラルトはまだ謝罪の言葉を口にしない…。
「少なくとも命ではない…。それはつまり…」
「…リスクはあると思います…。確実なのはウルが至高天の熾天使を召喚した際、あの至高天の熾天使は刀そのものだと言っていた…。そしてそれを肯定するように、刀は消えていた…。つまり、刀としては振るえない…ということ…。そしてもう一つは、命が引き換えでなくても、寿命を引き換えにしている可能性は拭えないということです」
ルカの発言に、カルカとレメディオスの顔が青ざめる。
「じゅ、寿命を…ッ!!」
「い、一体どのくらいなんだッ!!」
「そうと決まったわけではありません…。単純に何の代償もないかもしれません…。ですが、出し渋っていた以上はなにかがあるはず…と考えただけです」
カルカとレメディオスの狼狽えように、先ほどとは打って変わってケラルトがフォローを入れる。
「そ、そうだな…。きっとそうに違いない…」
「寿命でないことを信じたいですが…。確かに、出し渋っていた理由…それが気になりますね…」
様々な推測をしている最中、ウルがカルカ達の前に降り立つ。
先ほどよりもダメージを重ねているのか、血の汚れや煤汚れがひどい。
しかし、致命傷のような大きな傷はない様子であった。
些少の安心を抱いたカルカ達であったが、少しして至高天の熾天使がウルの肩に手をのせるようにして降り立つ。
「ウルよ…悪いが、そろそろ時間切れじゃ…わらわは暫く眠る…」
「…もう30分も経ったのか…」
「十分奴らを削ったとは思うが…油断はせん事じゃ…」
「あぁ…」
瞬間、至高天の熾天使はふっと姿を至高天刀、本来の姿である刀にその身を変え、ザッと地面に突き刺さる。
それを見たルカは、どこか納得したように何度か頷いて見せる。
「なるほど…時間制限と使用制限…」
「召喚できる時間と、次に召喚できるまでに間隔がある…ということですね…」
ケラルトも合点がいったように、口を開く。
自身の武器である至高天刀の能力の弱点を解説しているカルカ達に、ウルは思わず声を掛けた。
「…まあ、それ以外にもあるが、正解だな」
「ウル様ッ!!寿命が削られる、とかではないですよね!!!」
ウルの発言を見過ごせず、カルカは大声で叫ぶようにして言葉を発した。
「え?寿命??…そんなものは削れたりしませんよ?」
ウルは、何をバカげたことを…というような声でカルカに応答する。
「はぁ~…よかった…。ケラルトッ!ルカさん!」
カルカは、腰に手を当てて頬をぷくっと膨らませる。
「…深読みしすぎました…申し訳ありません…」
「そうね…失礼いたしました」
ケラルトとルカが素直に陳謝したことで、カルカは思わずくすっと笑って見せる。
…だが、その笑いはある者の怒号で一瞬にして掻き消える。
「ウルッ!!そっちだッ!!!!」
声の主は、魔導王であった。
ウルは大きく目を見開く。
目の前にヤルダバオトが一瞬で現れたかと思うと、その強大な拳を振りかざし、地獄の炎を思わせるような火炎を纏って殴りかかてきた。
ウルは思わず右手に持った刀剣ではじき返す。
…悪手だった。
刀剣はヤルダバオトの腕を防ぐことには成功したが、腕ごと大きく後ろに後退…ノックバックを受けて弾かれる。
それを待っていたとばかりに不敵な笑みを浮かべて、ヤルダバオトはもう片方の腕を同じように振りかぶった。
ウルはもう片方の刀剣で…と考えた際に気付いた。
左手には刀剣を握っていないことを。
一瞬で対策を考える。避けるのが最適だと。
しかし、それはできないと瞬時に理解する。
後ろにはカルカ達がいる。
もし避ければ、拳は空を切るが、衝撃と火炎はそのまま直線的に発生する。
そうなれば、カルカ達の命はない…。
悪態を付くような表情を生みだしながら、ウルは左手にできる限りの魔力を込めて、ヤルダバオトの拳に立ち向かう。
数秒、持ちこたえたが、片や力を極限にまで高めた拳…。片や付け焼刃で魔力を宿した拳…。勝敗は火を見るより明らかであった。
しかし、そこはウルである。
それでもヤルダバオトの腕をギリギリで押し返して見せる…。
そう…。左手がボキボキに折れるという犠牲を伴って。
「ぐ、ぐぁ…ッ!!」
痛みと不快感に、思わず左肩を掴むようにして膝を着く。
痛覚を大幅に鈍化させる指輪を装備しているため、感覚としてはヒビが入った程度の痛みであったが、自身の腕が原形をとどめないほどにぐちゃぐちゃになる感触には、嫌なものを感じた。
背中に、カルカ達の悲痛の叫びが聞こえる。
それを聞いてか知らずか、ヤルダバオトはゆっくりと口を開く。
「哀れだな…。後ろの有象無象を見捨てて避けていれば、そのようなことにはならなかったものを…。…これで終わりだ、ウル…ッ!!」
ヤルダバオトは、止めとばかりにもう一度拳を振り上げるが、背中に衝撃を喰らい、動きを止めて再度上空に飛翔する。
アインズが背中から攻撃をしてくれたのだろう。
ウルはそんなアインズに礼をとばかりに笑みを浮かべるが、一瞬で強張り、叫ぶ。
「アインズッ!!後ろだ!!!」
「ッ!!!」
アインズが振り向くが、遅かった。
背中にグリードの斬撃で怯み、エンヴィの強烈な蹴りを喰らい、綺麗にウルのすぐ横に落下し、地面に激突する。
「アインズッ!!」
「ぐっ…くそッ…」
アインズの骨が砕け、一部がカランッと地面に落ちる音が響く。
…前方に不穏な雰囲気を感じ取る。
ウルは視線を前方に向き直すと、三魔皇が滞空するように雁首を揃えて見下ろしていた。
「ふふっ…ウルは後ろの聖王女たちを守って深手を負い、アインズはウルを守って深手を負う…」
「愚かとは、まさしくこのことだな…」
エンヴィとグリードが、高らかに笑い声を上げる。
その言葉に怒りと不快感を抱いたのはウルでもアインズでもなく、カルカ達であった。
「この…卑怯者がッ!!」
「わが至高なる師よッ!!どうか、どうか立ってくだされーッ!!」
レメディオスとフールーダが、代表とばかりに声を上げる。
その声に反応するようにして、ウルとアインズが足に力を入れるが、立つことは叶わなかった。
それを見たヤルダバオトは、大きく肩を動かして見せる。
…まるで、整理体操をするかのような動きであった。
「限界…だな…。もう立てもしないか…。至高天の熾天使も消えた…。我らも随分と追い込まれはしたが…これで終わりだ…」
ウルとアインズは三魔皇に睨みを聞かせる。
もちろん、終わりではない。
この後は友情パワーで最後の力を振り絞り、三魔皇を打ち破る。
それで初めて終わる…。
それを実行に移そう…。そう思った。
だからこそ、驚いた…。最後の最後に不測の事態が起こったことに…。
別に、友情パワーを出せる力すら残っていなかったとか、そんな馬鹿な話ではない。
その驚きを生みだしたのは、2人の背中、つまりは後ろから吹き荒れる圧倒的な、というより、神秘的な光の暴走であった。
至高天の熾天使が艶めかしい美女であったことなど、もはやどうでもよいと思えるような驚き…そして感動と感嘆を、ウルとアインズは抱くことになる…。