【完結】カルカとモモンガに救済を!   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第34話 カルカ・ベサーレス

カルカは、ウルの左腕がぐちゃぐちゃに形を変えたのを見て、『ひゅっ』と奇妙な声とも分からぬ息を漏らす。

 

なぜそのような状況になったのか…。

 

なぜ避けなかったのか…。

 

ヤルダバオトの放った拳の威力をみれば、容易に分かった。

 

…また、守られてしまった。

 

そしてまた、足かせとなってしまった…。

 

思わず唇を強く閉ざす。

 

…鉄の味が口の中に広がる。

 

…更なる絶望が襲い掛かる。

 

魔導王がウルの横に墜落したのだ。

 

そう、ウルを庇って…。

 

ウルも魔導王も、すでに限界と言わんばかりに膝を着いて苦悶の様相を見せている。

 

「(どうしよう…どうしよう…ッ!…このままじゃ、あの時みたいに…)」

 

カルカの脳内に、アベリオン丘陵での出来事が一瞬でフラッシュバックする。

 

表現できないような不快感がカルカの心を襲う。

 

「(ウル様が…死んでしまうッ!)」

 

カルカの頬に、一筋の涙が零れる。

 

その涙が地面へと落ちた瞬間…。

 

 

…。

 

 

……。

 

 

………。

 

 

 

声が聞こえた。

 

 

『…カルカ・ベサーレス…』

 

その声は、耳からではなく、脳内に直接語り掛けるようなものであった。

 

「ッ…誰ッ!』

 

カルカは、驚き、周囲を見渡す。

 

しかし声の主を探すことは叶わない。

 

首を視線を左右に振るカルカを、レメディオスとケラルトは不信に思う。

 

「カルカ様…一体どうされたのですか?!」

 

「カルカ様…?」

 

そんな2人の言葉に一切反応せず、カルカは何度も視線を動かす。

 

そして、その可能性を見つける。

 

それに視線を合わせるのと同時に、もう一度謎の声が響く。

 

『そうじゃ、わらわだ…カルカ・ベサーレス…』

 

「し、至高天の…熾天使…様…?」

 

その声は、すぐ隣にいるレメディオスとケラルトにすら聞こえないほどの声であった。

 

『…ウルを、この国を救いたいか??』

 

「ッ!?」

 

至高天の熾天使の言葉に、カルカは思わず大きく目を見開く…。

 

『ならば、わらわを握れ…。お主が救うのだ…。カルカ・ベサーレスよ…』

 

「わ、私が、…」

 

カルカは、地面に刺さった刀、至高天刀から目を離さずに小さく呟く。

 

そして、小さく一歩前に踏み出す。

 

「…カルカ様?一体…何を…ッ!!」

 

先ほどの呟きが辛うじて聞こえたケラルトは、カルカに疑念も抱いて声をかけるが、次の瞬間ウルの背中に向かって駆け出したことで、大きく目を見開く。

 

「カ、カルカ様…ッ」

 

少し遅れてレメディオスも気付くが、伸ばした手は届かず、カルカの動きを止めるには至らない。

 

…カルカは少しの迷いもなく、至高天刀の柄を握りこむ。

 

一切の輝きを失っていた刀が、一瞬、微かに光を宿す。

 

『やはり…やはりか…。わらわの見立ては間違っておらんかった…』

 

至高天刀の光は、少しずつ、しかし確実に光を強める。

 

『…抜くのじゃ…カルカ・ベサーレス…。さすればウルを、そして聖王国を救う力を授けよう…』

 

カルカは、手から伝わってくる刀の力を感じ取る。

 

それは暖かな、それでいて強大な力であった。

 

歯を食いしばる…。刀を握る両手に力を籠める。

 

…そして、引き抜く。

 

瞬間、膨大で圧倒的な聖なる力が、刀を、カルカを中心に吹き荒れた。

 

 

 

ウルが最初に気付いたのは、風であった。

 

微風のようなレベルであったそれは、一瞬にしてハリケーンのような暴風へと変化を遂げる。

 

アインズは暴風となった際に、初めて感知する。

 

瞬間、息をするのも忘れるほどの膨大な光がウルとアインズの元にも届く。

 

しかし、ダメージはない。

 

暴風は吹き荒れているが、そこに攻撃性は一切感じられなかった。

 

ウルとアインズは、目の前に三魔皇がいるのを忘れ、大きく後ろを振り向く。

 

光の奔流が、ウルのすぐ後ろで渦を巻いて収縮していく。

 

「は…?」

 

ウルは、呻き声に似た声を上げる。

 

次第に視界は晴れていく。

 

目に入るのは、巨大な天使の翼。

 

「ま、まさか…」

 

アインズは、一つの可能性に気付く…。

 

…それは、ユグドラシル時代からずっとウルに相談され、一緒に考えていた事柄であった。

 

視界に映る天使の翼は、何枚にも重なって見えた。

 

いや、実際、何枚も重なっていた。

 

「うそ…だろ…?」

 

ウルは大きく目を見開き、半開きになった口で何とか声を絞り出す。

 

それもそのはずであった。

 

ユグドラシルで、何年も追い求めたものであった。

 

アインズにも、たっちみーにも、弟のウルベルトにも、それこそ仲の良い友人には何度も相談した。

 

ユグドラシルで、唯一と言っていいほど、心残りであったからだ。

 

どんな些細な情報でも求めた。

 

どんな低い可能性でも飛びついた。

 

条件そのものがわからぬまま…。その条件を達成するために…。

 

…光の奔流から姿を現したのは、カルカであった。

 

長い金髪は腰下まで伸びている…。

 

女性らしい体つきに加え、その顔はローブルの至宝と称されるに相応しいものである。

 

…そこまでは、ウルが知りうるカルカである。

 

しかし、今は違う…。

 

その背中には天使の翼が、それの3対6枚の強大な天使の翼が生え広がっている。

 

そして、至宝たるその顔、その頭上には頭が軽くすり抜けるような大きく神聖な天使の輪が、2枚、輝いている。

 

…目線をカルカの右手に向ける。

 

大きく目を見開く…。

 

そして確信する。

 

「至高天刀…秘められし…大いなる…力…ッ!」

 

その言葉を聞き、アインズも漸く自我を取り戻したように狼狽える。

 

「バ、バカなッ!!聖王女が…カルカ聖王女陛下が…解放したというのかッ!」

 

視界は完全に晴れ渡る。

 

そしてその驚きは、ウルとアインズのみが共有するものではなくなっていく。

 

「カ…カル……カ…さ…ま…」

 

「そ、それは…なん…です…」

 

レメディオスとケラルトは、まともに口を開けずに、それでも何とか声を絞り出す。

 

ルカも一点を、カルカの後姿を捉えたまま固まって見せている。

 

その姿と力に、皆の思考が停止する。

 

青の薔薇も、フールーダも、その高弟達も、そして宮殿から眺めるカスポンドや大臣達…、各所にいる聖騎士、神官…市民に至るまで、一様に目を見開き、一切音を発さない…。

 

…ウルは、視界が歪むのを感じた。

 

その歪みは、苦痛でも恐れによるものでもない。

 

「あなた…だったのですね…。その刀の…真の力を発動せしものは……ッ!カルカ聖王女陛下ッッ!!」

 

「ウル…ッ!!」

 

アインズは、初めて感嘆に震えるウルを見て、驚きの表情を作る。そして、大きく目を見開く。

 

…ウルの頬を、涙がツウっと伝ったからだ。

 

アインズは、ゆっくりと息を漏らす…。

 

そして、ゆっくりと立ち上がる。

 

それを感じ取ったのか、ウルは視線をようやくアインズへと向ける。

 

と同時に、ヤルダバオトが酷く困惑した様相を見せる。

 

当然であろう…。

 

アインズとウルでさえ、予測できなかっただけでなく、この世界に来てから断トツの驚きであったのだから…。

 

「な、なんなのだ…それは…ッ!!」

 

その声に反応するようにして、ウルもゆっくりと立ち上がる。

 

そして、まるで本能に支配されるように口を開く。

 

「至高天刀…とある条件を満たしたものにのみ与えられる、秘められし大いなる力…。その条件すらわからなかったんだが…」

 

「…どうやら、その条件をカルカ聖王女陛下は満たしていたらしい…」

 

ウルとアインズが説明するような口調で伝えると、ヤルダバオトは酷く狼狽して見せる。

 

「バカなッ!ウルでも満たすどころかわからなかったその条件を…聖王女が…ッ!!」

 

ヤルダバオトの言葉が紡がれるのを待たずして、カルカはゆっくりと一歩を踏みだす。

 

…意識ははっきりしている。

 

この力も、姿も、まるで長年寄り添ってきたかのような安心感があった。

 

初めて手にしたはずの刀であるのに、まるで自身の身体の一部であるかのような感覚であった。

 

カルカは、それを全身で感じ取りながら、ウルの肩に軽く手をのせる。

 

「カ、カルカ様…ッ!なっ!!」

 

不意に手をのせられたウルは、疑問の声を発するが、それは自身の身体に起こった変化によって掻き消える。

 

…それはウルの、1対2枚だった天使の翼が2対4枚に変えて見せ、頭上に輝く天使の輪が、輝きが一回り大きくなる。

 

ウルは驚愕の表情を浮かべながら自身の身体に起こった変化を捉える。

 

横で視界に捉えていたアインズですらも、骨剥き出しの顔にも関わらず、驚きの表情が抜けない。

 

精神抑制など、すでに振り切っている様子であった。

 

「こ、これは…ッ!一体何が…ッ!!」

 

ウルとアインズの驚きに答えるように、カルカはゆっくりと口を開いた。

 

「…『威装・至高天の熾天使(ディグニティー・セラフ・ジ・エンピリアン』…これがこの力の名です…。熾天使の聖騎士の名を持つものを強化する能力があります…。さらに、熾天使の聖騎士が傍にいることで、この威装・至高天の熾天使の力も強まる…」

 

「威装…至高天の熾天使…」

 

「それが、この力の名か…」

 

カルカの発言を噛みしめるようにして、ウルとアインズが小さく呟く。

 

アインズはその身に感じる。

 

いや、ようやく気付く。

 

その力の強大さに…。

 

「(これは…ウルさんと同格…いや、もしかすると…ッ!)」

 

様々な感情が、思いがアインズの心の中に渦巻くが、一旦それを止める。

 

…こんな心くすぐられるシチュエーションはない…。

 

過去に黒歴史と蓋をした感情が、些少の復活を遂げて見せる。

 

…そして、小さく微笑む。

 

「カルカ聖王女陛下…そしてウル殿ッ!!あなた方二人が前衛だ!!…背中は、このアインズ・ウール・ゴウン魔導王が、その名にかけて守り抜く…。この戦いを…三魔皇を、倒すぞッ!!」

 

ウルは一瞬、アインズの言葉を理解できずに固まって見せる。

 

しかし、それとは対照的に、カルカは一歩、二歩と歩みを進める。

 

そして、ウルとアインズに挟まれるように、且つ少し前に立ち、呟く。

 

「ウル様…魔導王陛下…。これまで、多大なるご高配を賜りました…。ここからは、このローブル聖王国聖王女、カルカ・ベサーレスもご一緒させて頂きます…!!」

 

カルカの3対6枚の強大な天使の翼が一気に広がって見せる。

 

翼を広げただけであるのに、首都ホバンス全域を囲んでいると錯覚するほどの神聖なる光が、そこから発せられる。

 

ウルは、まるで自分がもう一人いるかのような感覚を覚え、思わず息を呑む。

 

大治療を発動させ、左腕の修復して見せる。

 

そしてゆっくりと息を吐き、カルカの横に立つ。

 

「ええ、終わらせましょう…。この…醜い戦いをッ!!」

 

 

 

カルカの姿、そしてその力に、首都ホバンスにいるものは皆一様に感情を爆発させる。

 

聖王女であるカルカが、白銀のウルと、聖なる神と謳われるウルと同格かそれ以上の神々しい姿と力を見せたからである。

 

なぜこのようなことになったのか…。

 

その本当の事実を知るものは、その力を有しているカルカ一人のみである。

 

憶測の域を超えることはないが、聖王国建国以来の、それこそ、白銀のウルが誕生したことすら霞んでしまうような感動と感銘を生み出す。

 

…聖王国に、もう一人の聖なる神が降臨した。

 

それも、聖王女であるカルカに、宿るようにして…。

 

宮殿にいる、兄であるカスポンドや、大臣、重役達はそれはもう天手古舞と言った様子で慌てふためいている。

 

…しかし、一番慌てて、且つ感動や感銘などでは言い表せないような感情を有している者がいた。

 

レメディオスと、ケラルトであった。

 

カルカがその姿を見せ、その力を目に、身体に、魂に受け、その全てが震えを覚えた。

 

「い、一体…何が起こったというの…」

 

「カ、カルカ様が…天使の…熾天使のお姿を…」

 

ケラルトとレメディオスは、まるでおとぎ話を聞く子どものように、嬉々として呟く。

 

「これは恐らく…ッ」

 

ルカは、ウルと魔導王と共に上空へと身を預けるカルカの後姿を捉えながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「ッ!何か知っているのか!ルカ!!」

 

「どうか、どうかご教示いただきたい!」

 

レメディオスとケラルトは、まるですがるようにしてルカを見つめる。

 

「ど、どどど、どうかこの老骨にもッ!!カルカ聖王女陛下に起こった神託をお聞かせ願いたいぃぃッッ!!!!」

 

「おじいちゃんきもい…」

 

「変態とはまさにこのこと…」

 

フールーダは、初めてウルに会った時のように、興奮を表し、ルカの前に膝まづいて見せる。

 

それに対し、ティアとティナが軽蔑の視線を送る。

 

「さすがに失礼よ…。それに、フールーダ様の想いは、私も同じところです…」

 

「そうだな、一体何が起こったというのだ…」

 

「そちらのお2人さんの様子からするに、聖王国の秘密兵器…ってわけでもなさそうだしな…」

 

ラキュース、イビルアイ、ガガーランもルカに答えを求めるようにして口を開く。

 

「…あれは、あの力は、ウルがずっと追い求めていた力…。ウルの持つ至高天刀の本当の力…」

 

「至高天刀っていうと、さっきまでいた至高天の熾天使を召喚してた、あの刀か?」

 

「まさか、至高天の熾天使を顕在させるその力が、本来の力ではないと?」

 

ルカの発言に、ガガーランとイビルアイが反応をしめして見せる。

 

「あの刀には、古来より『秘められた大いなる力』があることが示されていた。…至高天の熾天使の召喚は、それには当たらないとウルは言っていたわ…。この目の前で起こっていることが…その全ての答え…」

 

「…ッ!ずっとウルさんが追い求めていたということは、ウルさんでも発動できなかったということ…それを、カルカ様が発動した、ということですか…?」

 

「…そうゆうことになります…。秘められた大いなる力を発動するための条件すら不明だった…。だからこそウルは色々と試していたけれど、結局はわからなかった…。でも、それをカルカ様が発動為された…」

 

「えっと…つまり…。カルカ様がそのわからない条件、というのを満たしていた…ということか…?」

 

ルカとケラルトの会話に、レメディオスが今迄にない頭の回転を見せる。

 

「ええ…一体何が条件だったのか…それはわからないけれど…。でも今目の前に起こっていることは事実…。カルカ様が、ウルや魔導王と対等に肩を並べて戦うことができているのですから…」

 

ルカの言葉を聞き、皆は再度ゆっくりと上空へと目を向ける。

 

ウルと魔導王、そして三魔皇…神々の戦いと称されていも遜色ないその戦いに、先ほどまで力なく、ただ見守ることしかできなかったカルカが、共に戦って見せている。

 

…ケラルトは、一つの大きな希望を見出す。

 

それはこの戦いが勝利に終わることに対するものではなかった。

 

「…大変なことになったわ…。でも、これならきっと、聖王国は…」

 

ケラルトと小さく呟いた声は、上空で繰り広げられる戦闘音と衝撃によって、悉くかき消された

 

 

 

本来、ウルとアインズの力をもってすれば、例え強化された三魔皇など、2倍、3倍の数であっても余裕で勝利を収められる相手である。

 

それが、ウルと同格の力を有するカルカが参戦したとなれば、結果は火を見るよりも明らかなものであった。

 

カルカとウルが三魔皇に直接攻撃を仕掛けると、三魔皇は防ぐことすらできず、殆どの攻撃をその身へと受ける。

 

正面からの突破は難しいとばかりに後方に周り込めば、少し離れたところから高位魔法をバンバン放ってくるアインズの的となる。

 

実際に戦いが行われたのは、正味3分程度であっただろう…。

 

三魔皇は先ほどの圧倒的優勢な立場から、逆に圧倒的劣勢な状況へ追い込まれる。

 

戦いの終わりを告げる最後の一撃は、三者同時攻撃にて齎された。

 

「止めを刺すぞ!ウル殿ッ!カルカ聖王女陛下ッ!!」

 

「はいッ!!」

 

「了解だ、アインズ殿ッ!!」

 

後衛として後方にいたアインズも、ウルとカルカのすぐ後ろに展開する。

 

アインズの周りには何重にもなる魔方陣が展開される。

 

カルカとウルは、一度目を合わせると、両者ともそれで全てを理解したと言わんばかりに、互いに刀を振りぬいた。

 

「「『神斬・天地開闢』!!」」

 

…雲を、いや、天を割るほどの斬撃が、両者からそれぞれ発せられる。

 

2つの斬撃は、次第に絡み合い、一つの大きな、世界を分断するような斬撃へと姿を変える

 

「『超位魔法・失墜する天空』」

 

アインズの発した魔法は、その斬撃に合わせるようにして上空から三魔皇に襲い掛かる。

 

そして、三魔皇は悟る…。

 

打つ手はない…と。

 

「「「お、おのれーーーーーッッッ!!!!」」」

 

瞬間、世界は光に包まれた…。

 

その光は、首都ホバンスどころか聖王国、いや、周辺国家にまで届いていたに違いない。

 

天を突き抜け、剰え宇宙にまで届いていた可能性すらある。

 

光が消え、静寂が包み込む世界と共に、首都ホバンスの近郊には巨大なクレーターと、底の見えない斬撃の跡が残っていた。

 

 

 

カルカは自身の身に纏う力の強大さを把握できていた。

 

というよりも、刀を握った瞬間から、至高天の熾天使、そして刀から授かった大いなる力を瞬時に全て理解できていたのだ。

 

首都ホバンスは、いや世界は静寂に包まれている。

 

先ほどまで戦っていた、絶望を振りまく三魔皇の姿はさっぱりと消えてなくなっていた。

 

「(勝った…勝ったわ……ッ!)」

 

カルカは右手に掴む至高天刀を再度握りしめる。

 

『ようやったのー…カルカよ…』

 

「…至高天の熾天使様…ッ!」

 

『…誇るがいい、我が至高天の力を振るう条件を満たしていたことを…』

 

「条件を…まさか…私が…ッ!」

 

そう呟いた瞬間、カルカは自身の身体から力が抜けるのを感じ取る。

 

メイド悪魔との戦いですでに限界に近かった疲労が、一気に押し寄せてくる。

 

纏っていた至高天の熾天使の力が一瞬で掻き消え、身体が落下を始める。

 

同時に、意識も失いかける。

 

…しかし、その落下のと意識の喪失は、一瞬で収まりを見せる。

 

何かに支えられるような感覚に、閉じかけていた目が開かれる。

 

その目に映るのは、愛しいお方…ウルであった。

 

そして気付く。ウルにお姫様抱っこをしてもらっていることに。

 

視界にウルの顔と、天使の輪、そして翼が目に入る。

 

一気に顔が赤く染めあがるのを感じる。

 

そしてゆっくりと呟いて見せる。

 

「ウル様…わたくし、ようやくあなたと…肩を並べて…」

 

「カルカ様ッ…素晴らしいお力でした…」

 

ウルは、心の底から、カルカに声を掛ける。

 

「ウル様…いえ、ウルベノム様……うれしい…です…」

 

カルカの言葉にウルは大きく目を見開く。

 

そして、小さく笑いかける。

 

「そうですか…。私の身の上を、聞いたのですか…魔導王陛下…ですか?」

 

「はい…。ヒャッカリョウラン聖教国、第一王子、ウルベノム・アレイン・オードル様…」

 

カルカはゆっくりと、ウルの首に両腕を回して見せる。

 

「わたくしは…あなた様と…共…に…」

 

カルカの言葉が、徐々に力ないものになっていく。

 

「カルカ様…。今は、ゆっくりとお休みください…」

 

ウルの優しく温かい声に安心し、カルカは両の腕から力を抜き、意識を手放した。

 

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