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「…お断りいたします」
…。
「え…?」
想像していた回答とは違った内容に、カルカは思わず大きく目を見開く。
絶望の表情を見せていたケラルトやレメディオスも、『なぜ?』と言った表情を見せる。
「…理由をお聞かせ願えるかな?」
魔導王はとても冷静にその返答への質問を投げかけた。
「それは…あなたが提示したそれは、私の求めるものではないからです」
「つまり、弟君の蘇生も、許嫁であった女性の蘇生も望まないと…?」
魔導王の言葉に、ウルはゆっくりと息を吐いて見せる。
「かつての私であれば、それを望んだかもしれません…。しかし、弟は…許嫁であった…『セツナ』は、国を守るため、死ぬとわかっていて、戦って、そして亡くなったのです…。仮に国が残っていたのであれば蘇生も考えたでしょう…。しかし、もう私の国はない…。それはつまり、私の一存で蘇生されるも同然…。2人の覚悟を、無下にするも同じこと…。…そう考えております…」
「…会いたくはないのかね?」
「…もちろん、会いたいですよ…。ですが、それは私のわがままというモノです」
カルカは開いた口が塞がらなかった…。
仮に自分がウルの立場であったなら、その選択ができるであろうか…。
きっとできない…。自分の気持ちを優先してしまう。
しかし、ウルは違った。
その高潔さに、カルカはこらえていた涙をポロッとこぼす。
「(このお方は…一体どれほどの…ッ!!)」
その涙が床へと落ちる瞬間、魔導王が再び口を開く。
「なるほど、ウル殿の想いはわかった。どうやら、非常に失礼な提案をしてしまったようだ…。許してほしい…」
「お気になさらずに…。提案自体は素晴らしいモノでした…。ただ、今の私には無用というだけの話です」
「…一つ聞かせてほしい。蘇生を望まないにしても、私は貴殿の望むものを全て用意するつもりだ…。もう一度聞くが、その上で断る、ということでよいのだな?」
「…その通りでございます」
ウルは、ゆっくりと、しかしはっきりとした声で口を開く。
「…それはつまり、貴殿の望むものは、魔導国にはないということか?…そして、聖王国にはそれがあると?」
「その通りでございます」
「…参考までに、お聞かせいただいても?もし本当にそうであるのならば、潔く引き下がろう…」
魔導王の言葉に、ウルは小さく笑って見せる。
そんなもの、あるであろうか?
魔導国になくて、聖王国にあるもの…。
話を黙って聞いていたレメディオスからしてみれば、全く思いつかなかった。
しかし、ウルの答えは、その場にいるもの全員を納得させるものであった。
ウルは真剣な目つきでもってして、魔導王に告げた…。
「私が求めるもの…それは…」
暫しの沈黙をもってして、それは明かされた。
「聖王女陛下、カルカ・ベサーレス様です」
執務室の時が止まる。
魔導王ですら、思わず口を広げて見せる。
当の本人であるカルカは、ウルの吐いた言葉を理解し始めると、ゆっくりと顔を赤らめ、そして少しずつ震えて見せる。
「ぇ…え……えぇ……///」
少し遅れて、ケラルトとレメディオスも少し顔を赤らめて驚く。
「ウ、ウルさん…そ、それはつまり…」
「カ、カルカ様と…け、結婚…ということ…か…?」
カルカ達の驚きと言葉を耳にしていたウルであったが、一切表情を変えずに魔導王を見せえている。
「ふっ…ふふ…」
魔導王が、息を漏らしたかのように笑うと…。
「ふっははははははッッッ!!!」
そのまま高らかに笑って見せる。
「なるほど、なるほど…。聖王女陛下を…カルカ様をご所望であったか…。ふふっ、確かにそれは、我が魔導国をもってしても用意できず、それでいて聖王国では用意ができるものであるな…」
「…ご納得いただけましたでしょうか?」
「したとも!!ああ、納得したとも!!ウルベノム・アレイン・オードル殿!!…約束通り、我が魔導国への招待は諦めるとしよう…。そして、カルカ・ベサーレス聖王女陛下殿…」
魔導王は、少しずつ落ち着きを取り戻したようにして、カルカに視線を向ける。
「はい…」
カルカは、未だ驚きと羞恥、そして嬉しさが残る声でそれに答える。
「…よい出会いに巡り合えたな…。私は貴殿がとても羨ましく思う」
「…ッ!ッッ!!」
魔導王の慈悲のある声色に、カルカはまともな返事ができなかった。
しかし、それを気にしていないと言った様子で、魔導王はウルに背中を向けて歩き出す。
そして、扉の前で一度止まって見せると、ゆっくりと振り向く。
「ウル殿、しかしなれど、魔導国はいつでも貴殿を迎える準備がある…。気が向いたらいつでも、魔導国を訪ねてきてくれたまえ…」
「…魔導国に与する気はありませんが…。遊びにお伺いすることは可能ですかな?」
「勿論だとも…。是非とも、魔導国に遊びに来てくれ…」
魔導王はそう言い残し、静かに執務室から退出した。
魔導王が退出した執務室に、静寂が流れる。
ウルは魔導王が執務室の扉から遠ざかったのを感知すると、大きくため息をついてカルカ達に身体を向ける。
「なんとか、切り抜けられ…ッ!」
振り返った瞬間、身体に何かが当たったような感触を感じる。
それは非常に柔らかく、それでいて甘美な匂いを齎すものであった。
視線を下に移すと、金糸でできたような髪の毛が視界に映る。
「ウル様ッッ!」
カルカであった。ウルを抱きしめるカルカの両の手に力が籠る。
「カルカ様…」
「ウル様…先ほどのお言葉…偽りは、ございませんか?」
カルカはウルの胸に顔を埋めたまま、小さく呟く。
「…ええ、もちろんですよ…カルカ様…。お返事をお聞かせ頂けますか?」
ウルはカルカを引きはがして顔を見ようとするが、カルカはかたくなに離れようとはしない。
「…恥ずかしくて、お顔が見れません…このままお返事させて頂いてもよろしいですか?」
「…ええ、構いませんよ…」
カルカは、より一層、ウルを抱きしめる腕の力を強める。
そして、これでもかと熱くなった吐息を漏らしながら、返答して見せる。
「私も…ウル様を所望致します…///…」
カルカの返事を聞き、ウルは大きく笑って見せる。
そして、無理やりに近い形でカルカを引きはがし、優しく抱きしめる。
…唇を重ねるという行為を伴いながら…。
ウルが魔導王の誘いを断り、且つカルカとの正式な婚約の約束をこぎつけた後…。
聖王国ではカルカを筆頭に、終戦後の復興とウルとの結婚の準備が急ぎ足で行われることとなった。
それと同時に、先の戦争におけるウルと魔導王の力、並びにカルカに齎された至高天の熾天使の力が聖王国を始め、周辺国家に知れ渡ることとなった。
各国がそれを把握し、聖王国とコンタクトを取るのにそう時間はかからなかった。
各国が聖王国、延いてはカルカに謁見を申し込むに至るが、それは今聖王国が進めている一大イベントをもってして果たされることとなる。
さて、聖王国中が天手古舞となっている中、ウルも事後処理と言わんばかりに慌ただしく動いていた。
一つはカリンシャの屋敷の住民に対してである。
カルカや聖王国が急ぎ足で婚姻の準備を進めているのはウルも知るところであり、それを知らせるに至る。
皆一様にウルの無事を涙ながらに喜んでいたが、それと同時にカルカとの婚姻に驚きの声を上げることになる。
そして、一番重要なことをとある人物に伝える。
ツアレであった。
カルカとの婚姻が決まったことで、結果としてツアレを正妻にすることは不可能になったわけだが、ツアレはそのことに関してはあまり驚いた様子はなかった。
ウルが出した答えは、ツアレさえよければ、子どもをもうけることも、側室、妾として歩むことも厭わない、というモノであった。
もちろん、カルカにも承諾は得ている。
少し渋ってはいたが、正妻が自分であることと、ウルの価値を考えれば妥当だと、二つ返事で承諾してくれた。
ツアレは一切の迷いを見せず、それを受けることとなる。
カリンシャの屋敷での用事を済ませた後、なんとウルは聖王国を一瞬離れることとなる。
その発端は、竜王国から届いた書状、救援要請であった。
竜王国はたびたびビーストマンの襲撃を受けている。
それは事前にカルカもウルも知りえていたことであったが、今現在の侵攻が尋常ではないらしく、法国の支援のみでは立ち行かなくなっているため、ウルの派遣を望んでいたのだ。
ウルはそれをカルカから聞き、即座に救援へ向かうことを決めた。
カルカもウルと同等の力を得たことで、一緒に行くと意気込んでいたが、カストディオ姉妹や大臣達に強く反対され、とん挫することになる。
ウルとの婚姻の準備もあったため、カルカも渋々受け入れることになったが、三魔皇のような化け物がいないという理由もあった。
ウルが竜王国について、何と5日足らずでビーストマンに大打撃を与えることになる。
ウルが一人で屠ったビーストマン、なんと20万…。
ビーストマンからすればとんでもない悪夢であったが、人間を喰らうビーストマンに対し、人間であるウルがそれを行ったというのは当たり前に見えたであろう。
しかし、ウルはビーストマンに対し、交渉の場を設けた。
アインズやナザリック勢に散々虐殺や侵略的行為を制限、咎めていただけに、自身がそれをないがしろにするわけにはいかなかった。
些少の平和的解決を望んでいたウルであったが、結果を見ればそれがとん挫したのは言うまでもないだろう。
ビーストマンは思いがけぬ大打撃を受け、東方南方へと逃げ惑うことになり、完全に統率を失うこととなった。
少なくとも5年は、まともに竜王国に対する侵略行為は行えないであろう。
ビーストマン殲滅を終えてすぐ、王国の首都に滞在している際に、一人の老婆と出会うことになる。
その老婆はリグリットと名乗り、ウルはその老婆と即座に親しくなるに至る。
理由は明白で、ユグドラシルやプレイヤーについて知っていたからである。
十三英雄の一人であったという話を聞き、詳しく話をしている中で、リグリットからも高評価を受けたウルは、評議国へ招待されることとなるが、すぐに出向くことはしなかった。
しかし、収穫はあった。
なんでも、リグリッドはいわば使者で、本当にウルに接触を求めているのは、白金の竜王というものであるらしい。
ウン百年はくだらない時を生きているらしく、六大神やそれこそ八欲王との関りもあったとのこと。
ウルはツアーとの邂逅を約束し、一旦は聖王国に戻ることとなった。
そして、先の大戦から数か月、ウルが転移してから約2年が経った頃…。
ウルは、全身を白いタキシードに身を包んで、聖王国の首都ホバンスにその身を置いていた。
なぜそのような服装をしているのか、その説明は不要であろう。
玉座の間の扉が、ゆっくりと開かれる。
玉座の間は、白と金を基調とした純潔な装飾が見て取れた。
一歩足を踏み入れる。
赤を基調とし、要所に銀色の装飾が施された長い絨毯が玉座の間まで延びている。
入ってすぐ、左右には聖騎士団や神官団、聖堂勢力の役職者や、聖王国の有名貴族たちが壁を作るように立ち並んでいた。
ウルは、ゆっくりと、しかし凛々しい姿を保って歩みを進める。
暫く進み、目的の玉座まで半分と言ったところで、左右に立ち並ぶ人物に変化が訪れる。
各国の要人の姿であった。
王国、帝国、魔導国、評議国、竜王国、そして法国と思しき面々であった。
王国からはランポッサ3世とザナック第二王子に加え、ラナー王女の姿もあった。
また、蒼の薔薇の姿も目に入る。
帝国からは、ジルクニフ皇帝陛下とフールーダ、そして四騎士のニンブルが出席している。
魔導国からは魔導王とアルベドが参列している。
どちらも異形の身を隠すことなく、同様に出席している。
評議国からはリグリッド、竜王国からは女王と宰相の2人。
法国からは最高神官長の内3名が出席している。
法国からはなぜか咽び泣くような声が聞こえてくるが、ウルは気にしたら負けと言わんばかりに歩みを進める。
…最前列横まで進むと、聖王国の王族と、聖騎士団長、神官団長を始め、大臣の姿に加え、ルカの姿が目に入る。
そして玉座の前で歩みを止め、少し視線を上へと向ける。
そこには、白いウェディングドレスに、白いベールに包まれた美しい女性が立っている。
ベールに包まれてなお、その美しい顔立ちと金糸のような髪は容易に見て取れる。
というよりも、白いベールがよりその美しさを醸し出しているようにも感じられた。
玉座との段差を一つずつ、ゆっくりと超え、美しい金髪の女性の横へと歩み寄る。
ウルが立ち止まったことで、その女性はまるで女神のような笑みを浮かべて見せ、右手をそっと差し出す。
ウルはその右手を両の手で掬うようにして優しく包みこむ。
そして、左手をもって手を繋ぎ直し、聖堂大臣が立つ、玉座のある方へと身体の向きを変える。
そんな2人の姿を見た聖堂大臣が、些少の微笑みを浮かべると、ゆっくりと丁寧な口調で、誓いの言葉を述べ始めた…。
~END?~