【完結】カルカとモモンガに救済を!   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第8話 邂逅

モモンガさんが転移して来たことを知ったウルは、位置情報を頼りに『速飛行(ファスト・フライ)』を用いて目的地へと急ぐ。

 

速度にして、約300㎞/h。

 

新幹線を思わせる速度で飛行しながら、モモンガから齎された簡単な情報を思い出す。

 

・ギルド拠点ごと転移してきたこと。

 

・転移してきたのは1時間程度前であること。

 

・現状確認している中では全てのNPCが意思を持って行動し始めたこと。

 

・ギルドメンバーは自分のみであること。

 

であった。

 

なぜ自分は身一つで、モモンガさんは拠点ごと移動してきたのか不明であったが、それを含めて詳しい話し合いをするため、ナザリックで落ち合うことにことにしたのだ。

 

そうして暫く飛行していると、地図や文献でしか知りえなかったが、リ・エスディーゼ王国とバハルス帝国の国境にほど近い『トブの大森林』近くに到着する。

 

モモンガとの物理的距離も近づいている。

 

そうして、特徴的な、この平野部にしてはあまりに不釣り合いな神殿のようなものを目にする。

 

間違いない。

 

ナザリック地下大墳墓の地表部である。

 

それを確認したウルは、墳墓の入り口、正面入り口近くにゆっくりと着地する。

 

前方を捉えるようにして視線を向けると、何やらメイド服を着た女性2人が目に入る。しかし普通のメイド服ではなく、どこか鎧のような様相を見せる、特徴的ものであった。

 

ゆっくりと顔を確認する。

 

「お待ちしておりました」

 

「ウルベノム・アレイン・オードル様」

 

…見覚えのある顔であった。

 

1人は黒髪で、一つに縛ってポニーテイル。

 

1人は金髪で、縛ってはいないが凄まじいカールを描いている。

 

そして共通することは、2人とも女性であり、洗練された美人であるという点。

 

自分は知っている。ゆっくりと目の前の呟く。

 

「…ナーベラル・ガンマに、ソリュシャン・イプシロンか…」

 

ウルの発した言葉に、2人は大きく目を見開く。

 

「私達如きの名を…」「ご存じであるとは…」

 

「当たり前だ…弐式炎雷とヘロヘロとは苦楽を共にした仲だからな…2人のことは散々聞かされたもんだ…」

 

ウルの言葉に、2人は酷く感銘を受けている様子であった。

 

だが、暫くして2人は平常心を取り戻した様子で、ウルをじっと見つめる。

 

「…本日は、ウルベノム様のご案内を仰せつかっております」

 

「至高の41人が一人、モモンガ様がお待ちです」

 

ウルは一瞬、至高の41人?と疑問を抱いたが、今はそんなことを考えている場合ではないと、思考を一時中断する。

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

返答を貰ったところで、ナーベラルとソリュシャンは、事前に用意していたであろうゲートへと、ウルを案内する。

 

ウルは一呼吸置いた後、紫色に渦巻くゲートに向かって、その身を委ねた。

 

ゲートを潜り抜けたウルは、もう見飽きるぐらいに見た第十階層玉座の間の扉に降り立った。

 

誰が何をしたわけでもないが、ゆっくりとその扉が開かれる。

 

ウルは小さく目を見開く。

 

やはり同様に見慣れた、ナザリックの玉座の間であるが、そこには不思議と新鮮味があった。

 

玉座の間の奥を見ると、遠目ではあるが、見慣れた不死者の王とNPCと思われる配下が見て取れた。

 

ゆっくりと歩みを進める。

 

ユグドラシルが衰退し、ログインするプレイヤーが減っていく最中、自身と同じくほぼ毎日ログインしていた人物。

 

次第に遠目で捉えていた不死者の王の姿が大きく、鮮明なものになっていく。

 

玉座がある台座…そこから適切な距離をもってして、ウルは歩みを止める。

 

そして再び不死者の王をその瞳に捉える。

 

少し目が潤むのを感じる。

 

不死者の王も、値踏みするように自身を見つめているようであった。

 

「ウルさん…」

 

モモンガはゆっくりと玉座から立ち上がると、数段しかない階段を一つひとつ降りる。

 

「モモンガさん…」

 

ウルは、そんな不死者の王、モモンガが目の前に来るまでじっと待ち続ける。

 

「…再び…会えてよかった…」

 

「こちらこそ…会えてよかった…」

 

2人は互いに感動に身を震わせながら、長い握手を交わして見せた。

 

 

「あー、やっぱり異世界なんですね…ここ」

 

「ああ、それは間違いないと思うぜ…」

 

モモンガとウルは、熱い握手を交わした後、その場にいる階層守護者とプレアデス達から涙混じりの祝福を受けた後、2人で話がしたいと伝え、今は第九階層にあるモモンガの私室にて会話を進めている。

 

ウルは、モモンガとこの世界についてすり合わせを行うようにして会話を進める。

 

といっても、モモンガはこの異世界に来てからまだ半日も経っておらず、どちらかというとウルが一方的にこの世界について伝え、モモンガがそれを聞くという形であった。

 

「じゃあ、ウルさんは今はローブル聖王国っていう場所にいるんですね」

 

「そそ、冒険者してるよ!」

 

「なっ!ずるい!!いいなー!!」

 

「へへ、いいだろー!!」

 

ユグドラシル最終日に、ゆっくりと話せなかった分、この上なく話が盛り上がる。

 

「それにしても、なんでウルさんは1人で転移してきたんですか?」

 

「知らんがな…俺が聞きたいくらいだよ」

 

「ああ、そりゃそうですよね…」

 

「…ていうかさ、NPCの忠誠心やばくない?あれ…至高の41人とか言ってたし…あれ、モモンガさんがいわせてんの?」

 

「そんなわけないじゃないですか!!勝手に崇めたてまつられてるんですよ!!!」

 

「いやー、あれを見て、NPCの設定を盛り込んだのは正解でしたよー」

 

「?どういうことですか??」

 

「あー…この世界に来て一人はさみしかったんで、従者の宝玉を使いました」

 

「えっ!?ワールドアイテムの!?二十ではないけど、あの使い切りの!?」

 

「そうです、そうです。いや、もう使いどころないかなと…それにうちのギルドが持っているワールドアイテムの中では一番効果が薄いものなので…」

 

「効果が薄いって…ポイント消費せずに100レベルポイント追加されるんですよ!?破格の性能じゃないですか!?」

 

「まあ、ユグドラシル時代はね?でも今はもうそんな別にいいかなーって。俺一人だし、まだ二個あるし…」

 

「ま、まあ、確かにそうかもしれませんけど…」

 

こうして話は進んでいく。

 

他にもこの世界にある国やら、地形、宗教、情勢などなど、この一か月でウルが知りえたあらゆる情報をモモンガに伝える。

 

そして最終的に話は、この世界で何を為すかということになり、2人で議論を進めていくのであった。

 

…それが、ナザリックの方針として根強く浸透していくのは、もう少し先のお話…。

 

 

 

モモンガとウルは、会議に似た擦り合わせを終えると、モモンガの『外の世界を見てみたい』という提案に付き合うことになった。

 

モモンガさんが持つ『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』の指輪を使い、地表部へと転移する。

 

時刻は正午を少し回った頃で、ウルとモモンガはここで初めて6時間以上も話し合っていたことに気付いた。

 

地表部へ繋がる階段をあがりながら、モモンガは一つの疑問を口にする。

 

「そういえば、ウルさんは人間種なのに、食べたり寝たりしなくて平気なんですか?」

 

「いんや、ダメですね。ただ、今日みたいに不測の事態に備えて、課金アイテムで睡眠不要の指輪と飲食不要の指輪に上書きしました…。あ、あと睡眠不要には疲労無効のおまけつきです」

 

「なるほど…道理で全く疲れが見えないわけですね…」

 

「まあ、実際には食べれる時は食べて、寝てるときは寝てるのでつけていない方が多いですね…。人間としての尊厳を失いそうで…」

 

「あー、分かります。私はアンデッドなので、精神抑制とか入っちゃって…多分食事もできないだろうし…」

 

「うっわ…。なんか人間の心とかなくしそうですね…それ…。あれ、そういえばモモンガさん人化の指輪とか持ってないんですか?」

 

「それがもってないんですよ…、買っておけばよかったなー…」

 

「それなら一個上げますよ、私4個くらい持ってるので」

 

「えっ!!いいんですか!!…あ、でも悪いですよ…」

 

「なにいってんすか!俺とモモンガさんの仲じゃないですか!!」

 

ウルはモモンガの肩を軽く押すようにして叩き、アイテムボックスから取り出した人化の指輪を押し付けるようにして渡す。

 

「…でしたらありがたく頂きます…。お礼はどこかで…」

 

「お礼なんていいですよ…。まあ、どうしてもというなら、ナザリックのご飯、食べさせてくださいよ、実は気になっていたんです」

 

「おーいいですね。それでしたら後ほど食堂にでも行きましょう!」

 

そんな風にして会話をしていると、夢中になっていたようで階段などとうに上り終え、地表部のど真ん中にまで到達していた。

 

そして二人はようやく目の前にデミウルゴスがいることに気付いた。

 

少しずつ近づいてくる2人に気付いていたデミウルゴスであったが、2人の会話を邪魔すまいと待機していたのだ。

 

執事のような綺麗な会釈をして見せる。

 

「…デミウルゴス。ここで一体何をしているのだ?」

 

「はい、モモンガ様。昨日マーレが行ったナザリックの隠ぺい工作の状況把握をしておりました」

 

モモンガは、『そういえばお願いしてたわ…』と思いだしながら納得する。

 

「そうか。ご苦労」

 

「もったいなきお言葉です!…それにしても、モモンガ様は一体何を…ウルベノム様もご一緒のようですが…」

 

「うむ…。ちょっと外を見てみようと思ってな…」

 

「大変失礼ですが、供も連れずに…でございますか?」

 

デミウルゴスから、ほんの少しだけ不穏な雰囲気が流れる。

 

モモンガが少し戸惑っているのを見て、ウルベノムが一つ提案をする。

 

「そしたら、デミウルゴスも来るか?いいですかね、モモンガさん」

 

「ん、そ、そうだな。デミウルゴスよ、我らと共に来ることを許そう」

 

「多大なるご配慮、ありがとうございます。モモンガ様、ウルベノム様」

 

その後、モモンガとウル、そしてデミウルゴスは、飛行の魔法を用いてナザリック地下大墳墓の上空へと滞空する。

 

ウルベノムが転移後に感動をしたのと同時に、モモンガもまた、リアルでは感じられない素晴らしい豊かな自然に身を震わせていた。

 

「素晴らしい…なんて素晴らしい景色なんだ…!」

 

「ええ、わかります。私も、最初に感じたものは同じでした…」

 

どこまでも澄み渡る青空、煌くような日の光。そして穏やかな風と心地の良い気温。極めつけは、雄大な自然…。

 

「これは…一つの財宝だな…」

 

「ああ、間違いなくな…」

 

2人はそんな自然を堪能して見せる。

 

先ほどとは姿かたちを変えた、カエルの頭に翼が生えたデミウルゴスが、口を開いた。

 

「御所望とあれば、ナザリック全軍を以てしてこの財宝を手に入れて参りましょう…」

 

「ふっ!この世界にどのような存在がいるのか不明な段階で…か?」

 

「…それに、これは独占していいものじゃない…。そうは思わないか?モモンガさん…」

 

ウルの言葉に、モモンガはリアルの世界を思い出しつつ、ウルの気持ちを理解する。

 

また、先ほどの擦り合わせで決定した方針とも合致し、それを決断するに至る。

 

「そうですね…。この世界の皆で、共有したいものだな…。世界平和…ってのも悪くないかもしれんな…」

 

横で聞いていたデミウルゴスは、これでもかというくらいの衝撃を受けていた。

 

ウルはそれを横目でちらっと確認し、追い打ちをかける。

 

「ええ、弟に…ウルベルトに、友に誇れる世界にしたいな…。悪を憎み、悪を倒すために悪となった…そんなあいつのためにも…」

 

ウルは幼き頃のことを思い出す。両親が死んだ日のことである。あれから全てが変わってしまった。

 

兄弟互いに闇を抱えてしまった、あの時のことを。

 

それを思い出しながら、あからさまに中二病を発動させ、含みある言い方をしてみせる。

 

「悪を憎み、悪を倒すために悪となった…とは、い、一体どういう…」

 

デミウルゴスは酷く困惑していた。

 

ウルは、『あー、やっぱりなー…』などと思いながら、デミウルゴスに笑って見せる。

 

「機会があったら教えてやるよ…。それまでは、自分で考えてみな…あいつの、ウルベルトの悪…その本当の意味を…きっとお前になら理解できるさ」

 

「おお、なんと…。このデミウルゴス、必ずやウルベノム様のご期待にお応えできるように精進させて頂きます!!」

 

デミウルゴスは、本来であれば忠義を尽くす必要のないウルに深々と頭を下げる。

 

それを見たウルとモモンガは、『計画通り』みたいな顔をして見せるが、その顔にはどこかいたずら小僧に似た笑みが浮かんでいた。

 

 

 

ウルは、モモンガとデミウルゴスと共に青空を拝んだ後、再び玉座の間に向かった。

 

目的は、モモンガと共に話し合ったこの世界の情勢の説明と、ウルの現在の立場、そして今後のナザリックの方針を階層守護者に伝えることであった。

 

階層守護者に加えて、セバスの姿もあった。

 

伝えるべきことをすべて伝えたモモンガは、ウルと共に転移でその場を後にする。

 

支配者の姿が見えなくなったことで、守護者たちは体勢を戻し、立ち上がる。

 

「まさかあのようにお考えとは…」

 

「ええ、私はお二方のお考えに気付けずに、無能なご提案をした自分を恥じております」

 

「…?それは一体どういうことかしら?」

 

アルベドは、自身が呟いた言葉に対し、デミウルゴスから予想外の反応が返ってきたことに純粋な疑問をもった。

 

デミウルゴスは、先ほどモモンガとウルベノムと共に、ナザリック上空で話をしたことを打ち明けた。

 

支配者であるモモンガと、その友人であるウルベノムと共に行動し、剰え会話もしたとなれば、他の守護者たちが羨ましがるのも無理はない。

 

それどころか、アルベドに至っては酷く嫉妬している様子が伺えた。

 

「アインズ様は、この世界を見てこう仰られておりました…。『この世界で平和を実現するのも悪くない』と…。そして、続けてウルベノム様が『友に誇れる世界にしたい』とね」

 

それを聞いた階層守護者は、何事かと頭を悩ませる。

 

そんな中で、アルベドだけは理解したように口を開いた。

 

「なるほど…そのようなお考えが…」

 

アルベドの発言に、他の守護者たちは焦りを見せる。

 

「ど、どういうことでありんすか?」

 

「是非トモ教エテモライタイ…」

 

シャルティアとコキュートスは、すがる様にアルベドに言い寄る。

 

「一言でいえば…そうね。『平和的な世界征服』…と言ったところかしら?」

 

「平和的な…つまり、戦って征服はしないってこと?」

 

「そ、それって、無理やり征服することと何が違うのかな…?」

 

「結果は変わりんせんでありんすよね?」

 

アルベドの言葉を正しく理解できず、アウラ、マーレ、シャルティアは酷く困惑して見せる。

 

「…セバス、あなたにならわかるのではないかしら?」

 

アルベドは、このナザリックでも数少ない善人者に問うてみる。

 

「大方は理解ができていると考えております…。そうですね…。アインズ様のお考えの一端を理解する鍵となるのは、ウルベノム様の『友に誇れる世界』であると思われます」

 

セバスの言葉に、デミウルゴスはニヤッと笑みを浮かべる。

 

「流石だね…セバス」

 

「デミウルゴス様…。ありがとうございます」

 

セバスは、形式的に頭を下げる。

 

「…スマナイ…私デハ理解ガ及バナイヨウダ…」

 

「そうだね…。であれば一つずつかみ砕いて話しをさせてもらうよ…」

 

デミウルゴスは、一呼吸おいてから仰々しく口を開く。

 

「まず、ウルベノム様の言う『友』…それは、ウルベノム様の所属されていたギルドのお仲間たちであることはまず間違いないだろう。だが、決してそれだけではない。その友の中には、アインズ様を始め、至高の41人の御方々も含まれている…。ここまではいいかね?」

 

デミウルゴスは、理解していないであろう守護者たちに目配りをし、異論がないことを確認すると、続けて口を開く。

 

「そして、『誇れる世界』これがとても重要になってくる。さて、ここで質問なのだが、『力で支配した結果、荒廃してしまった世界』と、『平和的に支配した結果、活気に満ち溢れた世界』…今お隠れになっていらっしゃる御方々がお戻りになられた際、一体どちらを望むと思うかね…?」

 

デミウルゴスの言葉に、その場にいる全てのモノが理解したという様子で目を見開いた。

 

「つまり、アインズ様の目指す『世界平和』と、ウルベノム様が目指す『友に誇れる世界』とは、可能な限り外の世界と友好的な関係を築くことに留まらず、将来的には向こうから自発的に従属を望むようにさせる、という意味なのだと私は理解しているよ」

 

「マ、マサカソコマデノ事ヲオ考エダッタトハ…」

 

「…ええ、さすがはアインズ様…。至高の41人をおまとめになられていたその知略には、驚きの連続です…。そして、そのアインズ様のお言葉を、我々でも理解できるようにかみ砕いてくださるウルベノム様にも、敬意を表せざるを得ません」

 

デミウルゴスは、酷く感動したようにして天を仰ぐ。

 

「そうね…。我々にも理解できるようなお言葉でお伝えすると言うことは、つまり、ウルベノム様にはアインズ様のお考えがお分かりになっているという証拠ですから…」

 

「や、やっぱりすごいね…お姉ちゃん」

 

「ほんと…アインズ様達、至高の御方々が友だとお認めになられているのがわかった気がする…」

 

「強さだけでなく、アインズ様と同等の頭脳をお持ちということでありんすかえ…」

 

マーレ、アウラ、シャルティアが感銘を受けたように口を開いた。

 

その後、暫く沈黙が流れた後、アルベドが締めるようにして口を開いた。

 

「皆、理解したようね…。今後、ナザリックにおける我々の使命は、できる限り外部との友好的な関係性を構築し、平和的な世界征服を行うことで、この世界をアインズ様とウルベノム様にお渡しすることにあるわ!」

 

 

さて、以上のことから、アインズとウルベノムの呟きから、階層守護者引いてはそれを聞いたナザリックの全ての僕の中で、盛大な勘違いが生まれてしまう。

 

不幸中の幸いだったのが、世界征服とはいえ、『友好的且つ平和的』という点であったことだが、『あんまり敵とか作らないでいきたいね~』というくらいにしか考えていなかった2人からしてみれば、酷い誤解である。

 

そんな2人はそんなこととは露知らず、食堂でパンパンになった腹を擦っていたのであった。

 

『至高の御身やそのご友人が食事をとられるような場所ではございません!』という一般メイドの言葉を跳ね除け、リアルでは決して口にすることができなかった美食を片っ端から口に運び、食事の楽しさを髄まで味わいつくしていた…!

 

 

モモンガが遠隔視の鏡と悪戦苦闘している頃…。

 

ウルは未だパンパンになっている腹を擦りながら、第九階層の廊下を歩いていた。

 

前方には、黒髪を後ろで一つに束ねたメイドが案内するように歩いている。

 

プレアデスが一人、ナーベラル・ガンマである。

 

ウルは、金魚の糞の如くついていく。

 

半ば強制的に、護衛兼案内役として、ついているのだ。

 

ナーベラルは、スイートルームのとある一室の前で立ち止まると、ゆっくりと扉を開ける。

 

「どうぞ、お入りくださいませ。ウルベノム様」

 

「ありがとな、それと、俺のことはウルでいい」

 

「お、お礼など…至高の御方々の友人である、ウルベ…ウル様に忠義を尽くすは当然のことでございます」

 

聖王国ではウル、ここではウルベノムだと、ややこしいと思ったウルは、モモンガにお願いをして僕全員に自身の呼び名変更を通達したのだ。

 

逆にモモンガは、名をアインズと改めたという。

 

これはウルの提案であったが、もしこの異世界に他のアインズ・ウール・ゴウンのメンバーが来ていた際、目印にもなり、且つ一種の暗号になる。

 

本物であれば、アインズさんではなく、モモンガさんと呼ぶはずであるからだ。

 

ウルは、狼狽するナーベラルをじっと見つめる。

 

非常に美人である。

 

うーむ、などと呻きながら顎に手をやり、さらに見つめる。

 

ナーベラルは、そんなウルの目線に耐えられないとばかりに顔を赤く染める。

 

「ウ、ウル様??」

 

「ああ、すまん。いやー、なんか雰囲気が弐式に似てたからさ…。ついな」

 

ウルは半分嘘をついて見せる。

 

「わ、わたくしなぞが…弐式炎雷様に…///」

 

「まあ、創造者に似るってところはあると思うぞ」

 

ウルはナーベラルが開けてくれた扉を通じ、部屋に入りながら背中で語り掛ける。

 

そして、固まる。

 

なんと、部屋の中にはもう一人のメイドがいたのだ。

 

ナザリックでいうところの一般メイドというやつである。

 

「(もう一人ついてんのかよっ!しかも部屋の中に!!)」

 

ウルは心の中で叫び散らかした。

 

どうやら、このナザリック地下大墳墓にはプライベートというものがないらしい。

 

自分でもこんななのだ。アインズさんは…と考え、心の中で南無阿弥陀仏と唱える。

 

扉がパタンと閉まる音が聞こえる。特に意味もなく振り返る。

 

…ナーベラルが部屋に入っていた。

 

「(いやお前も入るんかいっ!)」

 

てっきり扉の前で待機すると思っていたウルにとってはびっくりである。

 

そして、部屋で待機してくれていた一般メイドに目線を向ける。

 

「ウル様。本日ウル様の身の回りのお世話を…」

 

「ちょっとまった!!」

 

ウルは一般メイドの言葉を遮るようにして掌を向ける。

 

何やら考え込んでいる様子である。

 

「も、申し訳ございません!私の気付かぬところで何か失礼なことを…」

 

「いやいや、違うから…えっと…確か…。そうだ!デクリメントだっ!!」

 

もう一度メイドの言葉を遮り、ようやく名前を思い出して叫ぶ。

 

「なっ…なっ…、わ、私如きの名を…」

 

デクリメントは言葉をつっかえながら、両手で口元を押さえている。

 

「へロへロさんが作った一般メイドだろ?そりゃ知ってるよ…一瞬わす…ってなんで泣いてんだよっ!?」

 

デクリメントは、ひっくひっくと涙をこらえる様にして嗚咽を漏らす。

 

衝撃的な出来事に、ウルはナーベラルに助けを求めようと視線を向ける。

 

あらまビックリ仰天ニュース。

 

ナーベラルもなぜか目尻に涙を浮かべていた。

 

「え…なに、どうしたの?」

 

「も、もうじわげあじまぜん…うでじざのあばり…」

 

「…至高の御方々のご友人に対し、大変なご無礼…お許しください」

 

「(…名前呼んだだけなんだけどなー)」

 

ウルはどこか引きつった表情を見せる。

 

「あー、わかったわかった…でさ、2人ともずっとここにいるの?」

 

「…ウル様がお部屋を出られるのであれば、ついてゆきます」

 

「あ、そうですか…」

 

どうやら一人になるのは難しい様子であった。

 

ウルは諦めた様子で、ベッドに身を預ける。

 

一息ついて、デクリメントを見る。

 

どうやら先ほどよりは落ち着いたらしい。

 

沈黙が流れる。

 

「あー…なんか、暇だし、話しでもする?」

 

「ウル様がそう仰られるのであれば…」

 

「私達如きでお話相手になるのであれば…」

 

ウルはニッと笑って見せる。

 

「そりゃお前…格好の話題があるだろ…」

 

ウルの表情に、2人は何かに気付いた様子で目を見開き、身を乗り出す。

 

「も、もしや…」「そ、それは…」

 

「弐式とヘロヘロさんの話、聞きたくない?」

 

「「是非ともお願い致しますッ!!!」」

 

ナーベラルとデクリメントは、嬉々としてウルの話に耳を傾けた。

 

 

 

さて、モモンガさんがカルネ村を謎の騎士から救い、ガゼフなる人物と対面を果たしている頃、ナーベラルとデクリメントは、これまでにない喜びを感じていた。

 

もちろん、その喜びは、自身の創造主であられる御方のご友人、しかも非常に親しい仲であるウル様の御傍でお仕えできていることに他ならない。

 

しかし、それに輪をかけるようにして、まるで溢れ出るかのような喜びを感じているのは、ご友人であるウル様本人から、創造主のお話をお聞きできるからである。

 

曰く、

 

『弐式とははまだこんなちっちゃいころから一緒だった』

 

『ヘロヘロさんとは所属は違ったが仕事仲間で、仕事の処理と決断力の速さを尊敬していた』

 

『弐式とは、よく一緒に風呂に入ったり寝たりしていた』

 

『ヘロヘロさんは結構お酒が好きで、酔っぱらうとよく歌を歌っていた』

 

などなど、ナーベラルとデクリメントからすると、自身の知られざる御方のお姿とお話に、感動と通り越すような表情を見せた。

 

そして、最後とばかりに行った言葉で、またも2人は泣かせてしまうことになった。

 

『…弐式はナーベラルを、ヘロヘロはソリュシャンと一般メイドを愛しているって話をよく聞かされたもんだ』

 

…と。

 

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