俺ァ爆豪のかっちゃん(大嘘)だ!   作:ヒムロレムス

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 投稿が遅れてすいません。インフルでした。皆さんも気を付けて下さい。
 たくさんの感想にお気に入り登録、高評価ありがとうございます。これからも頑張ります。


戦え爆豪勝己

 先生率いる即席部隊は簡単な自己紹介を終え、目的地であるシャーレの建物へと向かっている。

 シャーレまでは残り約1km。道中では妨害なども特になく、極めて順調に進んでいた。

 

 何事もなくこのまま進んで欲しい、そう先生が考えた時だった。

 

「……テメェら、隠れろ!」

 

 爆破で先行していた勝己は進路上に立ち塞がるように立つ不良生徒たちの姿を確認して叫んだ。

 咄嗟に物陰に隠れた先生たちも、遅れてその姿を捉える。

 

「なるほど……ここに来るまでの道中、特に何も起きなかったのはここで待ち伏せをしていたからですか」

「結構いるわね……制圧には時間がかかるかも」

「少し遠回りになりますが、迂回して戦闘を避けるべきではないでしょうか?幸い、こっちの存在にはまだ気づいていない様子ですし」

 

 スズミの提案を聞き、先生は頷く。

 

「そうだね、戦いはなるべく避けていこう。ありがとう、カツキ。おかげで戦闘を回避……カツキ?」

 

 てっきり自信満々な言葉が返ってくると思っていたが、返ってきたのは沈黙。

 不思議に思った先生が勝己を見ると、彼は不良生徒たちを睨みつけていた。

 

(なんだ、アイツ……?)

 

 勝己が睨みつけていたのは不良生徒たちではない。不良生徒たちを率いるように先頭に立つ、銃を肩に乗せて持つ、白い狐の面を被った和装の少女だ。

 

 佇まいからして、明らかに他の不良生徒とは違う。

 警戒しながら観察していると……。

 

「……うふふ」

「っ……!」

 

 狐面の少女と目が合った。

 それだけで勝己は悟る。彼女は既に勝己たちを認識していたのだと。

 

「クソが!」

「えっちょっ、ま、待ちなさい!」

 

 瞬間、ユウカの静止を振り切って飛び出す。

 爆破で加速し、狐面の少女の元へと一直線に向かい。

 

「くたばれ‼︎」

 

 勢いそのままに爆破。

 爆発と、それによって発生した爆風で何人もの不良生徒が吹き飛ばされる。

 

「チッ!」

「いきなり飛び出してきたと思えば……うふふ、乱暴な殿方ですわね」

 

 しかし、肝心の少女は後方に回避したことで無傷。

 掌から小規模の爆破を起こしつつ少女を睨みつけながら、どう攻めるべきか考えていると。

 

「あなたね……!いくら好戦的だからって、気づいてない相手に仕掛ける必要ないでしょ!」

 

 飛び出した勝己に追いついてきたユウカに苦言を呈された。

 ユウカたちの後ろには、先生を護衛しつつこちらに近づいてくるハスミたちの姿もある。

 

「うっせえ白ジャケット!あのキツネ野郎に気づかれとったわクソが!」

「キツネ野郎……?」

 

 勝己に顎で指され、ユウカたちの視線が狐面の少女へと向けられる。

 

「あら、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと」

「狐坂ワカモ……!」

 

 狐面の少女──ワカモの姿を見たハスミが呟いた。

 それを聞いた先生が尋ねる。

 

「ハスミ、あの子を知ってるの?」

「狐坂ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になり、矯正局を脱獄した凶悪な生徒です。こうなった以上、戦闘は避けられません。先生、指揮を!」

「無論だよ、ハスミ。皆んな、私の指揮に……」

 

 先生が声を上げたその瞬間。

 

「くたばれキツネ野郎!」

 

 勝己はそれを無視して飛び上がり、ワカモに接近。そして、爆破。

 ワカモはそれを簡単に回避。周辺に爆煙が舞う。

 

「戦っとる場合かアホ!テメェら急いでンだろうが!」

「ですが、ワカモ相手に逃げるのは……」

「気づけや!俺がキツネ野郎を死なねェ程度にぶっ殺すって言ってんだ!」

「……なるほど、素直じゃないですね。先生、ご指示を!」

 

 暗に時間を稼ぐと言っている勝己の意図を理解し、ハスミは先生に指示を問う。

 先生は少し悩んだ様子を見せ……そして、勝己に告げた。

 

「勝己、ここは任せるよ!」

「指図すんじゃねェ!指示したのは俺だ!」

「分かった!勝己の指示に従うよ!」

 

 先生たちはワカモの相手を勝己に任せ、爆煙に紛れて移動を開始した。

 

「ふふっ、逃しませんわ!」

 

 爆煙から出ていく先生たちを確認したワカモは彼女たちを逃すまいと追撃しようとし。

 

「どこ見てんだキツネ野郎!」

 

 ワカモに接近していた勝己に妨害された。

 意識が先生たちに向いていた為に回避が遅れたワカモは勝己の爆破をモロに受け、吹き飛ばされる。

 

 体勢を立て直すワカモに勝己は叫んだ。

 

「テメェの相手は俺だ!よそ見してんじゃねェ!」

「あらあら、乱暴なお誘いですこと」

 

 

 

 

 

 

 勝己とワカモの戦いが始まってから約十分。戦場は爆煙に包まれていた。

 

「ふふふっ……いいですね、あなた」

「楽しんでんじゃ……ねェ!」

 

 煙の中から現れた勝己が、狐面の下で笑みを浮かべるワカモに爆破を喰らわす。

 ワカモは短刀で爆破を切る事でそれを回避。間髪入れず勝己の眉間目掛けて銃弾を放った。

 避けきれずに銃弾が頬を掠めるも、痛みを気にする事なく接近し爆破。

 しかしそれもワカモの短刀に切り裂かれる。

 

(コイツ、爆破そのものを切っちまいやがる!しかも戦闘技術もコイツのが上!また全身傷だらけだクソ!)

 

 ワカモに攻撃しながら焦る勝己の顔を見たワカモが楽しそうに笑い、彼に話しかける。

 

「もう少し冷静になっては?呼吸が乱れていますよ」

 

 勝己との戦闘を楽しみたいというワカモの感情から出た善意のアドバイス。しかしそれは、勝己にとって屈辱でしかなく……顔が怒りに染まった。

 

「舐めてンじゃ……ねェ!」

 

 激昂しながら爆破で接近。ワカモの目の前に行くと目眩しを兼ねた爆破で軌道変更でワカモの上を飛び、即座に発動した爆破でワカモの背後を攻撃した。

 しかし、それすらもワカモに切られて当たらない。

 

「うふふ……次はどのような攻撃を見せてくださるのですか?」

「チッ……!」

 

 戦闘技術や経験、ワカモは戦闘において今の爆豪勝己を上回っていた。

 

(クッソ腹立つけど、正面からの戦闘じゃあまず勝ち目はねェ事は分かってる。だったら……!)

 

 勝己は少しの思考の後、地面を爆破しながら叫ぶ。

 

「だったら……てめえが見た事ねェ攻撃見せてやらあ!」

 

 目眩しの爆煙を舞わせると同時、勝己は後退。そこには戦闘を見ているしかない不良生徒たちの姿があった。

 

「えっ?」

「ちょっ……」

 

 そして、一番近くにいる不良生徒二人の腕を掴むと。

 

「死ねえ!」

「やだあああ!」

「なんでえええ!」

 

 不良生徒二人をワカモに向けて投げ飛ばした。

 それと同時に勝己は何処かに向かって飛び上がる。

 

「ワカモ様!……あべっ!」

「へぶう!」

 

 爆煙の中から飛んできた二人を何でもないかのように蹴り飛ばし、勝己を探して視線を巡らせる。これだけではないハズだと期待を寄せながら。

 そして、そんな期待に応えるように。

 

「こっちだキツネ野郎!」

 

 太陽を背に、空に浮く勝己が叫んだ。

 ワカモは視線を勝己に向けながら狐面の下で目をぎらつかせる。

 

「なるほど、目眩しですか」

 

 太陽を背に置かれるとワカモの視界が光によって遮られ、勝己の次の動きが読みづらくなる。

 

「…………」

 

 しかし、そんな優位な状態にあるというのに勝己は一向に攻撃に移らない。

 ワカモが不思議に思っていると、勝己が口を開いた。

 

「てめえは知らねえだろうがよ。俺の爆破は手のひらの汗腺からニトロみてえなモン出して爆破させてる」

「……まさか」

 

 ワカモは視線を自身の周囲に巡らせる。

 そしてワカモは自身の周りにキラキラとしたもの──勝己の汗が散らされている事に気づいた。

 彼女は意図を理解し、回避しようとするが。

 

「もう遅ェよ!」

 

 それよりも勝己の爆破が空中の汗に引火し、ワカモが切ることすら難しい大爆発が発生した。

 勝己は更に一直線にワカモの元に向かい彼女の腕を掴むと、爆破で回転しながら空に飛び。

 

「こいつで……死ねえ!」

 

 その勢いのまま地面に叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

「どうだキツネ野郎!これでもまだ笑えンのかよ?」

 

 地面に降り立ち、俺が叩きつけた事でできたくぼみの中心に倒れる狐坂さんに言う。

 口ではそんな事を言っているが、内心は違う。

 

 さっきの攻撃は今の俺にとっての最大火力。技術的にも、個性的にもアレが限界だ。気絶か、せいぜい戦闘不能レベルの状態になっていて欲しいと願っている。

 

「……うふ、うふふふ……!」

「チッ……余裕かよ」

 

 しかし、俺の願いは届かず。狐坂さんは余裕がありそうに笑い、そして立ち上がった。

 

「余裕ではありません。流石にあの攻撃は効きました」 

 

 俺の言葉にそう反論する狐坂さん。確かに狐面にはヒビが入っているし、体のあちこちに傷ができている。

 余裕ではないのは事実な様子。なら、何故笑った?

 

「ですが、それ以上に……楽しいのです」

 

 俺の疑問に答えるかのように、狐坂さんは言う。

 

「私の見た事のない戦い方をし、私の期待を常に超え続ける、そんなあなたとの逢瀬が……ですが」

「ああ?」

「連邦生徒会の建物が奪還されてしまったようです。楽しいあなたとの逢瀬もここまで」

 

 彼女はそう言うと、不良生徒の塊を飛び越えて近くの街灯の上に立った。

 

「後は任せます」

「てめえ、待てやゴラァ!逃げてンじゃねェ!」

「ふふっ、しつこい殿方も嫌われますよ?」

 

 追いかけようとするも、不良生徒たちが俺の前に立ちはだかった。

 狐坂さんを追いかけたいが、この不良生徒たちが暴れると困るので放っておくわけにもいかない。

 

 数はザッと数えて十数人程。時間はかかるかもしれないが、倒せない数じゃない。

 だったら、俺に取れる手段は一つだ。

 

「クソモブ共、全員でかかってこいや。ソッコーでぶっ潰してやらあ!」

 

 俺は不良生徒たちとの戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

「クソ、クソモブに時間かけ過ぎた……!」

 

 狐坂さんの逃走から数分後。

 俺は不良生徒の一人から連邦生徒会の建物の場所を聞き出し、そこに向かって全力で移動していた。

 狐坂さんが向かっているのは恐らく先生がいる建物。彼女の目的は分からないが、先生たちが危険である事は事実だ。

 

 そうして、焦りながら移動して。

 

「……あそこか!」

 

 ビルの立ち並ぶ場所の中、一際目立つ建物の入り口近くに立つ先生や早瀬さん、狐坂さんの姿を捉えた。

 まだ戦闘は始まっていない様子だが、いつ始まってもおかしくはないだろう。

 

 このまま加速し勢いそのまま爆破したいところだが、それだと先生が爆破に巻き込む。

 だったら……狐坂さんを蹴り飛ばして先生たちから距離を取らせる。そう考えて爆破し加速した瞬間。

 

「あら、あららら……?」

「えっと……ワカモ、どうかした?」

「あ、ああ……!し、し……!」

「大丈夫?体調が良くないとか……」

「失礼しましたーー!!」

 

 狐坂さんは、何故か謎の悲鳴を上げて逃げていった。

 先生は一体何をしてあの狐坂さんを撃退したのか。不思議に思った俺は着地し、先生に問いかける。

 

「おい、セン公」

「あ、カツキ。ワカモと戦ってくれてありがとう。大丈夫だった?」

「余裕じゃボケ。それより、何した?」

「何もしてないんだよ。ただ、私と視線があった瞬間にワカモの態度が不自然な態度になって……」

 

 それであの狐坂さんを撃退できるなら苦労しない。だが先生が嘘をつくとも思えないし、そもそも事実として孤坂さんは逃げ出したわけである。

 まぁ、今は怪我人がいないかを確認したい。

 

「オイ、てめえら。無事か?」

 

 意外な事にすんなりと口から望んだ言葉が出てくれ、羽川さんたちに尋ねる事ができた。

 

「……あなたでも人を心配できるんですね」

「てめえらがザコだから心配してやったんだよ」

「あぁ……はい。そういう事にしておきましょう」

「そーいう事以外ねーんだよ!勝手に変な解釈してんじゃねェぞカラス女ァ!」

 

 俺の発言が照れ隠しだと思われたらしく、その場にいた全員から暖かい目で見られる。

 それが続いてなんとなく気まずくなったので、話題を変えようと口を開いた。

 

「おいセン公!やる事終わったんか⁉︎」

「うん、カツキたちが協力してくれたからね」

「だったら、あん時の続きだ。聞きてェ事がある」

「分かってる。私に答えられる事ならなんでも聞いて」

 

 それから俺は先生にいくつか質問をぶつけた。この建物の名前、建物にきた理由や先生の事など、色々と。

 そして当然だが、返ってきた答えは聞いた事のないものばかりだった。

 

「連邦捜査部シャーレ、行方不明の連邦生徒会長が作り上げた超法規的組織。ンで、セン公はそこの顧問としてキヴォトスの外から呼ばれた大人……」

 

 キヴォトスの外、もしかするとそこがヒロアカの世界なのかもしれない。

 そう思い、先生がどうやってキヴォトスに来たのかを尋ねてみたのだが……。

 

「私も覚えてないんだ。気づいたらここに居たって感じでね」

 

 返ってきたのはそんな答えだった。

 そうなるとやはり、当面はこのキヴォトスで生活していく事になりそうだ。

 

 必要なのは衣食住で、それらを手に入れるために必要なのが金だ。だが、今の俺に金を稼ぐ手段はない。

 ……いや、一つだけある。俺の悩みを全て解消してくれる手段が。ただ恩着せがましいと思われそうでできれば取りたくない手段だが……これしかない。

 

「おい、セン公」

「まだ質問が残ってた?」

「違え、話がある」

 

 俺の真剣さを感じてか、先生も真剣な表情になった。

 そんな先生に、俺は告げた。

 

「俺をシャーレで雇え。あんた無防備だし、一人ぐらい常に守れる奴がいた方がいいだろ」

 

 理屈を並べてはみたが、結局のところ俺の行く当てがないから助けて欲しいだけだ。

 こんな上から目線の提案を、先生が受けて入れてくれるかどうか……。

 

「うん、分かった。カツキに守ってもらえるなら安心だね」

 

 割と恩着せがましい言動していたのだが、返ってきたのは二つ返事での了承だった。

 流石にそれは……と思っていたところ、他の面々もそう思っていたらしく代表してか早瀬さんが問う。

 

「えっと、先生?そんな簡単に決めてしまっていいんですか?」

「誰かが守って仕事も手伝ってくれるなら、私としてもありがたいから。それに、カツキは言動こそ少し荒っぽいけど、私を守ってくれるぐらい優しい子だからね。心配はいらないよ」

 

 ……ああ、先生ってこういう人なのか。

 どこまでも子供である俺たちを信じているのだ。

 恐らく、俺の行く当てがない事も察しているだろう。その上でのあの二つ返事なのだから、凄い人だ。

 だったら、俺も。

 

「……先生、約束だ。俺は絶対、あんたを守る」

「うん、よろしくね。カツキ」

 

 この優しい人を、絶対に守ってみせよう。

 そんな決意と共に、俺のキヴォトスでの生活が始まった。




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