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ニシキがこの世界に来てから、1年が過ぎ去ろうとしていた。
ここ半年は、モンスターやアンデッド、亜人の侵攻はなく、ニシキが力をふるうような場面は特になかった。
アンデッド騒動の件に関しては、聖騎士団と神官団の調査により、強力な魔法詠唱者が多い『魔現人』という亜人によるものではないかとの推察であった。
第五位階にも達する存在も確認していたため、死霊系の魔法に特化したものの仕業の可能性が高いと断定された。
それを証明するようにして、豪王バザーとアンデッド騒動以降、アベリオン丘陵の亜人たちはピタリと息を潜めるようにして静かになっていた。
聖王国内、特に北部聖王国では、『黒金のニシキ』に恐れをなして亜人共が士気を失った、という噂が流れており、ニシキは益々聖王国内で英雄として定着していた。
さて、そんなニシキであったが、アダマンタイト級冒険者として依頼がないわけではなかった。
それは、大貴族や大商人の護衛依頼である。
王政府や聖王女派閥と密接な関りを持つ貴族や商人からの依頼で、もちろんこの依頼にはケラルトの息がかかっていた。
依頼をこなした回数は5回程度であったが、大貴族や大商人とのパイプ作りには大いに役立ち、ニシキの冒険者家業としての箔にも良い影響を齎していた。
北部聖王国に黒金あり。とまでいわれ、王国はもちろん、帝国や王国にもその名が届くようになった。
また、仲間探しにもニシキは精力的に取り組んでいた。
時空間忍術のおかげて、一度街や場所に赴き、マーキングさえしておけば頭の中にその風景を思い浮かべるだけで、一瞬にして移動ができるため、マップを塗りつぶすような感覚で楽しみながら行っていた。
すでに王国は主要な都市のマーキングは済ませてある。
そろそろ、帝国や法国にも足を運んでもよいかもしれないと考えていたりする。
ちなみに、南部聖王国はというと、カルカの願いもあり、北部聖王国と隣接する城塞都市デボネへ行ったのみであり、それ以外は未踏破であった。
なんでも、南部聖王国は現在非常に政治的に荒れているため、少し様子を見て頂きたい。とのことであった。
詳細までを聞かずとも、その原因の一端が自分であることは理解していたため、それを甘んじて受けている。
そもそも、聖王国内における仲間探しに関しては、王政府主導で色々とやってくれているため、ニシキにとって優先度的にはひくくなっていた。
というよりも、もし仲間が南部聖王国に居るのであれば、これだけ『弐式炎雷』という名で広まっているので、すでに相対しているはずである。
それが齎す意味は、『聖王国に仲間の影なし』である。
アダマンタイト級としての依頼、仲間探しのための都市巡り、その2点がない場合は、大抵カリンシャの街はずれ、誰もいない平原や森の中で修行していることが多い。
ツアレを守護するために特殊召喚したハンゾウやフウマとは別に、通常召喚所謂スキルによる召喚で、時間経過で消滅してしまうハンゾウやフウマ、カシンコジ、トビカコウを相手にしている。
最初は、たとえ時間で消滅したとしても、意思を持つものを修行のために殺すことは躊躇われたのだが、召喚した者達が口を揃えて『是非に…』とかいうものだから、少し、いや大分引いた。
しかし、どうやら召喚されたものにとって召喚主は絶対である様子で、主の役に立つことこそ最大の喜びなのだとか…。
ニシキは途中で考えることを辞め、彼らの願いを聞き入れる形で承諾して見せた。
実際、命を刈ったほうが経験値、レベルアップには有利なため、そんな自己利益の部分もある。
修行を始めたばかりの半年前は、ニシキのレベルが80前後、ハンゾウたちのレベルが85前後だったため、一対一でもそれなりに良い戦闘になった。
レベル差があっても追い込まれないのは、それぞれの得意不得意をニシキが理解していたのと、種族レベルを失った代わりに、レベルアップによって得られる職業レベルによる忍術や特殊スキルのおかげであった。
ユグドラシル時代にはなかった、少なくともニシキがログインを辞めた2年前時点では聞いたこともない忍術だっただけに、『俺がいない間に忍術が爆発的に増えたのか?』などと仮説を立てていた。
そうして約半年の修行を継続し終えたころには、召喚した忍者4人を一人で相手取っても勝てる程になった。
ツアレ守護のハンゾウによる見立てだと、レベル95弱とのことであった。
それはニシキも同意の致すところであり、それはここ最近急激な力の増大が見られないためである。
もはやレベルが100に到達したのでは?という可能性もあったが、それはユグドラシルのレベルアップ法則を鑑みると低かった。
ユグドラシルにおいて、レベル95までは比較的すぐに上昇を見せる。
それこそ、1日中ユグドラシルにのめり込み、且つ優秀なチームやギルドの下でレベリングを行えば、2か月で到達できる。
ソロプレイでも4ヵ月はかからないだろう。
問題はそこからなのだ。
レベル96からは、今までにない膨大な経験値を必要とする。
そのため、ニシキにとっても本当のレベリング地獄はここからであった。
しかし、ことこの世界においては、突出した強者は少ないため、
油断は禁物だが、レベル95に到達したのであれば早々やられることはないだろうと考えていた。
ユグドラシル時代から慣れしたんだステータスとスキルに加え、新たな忍術もある。
逃げの一択という選択肢を取れば、なにもできずにデス…は避けられるであろう。
…防御がカスなのが危険要因ではあるが…。
しかし、それも一つの新たな力を得たことで、些少の不安に留まっている。
連発や長時間維持はできないが…。
そうして、修行を終えると、ニシキはツアレの待つ小さな屋敷へと戻る。
基本的に、夜から朝にかけては屋敷を空けることは少ない。
いや、そもそも『実体かどうか』という点を除けば、その時間帯にニシキがいないことはなかった。
答えは『影分身の術』である。
影分身は、実体のある分身を作り出す忍術で、実体とほとんど違いはない。
唯一の違いは、影分身側がMPを使い切るか、体力がなくなったら煙となって消えることである。
分身側は、HPは分身体の数に応じて変動し、MPは本体との等分となる。
つまり、影分身1体ならば、最大値を100とした場合、本体側HP100、MP50。分身側HP50、MP50ということになる。
2体になれば、本体側HP100、MP33。分身側HP25、MP33。
3体になれば、本体側HP100、MP25。分身側HP16.7、MP25。
ということになる。
メリットは、手数が増えることは自明の理であるが、さらに本体側若しくは分身側が『自分の意思で』影分身を解除した場合、分身がそれまで得た経験値と情報、記憶を本体に還元できるというモノである。
デメリットは、分身数が増えるとHP、MP共に一体が有する量が少なくなるため、容易に倒される点である。加えて、相手からの攻撃などによる『自分の意思ではない』状態で影分身を解除された場合、分身が解除されたこと以外の情報が、本体に還元されないということである。
これが非常に厄介で、相手はニシキが潜入若しくは攻撃してきたことなどの情報を得られるが、ニシキ側は誰にどこでやられたのかという情報が入ってこないのである。特に情報が重要となるPVPやワールドエネミー戦では、敵の攻撃による解除はご法度であった。
つまりまとめると、どんな攻撃手段、魔法やスキル、忍術にも弱点となるリスクは存在するということである。
大きく話はそれたが、本体か影分身かの違いはあれど、夜から朝にかけてはニシキは基本的に滞在している。
その大きな理由というか、たった一つの理由は、言わずもがな、ツアレの存在である。
すでにツアレを拾い上げてから、8か月程が経過していた。
拾い上げた当初に見られた、表情のなさも、言葉のつまりも殆どと言っていいほど見らない。
それどころか、今ではカリンシャの街中であれば、一人で買い物に出られるほどにまでなった。
これには、カリンシャにおいてニシキの知名度が圧倒的に高く、そのニシキの専属のメイドということもあって、贔屓にされているという面が大きいのだが、あれだけのことがあった割には、相当な精神的回復を見せていた。
ニシキは、日が沈みかけている空を見上げると、いつも修行に使っている近くの森から、カリンシャの街へと戻る。
カリンシャの街に入ると、すでに夕飯時なこともあってか、色々なところから食材を調理する良い匂いが立ち込めていた。
街の住人と挨拶を交わしたり、短く会話をしながら屋敷へと帰路に着く。
屋敷の扉を開けると、それに気づいたツアレが少し離れたところで小さく一礼して見せる。
そして些少の早歩きをもってして、ニシキの元へと駆け寄る。
「おかえりなさいませ、ニシキ様」
まるでひまわりのような笑顔を見せるツアレに、ニシキは思わず微笑を浮かべる。
「ああ、ただいま」
「夕飯になさいますか?」
「そうだね」
ニシキはそんなツアレに短く返す。
ツアレはニシキに言われた通りに、夕飯の支度をしにパタパタと厨房へ向かった。
そんなツアレの背中を見送った後、広間の端にある些少の装飾が施されているテーブルへと目を向ける。
手紙が1通置いてあるのが目に入る。
それを手に取り、差出人を見るが、特に名前は書かれていなかった。
代わりに封蝋に描かれている紋章を見て、些少目を見開く。
それは聖王国王家の紋章であった。
差出人は、聖王女自らによるものか、王政府関係者ということになる。
その手紙を片手に、ニシキは食堂へと向かう。
食堂の椅子に腰かけ、封蝋を開けて手紙を取り出すと、差出人は少し予想が外れ、聖王女とケラルト連名のものであった。
まあ、外れているとも言えなくもないが。
手紙を読み進めようとした矢先、扉が開かれ、ツアレが食事をもって現れる。
「おまたせしました、ニシキ様」
ツアレは一つひとつ丁寧にニシキの前に、食事が盛り付けられたお皿を差し出す。
「お、今日はお肉かー、美味しそうだな」
「そう言って頂けて嬉しいです」
ツアレはニシキの前に、用意した全ての皿と食具、そしてコップを用意すると、少し顔を赤らめて呟く。
「あの…ニシキ様…今日もご一緒してよろしいですか?」
「ん?ああ、もちろん、一緒に食べよう。待ってるから用意しておいで」
「あ、ありがとうございます。急ぎますね!」
ツアレは、またもトテトテと忙しなく食堂を出た後、数分もしないうちにお盆をもって戻ってきた。
そうしてそのまま、対面する形で、一緒に会話を楽しみながら食事をとった。
「ふぅー、ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした…」
ニシキが食後の挨拶をすると、ツアレも追うようにして口を開く。
ニシキはツアレが用意してくれた果実酒を口に運びながら、思いだしたかのように、先ほど読めなかったカルカからの手紙を読み進める。
内容は首都ホバンスの様子から始まり、カルカとケラルトそれぞれの自分たちのこと、レメディオスの困った行動などが書かれていた。
それを見て、ニシキは思わず笑みを浮かべた。
「平和な証拠か…」
「あ、申し訳ありません。直接お渡しできず」
「いいよ、別に、気にしなくて大丈夫」
手紙に気付いたツアレは、渡しそびれていたことに気付いたが、送り主が聖王国王家であっただけに、内容が気になってしまった。
「あの、どんな内容でしたか?」
本来、メイドが主人宛の手紙の内容を詮索するのはご法度であったが、メイドとしてのイロハを知らないツアレは悪気なく聞いてしまう。
しかし、ニシキもメイドのイロハなど理解していないので、ここにそれを咎めるものなどいない。
というよりも、ニシキによってはもはや友達とも家族とも認識しているツアレであるため、そんな感情は抱いていなかった。
「んー、カルカ聖王女殿下も、ケラルトさんもレメディオスさんも元気だってさ」
ニシキから出されたその名は、すでに半年以上聖王国のカリンシャで暮らしているツアレにとっては、耳にタコができるくらい聞いた名であった。
所謂、ローブル三姉妹である。
ローブルの至宝と言われるカルカ聖王女は、超のつく美貌の持ち主であることはもちろん、その腹心として名高いカストディオ姉妹も、美女といって差し支えないほどの美貌を有している。
そんな三姉妹とニシキが懇意であるというのは、ツアレからすると、少しだけ、ほんの少しだけ心がざわつくのである。
「ニシキ殿は…聖王女様のような、綺麗でお美しい方が好みなのでしょうか?」
ツアレは、食器をのせたお盆を持ったまま、ニシキに小さく呟くようにして声を発した。
同性が見ても見惚れるような美貌を持つカルカ聖王女とでは、自分など比較にもならないと思ってのことであった。
ツアレは確かに整った顔立ちをしているが、それでもカルカ聖王女どころか、レメディオス姉妹と比べても太刀打ちできないだろう。
しかし、ニシキから意外な返答が返ってくる。
「んー、どうだろう。俺は外見的な容姿でいうならツアレの方が好きかな?」
外見の美醜の判断には個人差というものがある。
そもそも、ニシキはただの会社員だったのだ。
まあ、リアルでは貧困層の中でもそこそこな生活を送れていたが、それでも一般人に変わりはない。
本来なら、聖王女や大貴族なんかとは関われるような男ではない。
聖王女や大貴族に恋愛的な感情を抱くというのが、そもそも無理な話なのである。
美しいとは思うが、それだけである。
あの人と結婚するために頑張るぞっ!なんて感情はこれっぽっちもわかないのが普通である。
身分が、格が違うのだから。
しかし、それはニシキの価値観である。
ツアレからすれば、ニシキは圧倒的な力を持ち、それを弱者を救うために振るっている『英雄』だ。
実際に、ニシキの功績や戦いを伝え聞いているのだ。
故に、ツアレの価値観で言うならば、聖王女や大貴族にも手が届くと考えているのだ。
「そ!そんなッ!私なんて…それに、私は…」
顔を真っ赤にし、俯かせるツアレに微笑ましいものを見つめる視線を送る。
「汚されて…しまっていますから…」
先ほどとは一転し、真っ暗な表情になったツアレに対し、ニシキは安心させるようにして微笑を浮かべる。
そして立ち上がり、ツアレの前に立って、その目を見据えながら話しかけた。
急に目の前に立たれたことで、ツアレは更に顔を真っ赤にさせる。
お盆を持っていた手が震える。
それに気づいたニシキは、ツアレからお盆を受けとり、そっとテーブルに置く。
「ニ、ニシキ…様…」
ツアレは何とか声を振り絞り、ニシキの名を呼んだ。
ニシキは口を閉ざしたまま、ツアレの頭に手をのせ、優しく撫でる。
「自信をもっていい。俺が保証する。ツアレは綺麗だ」
ニシキの手の感触が、頭から流れ込み、身体に電流が走ったような感覚を覚える。
そして、ツアレが決意したように口を開いた。
「…綺麗だと仰っていただけるなら、私を…抱いてください」
「え?…」
ニシキは一瞬、ツアレの言っている言葉の意味を理解できなかった。
思わずツアレの頭から手をどける。
それが何を意味するのかをゆっくりと認知する。
「そ、それは…つまり…その…。俺と…寝たいってこと…か…?」
「……はい…」
少しの沈黙が流れる。
「えっと、ツアレは俺のことが好きなのか?その、助けてもらった恩返しとか、地獄のような日々だったから感覚が麻痺しているとかではなく…」
「私は…心からニシキ様を愛しております…」
ツアレは、真っ赤になった顔を、それでも笑顔を絶やさずにニシキに向けている。
…真剣な眼差しをもってして。
それを感じ取ったニシキは、小さく息を漏らすと、ゆっくりとツアレを抱きしめた。
「あっ…///。ニシキ…様…///」
ツアレは、ニシキの体温を感じ、喘ぎ声に似た声を上げる。
「ツアレ…。君さえよければ…」
「ッ!///ほ、本当…ですか…?」
ツアレは、ゆっくりとニシキの背中に手を回す。
「嬉しい…です…///。ニシキ様…///」
暫くそうして抱き合っていた2人は、次第に身体を引きはがし、接吻するに至った。
北部港湾都市リムン。
首都ホバンスの西に位置し、且つ北部聖王国最西端の都市である。
西側は海に面しており、海運や漁業を中心に栄えた都市である。
カリンシャと比べると、経済的な面で言えば上、防衛面で言えば下という立ち位置になる。
北部聖王国の海産物、そして流通の要としても重要視されているこのリムンは、カリンシャ以上に活気のある街である。
…そう。
つい先ほどまでは。
現在は、悲鳴と喧騒に満ち溢れている。
美しかった港湾都市には無数の火の手が上がり、見たこともない異形が、街の人々を襲っていた。
阿鼻叫喚とはまさにこのことで、逃げまどう住民とそれを襲う異形の存在。その異形の存在を狩ろうとする衛兵や兵士達。
街中は様々な目的と意思を持ったもので埋め尽くされ、パニック状態になっている。
これだけでも地獄であるのに、リムンの中心ともいえる広場では、異形は異形でも、圧倒的な巨大さと圧倒的な邪悪さを持つ怪物が鎮座していた。
その怪物、全身は淡いクリーム色を有しており、手や胸など、所々筋肉のようなものが見え隠れしている。
4足歩行で鎮座する様相は、まさに『怪物』で、強大な口に牙、目は赤く光り輝いていて、額にもそれが見られる。
黒く巨大で長い角は、頭の方、肘に膝、背中にも有している。
目視で高さは約10m、長さは20mを超え、まさに『怪物』。
いや、むしろ『魔神』と称した方が適切かもしれない。
街中に溢れる異形は、衛兵や兵士たちが何とか討伐できるようなものであった。
時折、些少の強大さを持つ異形もいたが、駐在していた聖騎士や神官の手にかかればそれも討伐に至る。
しかし、こと広場にいる『魔神』は、聖王国の精鋭たる聖騎士や神官でも全く歯が立たなかった。
それどころか、一撃で何十人もの聖騎士や神官の命を奪う。
『魔人』が3回ほどその手を振るっただけで、精鋭たちは壊滅した。
そこからは、リムンの人々に抗うすべなどなかった。
できることは、ひたすらに逃げること。
ただそれだけであった。
突然現れた『魔神』とその配下と見られる未確認の『異形』によって、港湾都市リムンは、一夜にして崩壊した。
次の日…。
伝令の兵士から『リムン陥落』の報を受けた聖王国王政府は、混乱の一途を辿っていた。
「か、壊滅…ッ⁉」
リムンで何が起きたのかを聞き及んだケラルトは、主君である聖王女カルカにそれを伝えるに至る。
「たった、たった一夜にして…ですか…ッ?」
「…はい。全長20mを超える『魔神』のような姿をした怪物を筆頭に、大小さまざまな見たことのないモンスターの姿も確認されています。それらが、突如リムンに現れたのことです。駐在する聖騎士、神官、兵士などがこれの討伐にあたりましたが、『魔神』の力はあまりにも強大で、戦力の8割を喪失。そのままリムンを放棄する形で撤退しています」
「…敵の数は?」
「生き残った聖騎士等に話を聞きましたが、全容までは…。しかし、街にあふれるくらいであったとの事で…万は確実かと…」
ケラルトの報告に、カルカは悲痛な表情を浮かべる。
リムンの街は大きい。
それこそ、首都ホバンスに比べればその規模は小さいが、北部の主要都市であるプラートやカリンシャと同程度の都市であった。
そんな大きな都市を埋め尽くすほどのモンスターともなれば…。
「…10万を超える可能性も…ッ!」
「殿下…これは『国家総動員令』に該当するものかと…」
カルカと同じように、ケラルトの報告を受けていたヒョギョリ大臣は進言する。
「大臣…。そうね…。リムンが落ちたとなれば、次に攻め込んでくるのは間違いなくここ、ホバンス…それで、敵の動きは?」
「それが、リムンを落とし、占拠した後動きはないようです。斥候の報告によると、リムンに籠城するような形を取っているようです」
「…私たちの動きを待っている…?」
カルカは顎に手を当てるようにして、情報を整理し敵の狙いを探ろうとする。
しかし、それは執務室と扉が乱雑に開かれたことで終わりを迎える。
「カルカ様ッ!」
入ってきたのは、聖王国の宝である聖剣を携えたレメディオスであった。
本来であれば、カルカの許可なしに急に入室するのは無礼であったが、今はそれを咎めるものはいない。
「聖騎士団、及び神官団、兵士団の準備、できておりますっ!」
取り急ぎ、リムン陥落の報を受けたレメディオスは、カルカの指示のもと、進軍する軍の編制を任されていた。
それが今しがた終わり、跋扈の如く報告にいたのであった。
レメディオスの姿を捉えたカルカは、ガバッと椅子から立ち上がり、威厳のある声で執務室にいる者たちに檄を飛ばす。
「聖王国聖王女、カルカ・ベサーレスの名において、『国家総動員令』を発動します!大臣、聖王国各都市に急ぎリムンへの進軍を命じなさい!」
「拝命致しました」
カルカの言に、ヒョギョリは一礼し、すぐさま行動を開始した。
「レメディオス、ケラルト!私達も参りましょう」
「「はっ!」」
カルカは自らも出撃する命を出し、執務台に背を向ける。
聖騎士達が束になっても勝てなかった、『魔神』の底知れぬ力に、些少の憂いはあったが、同時に一つの希望があることに気付く。
「ケラルト。急ぎ、カリンシャに早馬を…。ニシキ殿にも御助力を…」
「はい。すでにそのように動いております」
ケラルトの先を見据えた行動に、カルカは微笑を浮かべると、リムン奪還のために出撃を開始した。
※現在の弐式炎雷のレベル
・Lv95
※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)
・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv1