弐式炎雷と共に! ≪一時休載≫   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第14話 勝鬨

ニシキが港湾都市リムンに到着を有した時間は、一瞬であった。

 

リムン近郊に施したマーキングを頼りに、飛雷神の術で移動した。

 

移動してきた瞬間に、大きな違和感を感じる。

 

「伝令通り…か。無数に近い数のモンスターが蔓延ってるみたいだな…」

 

ニシキは感知スキルを使用して、壁の向こう側にいる生命体を認知する。

 

聖騎士は神官等の他に、ユグドラシルでは見かけないモンスターを感知する。

 

さらに感知スキルの精度を上げ、そのモンスターをより詳細に認知したところで、大きく驚いて見せる。

 

「こ、これって、まさか!!」

 

ニシキは即座に空へと身を投げ出し、空気を蹴り上げてリムンの街を下に捉える。

 

これも新たに習得した忍術の一種である。

 

足の裏に魔力をこめ、空中、水上、壁や天井といった本来は歩いたり走ったりできない場所に足を置くことができる。

 

それを用いて、上空から感知スキルをマックスで発動。

 

リムンの街全体を感知網にかけ、確信する。

 

「間違いない…これは、レイド戦…それもイベントレイド戦だ…」

 

イベントレイド…。

 

それは、本来はユグドラシルでは存在しえない、他作品や著作権の切れた過去の作品から、コラボとして様々なモンスターやクエストをもってして行われる、所謂期間限定のボス戦であった。

 

イベントレイドでしか手に入らないアイテムや装備もあり、ユグドラシル時代には、アインズ・ウール・ゴウンもよく挑戦したものである。

 

そして、このイベントレイドに、ニシキは見覚えがあった。

 

というよりも、一度似たようなイベント戦を、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーと参加したことがある。

 

遥か昔に流行ったとされる、RPGゲーム。そのボスの名を。

 

ゲームの名前こそ忘れてしまったが、ボスの名は確か…。

 

「エスターク…ッ!」

 

そこまで結論付けたことで、街の中心部に明らかに強大な力を感じ取る。

 

それに相対する、複数の人影も…。

 

しかも、あまりよくない戦況のようであった。

 

加えてその戦闘を行っているのが、見知った顔ぶれであることに、ニシキは驚く。

 

「くそっ!」

 

空気を蹴り上げ、一気に飛翔する。

 

そのスピードは、圧倒的とまで表現できる速度であり、十秒程度で街の中心へと到着を果たす。

 

ニシキの目に、恐ろしい光景が広がる。

 

1つは、予想したものとは違う、レイドボスであったことだ。しかしそれは、ニシキが予想したものと姿形が似ていることもあり、亜種のようなものではないかと断定つける。

 

2つめは、そのレイドボスが、右手に聖王女であるカルカ様を握りしめていることだ。しかも、顔も上半身も血まみれの状態で、である。

 

ニシキは歯を軋ませながら、疾風の如くレイドボスに飛び掛かり、自身の最高火力である巨大な忍刀、素戔嗚を両手に携え、その腕へと振り下ろす。

 

綺麗に攻撃がヒットした感覚を感じながら、素戔嗚を一瞬でしまい、即座に切った腕の掌へ移動し、カルカを抱きかかえる。

 

意識がはっきりとしていない様子であった。

 

即座に、そして丁寧に静かに、衝撃を与えないようにして、空中から屋根に飛びうつる。

 

美しかった美貌は、見る影もなかった。

 

鼻は潰れ、歯は前歯に加えて他の犬歯まで折れている。

 

左目は眼窩が損傷しているのか、グリンッと変な方向を向いている。

 

加えて、魅力的な肢体すらも、酷い有様であった。

 

美しく長い両足は、服の上からでもわかるくらいにあらぬ方向に曲がっており、膝に関しては見る影もない。

 

リアルであれば、一生歩けない身体と言えるだろう。

 

身体の前面、特に出っ張りを見せている乳房の損傷は酷く、強く押し付けられ、削られたような傷が見られた。

 

レイドボスがこちらに気付き、視線を向けてくる。

 

ニシキは警戒して見せたが、腕から呻き声のようなものが聞こえ、即座に視線を落とす。

 

「ニ…シキ…殿…」

 

カルカは、微かにだが、ニシキの名を呼んで見せた。

 

先ほどまで怒りにも似た表情を浮かべていたニシキであったが、少しでもカルカを安心させようと、微笑みをもって返す。

 

「遅くなり、申し訳ありません。ですが、もう大丈夫です」

 

カルカの視線が、少しだけ動くのを感じる。

 

そして、震える口がもう一度開かれる。

 

「ニシキ…様…」

 

「ご安心ください、すぐに傷を治しますから…」

 

レイドボスが、ニシキの方へと身体を向け、警戒している。

 

このまま戦闘に入るわけにはいかない。

 

まずは、カルカの傷を癒すため、時間を稼ぐ必要がある。

 

そのために、ニシキは右手をもってして、必要な印を結んでいく。

 

幸いにして、レイドボスの後方には、生命反応はない。

 

0とは言わないが、大きな巻き込み事故はないだろう。

 

印を結び終え、大きく息を吸いこむ。

 

「『風遁・龍激突破』!!」

 

魔法で言えば、第九位階にもなる風遁忍術を、レイドボスに向けて放つ。

 

ニシキの口から放たれた圧倒的な暴風は、龍を模ると、即座にレイドボスへと衝撃し、その巨大な身体を広場から押し出す形で吹き飛ばす。

 

その風圧に耐えかねるようにしているレメディオスの足者に、飛雷神のマーキングを施したクナイを投げる。

 

地面に刺さったのを確認して飛ぶ。

 

有無も言わせずに同じ要領でケラルトが倒れている場所にクナイを投げ、レメディオスの肩に触れる。そして飛ぶ。

 

「ニ、ニシ…ッ!うおっ!」

 

突然目の前に現れたニシキと、突然ニシキと一緒にケラルトの傍に移動したことに驚いた様子を見せていた。

 

なんなら、先ほどのイスナを吹き飛ばした忍術について聞きたいところであったが、レメディオスはそれを即座に斬り捨てる。

 

ニシキがゆっくりとカルカを地面に置いたのを見て悲痛な表情を浮かべる。

 

「カ、カルカ…様…」

 

辛うじて生きてはいる。

 

しかし、ローブルの至宝と言われる美貌は失われ、まさに満身創痍と言った様子であった。

 

ケラルトも左足が潰れた痛みで意識が朦朧としていたが、カルカの状況を見て、悔しそうに涙を浮かべる。

 

「大丈夫です…。綺麗に治せますよ」

 

ニシキは左目を閉じながら、2人の心情を察するようにして口を開く。

 

「こ、これだけの傷では…第5位階の治癒魔法でも…」

 

命を繋ぐことはできるだろう。

 

しかし、顔の傷を完璧に治すことはできない。

 

加えて、ひしゃげた足は、足としての役割を担えないであろう。

 

第5位階という、英雄にも匹敵するほどの魔法詠唱者であるケラルトがそう判断しているのだ。

 

それこそ、それが分かりきっているケラルトが一番つらいのであるが、ニシキはそれでも『綺麗』に治せると口にする。

 

「おい、ニシキ…。左目から血が…」

 

ニシキの出血に気付いたレメディオスであったが、信じられないことが起こっていることを察すると、言葉を止めた。

 

閉じていた左目を、ニシキは大きく見開く。

 

その目は真っ赤に染まっており、以前とは紋様の違う写輪眼が形成されていた。

 

「『輪廻(りんかい)』!!」

 

その左目は視線をカルカに固定したままである。

 

するとどうだろうか。

 

カルカの身体が何もしていないのにゆっくりと、元の綺麗な身体へと戻っていく。

 

潰れた鼻も、折れた歯も、裂けかけていた乳房も、ひしゃげた足も全てである。

 

カルカは、痛みがなくなったことで、がばっと起き上がって自分の顔、胸、足を何度も何度も触っている。

 

「な、何を…したんですか…」

 

ケラルトは伏せたまま、ありえないと言った表情でニシキを見つめる。

 

その左目は見惚れるほどに綺麗な赤く、その中に黒い紋章を宿した瞳があった。

 

「万華鏡写輪眼、その左目に宿る瞳術『輪廻』です。視点があった物体、生命体の時間を戻すことのできる瞳術です…」

 

「時間を…戻すだと…。ッ!ま、まさかっ!」

 

ニシキの説明に、レメディオスはカルカを見つめる。

 

その顔は、身体はイスナに蹂躙される前の、至宝と言われる美貌を取り戻している。

 

「そうです。あのような状態になる前に、戻しました。時が経ち、再度身体が損傷することはありませんから、ご安心を」

 

「ニシキ様…ッ!」

 

カルカは、何度も身体を確認するようにしていたが、ニシキの説明を聞き、その輝かしいばかりの瞳に、大粒の涙を浮かべていた。

 

それに軽く笑いかけていたニシキであったが、左目に痛みが走り、目を閉じて手で押さえ、しゃがみ込む。

 

「くっ…」

 

「ニシキ様ッ!」

 

突然左目を抑えたニシキに、カルカは駆け寄って肩に手を添える。

 

「ッ!デメリットは、魔力消費量が激しいのと、使用後に激痛が走ること…ですかね…」

 

皆まで言う必要はないか…と言った様子で、右目でケラルトの足を潰し抑えている岩に掌を向ける。

 

掌からバリッと電気が走ると、岩に当たり、粉みじんに吹き飛ばす。

 

その後再び左目を開けて、輪廻を発動する。

 

その対象者はもちろんケラルトであり、カルカ同様にケラルトも潰れた足が元通りになる。

 

ケラルトは、自分の左足に意識を向け、ゆっくりと動かす。

 

痛みはない、そして、力も入る。

 

潰れる前の、自分の足であった。

 

「し…信じられない…」

 

ニシキは痛む左目を再度閉じ、カルカの手を払いのけるようにして立ち上がる。

 

生き残った聖騎士や神官たちが、ゾロゾロとニシキの元へ集まりだしている。

 

それを確認して、何度か印を組む。

 

「『結界忍術・断空城壁』!」

 

半透明な結界が、四方を塞ぐようにして展開される。

 

「ニ、ニシキ殿…。これは…」

 

レメディオスは辺りをキョロキョロと見回しながら、狼狽する。

 

「…第7位階以下の魔法を完全に遮断する結界です…。それ以上の位階魔法でもある程度は防げます…」

 

その説明に、カルカ達だけでなく、聖騎士達も驚きを見せる。

 

特に、神官の驚きようは、尋常ではない。

 

それが本当のことなのか、皆の中に確認したい気持ちが言葉になって現れようとした寸前に、先ほどの地獄が広場に舞い戻ってきた。

 

「ひぃ…」

 

カルカは、引きつった表情で、後ずさりする。

 

レメディオスはそんなカルカの様子を見て、駆け寄って肩を抱く。

 

あれだけのケガと恐怖を与えられたのだ…無理もない。

 

レメディオスの中に、イスナへの憎悪が噴火の如くあふれ出す。

 

が、それが噴出する前に、ニシキが口を開いた。

 

「皆さん、私があの化け物を倒すまで、この結界から出ないでください」

 

ニシキの迷いない言葉に、皆目を見開いて押し黙る。

 

当然だろう。

 

先ほどまで、カルカ達が束になっても全くと言っていいほどダメージを与えられず、剰えたった一回腕を振り下ろしただけで部隊が半壊したほどの相手である。

 

「…ニシキ殿…。あなたなら…倒せると…」

 

「ええ、約束しましょう…」

 

ケラルトの怪訝な言葉をよそに、ニシキは背中を向けたまま短く返事をして、結界の外へ出た。

 

ニシキの姿を捉えたイスナは、威嚇するように唸る。

 

「貴様…只者ではないな…名を聞いておこう」

 

「アダマンタイト級冒険者、黒金のニシキだ…」

 

「ニシキか…覚えておこう。久しく見ぬ強きものよ…。我は地獄の帝王、エスターク・イスナだ」

 

その名を聞いて、ニシキは怪訝な視線を向けた。

 

「エスターク…イスナ…?なるほど、エスタークとは固有名詞ではなかったのか…」

 

「ほう?どうやら、我が兄弟を知っておるようだな…。ジュマか、あるいはクークか?」

 

ニシキはそのどちらも聞き覚えのないものであった。

 

「いや、どっちも知らないな…。エスタークという名以外は聞いたことがない…。俺が昔戦ったのは、二足歩行で両手にデカい剣を持っていたやつなんだが…」

 

ニシキは過去の記憶を思い出しながら、知っているエスタークの情報を口にする。

 

「なるほど…。どうやらお前がかつて戦ったのはクークのようだな」

 

「そうか。いいことを聞いたよ。…それで、お前はクークよりも強いのか?」

 

「…さあ、どうだろうな?」

 

イスナは不敵な笑いを浮かべながら身を屈める。

 

それを見たニシキも、本来の自分の愛刀である『天照』と『月読』を両の手に携える。

 

「(あの時のエスタークと同じくらいだと思った方がいいな…。果たして一人で削りきれるのか…。俺のペラペラな防御力じゃ、奴の攻撃は喰らえても3発ってところか…)」

 

暫し、対峙し沈黙が流れる。

 

イスナが先に動く。その動きに合わせ、ニシキが回避行動をとりつつ、イスナに肉薄し、双剣を振るった。

 

 

カルカ達の周りには、ニシキが張った、巨大で四方を囲む、半透明の結界が施されていた。

 

当初、『第七位階以下の魔法を完全に遮断する』という効果を聞いた時は、とてもではないが信じられなかった。

 

しかし、その半透明の結界の外で行われている戦闘を見て、それを信じるに値すると考えるものが多かった。

 

カルカもその一人であった。

 

「すごい…」

 

イスナはその巨大な身体と拳、そして長く太い尻尾をぶんぶんと振り回してニシキを捉えようとする。

 

その攻撃は、一撃でも喰らえば忽ち肉片と化し、即死する程の力であることが容易に想像がつく。

 

しかし、そんな強大な力も、当たらなければ意味がない。

 

そう、当たらないのだ。ニシキには。

 

パワーで攻めるイスナに対し、ニシキはスピードで攻めていた。

 

イスナの攻撃ですら、目で追って捉えるのがやっとであるのに、ニシキに関しては、目で追うことすらできないのだ。

 

唯一目で捉えられるのは、ニシキが攻撃してできたであろうイスナの身体に無数にできた切り傷だけであった。

 

「私の聖剣でも、聖撃でも通らなかったイスナの身体に、あんなに軽々と…」

 

イスナの行動に、焦りが見え始める。

 

その様相はまるで、一匹の蜂に襲われて、ひたすらに腕を振り回して抵抗する者のそれと酷似していた。

 

つまるところ、イスナはニシキのスピードに全くついていけていないのであった。

 

自分の攻撃は当たらず、しかしニシキの攻撃はチクチクと喰らう。

 

そんな流れを変えるべく、イスナは大きく息を吸いこみながら、大きく後方へ跳び、後退する。

 

ニシキはそれを察知し、瞬時に肉薄することは難しいと考えて同じく後方に跳ぶ。

 

イスナの口の端から黒い炎のようなものが些少吹き出すのを、ニシキは捉える。

 

ならば…と、ニシキは印を組んで対抗を試みる。

 

「『闇の息』」「『火遁・劫火滅却』」

 

イスナの闇の息と、ニシキの劫火滅却がそれぞれ広場を覆いつくし、やがて二分するようにして衝突する。

 

ブオオッという激しい闇と炎が広場から通りに漏れ出す。

 

カルカ達のいる結界にもその闇と炎は届くが、それらは全てそらされ、被害はない。

 

しかし、その凄まじさは、目に入る情報と耳を劈くような音によって理解に至る。

 

「冗談じゃないぞッ!」

 

「なんだ、この戦いはッ!」

 

聖騎士と神官が、半ばパニックになった様子で狼狽する。

 

「こ、これが…黒金のニシキの力…なのか…」

 

聖騎士団副団長であるイサンドロは、視線が定まらず、感情を漏らして見せる。

 

やがて闇も炎もその勢力を失うと、広場は暗雲似たものが立ち込めていた。

 

その正体は、闇の息によって侵された広場と、炎によって焦げ尽くした広場であった。

 

白を基調とした広場は、先ほどまで真っ赤な血肉に染まっていたが、今はすっかり暗雲が立ち込めるような黒さを有していた。

 

イスナは視界が多少の開けたことで、ニシキの姿を捉える。

 

そしてそのまま、赤い目を光らせ、次の攻撃に移る。

 

「『破壊の瞳』」

 

その目からは、圧倒的な熱量を持った破壊光線が放たれる。

 

ニシキはそれを右へ回避する。

 

刹那、ニシキを捉えられなかった破壊光線は、その後ろの建物を貫通して突き進み、爆発を齎しながらゴウゴウと大きな炎を形成する。

 

破壊の瞳は、そのままニシキが回避した先へと向けられる。

 

回避自体は対して難しくないが、これ以上は街の被害が大きくなると判断したニシキは、それに対抗する忍術を放つ。

 

「『雷遁・雷龍波』」

 

第七位階に相当するその忍術は、雷の竜を模り、二本の破壊光線を包み様にして拮抗する。

 

雷の性質上、破壊光線を通じて、イスナの目にも電撃が届くが、特に効果は見られない。

 

「(電撃に対して抵抗があるのか…)」

 

しかし、全く効いていないというわけではなかった様子で、目を伏せるようにして閉じると、破壊の瞳が解除される。

 

「くっ!貴様…ッ!」

 

イスナは身を捩らせる。

 

その隙を狙い、ニシキは一気に距離を詰める。

 

ニシキにとっては、イスナとの距離があると攻撃の機会が極端に少なくなる。

 

忍術を使えばその問題は解決するが、戦いが始まる前にそこそこの魔力を消費してしまっているため、無駄使いはできなかった。

 

それに、ニシキにとっては、良い意味でも誤算があった。

 

再びイスナの身体を切り刻むようにして、圧倒的なまでのスピードで飛び回る。

 

「ぐっ!おのれ、小癪な!!」

 

イスナは再び腕と尻尾を振り回すが、やはりニシキを捉えるには至らない。

 

「なあ、イスナ…。お前、クークよりも弱いだろ?」

 

「ッ!!」

 

イスナは声の聞こえた方へ思いっきり腕を振るが、やはり空を切るだけに終わる。

 

「図星か?…申し訳ないが、そんなんじゃ俺に触れることすらできんぞ」

 

「なめるなッ!」

 

イスナはまたも声が聞こえた先へと腕を振り下ろす。

 

しかし、やはり捉えることはできず、ニシキはカルカ達のいる前へと滑るように着地して見せる。

 

「もう、終わりにしよう…」

 

「なんだと…」

 

ニシキの発言に、イスナは異常なむかつきを覚える。

 

「『影分身の術』」

 

煙が生じたのち、2人に増えたニシキがイスナの前に現れる。

 

それに驚いたのはニシキだけでなく、カルカ達も出会った。

 

「幻術…ではないわね…」

 

「影分身と言っていたな」

 

「ニシキ様が…2人…」

 

ケラルト、レメディオス、カルカは、それぞれに感想を漏らしな

 

がら、ニシキの背中を見つめる。

 

「…頭数を増やし、我を追い詰めようという算段か…」

 

イスナは警戒するように距離を保ちながら身を屈める。

 

「いや、そうじゃねえ…」

 

「…どういうことだ」

 

ニシキAが右手の平を天に向けるようにして身体の横に固定すると、その掌に青い球状のようなものが形成される。

 

ぎゅおおおおっという凄まじい音は、乱回転を思わせるものであった。

 

そのニシキAの掌に出来上がった青い球体に、ニシキBが両手で周りを撫でるするように、そしてその動きを繰り返す。

 

「なにを…している…」

 

徐々に青い球体の周りに、白い靄がかかる。

 

「俺もまだまだ未熟でな…この忍術は、一人じゃうまく出来ないんだ…だが、期待していい。今のお前を、一撃で屠れるほどの忍術だ…」

 

ぎゅふぉおおおおおおッ!という音に変わったそれは、凄まじい高音を発し、辺りのもの吸い込むような勢いで旋風を巻き起こす。

 

「うっ!すごい高音ッ!」

 

「なんだ、あれは…」

 

「風…っ?」

 

カルカ、レメディオス、ケラルトは聞きなれない高音に怪訝な様子を見せている。

 

ニシキの右手には、白い四つ刃の手裏剣のようなものが形成される、

 

白い四つ刃は一見、ゆっくりと回転しているように見えるが、それはあまりの高速回転に動体視力がついていかず、そう見えているだけであった。

 

「なんだ…何なんだ、それは…」

 

イスナは、直感的に理解する。

 

あれは、まずいと…。

 

「『風遁・螺旋手裏剣』!」

 

ニシキは、一歩踏み出し、瞬間移動にも似た速度でイスナに迫る。

 

イスナはすぐさま左へと大きく退避し、『破壊の瞳』をもってして迎撃を試みる。

 

…そんなイスナの顔に、何かが刺さる。

 

「なんだ…これは…」

 

それはあの螺旋なんとかという力を手に持つ方ではないニシキから投げられたように感じられた。

 

「(ふん、こんな小さな刃で我を傷つけられるとでも…ッ!」

 

それは大きな間違いであった。

 

その小さな刃が刺さったと思われる場所に、一瞬にして肉薄してはならない方のニシキが一瞬で現れた。

 

「し、しまっ…ッ!」

 

それに気づいた時には、すでに遅かった。

 

ぎゅぎぃぃぃぃぃぃぃ!という高音と共に、螺旋手裏剣がイスナの頭部へと衝突する。

 

衝突角度が斜め上だったことで、イスナは螺旋手裏剣に押されるような形で上空へと吹き飛ばされていく。

 

「お、おのれぇぇぇぇぇ!!!!」

 

イスナが上空で叫び散らした瞬間、螺旋手裏剣は一気に拡散し、爆風を齎して、強大な球体を空に作る。

 

その球体から漏れ出た爆風が、リムン全体に駆け巡る。

 

暫く空に、もう一つの太陽を思わせるような球体を有していたが、次第に勢力をなくし、何事もなかったかのような空が戻る。

 

そして、広場の中心から少しずれた場所に、巨大なイスナが落ちてくる。

 

イスナは一切動かない。

 

「た、倒した…」

 

「か、かった…のか…」

 

聖騎士や神官たちが、戸惑いながら口を開く。

 

「なんて…力なの…」

 

ケラルトは、いつぞやのことを思い出す。

 

熱を帯びた下半身に、よくない感触が表れるのを察する。

 

何の動きも見せないイスナの身体は、ゆっくりと光の粒子のようなものに包まれ、跡形もなく消えていった。

 

それを確認したニシキは、カルカ達に展開していた結界を解除する。

 

フッと一瞬にして結界が消える。

 

そして、カルカ達の視界がクリアになったその時…。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」

 

と、聖騎士や神官たちが雄たけびを上げる。

 

それは、自身の価値観を変える程の戦いを見せられ、更にはあの強大な地獄の帝王を単騎で討伐したニシキに対する称賛でもあった。

 

「ふぅ…」

 

ニシキは、そんな称賛を受けながら、カルカ達の元へと歩み寄った。

 

「これが黒金の力か!!」

 

「俺、あんたに惚れちまったよ!!」

 

「ありがとう、ありがとう!」

 

聖騎士や神官たちが、口々に嬉々として言葉を掛ける。

 

ニシキもそれに答えながら、視線をケラルトに向ける。

 

「約束通り、倒しましたよ」

 

ケラルトは、そんなニシキの言葉を受け、目を見開いて唇を震わせる。

 

何かが胸をつっかえているような感覚を覚える。

 

この前に感じたものと、少し似ているかもしれない。

 

それが何であるのか、それを確かめようとした矢先、金色の何かが、ケラルトのそれを遮った。

 

その金色は、ニシキの元に駆け寄ると、飛びついて抱擁する。

 

「…え?」「…ん?」

 

ケラルトとレメディオスは、自身の横を通り過ぎた金色に疑問を抱き、その金色がニシキと衝突したことで、驚きに変える

 

「ニシキ様ッ!」

 

「カ、カルカ様ッ!い、一体何を…ッ!」

 

金色の正体は、聖王女カルカ・ベサーレスであった。

 

「私、信じておりましたッ!」

 

「え、ええ。ありがとうございます?」

 

ニシキは、首に手を回して抱擁してくるカルカをどうしていいかわからずに狼狽える。

 

「あ、あの…カルカ様…。離れて頂けると助かるのですが…」

 

「嫌ですっ♡」

 

…時が止まる。

 

時を戻す瞳術を披露したニシキである。

 

とあるオーバーロードのように時を止める瞳術を扱えても、何ら不思議はない。

 

しかし、それは違った。

 

物理的な時の停止ではなく、雰囲気的に時が止まったのだ。

 

その時の止まりは、多少の沈黙をもって、正常な時の流れに移ろう。

 

「「「「えええええええええっっっ!!!!!」」」」

 

聖王国の精鋭ともいえる部隊が一堂に声を揃えて驚いたのは、これが2度目であった。

 

 

 

 

 

 

 




※現在の弐式炎雷のレベル

・Lv96

※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)

・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv2
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