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モモンガとニシキは、2人で互いの今迄のことを話し、この世界で得た情報を共有した後、ナーベラルやルプスレギナと一緒に再度会話の場を設けていた。
「それにしても、弐式炎雷さん、再会できて本当に良かった!」
「私も、モモンガさんと再会できて本当に良かったよ」
「それにしても驚きました。まさか、人間になっているだなんて…」
「ええ、原因はわかりませんが、恐らくはガンが関係しているのかもしれませんね…。命が尽きかけていたのは事実なので…」
ニシキの言葉を聞き、傍に控えるナーベラルの身体がビクッと震える。
先ほどまでニシキにこれでもかと抱き着き、大泣きしていた手前、恥ずかしさと負い目で表情は暗かった。
そんなナーベラルの様子を見て、ニシキは小さく微笑みかける。
「おいで、ナーベラル」
ナーベラルはその言に従い、ニシキの元へ近づく。
ニシキはナーベラルの頭にそっと手を添え、撫でる。
「に、弐式炎雷様…ッ///」
ナーベラルは一気に顔を赤らめて見せる。
ニシキは、小さく頭を下げる。
「君にはつらい思いをさせたね…すまなかった」
「に、弐式炎雷様が謝られることはありません!す、全ては私の不徳の致すところ…。どうか、どうか頭をお上げください。」
それでも頭を下げ続けるニシキに、ナーベラルは涙を浮かべて懇願する。
「弐式炎雷様は、ナザリックや我々僕を巻き込まないために、お隠れになられていたのですよね?すべては脆弱な我々が悪いのです。どうか、そのように頭をおさげになるのはおやめください」
ルプスレギナも、同じように懇願してみせた。
どうやら、モモンガさんの言っていたことは正しかったようだ。
NPCが自我をもち、動き始めたことは、ナーベラル達を見ていればわかりきったことである。
加えて、自分たちギルドメンバーは『至高の41人』と称され、神の如く崇められている。
忠誠心とでもいえばよいだろうか?
それが天元突破しているのだ。
もちろん弐式は、それこそモモンガも神などではない。
それどころか、元はただの人間である。
「ニシキさん、ナーベラルたちの言う通りですよ。あなたは何も悪くありません。それどころか、最後までナザリックのことを想ってくれていたではありませんか」
「モモンガさん…」
モモンガはそんなNPC達の忠誠心に応えようとしている。
モモンガは知っているはずなのだ。
ニシキは別にナザリックを守るために、ログインしなかったわけではない。
単純に病気で、そんな気力がなかっただけなのだ。
しかし、あの最後の日、ナザリックが消えゆくはずだった日に起こした、ロールプレイが良くなかった。
しかも、そのロールプレイをほぼすべての守護者やNPCが知っているとなれば、今更『あれはただのロールプレイで、嘘なんだよ』などとは言えるわけがない。
そもそも、ガンに侵され、余命幾ばくかであったことは事実なのである。
今更引き下がれない。
「わかりました…。皆がそこまで言うのなら、この件はもう終わりにしましょう」
ナーベラルの頭から、ゆっくりと手を離す。
「あっ…///。弐式炎雷様…」
ナーベラルは、どこか名残惜しそうに、しかし非常に安心したようにして笑顔を向ける。
思わず、ニシキは非常に良くない感情を胸に抱く。
「ふふっ…」
「…?弐式炎雷様?」
ナーベラルは、弐式が小さく笑ったことで、首を傾げる。
「いや、自分が作った、自分にとっての理想の女性として作ったナーベラルがこうして動いているのを見て…すごく嬉しくてさ…」
その言葉を聞き、ぎょっとした表情を浮かべたのはナーベラルではなく、モモンガであった。
「ちょ、弐式さん!そんなこと言ったら…」
モモンガの発言は最後まで為されることはなかったが、間違ってもいなかった。
ナーベラルは、顔を真っ赤に染上げ、震えるように息絶え絶えと言った様子であった。
「わ、私が…弐式炎雷様の…理想の…女性…ッ⁉」
「はわわわ…ッ!」
ルプスレギナも、なぜだか身体を震わせて興奮している。
「ん?そりゃあそうだろ…。黒髪ロングのポニーテイル…。これに勝る美しさはない」
「ッ!!に、弐式炎雷様…ッ!!」
ナーベラルは、身を捩るようにして足をがくがくと震わせる。
もはや立っていることすら危ういと言った様子であった。
そしてそれはすぐに訪れ、カクンッと力を失い、膝が曲がる。
「ナーベラルッ!」
それをいち早く察したニシキは、がばっとナーベラルを抱きかかえる。
「に、弐式炎雷様ッ!」
「大丈夫か?すまない、あからさまなことを言って、傷つけてしまったかな?」
「い、いえ!そんなことはありません!ただ…と、とても嬉しくて…その、申し訳ありません…」
ニシキは、ナーベラルを抱く腕の力を強める。
それに呼応して、ナーベラルは「はうっ」と喘ぎ声に似た声を漏らす。
「あの…目の前でイチャイチャするの、やめてもらっていいですか?」
モモンガは、そんな2人のやり取りを見て、思わず負のオーラを漂わせながら呟いた。
「あ、すんません…」「も、申し訳ありません、モモンガ様…」
ニシキは、ささっとナーベラルを抱く手をどける。
ナーベラルも、何とかニシキから身体を離して再び控えるようにして立つ。
…先ほどよりもニシキに近い位置で控えているのは内緒である。
「それで、弐式さん。私としては今すぐにでもナザリックに来て頂きたいと考えているのですが…」
「あー、っと…。その前にお聞きしたいことがいくつかありまして…。」
「聞きたいこと…ですか?」
ニシキは、モモンガの顔を見据え、ゆっくりと口を開いた。
「あの日…私がナザリックにログインした日…もしかして、ヘロヘロさんもいましたか?」
もう一人の至高の御方の名前に、ナーベラルとルプスレギナは大きく目を見開く。
モモンガは、「え?」と言った様子で戸惑っている。
「え、ええ。弐式さんが来るよりも前に来て、そのまますぐにいなくなりましたが…。あれ、この話しましたっけ?」
「やっぱりそうだったのか…。でもログアウトしたのになぜ…」
モモンガからすれば、なぜヘロヘロさんがログインしていたのかという質問が飛んできたのか、理解できなかった。
「落ち着いて聞いてください…実は、ヘロヘロさんもこの世界にいるんです」
「なんだってッ!!」
ニシキの言葉に、モモンガはいつぞやかと同じようにガバッと立ち上がる。
ナーベラルとルプスレギナも、驚いた様子を見せるが、感激している様子が見て取れる。
すぐに鎮静化が入り、なんとか落ち着きを取り戻す。
「す、すみません…。そ、それで、ヘロヘロさんは今どこに⁉」
「この屋敷の一室で眠っています」
「そうか、そうか!まさかヘロヘロさんまで、よかった…本当に良かった!」
モモンガは何度鎮静化されようとも静まらない嬉しさに、興奮を抑えきれない。
しかし、ニシキの表情は一向に暗いままである。
「ど、どうしたんですか…。弐式さん…。ま、まさか、ヘロヘロさんの身に何か…」
モモンガの言葉を聞き、ナーベラルとルプスレギナは、先ほどまでの感激に些少の曇りが生まれる。
「そのまさかです…。目を覚まさないんですよ…。もう2週間になりますかね…ずっと眠ったままなんです」
「なっ!」
モモンガは言葉を詰まらせ固まる。
ナーベラルとルプスレギナは、「ひぃっ」と小さく悲鳴をあげてふらつく。
「か、回復アイテムは⁉怪我はないんですか⁉」
「見た感じ怪我はありませんでした。生きてもいます。でも、私と同じように何か病に倒れているのかと思い、ポーションで最高位の神聖治癒薬を使いましたが全く…。色々試して、例の課金アイテムの『星に願いを』も使いました。発動はしたので、願いは聞き届けられたとは思うんですが…。」
「そ、そんな…。神聖治癒薬でも、超位魔法の星に願いをでも目を覚まさないなんて…」
モモンガは、酷く狼狽しながらも、状況を整理して考える。
「ええ…。ヘロヘロさんのことだから、過労でぶっ倒れてそのまま。そうとうな疲労が溜まっているとしか…」
「そこまで…ッ!弐式さん、ヘロヘロさんのところに案内して頂けますか?」
「ええ、もちろんです」
モモンガ達が会話をしていた一室とは別の一室…。
へロへロが寝かされている一室に、モモンガ達はベッドに寝かされたヘロヘロを見て、モモンガ達は酷く驚いて見せる。
「間違いない…ヘロヘロさんだ…ッ!」
「「ヘロヘロ様ッ!」」
モモンガは絶望した様子で、ナーベラルとルプスレギナは過呼吸になりながら口を開いていた。
モモンガは、ゆっくりとヘロヘロに寄り添い、狼狽している。
「ヘロヘロさん!起きてください!モモンガです!!」
しかし、ヘロヘロは一切反応せず、静寂が一室を支配する。
「これは…。本当に眠っているだけなんですか?」
「わかりません…。ただ、生きてはいますから、そう考えるしかないと思います」
「でも、ただ眠っているだけなら、星に願いをが発動しないはずはない…。そ、そうだ!ワールドアイテムの効果という可能性は?」
「私もその点を考えました…。モモンガさん、あなたは『相手を昏睡状態にする』という効果のあるWIの存在を知っていますか?」
興奮気味のモモンガを諭すようにして、ニシキは呟いた。
「いえ…しかし、未だ未発見のWIがあったのは事実です。弐式さんの情報から、過去に他のプレイヤーがいたことを考えると…。それに、この異世界特有の力という可能性も…」
「最悪は……考えておくべきですね…」
最悪は…その言葉を聞いて、ナーベラルが大きく目を見開く。
「そ、それは…ヘロヘロ様が…このままお目覚めにならないということですか…」
「…その可能性も、大いにあるってことだ」
「そ、そんな…」
ニシキの返答に、ルプスレギナも悲鳴に似た呟きを発する。
「…とにかく、まずはナザリックに帰りましょう…。守護者や僕たちにも説明しなくては…」
「そうですね、ナザリックの方が、ここよりはずっと安全だ…。モモンガさん、ヘロヘロさんをよろしく頼みます」
「「「…え?」」」
ニシキの発言は、モモンガ達を固まらせるのに十分であった。
「…?ナザリックに帰るんですよね?」
「そ、そうですけど…。弐式さんも行きますよね?」
ここでようやく3人が固まった理由を、ニシキは理解する。
「あー、申し訳ないんですけど…。私はナザリックには帰れません」
「ど、どうしてですか⁉」
モモンガは驚きと些少の怒りを込めて声を荒げる。
その発言によって驚きを表したのはモモンガだけではなかった。
「に、弐式炎雷様⁉な、なぜナザリックにお帰りになって頂けないのでしょうか⁉」
「私達僕に、なにかご不快な点があるのでしょうか⁉」
ニシキは3人の驚きように、少し引きつつあったが、自分の考えを述べようと口を開く。
「ナーベラルたちに不満なんてないさ…。それに、ナザリックに帰りたいという気持ちも、ないわけじゃない…。でも、今の俺は『人間』だ…。人間である私が、ナザリックに、アインズ・ウール・ゴウンに復帰することはできない」
「そんなの関係ありませんよ!人間だろうが何だろうが、弐式炎雷さんは弐式炎雷さんです!ナザリックの者も皆、納得してくれますよ!」
「…ナーベラルは、人間、ツアレを下等生物と罵っていたではないですか…。他の僕たちも同じように考えている…。違いますか?」
モモンガはうっといった様子で押し黙る。
それは酷く的を射た発言であり、実際それが真実であるがゆえにモモンガは反論することができなかった。
名指しで失態を突き付けられたナーベラルは、この世の終わりのような表情を浮かべていた。
「も、申し訳ありません…弐式炎雷様…。い、今すぐにじ、自害を…ッ!」
ナーベラルは瞬時に剣を召喚し、自らの首に向ける。
「よせっ!」
モモンガはその行動を見て、瞬時に声を張り上げるが、それでもナーベラルの動きは止まらなかった。
…いや、行動自体は止まった。止められたというべきだろう。
ニシキがナーベラルの持つ剣の刀身を強く握っていたからだ。
ぎぎっという暫し力の拮抗を見せていた。
しかし、ポタッという何かが滴る音と共に、ナーベラルの手から剣が奪われる。
その音の正体は、ニシキの掌から流れる血であった。
「ひぃ…に、弐式炎雷様…ッ!」
自らの行いで、ニシキに血を流させてしまったことが、ナーベラルにとっては許しがたいことだったのだろう。
ルプスレギナが瞬時に治癒魔法を展開する。
傷は一瞬で治りを見せたが、それでもナーベラルの表情は優れない。
「ナーベラル。配慮に欠ける発言だった…。人間を下等生物だと罵るように作ったのは俺だ…。お前は何も悪くない…」
「に、弐式炎雷様が謝られることではありません!そ、それに、私は、い、いま…弐式炎雷様に…き、傷を…ッ!」
ナーベラルは、言葉を詰まらせながら、今の状況を耐えられないと言った様子で震えている。
至高の御方、それも自身の創造主に傷を負わせてしまったという事実が、ナーベラルの精神を蝕む。
ニシキは刀身を持つ手を離す。
支えを失った剣は、ガランッと音を立てて床に落ちる。
そして、先ほどよりも力強くナーベラルを抱きしめる。
「あっ…///に、弐式炎雷様…///」
「すまない、ナーベラル…。君を責めるつもりはなかった…。ただ、ナザリックに帰ることが憚られる理由は、他にもあるんだ…」
ニシキは、ナーベラルを抱きしめたまま、モモンガへと視線を移す。
「モモンガさん…私はこの世界に来て、もう1年を過ごしました。一人、たった一人でこの世界にきた…。私はその中で、様々な人に出会い、助けられてきました…」
「弐式さん…」
その言葉の重みを、モモンガは誰よりも理解していた。
ナザリックごと転移してきた自分と、頼れる仲間も僕もいない状況で転移してきたニシキ…。
どちらがより不安で、混乱していたのかは、火を見るより明らかであった。
「アインズ・ウール・ゴウンも、ナザリックも、俺にとってはかけがえのないものだ。そこに嘘はない…。だが、それと同じくらい、今の俺にとっては、ツアレやこの街、国が大事なんだ…。見ず知らずの俺を受け入れてくれた…ここが…。だから、それをないがしろにして、一人ナザリックに帰ることはできない」
「…そうですね、うん、弐式さんの言っていることは正しい…」
モモンガは、ニシキの発言を一つずつかみ砕き、肯定する。
ずっと抱きしめられているナーベラルは、ニシキの体温と感触を直に味わっているせいもあり、正常な思考ができず、ただ顔を真っ赤にして黙り込んでいる。
「それなら、弐式さん…。一時的に帰ってくるというのではどうでしょうか?聖王国を捨てろとは言いません…。ただ、私も、僕たちも、弐式さん帰ってきてほしいんです…。弐式さんも、ずっと私達を探してくれていたんでしょ?それは、私たちと、ナザリックに再び戻りたいという思いがあったからだ…違いますか?」
「………」
ニシキは、考え込むようにして黙りこくっている。
それを見て、ルプスレギナがおずおずといった様子で口を開く。
「弐式炎雷様…。どうか、どうかナザリックに帰還を…」
「私からも、どうか、伏してお願い致します…。弐式炎雷様…」
ニシキに抱きしめられ、思考が停止していたナーベラルも、何とか嘆願してみせる。
その2人の言葉を聞き、ニシキは小さく息を吐く。
「そうですね…。別にナザリックに行ったからって、ここに戻ってこられないわけじゃないんだ…。考え方が極端でしたね…。すみません…」
「そ、それじゃあ…ッ!」
モモンガは、興奮した様子でニシキに一歩近づく。
「…ええ、帰りましょう。ナザリックに…いえ、我らがナザリックに…」
ナザリックへの帰還を決めたニシキは、ツアレに暫しの別れを告げていた。
「ニシキ様…」
仲間との再会、そして帰るべき故郷へと向かうニシキを止めることなどできようはずもないが、やはり不安はある。
「ちゃんと戻ってくる、だから、少しだけ待っていてくれ」
「…私も、私も行くことはできないのですか?」
ツアレは、勇気を振り絞る。
ナザリックという場所が、人間にとっては、いやこの世界の住人にとっては危険であるという説明は、ニシキから丁寧に説明された。
それゆえに、共に行くことを許してはもらえないということも、一応の納得はしている。
だが、ツアレのニシキに抱く只ならぬ想いが、それを受け入れられないのも事実であった。
「ちっ…下等…い、いえ…申し訳ありません」
ナーベラルは、至高の御方であり、自身の創造主であるニシキが決めたことに異議を唱えるツアレに対し、不愉快極まりない感情を抱くが、ニシキが一睨みしたことで口を紡いだ。
「君をナザリックに連れていくことはできない…。だが、私は必ず戻ってくる」
「うーん、私は彼女を客人待遇でナザリックに迎えてもいいんですが…」
「モモンガさん、ツアレの安全が完全に確保されてない以上、それはできません。ツアレは、私にとって大切な人ですから」
モモンガのどこか気の抜けた提案に、ニシキはくさい言葉で制止をかける。
「た、大切な…人…。う、嬉しいです…。ニシキ様…」
「……ッ!」
ツアレは、顔を赤らめて俯き、ナーベラルは嫉妬にも似た感情を抱きながら悔しそうな表情を浮かべる。
そんなツアレの表情に気付き、しかしナーベラルの感情には気付かず、ニシキは、そっとツアレの頭に手を添える。
「ニ、ニシキ様…ッ///」
「…ッ⁉」
ニシキの行動と、2人の様相を見て、ルプスレギナはぷぷっと笑いを浮かべる。
「これは大変っすよ、ナーちゃん!弐式炎雷様を取られちゃうっすよ!」
「なっ!わ、私は…そんな…ッ!」
「(弐式さんって…こんな女たらしだったか…?)」
モモンガは、うーんと頭を悩ませながら、ニシキとナーベラル、ルプスレギナに加え、昏睡状態にあるヘロヘロ共に、ナザリックに転移したのであった。
※現在の弐式炎雷のレベル
・Lv96
※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)
・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv2